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2016年8月29日 (月)

千葉県に医学部新設、その先に見えてくるもの

いよいよと言うのでしょうか、千葉県に新たな医学部が開設されそうだと言うニュースが出ていました。

2017年4月に医学部新設へ、国際医療福祉大学(2016年8月26日医療維新)

 文部科学省の大学設置・学校法人審査会は8月26日、2017年度からの千葉県成田市にける国際医療福祉大学の医学部新設を、7つの留意事項を付して答申した(資料は、文科省のホームページ)。答申を受け、8月31日に文科相が設置認可する予定。医学部入学定員は140人、うち20人は留学生枠。2016年4月の東北医科薬科大学に続き、2年連続で医学部が新設されることになる(『東北医科薬科大学、一期生100人が入学』を参照)。
 国際医療福祉大学は26日、「広く門戸を開き、これまでにない新しい世界水準の医学教育を行う」との声明を公表している。2020年には医学部校舎のある成田キャンパス近くに640床規模の医学部附属病院「国際医療福祉大学成田病院」を新設し、「感染症国際研究センター」なども設置予定だ。「医学部生の臨床実習で活用するほか、2020年後の東京オリンピックも見据え、国際都市・成田における質の高い医療とサービスの提供を目指す」(同大)。

 千葉県成田市は、国家戦略特区に指定され、2015年11月27日の国家戦略特区諮問会議で、同特区での医学部新設が了承された(『国際医療福祉大学、「明治以来の医学教育を変える」』などを参照)。これに対し、日本医師会、日本医学会、全国医学部長病院長会議などはこれまで再三にわたり、医学部新設には異議を唱えており、この7月にも3者の連名で、大学設置審に対し、慎重な検討を求める文書を提出していた(『成田医学部、「将来に禍根を残さないよう判断を」』を参照)。
 国際医療福祉大学は、既に成田キャンパスに、2016年4月から看護学部などを開設、2016年1月には医学部校舎の起工式を行った(『『世界的な医学部』新設へ、成田で起工式』を参照)。同起工式の席上で、学校法人理事長の高木邦格氏は、「医学部では地域医療に貢献し、また海外の医療教育でも貢献できる総合診療力を持った医師の育成を目指す。教員のレベルも日本で最高水準にしたい」との抱負を述べていた。2016年3月に、文科省に対し、医学部の設置認可申請を行った。

 答申に当たっての留意事項として、まず同大医学部が特徴とする海外での臨床実習について、その質を確保するほか、実習先はアジア諸国だけでなく、欧米諸国も確保することが求められた。そのほかの留意事項は、(1)人体の生理機能を理解するためにシミュレーターを利用するだけでなく、生理学、生化学、分子生物学など、基礎医学に関する実習を充実、(2)全ての留学生が将来母国のリーダーとして活躍できるよう、母国の政府機関等の推薦を受けていない私費留学生を含め、卒後の進路の支援体制を充実、(3)附属病院の財政における不測事態への対応など、リスク管理の一層の強化、(4)認可後に収納予定である補助金(千葉県、成田市)が収納されたら、その旨を報告――などだ。
 同大によると、医学部の特徴は、以下の通り。

(1) 国際標準を上回る医学教育を通じて、高い総合診療能力を身に付けた医療人材の養成
(2) 1年次から医学に関する大多数の科目で英語による講義を実施
(3) 定員140人のうち20人は東南アジアを中心とした留学生を受け入れ、将来母国の医療分野のリーダーとなり得る人材を育成
(4) 学術協定を締結している世界16の国・地域、約30の大学・機関・病院のうち、12の機関での海外臨床実習をする
(5) 4つの附属病院や多くの大学関連施設で臨床実習を実施
(6) キャンパス内に設置する5000m2を超える世界最大級の「医学教育シミュレーションセンター」における充実した実践教育を実施
(7) 私立大学の医学部で最も安い6年間で1850万円の学費設定に加え、さまざまな奨学金や学士ローンを用意

かねて人口比率で医学部定員が過少な代表的地域とされてきたのが千葉と埼玉ですから、過疎化が進む東北に新設医学部を開くならよほどこちらの方が緊急性が高いだろうとは言われてきたところで、このニュース自体にはそこまでの驚きはないと思うのですが、いささか疑問符がつくのがその内容ですよね。
新大学は以前から国際的に活躍する医師養成を目指すと言うことを言っていて、医学部の特徴としてあげられた各事項を見てもまさしくそうした人材養成に特化した大学になるのだろうなと思うのですが、こうしたことが全て達成された場合には千葉県の地域医療に人材が還元されると言う効果には乏しく、さらに言えば別に千葉県で開設される必要性もなさそうに思います。
この辺りは単に医師不足、医学部不足だから新設しますでは余計な反発がさらに大きくなると言う大人の事情も絡んでのことで、大学側としてもこうしたお題目を掲げるしかなかったのでしょうが、こうした国際的な人材養成からドロップアウト?していく先生方も決して少なくはないのでしょうから、結局地域にも環流はされていくはずですよね。
もちろんかつて医療崩壊先進地の一つと言われた千葉県東部地区に600床クラスの医大が新設されるだけでも、即効性の効果として地域の医療需給バランスは改善するのでしょうが、こうなると今度は同様に医師不足が言われる埼玉に噂通り早稲田が悲願の医学部を設立するのか、その次はどこかと考えてしまいますよね。

医師配置が全国均等ではないことは当然で、厚労相直々に医師余り地域に指定された徳島を始め西日本各地では東日本に比べてややリソースが豊富であるとも言われてきましたが、都道府県単位で考えずともそもそも医師不足だ、過剰だと言うことはどう判断するのかと言った場合に、県土の広さや交通網、医療機関の分布など様々な因子によって一概に判断は出来ないと言う声は根強くあります。
地域医療圏の中での医師配置についてもどうあるべきかと言う議論もあり、今後都道府県が主導する地域両構想の中で各県の実情に応じた医療のあり方が決まってくるはずですが、その前提として医師配置をどうやってコントロールすべきなのか、そもそもコントロールしていいものなのかどうかと言うことが常に議論されてきたところですよね。
ちょうど先日は厚労省が医師の卒後の経歴をデータベース化し偏在解消に活用すると言うことを言い出したと報じられていましたが、当然ながら偏在解消に活用するためにはどのようにと言う方法論が必須であるわけですから、今後集積した情報を元に下医師強制配置なり地域誘導なりの具体策がどこかで出てくるのだと思います。
今現在勤務なり開業なりしている地域を離れて強制的に転勤転居をさせると言えば話が大きくなりますから、恐らくは新卒医師や若手を中心に配置先を決めていくと言う方法が主体になるかと思うのですが、当然ながらこうした若手医師がいなければ基幹病院などは回りませんから、下手すると永久勤務先を見つけたとベテランの先生方が安心していられるのも今のうちと言うことになるかも知れませんにょね。

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コメント

当地じゃまだ医師余りの実感はないですね。
地域によっちゃ未来永劫余ることはないのかも。

投稿: ぽん太 | 2016年8月29日 (月) 08時05分

一般論としては政策遂行上如何なものかですが、国としては適正な医師定数とはどの程度なのか、なかなか目標値も提示しにくいのではないかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年8月29日 (月) 12時54分

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