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2016年7月15日 (金)

末期癌患者の多くが癌専門病院以外で看取られている!と問題視する声

癌の末期と言えば痛い、苦しい、しんどいとネガティブなイメージがつきまといがちですが、一方で緩和医療の進歩などによって今や苦しむものではなくなったと言う声もあり、少なくとも正しい対応を行っていれば見ている家族はともかく当の患者本人にとって長く強い苦痛を強いられると言うものではなくなってきているとは言えそうです。
ただそれもきちんとした知識に基づいた正しい医療としっかりした専門的なケアを受けられればこその話であるとも言え、先日こんな記事が出ていたことを紹介してみましょう。

末期がん患者のケア不十分…専門病院以外の「一般病棟」での看取り51%(2016年7月12日読売新聞)

 がん患者の半数が、がん専門病院以外の一般の病院で 看取られ、痛みやつらい症状を取り除く緩和ケア外来の利用率も低い、という調査結果をがん患者支援団体がまとめた。

 がんの末期に質の高いケアが十分受けられていないとみられる。

 NPO法人「HOPEプロジェクト」が昨年11月、患者を看取った遺族200人に調査を実施。看取った場所として最も多かったのは「総合病院の一般病棟」(51%)で、「自宅」が20%、がんセンターや全国のがん診療連携拠点病院などの「がん専門病院」が12%、末期がん患者に対応する「緩和ケア病棟」が10%だった。

 一方、通院しながら痛みのコントロールなどを行う「緩和ケア外来」を利用したのは16%だけで、平均利用日数も月3・5日にとどまった。

 桜井なおみ理事長は「がんが進行し、有効な治療がなくなると、専門病院から一般の病院に転院せざるを得ない患者が多い。痛みをコントロールしながら生活できる体制の確立が必要」と話している。

総合病院の一般病棟が看取り場所として良いのか悪いのかの議論もありますが、記事を読んでいて気になるのはがんセンターなどいわゆる癌専門病院で末期癌を看取ることが正しいかのようにも読める点で、もちろん末期患者の緩和に力を入れている施設もあるのでしょうが、基本的にああいった施設は高度な医療を行い癌患者の治療を行う施設であって終末期ケアを行う施設ではないわけです。
しばしば聞く話ですががんセンターに患者を紹介したが、治療適応がないとなった途端に送り返されてきたと言ったことも珍しくないようですが、別にそれは悪い話と言うわけではなく、癌治療のハイボリュームセンターではそこでしか出来ない高度な癌診療に特化すべきであって、終末期患者の看取りと言うことであればむしろ総合病院の一般病棟の方がよほどに手慣れている可能性があるかも知れません。
その意味でこのデータから問題点を探るとすれば、末期癌患者の看取り場所で癌専門病院が12%しかなかったことではなく、まさに末期患者の看取りに特化した施設であるはずの緩和ケア病棟での看取りがわずかに10%でしかなかった点だろうと思うのですが、この記事を受けて国のエライ方々が「これは大変だ!癌患者は癌専門病院で看取るべきだ!」などと斜め上な対策を打ち出してこないものか不安ではありますね。
一方では何故こうまで緩和ケア病棟での看取りが少ないのかと言う点ですが、病床数の不足などリソース面での問題はさておき、まさに末期患者を専門病院等で看取らないことを問題視する世間の風潮が確かにあって、ホスピスに紹介しますなどと言い出そうものなら「先生見捨てないでください!」などと言われ抵抗されてしまうと言う現実もあることは指摘しておくべきですが、先日出ていたこんな記事を紹介してみましょう。

映像で「終末期の積極治療」希望減【米国心臓学会】(2016年7月11日米国学会短信)

 高齢の末期心不全患者に様々なレベルの終末期医療を描いた短時間の映像を見せると、映像を見せなかった場合に比べ、同治療への意思表示を明確にする割合が上昇したことが分かった。特に「緩和ケアを受けたい」割合は増加し、「積極的治療を希望する」割合が減少した。米国心臓学会(AHA)が6月29日、Circulationの掲載論文を紹介している。

 平均年齢81歳の進行期心不全患者246例を(1)延命のための心肺蘇生(CPR)や人工呼吸器装着、(2)CPRや人工呼吸器装着は行わずに入院による点滴治療などを実施、(3)症状緩和のために必要に応じて入院はするが、主に在宅でQOL維持のための緩和ケアを実施―の3つのレベルの終末期医療の様子を医師のナレーション付きで紹介する6分程度の映像を視聴した群と、映像視聴なしの群に半数ずつランダムに割り付け。それぞれの群に対し、終末期医療に対する考え方を聞き取り調査した。

 緩和ケアを受けたいと答えた患者の割合は映像視聴群の51%に対し、非視聴群では37%にとどまっていた。CPRや人工呼吸器装着を差し控えると答えた患者の割合は映像視聴群の68-77%に対し、非視聴群では35-48%。入院による治療を受けたいと答えた割合はそれぞれ25%、22%だった。「(どの終末期医療が望ましいか)わからない」と答えた割合は映像視聴群の2%に対し、非視聴群では7%と上昇していた。検討から3カ月以内に自身の終末期医療について医師と話し合った患者の割合は映像視聴群の61%に対し、非視聴群では15%にとどまっていた。また、終末期医療に関するテストの点数も映像視聴群で有意に高かった。なお、映像を視聴した患者の96%は他の人にも視聴を奨めたいと答えていた

 研究グループ責任者で、米国マサチューセッツ総合病院骨髄移植サバイバーシッププログラムのトップでもあるAreej EI-Jawahri氏は「心不全の経過はわかりにくく、治療成績の改善もあって、医師の側から意思決定能力が低下した際のアドバンストケアに対する話し合いを行いたがらない可能性がある」と指摘。今回の検討により、患者に十分な情報提供が行われていた場合、終末期に関する話し合いのハードルが下がることが分かったとしている。

ここでは心不全末期患者のケースを取り上げていますが、基本的な話の方向性としては癌の末期患者とも共通するもので、わずかな時間の映像を見せただけでこれだけ大きな意志の変化が現れたと言う話を聞いてしまうと、一体それがどんな映像だったのだろうと興味をひかれますよね。
そこでしか出来ない医療を行い治すべき患者の治療に特化した専門病院で、ただ終末期の看取りのためだけにベッドやマンパワーなどを消費することは国民トータルで見れば大きな不利益であるはずですが、やはり日本の場合昔ながらの主治医制の感覚がまだ残っているのか、長年自分のところで治療してきた患者の最後はやはり自分のところでと言う感覚を持つのは患者のみならず医療従事者においても見られる現象でしょう。
ただその結果他に助けるべき患者が専門的医療を受けられなかったと言う可能性も出てくるはずですが、地域両計画によって医療機関の再編が進むとなるとこの種の病床毎の役割分担はより厳格に求められるはずだし、そうした厳密な管理をしなければ経営が成り立たなくなるはずですから、患者も医療従事者にも状況に応じて医療機関を使い分けると言う意識改革が求められることになるのでしょうね。
ただ弾力的な運用のためにはある程度空きベッドなどリソースの余裕がなければ回らないはずで、余命1ヶ月の終末期患者をホスピスに紹介したら転院2ヶ月待ちと言われたでは笑い話にもなりませんから、状態に応じた施設間での患者移動をどんどん行っていくべきだと言うのであれば、空きベッドを無くさなければ経営が成り立たない現在の診療報酬体系についても見直していく必要があるようには感じます。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

がん専門なのにがん患者みれないの?

投稿: | 2016年7月15日 (金) 08時02分

>がん専門なのにがん患者みれないの?

通常の総合病院は、平均在院日数を18日以下にしないと、数億円以上の赤字となってあっという間につぶれるように国の制度で仕組まれています。
なお、現在12日に短縮するように国で検討されています。

ホスピスの平均在院日数は30〜50日程度ですから、末期の患者をみたら、がん治療病院が倒産して、がん治療を受けられなくなる制度になっているわけです。

投稿: おちゃ | 2016年7月15日 (金) 09時11分

ここでいう「がん専門病院」に定義は何でしょうか?
急性期病院で、がん患者をまったく扱わない病院(循環器とか脳とか産科ですかね?)
の方が極めて少数ですが。

投稿: 麻酔フリーター | 2016年7月15日 (金) 10時38分

恐らくは国立がんセンター等を想定しているのではないかと言う気がします。>専門病院

投稿: 管理人nobu | 2016年7月15日 (金) 13時34分

記事にもありますが、がん診療連携拠点病院のことですね。いわゆるがんセンターなどの「がん専業」より広い範囲を表しています。
国指定が全国に約400,県指定がその何倍かあります。

投稿: おちゃ | 2016年7月16日 (土) 07時27分

うちも拠点病院だけど看取りなんてしてない
よそではやってるの?
在院日数考えたらできないでしょ

投稿: | 2016年7月16日 (土) 09時56分

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