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2016年7月25日 (月)

高すぎると話題の新薬が医療現場に意外な影響を及ぼす

最近高価な新薬の登場が医療財政を破綻させると一般向けにも盛んに喧伝されていますが、その対策として厚労省がこんなことを打ち出してきています。

高額治療薬の適切な使用 ガイドライン作成へ(2016年7月21日NHK)

抗がん剤や高脂血症の薬など高額で効果の高い新薬の開発が相次ぐなか、厚生労働省はこうした薬の適切な使い方をまとめたガイドラインを作る方針を決めました。
効果があまり見込めない患者が使用した場合などは医療保険を適用しない方針で、厚生労働省は増え続ける医療費の抑制につなげたいとしています。

厚生労働省によりますと、ガイドラインの対象となるのは、肺がんなどの治療薬の「オプジーボ」や、高脂血症の薬の「レパーサ」など4つの新薬で、いずれもほかの薬が効かない患者にも効果が期待されています。
その一方で、価格が高く「オプジーボ」では、60歳の肺がんの男性患者に1年間使用すると、およそ3500万円かかると試算されています。
これらの薬は効果のあまり見込めない患者に使用されることがあり、重い副作用が起きるケースも相次いで報告されています。

このため、薬ごとに作るガイドラインでは、使用する医師に一定の専門性があることや、医療機関にも緊急時には対応できる態勢を確保することなどを求めるとしています。
また、高い確率で治療の効果が見込める患者に使用を限るとして、ガイドラインに沿わない場合は医療保険を適用しない方針です。

厚生労働省はガイドラインの導入で、増え続ける医療費の抑制につなげたいとしていますが、患者が希望する薬の使用が制限されかねないとして、今月27日に開かれる中医協=中央社会保険医療協議会で案を示したうえで、
有識者などによる委員会で慎重に議論を行い、年度内にガイドラインをまとめる方針です。

この高い確率で治療の効果が見込める患者に使用を限ると言う文言をどう解釈するかで非常に運用の幅が広そうな話になるかと思いますが、使用前の遺伝子学的検索など様々な縛りがつけられることになるのかどうかもさることながら、そもそも何をもって高い低いと言う指針とするのかと言うことが問題になりそうですよね。
一つの目安として既存治療法よりも高い効果を期待出来るかどうかと言うことが挙げられるかと思いますが、日本同様皆保険制度であるイギリスでは膵癌に対して日本でもよく用いられるアブラキサンを掛かるコストに対して効果が低すぎるとして保険承認から外したと言う例があり、仮に日本で同様の話が持ち上がれば大騒ぎになるかねないとも思います。
肺癌治療薬オプジーボについてはこの7月から何例か死亡例も報告されるようになっていると言い、特に自由診療の免疫療法などと併用して死亡例が出たことが注目されていますが、単に費用の点だけでなくこうした安全面の配慮と言う観点からも使用施設や症例をさらに絞り込むと言うことに一定の理解は得られると考えているのかも知れませんが、むしろ注目したいのはこうした話も出ていることです。

抗がん剤、同効果なら安い方 日赤医療センター、薬価抑制へ方針(2016年7月22日産経新聞)

 がん治療薬「オプジーボ」など高額薬による国の医療費増大が問題となる中、日本赤十字社医療センター(東京)が「同じ効果、同じ副作用なら価格が安い抗がん剤を使う」との院内方針を決めたことが21日、分かった。化学療法科の国頭英夫部長は「国民皆保険制度のもと、日本では高額薬であっても医師は価格を気にせず処方してきた」と指摘。海外では同様の決定が報じられた後に薬価引き下げにつながった例もあるが、薬価を比較した上で使用する薬を決めるのは、国内で異例とみられる。

 国頭氏によると、同センター化学療法委員会が5月下旬に方針を決定。大腸がんの抗がん剤「サイラムザ」と「アバスチン」を比較し、価格が高いサイラムザについて、大腸がんに使用しないことも決まった。
 2剤はがん細胞が栄養を得るため血管を引っ張る動きを妨げる効果があり、他の抗がん剤と併用する。サイラムザは胃がん用に平成27年に発売され、今年4月、大腸がんに適応拡大。アバスチンは大腸がん用に19年に承認されており、国頭氏によると「大腸がんに対し、2剤は効果も副作用も変わらない」という。
 ただ、価格は体重60キロの患者が半年間使用するとアバスチンが150万円なのに対して、サイラムザは427万円と約2・8倍。そのため、センターは「他に薬がない胃がんにはサイラムザを使っても、大腸がんでは使わない」とした。

 米国では米紙ニューヨーク・タイムズが2012年10月、ニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターがアバスチンと効果や副作用がほとんど変わらない高額な新薬を使わない方針を示したと報じた。米在住の大西睦子医師は「米国では一般的に新しい医療はより良いものと理解される。センターの決定は異例のことと受け止められた」と話す。同紙は翌月、「製薬企業がこの新薬を50%引きして医療機関に販売する」と報道。新薬の価格はその後、実際に下がった。
 日本では、上限を超えた医療費が医療保険から支給される「高額療養費制度」で患者負担が抑えられることもあり、同じ効果なら安価な薬剤を使うという考えは浸透していない。国立がん研究センター前理事長の堀田知光・国立病院機構名古屋医療センター名誉院長は「高額薬は増えており、医師も患者も保険財政の負担を考える時期に入ったのではないか」と話している。

効果が同じならより安いものを使うとは一般社会では当たり前過ぎるような話なのですが、特に高価な医療は患者負担が定額になる日本の医療現場からこうした話が自主的に出てくると言うのは極めて異例のことで、全国各地で基幹病院として希望している日赤の各病院で同様の対応が行われるようになれば、医療に与える影響も決して小さくないのではと言う気がします。
そもそも薬価が高い、安いと言うこと自体が別にコストや性能によって決まっているわけではなく、国が既存の薬剤と効果などを比較してまあこれくらいだろうと決めているだけなのですから、単独使用ならまだしも複数の薬剤を組み合わせて使うと言う場合には高い薬が効果が高いとも言い切れず、安い薬の組み合わせでも意外なほど高い効果があったりする場合も考えられるわけです。
もちろん薬毎にそれぞれ性質や副作用も違うことから、患者の状態に応じてはどうしても高い薬を使うべきだと言う局面もあるはずですが、基本的にコストを考えながら診療手段の選択をしてこなかった医療現場からこうした話が出てくると言うのは画期的であり、現場としても医療財政の逼迫に危機感を強めていると受け取れる話ですよね。
今後は日常的に使われてきた薬剤なども単に効果だけではなくコストパフォーマンスと言う観点から見直しが進んでいくのかどうか、新薬承認の段階でもコスパ的な評価が盛り込まれていくのかにも要注目ですが、今まで定番的に使われてきた薬が見直された結果案外コスパが悪かったとなれば製薬会社の売り上げにも大きな影響も出かねない話でしょうね。

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