« 今日のぐり:「麺屋はやたろう 倉敷店」 | トップページ | 健診で引っかからない人の方がむしろ異常 »

2016年7月11日 (月)

国が在宅死の現状を公表した理由

畳の上で死ぬと言う言葉がありますが、実際に畳の上で死んでいる人の数が調査されて報じられています。

在宅死:人口5万人以上、最大4.65倍格差 病床数など関係か 厚労省調査(2016年7月7日毎日新聞)

 自宅で死を迎える人が死亡者全体のうちどの程度を占めているかについて、厚生労働省が2014年の人口動態調査を基に初の市区町村別統計をまとめ、6日公表した。人口5万人以上の自治体では在宅死の割合が5・5~25・6%と、最大4・65倍の差があった。地域の病床数や在宅医療の受けやすさ、孤独死の発生数などが関係しているとみられる。

 日本では1970年代に病院や診療所で死を迎える割合が自宅を上回り、14年は病院死が75・2%なのに対し、グループホームやサービス付き高齢者住宅を含む在宅死は12・8%にとどまる。一方、内閣府の12年度調査では、55%の人が「最期を自宅で迎えたい」と望んでおり、厚労省は「自宅でのみとり」の推進を図っている

 人口5万人以上20万人未満の自治体で在宅死率が最も高いのは、兵庫県豊岡市(25・6%)、東京都中央区(21・5%)の順。20万人以上の都市では神奈川県横須賀市(22・9%)、東京都葛飾区(21・7%)と続いた。5万人以上で高かった10自治体では、1市を除いて「在宅療養支援診療所」が15カ所以上あり、訪問診療や訪問看護の体制が充実していた。政令市では神戸市の18・1%が最高だった。

 医療問題に詳しい宮武剛・日本リハビリテーション振興会理事長は「都市部では病院で終末期の患者を引き受ける余力がなく、在宅医療の充実が在宅死の割合に関わる。これに加え、東京23区に限れば孤独死が数を押し上げ、在宅死の約35%を占めている」と指摘。病院の再編で25年までには地域で療養する高齢者が今より約30万人増えるとして「介護と接点のある市町村単位で、在宅でどこまでみとれるか検討する必要がある」と話す。

 データは、厚労省のウェブサイト内の「在宅医療の推進について」のページに掲載されている。【野田武、有田浩子】

在宅死割合、岡山県内自治体でも格差 医療・介護の偏在を解消を(2016年7月7日山陽新聞)

 病院ではなく、自宅で最期を迎えられるよう国が「在宅みとり」を推進する中、自宅で亡くなる人の割合に大きな地域差があることが6日、厚生労働省が公表した全市区町村別の集計で分かった。人口20万人以上の都市で8・0~22・9%と差は約3倍。人口5万人以上20万人未満の中規模自治体では5倍近い開きがあった。

 岡山県内27市町村の割合は6・9~27・8%、うち15の市だけで比べても最大2倍超の開きがあり、人口規模が異なるとはいえ、地域差は鮮明だ。「在宅死」を巡っては県民の6割以上が終末期の自宅療養を望んでいることが2014年の県調査で判明しており、行政には在宅を支える医療・介護サービスの偏在を解消する積極的な取り組みが求められる

 15市のうち最低だったのは7・4%の高梁市。県によると、市内には診療所が36施設あるものの、訪問診療を手掛けるのは11施設、24時間対応は3施設にとどまるという。高梁医師会長の仲田永造医師(68)は「この地域は人口密度が低い上、道路事情も悪く、訪問サービスは非効率的で浸透しにくい」と打ち明ける。
(略)
 一方、瀬戸内市の割合は16・0%と15市では最も高かった。在宅医療を24時間態勢で支える在宅療養支援診療所が市内に10施設あり、人口規模が同じ新見市(3施設)、備前市(同)と比べて充実していることなどが背景にあるとみられる。瀬戸内市の担当者は「医療、介護の専門職が熱心で、連携して在宅を支えてくれている」と話す。

 政令指定都市の岡山市は12・3%と、全国平均(12・8%)を下回った。同市は15年5月、全国に先駆けて総合相談窓口「地域ケア総合推進センター」を開所するなど在宅支援を積極的に進めてきたが「基幹病院や救急医療体制が充実している市の特性が影響しているのでは」(同市)と分析する。

 県全体でみると、在宅死の割合が最も高かったのは新庄村(27・8%)、最低は和気町(6・9%)で約4倍の開きがあった。ただ、岡山大大学院の土居弘幸教授(疫学・衛生学)は「人口が少ない町村を交えた単純比較は難しく、各自治体はデータを一つの指標とし、年ごとの推移から在宅医療の進展状況を推し測るべきだ」と指摘する。

 県平均は11・1%。県は17年度末までに13%に引き上げる目標を掲げており、医療推進課の則安俊昭課長は「在宅死の割合は地域の医療体制や住民意識に大きく左右される。希望する人の願いがかなうよう、各市町村の取り組みを一層支援していきたい」としている。

小さな自治体ほど地元の医療関係者の熱意ぶりによって数字が大きく変動するだろうとは容易に想像出来るところなのですが、実際にこれだけ大きな地域差があると言うことに加えて、興味深いのは国や自治体として在宅看取りの割合を引き上げていこうと言う方針であることで、背景として医療リソースの限界も挙げられている点に留意ください。
こうした国や自治体の前向きな態度の根拠として自宅で死にたいと考えている方々が多いと言う調査結果が挙げられていますが、この種の調査に関しては過去に何度も行われているものの当事者としては看取る家族に迷惑をかけることを最も心配している一方で、家族の方では自宅で看取りたいとはさほどに考えておらず病院や施設でと言う希望が強いと言う興味深い結果が出ていますが、その背景にあるのはやはり自宅で入院ほどの医学的サポートが得られるかと言う懸念でしょう。
もともと昨今ではかつてと違い葬儀なども自宅で行うと言うことはほとんどなくなってきていて、全体のわずか数%だけが自宅で葬儀をされていると言うことを考えても、一日で終わる葬儀ですら大変なのにいつ終わるとも知れない自宅介護を実際に行える家庭がどれほどいるものなのか、それを行った場合またぞろ介護離職など様々な問題が続発するのではないかと気になるところですよね。

いずれにしても記事にもある通り在宅看取りを増やしたいと言うのであれば、まずは地域内でどれほど在宅医療を受けられるものなのか、それによって家族負担がどれほど軽減されるのかと言うことが問題になってきますが、当然ながら自治体主体で策定される例の地域医療計画において医療リソースのどれほどの部分をこうした領域に振り向けるかと言うことが自治体の本気度の表れとして問われてくる理屈です。
ただ国としては在宅医療を推進したいと言うのは当然ながら医療、介護コストの公的負担軽減と言う観点からも理解出来る話であり、厚労省においても在宅医療推進を重点分野として取り急ぎ課題を検討していくと言いますから大変なものですが、当の厚労省自身が言っているように在宅医療推進が国民にとってどんなメリットがあるのかと言う点は今までほとんど示されてきませんでした。
もちろん当事者が希望しているだとか、医療費への公的支出が減れば回り回って税負担も安くなる可能性がある等々とは言えることですが、直接的に見れば誰か家族がつきっきりで世話をしなければならない以上、そうした世話に従事できる家族がいて外で労働せずとも家計的に問題がないと言う、言わばかなり恵まれた家庭以外では負担感を上回るほどの利点が示せるかどうかですね。
一方で医療の側から見ればこれは病院と言うよりも開業医の仕事として今後大きな部分を占める可能性もある領域で、その意味では日医なども無関心ではいられない領域のはずなのですが、開業医が診療所内と自宅とを問わず地域住民の日常のフォローアップを全て請け負うと言うスタイルが構築出来るのであれば、単なる小さな病院ではない開業医独自のポジションを確保出来ることになるでしょうね。

|

« 今日のぐり:「麺屋はやたろう 倉敷店」 | トップページ | 健診で引っかからない人の方がむしろ異常 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

介護離職させたら納税減るのに

投稿: | 2016年7月11日 (月) 07時48分

介護施設に「自宅」という看板をつけたので、家族の心配はしなくてもいいかも。

投稿: JSJ | 2016年7月11日 (月) 08時17分

少子化時代に在宅って言われても誰が面倒みるのかと。
病院や施設の人が通って世話して在宅だって言い張る?

投稿: ぽん太 | 2016年7月11日 (月) 09時02分

 20年来の賃金低下で、維持でき(ごまかしきれ)なくなったことが露見した。
 バブル期以来、もう少しましな準備ができたのでは、とも思えるのですが、
 定着したのは、主に「自己責任だけどあまり悩まないで死になさい。」

 一方で、この間も専門職の「技術」は 経済原理で後押しされる部分はめっちゃ進みましたから、今後も上手にお金をやりくりすれば、医療水準は「バブル前よりかなりまし」なところで底を打つかも知れません。
 上手なお金の使い方には地域格差を容認することも含まれる(お題)。
 
 技術の担い手の再生産にも不安があります。市場原理で教育インフラをそうとうにガタガタにしたので。人口減が進む中で巻き返しに失敗すれば、遠からず普通の小国になるでしょう。

投稿: memento mori | 2016年7月11日 (月) 12時10分

地域医療計画推進等々で医療介護の地域差が拡大すると、結果的にコストと効果の折り合いがつく方法論が見つかるかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2016年7月11日 (月) 14時10分

御意。

投稿: memento mori | 2016年7月12日 (火) 11時22分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/63892429

この記事へのトラックバック一覧です: 国が在宅死の現状を公表した理由:

« 今日のぐり:「麺屋はやたろう 倉敷店」 | トップページ | 健診で引っかからない人の方がむしろ異常 »