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2016年8月26日 (金)

正解は「儲かるから」でしょう

医師であり経済学博士であると言う珍しい経歴を持つ多摩大学医療・介護ソリューション研究所教授の真野俊樹氏が、先日こんな記事を書いていました。

週刊誌の「医療叩き」はなぜ起こるのか(2016年8月22日ダイヤモンドオンライン)

(略)
 最近、週刊誌も含め医療不信の話題がかしましい。実際に日本の医療レベルはそこまで低いのであろうか。
(略)
 決してそんなことはなく、むしろ、高いのである。例えば、「大腸がん」にかかり、医師の治療を受けたとする。OECDデータにおける5年生存率は、主要先進国の中では日本が世界一なのである。
 であるがゆえに、日本経済の再生を目的とする「日本再興戦略」などでも日本の医療を海外に輸出しようという話になるし、アジアにおいての日本医療への関心は高く、病気の人がわざわざ日本に治療を受けにくるという、「医療ツーリズム」が起きている。
 つまり、「うまい、安い、早い」に照らして考えれば、「うまい」が保障されていることになる。また、国民皆保険制度下にある日本医療では、患者の自己負担は廉価である(もちろん、皆保険の財源をどうやって維持していくのかという問題はあり、非常に重要な問題であることは百も承知であるが、今回は、自分が重い病気にかかり、いい医療を何が何でも受けたいという立場で考えてみた)。
 さらに、「早い」に相当する医療機関へのアクセスも、日本は優れている。例えば、英国などでは、日本の「義務教育」のように、公費で賄われる医療は「学区制」のようになっており、いきなり病院の専門医を受診することはできない。
 まとめて言えば、個別の医療レベルも高く、医療制度も優れているということになる。

 それでは、なぜ、医療バッシングが起き、今のように週刊誌で、それが大ブームになるのであろうか。やはり、自分が受けている医療サービスや接している医療関係者に対し、少なからず、何らかの不満や不安を抱えているからであろう。
 その背景の一つには、データの集積により、国際的な医療比較だけではなく、国内の医療の比較も可能になった点があろう。例えば、手術数の病院ごとの差、のデータが紹介され、様々なサイトで、病院ごとの医療レベルに差があるのではないか、ということが如実に示されている。自分の受けている医療や医師について、「大丈夫なのか」という不安が生まれるのは当たり前であろう。
 しかし、一方で医療サービスに対する評価は難しい。特に、医療の場合には、医療サービスを提供している医療者であっても、その提供しているサービスの結果に100%保証をすることができない。「最善を尽くす」ことしかできない特殊なサービスなのである。
 昨今のバッシングが薬剤についてのものが多いのも、医療サービス評価が難しいことを裏付ける。消滅してしまう医療サービスや、通常、人生に1度か、2度しか経験しない手術に比べれば、薬剤は形があり定期的に服用するものなので評価しやすいのである。
(略)
 医療不信については、医療関係者だけでなく、患者も意識して避けるように努力した方がいい。理由は簡単で、「病気」という敵を倒すには、医師などの医療者の力だけでなく、患者自身の協力が不可欠であるからだ。医療不信が広がることは、患者側にとっても結果的に不幸でしかない。
(略)
 つまり、繰り返しになるが、医療は患者の協力がなくては完結しないものであるという点だ。例えば、薬剤である。薬剤に副作用があるとしても効果があるから承認されているわけだ。一方の民間療法は効果が不明確であるがゆえに承認されていない。
 しかし、医師だからといって強制的に薬剤を飲ませるわけにはいかない。患者が医師や日本の医療を信じ、薬剤を服用することで医療が完結する。注射にしたって同様である。患者が暴れて注射をすることができなければ、医療は完結しない。
 このように、特殊なサービスである医療サービスにおいては、医療者と患者の信頼関係と患者側の協力が不可欠である。旧来の日本の医療に見られた、この「良き伝統」を失わないようにするためには、医療者と患者、両方の努力が必要なのではなかろうか。

長い記事なので興味のある方は元記事を参照いただければと思いますが、要するに客観的指標に基づいて評価するならば日本の医療のレベルは決して低いものではない、一方で客観的事実はどうあれ主観的印象に従って評価するなら他のあらゆる業界と同様、患者にとって医療は未だ完全に満足のいくものではないのも事実であると言うことでしょうか。
それに対して真野氏は不信不満ばかりではなく最大の当事者である患者自身も医療に参加すべしと主張していて、これはこれでいやその通りと言うしかないのですが、ただ記事を読んでも結局マスコミが何故医療バッシング記事ばかり取り上げている(ように見える)のかと言うことは結局判りませんよね。
営利を目的としない刊行物の類ではこうした傾向はあまり見られないことから、結局のところ最大の理由はそれを書けば売れるからだと言うことになるかと思いますが、真野氏自身も指摘しているように客観的データに基づいて日本の医療を批判することは難しい一方で主観的にであれば幾らでもケチはつけられると言うところがポイントなのだと思います。

医療の世界でも一例きりの症例報告はさほどエヴィデンスとしてレベルの高いものと見られませんが、マスコミの場合は一例きりの特殊なケースを取り上げてそれがさも全てであるかのように語ると言うことは日常茶飯事ですし、逆に一般的な状況と反していればいるほど一般事例における知識を知らずとも好きに語ることが出来るのですから、記事にするには楽なのだろうと思いますね。
例えばせいぜい三回に一回くらいしかヒットを打たないイチロー選手が凄い選手であると言うことを野球の実際を知らない人に伝えるには、平均的な打者の成績はこれこれ、通算成績上位者との比較ではこれこれと多くのデータを並べ立てなければなりませんが、仮に100打数無安打の選手がいたとすればどんなに野球のルールを知らない人でも「何かすごく下手くそっぽい」と感じることでしょう。
多くの人間はゴシップ好きですし、未だに医者は何かと言えば上から目線で…と素朴な反発を抱いている人もいらっしゃるでしょうから、そんな医者が実は…と言われるとつい読みたくなるのは理解出来るものがありますが、とりあえず最低限の常識的知識を備えているだけで馬鹿馬鹿しさを覚えるしかないレベルの記事も多いことは知っておくべきかと思いますね。

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コメント

おや、ここは静かなもんだw。

投稿: | 2016年8月27日 (土) 19時35分

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