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2016年8月 3日 (水)

日医副会長、日医目線で新専門医制度を語る

ご存知の通り新専門医制度の導入実施が当面先送りされたと報じられたところですが、かねて部外者であったにも関わらずこの専門医制度に介入したがっているのが日医と言う団体で、先日は日医副会長がこんなことを言っていたと報じられています。

「日本専門医機構のガバナンスを一新」、中川日医副会長(2016年7月29日医療維新)

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、7月28日に開催された埼玉県医師会勤務医部会の討論会で、「新たな専門医の仕組みについて」をテーマに講演した。この7月からの日本専門医機構の第二期執行部の役員(理事)を選考した立場から、「新しい役員を選ぶ際の基準は、機構のガバナンス、そして組織を一新する」が狙いであり、それが実現できたと説明、地域医療への影響、サブスペシャルティや専攻医の身分保障など、さまざまな問題をいまだ抱える新専門医制度について、確実かつ早急に議論するよう新執行部に対し、期待を込めた。

 専門医の取得をめぐっては、医師にとってのメリットを問う声もあるが、中川氏は「専門医の仕組みと、診療報酬は決してリンクさせてはいけない」と強調。これは新専門医制度が議論される以前から、日医が長年主張してきた方針だという。
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 「1年延期」となった直接的なきっかけは、地域医療への影響が懸念されたため。中川氏は、地域医療の実情を、学会などの関係者に伝える必要性を指摘し、「声を上げないと、納得したと受け取られる。声を上げ続けてほしい」と求めた。
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 日本専門医機構は2014年5月に発足、日医は設立時の社員3団体の一つとして加わった。日医は、同機構に対し、(1)専門医の仕組みをプロフェッショナルオートノミーとする、(2)専門医の認定の仕組みや総合診療専門医に、日医生涯教育制度を組み入れる――などを働きかけ、協調関係を保つように努力してきた。
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 「新たな専門医の仕組みを、2017年度から導入することを目安としていたが、相当な準備不足が明らかになった」(中川氏)。中川氏は、3月14日の日本専門医機構の社員総会に出席、同総会やその前後で学会関係者の意見を聞く機会があったが、「基本診療領域の中でも大きな学会のトップは、地域の実情を全く分かっていなことが分かった。『うちは大丈夫』『新たな専門医の仕組みにより、医師の地域偏在が加速することはない』と言っていたからだ。しかし、各地域の医師会の意見を聞くと全然事情が違った。この流れを何とか止めなければいけないと思った」と振り返る。
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 中川氏は、「新たな専門医の仕組み」は、専攻医が都市部に集中する懸念だけなく、既に専門医を取得している医師の更新への影響も大きいと説明。「従来は、講習会や学会の総会への参加などで、専門医の更新が可能だったが、新たな基準では、講習に加え、勤務実態の報告、診療実績の証明が加わることになった。地域医療を担う医師にとって負担が大きい」。
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 最終的に7月20日、「新たな専門医の仕組み」は延期され、2017年度は各学会が現行通り実施することが決定した(『新専門医制度、全19領域とも「1年延期」へ』を参照)。新たな仕組みは、2018年度を目途に一斉にスタートすることを目指すとともに、更新基準についても、「新たな基準が厳しすぎて、日常診療に影響が出かねないという声が出されており、新旧基準の違いについて今後調査する予定」になったという。
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質問:専門医を取得するメリットは何か。診療報酬と関連付けるなどの動機付けが必要ではないか。
中川氏の回答:専門医の仕組みと、診療報酬は決してリンクさせてはいけない。日医は長年、「専門医とそれ以外で、診療報酬に差を付けるのは問題」と主張してきた。専門医の仕組みは、医師としての職業的な自律性を確立し、プロフェッショナルオートノミーで運営すべきであり、「いい医療を提供する」という医師の矜持として専門医を取得することが必要だろう。より良い医療を提供すれば、地域住民から評価され、患者も集まり、十分なメリットにつながる。 また「かかりつけ医」と総合診療専門医とは異なり、「かかりつけ医」の診療報酬上での評価は今後も求めていく。「かかりつけ医」は開業医に限らず、病院勤務医でもかかりつけ医。医師が所属する医療機関の経営形態とは関係なく、診療報酬上で評価していくべき。

質問:いいプログラムを作れるのは大きな大学や余裕のある病院に限られる。地域医療への影響が生じないようにしてもらいたい。また専門研修において、「基幹施設」になるか否かは、「大学の顔色」を見て判断しているところがあり、その辺りが何とかならないのか。
中川氏の回答:当初考えられていた仕組みでは、学会により差があるが、指導医になれる医師も限定され、医師の偏在が加速することは間違いなかった。1年延期されたので、精査して徹底的に議論すべきだろう。地域医療の現場を理解してもらうためにも、諦めないで、現場から声を上げ出し続けてもらいたい。
 2017年度は、各学会が独自で専門医養成に取り組む。その際、新しい専門研修プログラムを使いたいという学会については、「地域の医師偏在を加速させない」などの点を精査するよう、日本専門医機構からお願いしている。
 もっとも、医師の地域偏在解消策は、「新たな専門医の仕組み」以外にもあるべきで、一定の強制力もある偏在解消策が必要だと考えている。
(略)
質問:開業医の立場からすると、専門医の更新の問題が大きい。既に新しい基準に則って、更新をしている学会もある。
中川氏の回答:それがダメだという権限はどこにもないが、更新についても厳しくならないように、日本専門医機構から依頼している。

質問:以前だったら、学生がストライキをやるほどの事態。日本専門医機構を作ろうとしたのはいったい誰なのか。また同機構は、(運営のために)約8000万円借り入れたと聞いている。旧執行部が勝手にやり作った借入の返済を各学会が負担するのはあり得ない
中川氏の回答:プロフェッショナルオートノミーとしてやるべき、と主張したのは、日医だ。借入については、旧執行部が責任を取れるレベルではないだろう。

何やら最後の方でさりげなく爆弾も投じられていたような気配なのですが、しかし専門医取得で診療報酬アップはまかりならんが、かかりつけ医の診療報酬アップは求めていくと言ったあたり、日医はちゃんと仕事はしているとみるべきでしょうかね。
それはさておきこの新専門医制度のポイントとして単に学会出席や過去の実績だけではなく、現在進行形で専門医としての診療に携わっている人間にしか維持が出来ないようになると言う大方針が伝えられていて、その結果現実的に基幹病院の勤務医以外は早晩専門医資格を取得も維持も出来なくなるだろうと言われていますよね。
この点に関しては過去にきちんとトレーニングを受けたり多くの経験を積んできたベテランが、市中の中小病院や開業医となった結果専門医資格を保持出来ないのは如何なものか?と言う懸念もあり、基幹病院側から見ても患者を逆紹介するのに全くどの程度の専門的知識がある相手かも判らなければ紹介のしようもないと言うこともありますから、標榜診療科の自由を担保するだけでいいのかどうかと言う議論はあるでしょう。
一部の開業医の先生に言わせると「○○年△△専門医取得」式の表現でやっていく予定だとも側聞するところですが、今後例えば元専門医資格保持者なり過去の診療実績の多さなりを評価する資格として専門医以外の何らかの呼称なり資格なりが必要になるのかどうか、その場合誰がどうやって認定するのか等々の課題もありそうに感じますが如何でしょうか?

いずれにしても記事からも容易にうかがわれるところとして、日医の立ち位置としてこの新専門医制度と言うものが下手をせずとも非常に困ったものになりそうだと言う危機感が表れていて、そうであるからこそ制度の根幹に関与してなんとか自分達の不利益を減らそうと努力している様子が伺われるのですが、その結果新専門医の意味が失われてしまうのでは本末転倒でしょうね。
特に後段の質問にも現れているように、そもそも新専門医取得のメリットとは何なのか?と言う疑問は多くの現場医師が抱くところだと思いますが、日医は以前から専門医資格の有無によって診療報酬に格差をつけるなどまかりならんと、その専門性を公的に評価しない方向で鋭意努力してきたわけですし、ましてや基幹病院にますます医師が集中するようでは非常に困ると言う立場なのでしょう。
一方で厚労省としては以前から中途半端な中小市中病院は統廃合を行い医師の集約化を推進すべきだと言う立場で、後者の基幹病院への専門医集中と言う点に関しては全く合目的的な効果であり、また前者の待遇格差をつけないと言う点についても何らの取得への誘導策を用意しなくとも勝手にプロフェッショナルオートノミー(笑)で先を争って専門医を目指してくれるのであれば、こんなおいしい話はないわけです。
かくして日医と厚労省の目指すところが少なくとも部分的には利害関係が一致しているからこそ、新専門医制度に日医がこれほど深く関与することが認められたと言うことなのでしょうが、日医としては今後の戦略として新専門医制度の過程を通じて今まで影響力を発揮しがたかった勤務医にも力を及ぼし、また受講料なりの名目で日医のためにお金も取れるようにすると言った辺りが目指すべきところとなってくるのでしょうか。

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コメント

先送りってことはこっからまだ仕組みが変わるってこと?
研修に何年もかかるのにいい加減にしてほしい。

投稿: 大熊猫 | 2016年8月 3日 (水) 08時51分

今回の新専門医制度は、各学会の専門医が直接投票すれば絶対に否決される案件ですよね。
医師だったら誰もが反対するような内容なのに、なぜ上層部の一部の先生方は押し通そうとするのでしょうか。
そういった先生達をみていると、「奴隷は自分を縛る鎖の出来を自慢する」という言葉が頭に浮かびます。

投稿: ふぉれすと | 2016年8月 3日 (水) 11時44分

今後旧制度で取得された先生方の専門医が維持できるかどうか、特例措置なり設ければそれはそれで不公平感もありそうで難しいところですね。

投稿: 管理人nobu | 2016年8月 3日 (水) 12時36分

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