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2016年7月29日 (金)

最近目についた訴訟3題

個人的に少し気になっていた裁判の行方なのですが、先日こんな司法の判断が出たと報じられていました。

<諏訪大社「御柱祭」>特別抗告該当せず 中止申し立て棄却(2016年7月23日毎日新聞)

 長野県・諏訪大社の「御柱(おんばしら)祭」での転落死事故を受け、祭りの事実上の中止を命ずる仮処分の申し立てに対し、最高裁は「特別抗告の事由に該当しない」として棄却した。決定は7月15日付で、申し立てた箱山由実子弁護士=東京都北区=は「国民が国家に対して生命尊重を求める権利があるのかないのかを、最高裁として判断を出してもらいたかっただけに、棄却理由に明記がないのは残念だ」と話している。

 6年ごとに開催される祭りではほぼ毎回事故死者が出ており、今年も5月5日に大木を垂直に立てる「建て御柱」で、高さ15メートルの木の上部から氏子の男性(当時41歳)が転落死した。箱山弁護士は、祭りの度にけが人や死者が出るのは人命軽視に当たるとして、安全対策が講じられるまで境内の使用を禁じる仮処分を長野地裁諏訪支部に申し立てた。
 諏訪支部は「申立人(箱山弁護士)には仮処分で守られるべき権利はない」などとして却下、即時抗告を受けた東京高裁も棄却した。このため、「生命や自由、幸福追求に対する国民の権利を尊重するとする憲法13条から導かれる『国家に対して生命尊重を求める権利』が国民にあり、犠牲者が相次ぐ祭りの中止を求める」--などとして、5月16日に最高裁に特別抗告していた。
 最高裁決定は、棄却理由について「違憲を言うが、実質は単なる法令違反を主張するもので特別抗告の事由に該当しない」とした。転落死事故を巡っては、箱山弁護士らが諏訪大社宮司を業務上過失致死容疑で告発、県警諏訪署が捜査している。

 御柱祭は、氏子らを乗せた大木が急な坂を下る「木落(きおと)し」や、人が乗ったまま木を垂直に立てる「建て御柱」が人気で、今年は4月2日から5月16日までの間の12日間で約186万人が見物している。ただ、この半世紀近くでも1968、74、80、86、92、2010年に死亡事故が起きている。【照山哲史/デジタル報道センター】

祭の実際に関してはニュース映像等で見るしかないのですが、6年ごとの開催と言う比較的間隔が長い祭であることから、現場経験に基づく教訓の蓄積や継承と言う点ではかなり不利な状況だったのではないかと想像するのですがどうでしょうね?
この御柱祭に限らず全国各地でたびたび死傷者の出る危険な祭と言うものはあって、今回の司法判断に対する意見も人それぞれのようですが、違憲を理由に最高裁に上告するのは無理筋であったとは思うのと同時に、やはりこの種の祭と言うものの起源を考えるとリスク承知での日常からの脱却と言う側面があるのですから、参加者はそのリスクを承知した上で加わるべきものだとは言えるでしょうね。
事故が起こることが前提となれば保険等いざと言う時の金銭的な対策も十分講じられるべきでしょうが、ただ現在の民間保険では一定確率で誰かが死ぬかも知れない不特定多数の参加する行事と言うものはあまり想定していないようで、ざっと調べた範囲ではあまり満足のいく補償内容のものも見当たらなかったのですが、こうした場合主催者側なりがお金を集め自家保険なりを用意しておくべきかと言う気がします。
いずれにしても危険性のリスク評価が時代と共に変わる以上はこうした現在の目線で見ればいささか危険性が高すぎるのでは?と感じられる伝統行事と言うものはあるわけですが、時代の変化を感じる話としてもう一つ先日出ていたこんな裁判のニュースを紹介してみましょう。

「男児から暴行」特別支援学級の講師、市と保護者を提訴(2016年7月21日朝日新聞)

 堺市立小学校の特別支援学級で2013年、当時30代の女性講師が6年生の男児から執拗(しつよう)な暴行を受け、顔面打撲などのけがや後遺障害を負ったとして、市と保護者を相手取り、慰謝料など計1308万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁堺支部に起こした。第1回口頭弁論が21日に開かれ、市と保護者は請求棄却を求めた。

 訴状によると、女性は産休の代替として13年9月に着任。その直後、教室で男児を注意したところ、顔や頭を数回殴られ、制止するとさらに後ろから数十回殴られ、腰などを十数回蹴られた。職員室でけがの応急処置をして教室に戻ると、今度はナイフを持った男児に突進され、ハサミを投げつけられたという。女性は同校に14年3月末まで勤務した。

 女性は着任前、学校側から男児は注意欠陥・多動性障害があると説明を受けた。しかし、パニックになると暴力をふるう傾向が強いことなどは知らされておらず、危険を避ける適切な行動が取れなかったと主張。学校側の安全配慮義務と保護者の監督義務に違反していると訴えた。また、顔などのけがは公務災害が認定されたが、不眠などの後遺障害に対する慰謝料や休業損害は市と保護者が連帯して賠償する責任があるとしている。

 これに対し、保護者は「(女性から)あおられて手を出したが過剰な暴行はしていない。女性の配慮に欠けた言動が招いた」と反論。堺市教育委員会は「弁護士と相談し、適切に対応したいと考える」とコメントした。

記事を見る限りでは全面対立と言う感じで、実際のところ事実関係がどうであったかと言うことも今後どこまで裁判の過程で明らかになるのかも興味深いのですが、かつての体罰全盛期の学校であればこの種の言って聞くことが出来ない児童には相応の強制力を発揮せざるを得ないと言う暗黙の了解があり、保護者もそれを受け入れていたような気配がありました。
体罰全盛の時代から今や教師が手を挙げでもすれば良心的なメディアや進歩的文化人の方々から集中砲火を浴びる時代で、その結果校内暴力でも発生しようものなら即座に警察が呼ばれ通常の少年犯罪として対処されるようになったのがいいのか悪いのかですが、この場合に関しては児童の状態を考えると傷害罪等を問うのは難しそうですから、あくまでも民事として損害賠償を求めると言うのは妥当なところだと思います。
記事を見る限りでは女性教師にこの児童をコントロール出来なかった気配も感じられますので、不適切な配置につけた学校側の責任を問うために市も訴えたと言うことなのでしょうが、市側はともかく親の責任が認められた場合この種の障害児への対応にも相応の影響が出るのではないかと感じられるところで、さて実際上どうしたらよいものかと頭を悩ませている関係者の方々も多いのではないでしょうか。
この裁判も引き続き続報に注目していきたいところですがもう一つ、こちらはありそうで案外なかった裁判と言うところですが、まずは記事の方から紹介してみることにしましょう。

産業医が復職認めず退職に 元社員が無効と提訴(2016年7月21日共同通信)

 日本通運で働き、そううつ病で休職した男性(45)が20日、主治医から復職可能と診断されたのに、産業医が復帰を認めなかったために退職させられたのは不当として、社員としての地位確認と、損害賠償300万円を産業医に求める訴訟を横浜地裁川崎支部に起こした。

 訴えによると、川崎市内の事業所に勤務していた男性は2003年、長時間労働によりうつ病を発症。休職と復職を繰り返し、最近では14年1月から休職した。症状が安定した15年8月になって、主治医が「復職は可能」と診断したが、産業医は復職を認めなかったため今年1月、社内規定に基づき休職期間満了による退職となった。

 原告側は「産業医の意見は主観的で、医学的根拠がない。復職できないとの結論ありきだ」と主張している。

 日通は取材に「訴状が届き次第、内容を確認して対応を検討する」と説明した。

病気持ちだからと雇われなかった、退職を強いられたとはしばしば聞く話ですが、現実的に健康上の問題で勤務が出来ないと言う場合は一定確率で起こり得ることで、その場合本人があくまで働きたいと言う場合に誰がどう判断すべきなのかと言うのは悩ましい話だと思いますね。
特に留意いただきたいのは産業医は労働者の健康管理を行うと言う意味で労働者である被雇用者の利益を守ることが期待されるのですが、雇用関係から見れば産業医は企業側に雇用されているわけですから、労働者と企業側との利害関係が対立する場合産業医自身にも葛藤があるのかも知れません。
医学的な判断について言えば担当医は病気の状態はよく知っているが仕事の内容は知らないとも言えますし、日常生活は普通に送れても特定の業務は無理だと言うケースはしばしばあることですから、個々の職場環境で就労が可能かどうかについて一概に担当医の判断が最善ではないはずですが、一方で産業医は職場環境は知っていてもその疾患についての専門的判断は出来かねると言う場合が多いかと思います。
その意味で言わば専門外の領域に関して産業医がよく復職を認めないと言う大きな判断をしたなと感じたのですが、ちなみに産業医は労働の実態と本人の状態を総合的に見て休職等の勧告をすることは出来るのですが、復職を認めるか認めないかの判断を下すのはあくまでも会社側の人事権の範疇であって、この場合損害賠償を求める相手として産業医が妥当なのかどうかはまた考え方も別れそうですね。
また一般的に産業医と言えば専門外の医師がいわばアルバイト感覚で従事している場合も多く、実臨床の経験に乏しい社会医学系の先生などが担当していることもあるようですが、とりあえずサインをしてハンコを押すだけの簡単な仕事ですと考えて引き受けていると思わぬ訴訟リスクを抱え込むこともあるのだと言う警鐘としても受け止めておくべきかと思いました。

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コメント

基地外を退院させたらなんでずっと入院させてなかったんだと責められるんでしょ
後だしじゃんけんで結果責任問われるんじゃどうしようもないわな

投稿: | 2016年7月29日 (金) 07時59分

専門家が専門的に判断した結果であることなら、何ら臆することなく堂々としていてもいいのではと思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年7月29日 (金) 12時08分

以前ウチのスタッフが癲癇を発症し朦朧状態で運転し駐車場で自爆した事がありました。その後「就労可能」との診断書を持参(その時点では確定診断されてなかったんですが)してきたんですが大丈夫な筈はなく再び意識消失、結局退職して頂いたんですが一体どういう基準で診断書書いてるんですかねえ…?

>基地外を退院させたらなんでずっと入院させてなかったんだと責められるんでしょ

ソースは2ちゃんなのでガセかもしれないんですが、ある病院がそのテの訴訟沙汰になった際、他の患者の家族が「受け入れ先がなくなる!」ってんで一団となって病院側につき尽力、結果病院側が勝訴したとか。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年7月29日 (金) 12時47分

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