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2016年7月22日 (金)

高齢者への給付抑制が当たり前のように議論される時代に

当然とみるべきか意外とみるべきか微妙なところなのですが、先日こんな記事が出ていました。

高齢者の保険診療に制限、過半数の医師が支持(2016年7月18日医療維新)

 人口の高齢化と医療技術の進展への対応が求められ、医療制度改革が進む日本。医療の質向上だけでなく、医療費抑制の観点から、フリーアクセスの制限、終末期医療の在り方、さらには先進医療をどこまで保険でカバーすべきかなど、さまざまな問題が浮上している。
 2016年5月27日から5月30日にかけて、m3.com医師会員509人(勤務医253人、開業医256人)に、日本の「医療の在るべき姿」と患者の立場から望まれる医療について尋ねた。その結果を紹介する。

Q. 高齢者への保険診療の給付範囲について、医療経済的観点から見直しが必要だとの意見があります。例えば、人工透析の開始年齢や 臓器移植の対象年齢に上限を設けるなどの制限は必要だと思いますか。

 2015年の厚生労働省の発表によると、2013年度の医療費は、史上初めて40兆円を突破し、40兆610億円で確定した。1人当たりの医療費は31万4700円で、前年度より2.3%増えている。右肩上がりの高齢者人口と医療技術の高度化がその背景にある。
 増え続ける現役世代の負担に対して、高齢者との不平等感があるとの指摘も出ている。一部では、人工透析の開始年齢や、臓器移植の対象年齢に上限を設けるなど、医療費の保険給付費の範囲を年齢によって、制限すべきだとの意見もある。現場の医師はどう考えるのかを尋ねた。

 勤務医は55.3%が「年齢である程度制限すべき」と回答し、年齢による制限に賛成する意見が多数派で、制限に否定的な39.1%を大きく上回った。一方で、開業医は制限に否定的な意見が48.0%で、賛成の49.6%とほぼ拮抗している。開業医と勤務医の年齢差のほか、経営する立場にある開業医と被雇用者という立場の違いなどが関係していると見られる。
 年齢によって保険給付の範囲を制限する考えは、反対する意見も多いものの、医師の間で、ある程度支持を得ていると言えそうだ。

勤務医と開業医で大きく意見が分かれると言うのは納得出来る結果なのですが、例えば療養型病床で行える医療に制限があるように、高齢者に対する医療を全て若い人と同じようにやらなければならないと言うわけではないことは多くの人が承知しているでしょうし、むしろ保険適応となっていることで行わなければならないのだと言う強迫観念に囚われるデメリットも考えられるかも知れませんね。
すでに小児科などは成人と違う診療報酬体系で行われているのですから、高齢者も現役と同じでなければならないと言う理屈はないと思うのですが、多くの高齢者が何を求めているのかを考えるに単純に自己負担を引き上げるよりも、例えば抗癌剤や人工透析などの保険診療範囲を絞ってでも負担額を減らすだとか、終末期医療に限っては安くすると言った傾斜の付け方もありそうに感じます。
ただ高齢者医療かくあるべしと言う理念はそれとして、何故このような話が出てくるかと言えば医療費削減が財政上急務であるからで、その意味でどんなに正しくとも国にとって支出抑制と言ううまみがないことは話が進まないのだろうし、逆に直接的な支出の削減につながることであれば案外とんとん拍子で実施される可能性もあるかも知れずで、一例として先日はこんなニュースも出ていたことを紹介してみましょう。

介護サービス縮小を検討 厚労省、費用抑制で(2016年7月20日47ニュース)

厚生労働省 厚生労働省は20日、社会保障審議会の介護保険部会を開き、訪問介護のうち掃除や調理、買い物など「生活援助」のサービスについて、要介護度が低い軽度者に対する給付を縮小する方向で本格的な検討に着手した。

 車いすや介護ベッドなど福祉用具のレンタルと、バリアフリー化する住宅改修に関しても、軽度者は原則自己負担とするよう財務省が求めており、併せて議論を始めた。

 社会保障費の抑制が狙い。厚労省は年末までに制度見直し案をまとめ、来年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。2018年度の実施を目指す。ただ、高齢者にとって給付サービスの削減となるため、調整は難航が予想される。

高齢者の介護給付を抑制することがどのように考えても高齢者にとってメリットはないだろうと言うことなんですが、それでもこうした話が出てくると言うのはこの程度なら受け入れられるだろうと言う読みがあり、なおかつコスト削減にそれなりに有効であると思われるからですよね。
実際こうした政策が直ちに実行に移されるかどうかは判りませんが、選挙権年齢も引き下げられ今後は従来のように政治も高齢者の方ばかりを向いてはいないだろうと言う可能性も出てくるとなれば、今後高齢者やその家族としては何らかの自衛的措置を考えなければなりませんが、ならばいざと言う時に備えてまず貯蓄を…ではますます消費が冷え込んでしまいます。
最近は介護の手間を削減するための各種の技術的な工夫が行われていて、転倒や徘徊につながる離床監視システム排泄監視システムなどが発売されるなど、高齢者介護の手間を省き安全性や利便性を高める工夫がこらされるようになりましたが、特に施設などではこうした道具の使用によって最大のコスト要因であるマンパワーを削減することが出来るようになるかも知れません。
全国各地でこうした装置の導入を行っている施設も増えてきているそうですが、国も絞るばかりではなくこの種の機材導入をすることに対してのインセンティブを用意するようにすれば、長期的に見てコストも削減出来て介護への人材流入も増えると言った効果が期待出来るようになるかも知れませんね。

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コメント

それでも維持透析の継続は認めてもらわないと困るでしょうけど。
とにかくこういうことは国がちゃんと説明してからやってほしいですね。

投稿: ぽん太 | 2016年7月22日 (金) 08時44分

個人差が大きいのに、年齢で適応を区切るなんて医者の仕事の放棄だと思う。

投稿: JSJ | 2016年7月22日 (金) 10時48分

社会保障の不利益変更と言う視点から、仮に実現すれば他にも同様の変更が相次ぐ可能性がありそうに思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年7月22日 (金) 13時39分

>年齢で適応を区切るなんて医者の仕事の放棄だと思う。

医師が適応を区切ったら、それこそ命の選別を個人の医師が行うことになるので、不適切ではないでしょうか。

これは医学の話ではなく、社会制度の話です。
医学を決めるのは医者ですが、社会制度(すなわち税金をどこに投入するか)を決めるのは医者ではないですから、国が主権者たる国民の意見を反映して、誰にいくら税金を使うかを決定すべきことです。

投稿: おちゃ | 2016年7月22日 (金) 14時43分

医学vs社会制度(国民の総意)だけではないですね。
適応はあるが金がない、はどうしたって避けられない問題
しかしそれで医療ができなくなってしまうわけではない。(医学者≠医者)

医者が「患者の懐具合と見栄を斟酌した適応制限」を患者に説明する?かどうかは
医学じゃなく医者と患者の関係性の問題。

投稿: memento mori | 2016年7月22日 (金) 15時56分

現場の医師が自主的に判断して使う使わないを決めるようじゃ問題でしょ
保険のルールなりガイドラインなりで認められてることまではやるのが当然
それで国が困るというなら国がルールを決めてくれないとトラブルになるだけ

投稿: みん | 2016年7月22日 (金) 16時08分

>保険のルールなりガイドラインなりで認められてることまではやるのが当然
「やるのが当然」とは、「患者に選択肢として説明するのが当然」ですね。賛成です。
 自己負担総額も示して、ぜひ そうしていただきたいものだと思います。
 15:56の投稿は(がん告知問題をなぞった)釣りです。

>医者が決めるようじゃ問題
 その治療法を実行するかどうかは 患者の選択。学者が決めるようじゃ問題。

>それで国が困るというなら国がルールを決めてくれないとトラブルになるだけ 

国がルールを何とかすれば何とかなる ようなトラブルとは どんなトラブル?
 制度にけつを持たせて最先端治療を追い求める学者
 お金が足りなくて治療を断念する患者のつらさには付き合いたくない医者や
 自分以外の誰かが解決するべきと考える国民が多いようなので
 ルールを決めたって、なにかしらトラブルと思いますが。

ぽん太先生がおっしゃる、まず国が説明しろ は正論ですが、
 技術はあるのにお金が足りなくて治療を断念することがあると覚悟をせよ
は、国が説明したら患者にわかってもらえるのかな。そうだと 喜ばしいが。

投稿: memento mori | 2016年7月22日 (金) 18時55分

な~んにも心配することなんてないさ
今度の診療報酬改定でだれも知らないうちに保険から外されてるよ
患者からクレーム殺到したらちゃんと説明しろってありがたい厚労省通達も出るさ
黙って言われたとおりにやってればなんにも問題ないのよ

投稿: | 2016年7月22日 (金) 20時59分

公的資金をどう分配するか決めるのは政治の仕事。それはそうですが、
仮に医者として立法なり行政から諮問を受けたら
「いやいや、高齢者といってもその健康状態は個人差が大きいのだから、保険適応を一律年齢で区切るのは乱暴ですよ」と答えるのがプロフェッショナルとしての矜持だと思う。
「こっちであれこれ悩むのは嫌だから、そっちで決めちゃって下さい」とは言いたくないです。

投稿: JSJ | 2016年7月22日 (金) 21時48分

医学的問題のどうこうを決めることなら同意ですが
この場合医学じゃなくてお金の問題ですからねえ

投稿: | 2016年7月23日 (土) 07時37分

入院の際の食事代が保険適用から外された時、患者の苦情は国や保険者へ行きましたっけ?
「今迄より多く金を毟る医療機関けしからん」でしたよね(笑)
国も保険者も、今回も現場に説明責任を擦り付ける気満々だと思います。

投稿: kawakawa | 2016年7月25日 (月) 13時01分

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