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2016年6月28日 (火)

国は医師余りの心配をしているそうですが

先日こういう記事が出ていたのですが、さてこれをどう解釈するのかです。

勤務医4割が「有給休暇はほとんど取れていない」と回答 – なぜ?(2016年6月22日マイナビニュース)

メドピアはこのほど、医師の「有給休暇取得」に関するアンケートの結果を発表した。調査は5月25日~31日、同社が運営する医師専用コミュニティサイト「MedPeer」の会員医師を対象に行われ、3,370名の有効回答を得た。「有給休暇はどのくらい取得できていますか?」と質問したところ、断トツで「ほとんど取れていない(39.6%)」が最多回答となった。

取得できない理由について尋ねたところ、「学会参加のための休みが有給として消化されるぐらいです。個人としての休みは年に1,2日です」(50代/放射線科/男性)、「人がいないので。そして、お産はいつくるか分からないので」(30代/産婦人科/女性)、「上司を含め、周りの医師が有給を取らず、取れないでいる。強制的に有給を取得させる制度が必要だと思う」(30代/消化器外科/男性)といったコメントが寄せられ、多くの勤務医が「多忙」「人手不足」「取りづらい」といった環境にあることがうかがえた。

次いで多かったのは「2~3割程度は取れている(16.5%)」や「1割程度は取れている(14.4%)」で、合わせて約3割を占めた。特に、「学会と夏休みに使っている」という声が多かったほか、「子供の病気やイベント」「当直明け」「半日や数時間ずつ」取っているという医師も見受けられた。

一方、「5割以上取得している」勤務医からは、「勤務先が変わって取りやすくなった」「夏休みを有給扱いにして消化している」「権利なので取るようにしている」という声が多く挙がったほか、「ほぼ100%取得し、部下にも強く推奨している」「連携体制がうまくいっておりほとんど消化している」など、全有給を取得できている人もいた。

「ブラック病院」「過労死しないか心配」――勤務医の4割が「有休をほとんど取れていない」と回答(2016年6月21日キャリコネニュース)

子どもの「将来の夢」や、女性の「結婚したい職業」をランキングした際に必ずといっていいほど入ってくる医者だが、命を扱う職業だけあり、その実態は過酷なようだ。医師専用コミュニティサイト「MedPeer」が勤務医3370人を対象に行った調査によると、39.6%の医師が有給休暇を「ほとんど取れていない」と回答したという。

「22年間有休を取ったことがない」という医師も

「ほとんど取れない」と回答した医師からは、「仕事が忙しい」「人がいない」といった声が理由としてあげられていた。

    「何やかんや制約あり、長期はだめ、変わりはどうするか…。取れないように仕組んでいる。ブラック病院」(60代 一般外科 男性)
    「仕事が忙しく、なかなか有休はとれません。もっととれる体制になればと思います。同僚ともども、過労死しないか心配です」(40代 小児科 女性)
    「医者になって22年、いわゆる有休はとったことがありません。ちなみに病欠も0です。夏休みのみ数回。働きすぎですかね」(40代 消化器内科 男性)

次いで多かった回答は「2~3割程度は取れている」(16.5%)、「1割程度は取れている」(14.4%)だった。しかし、その有休も学会に出席するために使われたり、当直明けに身体を休めるために使われているようだ。また、夏休みが別に設けられておらず、有休を使用して休むというケースも多い。

    「学会参加と夏休みを有休として取っています。しかしこれが正しい有休の取り方なのかわかりません」(30代 総合診療 男性)
    「ちょこちょこ、半日や時間休をとっている。当直明けは有休処理して帰っています。こんなことで消費するしか…」(40代 呼吸器内科 男性)
    「子どもの用事や病気などでとります。計画的に旅行などで取ったりということはまずありません」(40代 小児科 女性)

政府は2020年までに有休取得率を70%にする目標を掲げているが、現在医師で7割以上取れているという人は10.6%とおよそ1割にとどまっている。日本の医療水準は高いことで知られているが、その水準を維持するには医師にもしっかり休みを取ってもらうことが必要ではないだろうか。

参考までに平成25年のデータでは企業が提示した有給日数の平均が18日、労働者が取得した有給日数の平均が9日(取得率48%)だそうで、病院・医療機関の取得率が31%と言いますからすでに平均よりも低めですが、当然ながらここには交替勤務制の看護・介護スタッフなども含まれての数字ですから、医師に限って言えばこれより高いとはちょっと思えない数字です。
今日日ブラックな企業には事欠かない時代ですから、有給何それ食べられるの?と言う意見もあるのでしょうが、合計すると7割前後の医師がほとんど有給を消化しておらず、数字の上では消化しているとしても学会出張など名目的な取得も多いと言う状況にあると言う現状をどう考えるかですね。
ちなみに名目的と言えば多くの常勤医は名目的には自己裁量で労働をしていると言うことになっているのだそうで、要するに自分の労働量は自分で管理していると言う建前なのだそうですが、もちろん雇われ店長の見なし裁量労働制と同様に実質的には自由裁量の余地などほとんどないと言う場合の方が多数派なのではないかと思います。
一方で自ら好んで夜間休日変わりなく激務に従事している(かのように見える)先生方もいらっしゃるのは事実で、こうした先生方を中心に「医師に労働基本法の厳格な適用はよろしくない」などとよく判らない見解が出てくることもあるようなのですが、興味深いのはこうした結果に対する世間の反応の方ですよね。

もちろん自分の命を預けることになるかも知れない職業なのですから、少なくとも自分の診察や手術などをする前には十分な休養を取っておいて欲しいと考える国民が大多数なのだろうし、表向きは医師に休みなど不要と職業差別的言動を弄するわけにもいかないでしょうから「しっかり休みを取ってもらうことが必要」としか言いようが無いのでしょうが、しかしそう単純なものでもないところもあるようです。
先日は激務のためついに体を壊してしまった若手医師の記事が出ていましたが、毎月100時間超の超過勤務が半年以上続きとうとう心臓死してしまった医師などブラックとしか言いようが無い実態に同情する気持ちもある一方で、「医師の過労死や長時間労働の報道熱は低く、医療ミスとは対照的」「医者はカネをたくさん稼いでるんだから。低賃金で酷使されてるブラック企業の末端労働者とは、ちょっと違う」と考える風潮もあるようです。
激務の基幹病院で日夜奴隷労働に勤しんでいる先生方の中にも、外来で患者から「先生は週二回だけ働けばいいから楽ですよね(実際は外来枠が週二回と言うだけ)」などと嫌みめいたことを言われたり、日曜祝日に突然病棟に来襲した遠い親戚から「医者が休むとは何だ!すぐに顔を出して説明しろ!」などと暴言を吐かれた方もいらっしゃるかと思いますが、当然こうした悪条件が重なれば逃散していく先生方も出るでしょう。
労働環境や客層など様々な職場環境を総合的に判断して勤務先を自主的に選んでいく先生方が次第に増えてきているのもそうした事情があるからだと思いますが、医師が相次いで逃げ出していくような病院でスタッフの士気が高いはずもありませんから、医師らスタッフが疲れ切った顔で働いている病院は患者にとってもあまり居心地の良い場所ではない可能性の方が高いのでしょうね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

取れないってより取らないって先生もいそうですけどねえ。
一人医長やってたらなかなか取れないでしょうけど。

投稿: ぽん太 | 2016年6月28日 (火) 08時09分

医師余り現象が見られてくるとしたら、老人の割合がピークを超えた辺りからでしょうね。もうちょっと先のことです。
医者の全体数を増やした結果、職場環境が改善したかどうかを本田宏先生に語ってもらいたいところです。

投稿: ふぉれすと | 2016年6月28日 (火) 10時48分

医師が増えたが仕事も増えたでは意味がないのですが、本田大先生を始め目的と手段を逆転したかのようにとにかく医師を増やせと主張する方々のおかげで、待遇改善も進まないまま数だけが増えたとなるかもですね。

投稿: 管理人nobu | 2016年6月28日 (火) 12時51分

 医療費も膨らみましたが、患者に供給される医療の水準は確実に上がってるでしょう。
 機械もデバイスも薬もよくなってる。使ってみたくて馬車馬状態が続いている、については、働く側の意識を何とかしないと、どうにもならないような気がしますね。
 1000万どまりでも首都圏に勤めたい若手、ってどう思います?    

投稿: memento mori | 2016年7月 1日 (金) 11時09分

>1000万どまりでも首都圏に勤めたい若手、ってどう思います? 

金額はともかく、病院から殆ど出られないんじゃお洒落なアーバンライフwまったく満喫出来なくて東京に住む意味はないんじゃないかなあ…、と年収2500万、田舎暮らし満喫中のおいどんは愚考致す次第です。天然鮎天然鰻うめぇwwwwww

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年7月 1日 (金) 11時51分

http://www.asyura2.com/12/social9/msg/213.html#c9

このサイトのコメント欄が、今の日本の医師余りの一面を表現しているように思います。

メディアから伝えられるのとは違う現実もあるようです。

投稿: | 2016年7月 4日 (月) 19時14分

>このサイトのコメント欄が、今の日本の医師余りの一面を表現しているように思います。
その無職医1万人のなかに、大学院生等の学生、後期高齢者、専業主夫主婦等々が含まれているのか否か、わからんことには何とも論評しづらいですな。

投稿: | 2016年7月 5日 (火) 08時06分

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