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2016年8月 2日 (火)

遺伝子診療、公的規制導入か

かねてからの懸案となっていた問題ですが、国がこうした方針を決めたと報じられています。

遺伝子検査ビジネス、法規制など検討へ(2016年7月23日朝日新聞)

 病気のリスクや体質がわかるとする遺伝子検査ビジネスについて、厚生労働省は安全性や科学的根拠を確保するため、新たにルール作りに乗り出す。検査結果が就労や保険加入時の「遺伝子差別」につながらないような規制が必要かも検討する。昨年11月から遺伝情報の利活用と保護を議論してきた政府の有識者会議が22日にとりまとめた報告書案に盛り込まれた。

 遺伝子検査が急速に広がるなか、検査を受けた人に食生活の指導や健康食品の販促がされている実態がある。このため、厚労省は健康や生命に悪影響を与える可能性が否定できないと判断。有識者を交えた実態調査を今年度中にも始め、検査の科学的根拠の確保などについて法規制や指針などの導入を検討する。

 遺伝子差別防止などの法整備も検討するため、「結婚や就労時の問題とならないか」「検査したデータが海外流出しないか」といった市民の懸念を把握するための意識調査も始める。

 これまでは産業振興の観点からの経済産業省の指針や、業界の自主規制はあったが、法的拘束力はなかった。(竹野内崇宏)

遺伝子「差別」法規制見送り 検査は国に指針要求 有識者検討会報告(2016年7月23日毎日新聞)

 個人の遺伝情報に基づくゲノム医療の実現に向けて課題と対策を議論していた政府の有識者検討会は22日、遺伝子検査の質を確保するため、一定のルールなどを求める報告書をまとめた。焦点になっていた遺伝情報による差別防止と、医療の枠外で販売されている消費者向けの遺伝子検査ビジネスの規制については、いずれも法整備の必要性を盛り込むことを見送った

 ゲノム医療は、個人の遺伝情報を調べて病気の診断や治療、予防に役立てる。特に、患者1人ずつに応じたオーダーメード医療への応用が期待されるが、将来病気になるリスクが分かるため、雇用や保険加入などでの不利益防止やデータの管理が課題となっている。

 検討会はゲノム医療の実現を目指す協議会の下部組織だが、こうした差別の問題や遺伝子検査ビジネスの規制に関し、政府組織として初めて主要議題としたため注目されていた。

 報告書は、ゲノム医療を保険適用するための前提として遺伝子検査の品質や精度の確保の重要性を挙げ、「ガイドラインなど、法的措置を含む具体策の検討」を厚生労働省に求めた。

 一方、遺伝情報に基づく差別の防止について「不当な扱いを受けることのないよう社会環境の整備が必要」と課題を明記したものの、法整備については「対象となる行為を明確にする必要性がある」などと見送り、差別の実態調査の必要性を提言した。日本医師会などが国内での規制の遅れを批判してきた遺伝子検査ビジネス対策では、学術団体や厚労省などが関与して科学的根拠などが確保される取り組みを求めた。【千葉紀和】

記事を見る限りでは未だ手探り状態と言うしかないのですが、世間的には根強い反対論がある一方でその有用性に関しては疑いようがなく、特に技術開発と言う視点で見ると今後遺伝子診療の技術を制する者は世界の医療を席巻するのではないかともされていて、各国で倫理と技術的主導権争いとの狭間で議論が重ねられてきた経緯があります。
すでにアメリカなどでは20世紀末から遺伝情報をどこまで収集し活用することが許されるのかと言う議論がなされていて、2008年には個人の遺伝情報に基づく健康保険上の差別的取り扱いを禁止することになったそうですが、興味深いのは日本と同様既往歴によって差別的取り扱いを行うことまでは禁止されていないと言う点で、言ってみれば逆差別的状況にあるとも言えますよね。
雇用の場においても遺伝情報の収集や差別は禁止されているのですが、これまた日本においてもメタボ健診で引っかかったら雇い止めされたと言った話も決してなくならない状況を見ても、既存の医療情報と比較してやや逆差別的な取り扱いとも言えるかと思うのですが、まあこうしたケースの最初の段階では厳しめの規制が行われることはままあることではあるでしょう。

遺伝子検査についてはすでにコマーシャルベースで行われていて、素人でも手軽に採取できる検体を郵送するだけで腫瘍疾患の罹患リスクが判ると話題になっていますが、アメリカではこれまた商品としての販売が制限されるなど規制が行われているとは言え、ネットを経由して世界中がつながる時代だけに第三国の幽霊会社を経由するなど幾らでも規制の抜け道はありそうに思います。
検査自体は個人が自己責任で利用する分には早期発見、早期治療と言う既存の健診等とも重なる部分があり、必ずしも悪い話ではないと思うのですが、やはり素人が送られてきた結果を誤って解釈する可能性であるとか、個人情報が流出し思わぬ不利益を被る可能性であるとか、様々な問題点は日本においても指摘されていますよね。
単純に考えるとこれらを回避する早道は医療機関以外ではこうした検査を受けられないようにして、必ず専門家が情報を取り扱うようにすると言う方法論が考えられますが、国がOTC薬を推進するなどと言った近年の医療改革の流れとは逆行する話だとも言えますし、現場の臨床医の先生方にとっても正直面倒臭そうだと言う印象が強いかも知れません。
医学的に見れば疾患治療に直接影響するような領域に関してどこまで保険適応とすべきかも議論になりそうなのですが、下手をすると予防医学のあり方を劇的に変えることにもなりかねないだけに、それによってトータルでの医療費が増えるのか減るのかと言う計算も事前に行われるべきなのかとも思いますね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

こういうの一度検査受けてみたいけど病院行けばいいの?

投稿: | 2016年8月 2日 (火) 09時19分

2016年8月 2日 (火) 09時19分の様なやつはネットで探せ。 病院にけつを持って来ようとするな。

投稿: memento mori | 2016年8月 2日 (火) 12時39分

検体を郵送すれば結果が送られてくる利便性は大変なものですが、そのケツ持ちを誰がするのかが最大の課題でしょうか。
現状でも他施設の健診結果を持参して説明だけを求める患者の話は時折聞くところですが、こうした場合は自費診療にすべきなのでしょうかね。

投稿: 管理人nobu | 2016年8月 2日 (火) 12時56分

セカンドオピニンオン算定(診療情報提供料(Ⅱ))だと安い?

投稿: 非医師 | 2016年8月 2日 (火) 23時17分

それでいいんじゃないですか?
ただ払ってくれるかどうかが心配。

投稿: ぽん太 | 2016年8月 3日 (水) 07時44分

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