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2016年6月29日 (水)

近い将来骨髄バンクが危ない?

骨髄バンクと言えば血液疾患などにおいてどうしても必要になる場合があるもので、国民の間でも名前はよく知られていると思いますが、その骨髄バンクが何やらうまくいっていないと言うニュースが出ていました。

<骨髄バンク>待機中に1655人死亡 待機日数短縮へ(2016年6月26日毎日新聞)

 公益財団法人「日本骨髄バンク」(東京都)に登録して造血幹細胞移植を待つ白血病などの難病患者のうち、昨年末までの5年間で1655人が移植を受けられず、待機中に死亡していたことが、同バンクへの取材で分かった。他に病状の悪化で286人が登録を取り消したことも判明。手続きなどで登録から移植までに時間がかかることが一因とみて、同バンクは待機日数短縮の検討を始めた。【須田桃子】

 正常な血液を作れない白血病などの患者が血縁関係のない他人から移植を受けるには、バンク登録の必要がある。同バンクによると、2010年からの5年間に新たに登録した患者は1万1042人。このうち、死亡や病状悪化に加え、血縁者からの移植や他の治療法である臍帯血(さいたいけつ)移植、化学療法への変更などで計3648人がバンクによる移植を受けず、翌年末までに登録を取り消した。待機日数が長いため治療方法を変えた人もいるという。

 待機日数は2003年に約175日(全登録患者の中央値)で、手続き改善の試みにもかかわらず、15年にも147日と約5カ月かかった。このため、移植を待つ医療現場からも短縮を求める声があったという。造血幹細胞を提供するドナーの登録者は約46万人おり、患者の約96%には移植に適したドナー登録者が見つかるが、ドナー側の仕事の都合や健康状態、家族の同意、転居先不明などから、移植に至るのは約5割にとどまるという。

 このため、同バンクは、家族や第三者立ち会いの下で従来は別の日にしていたドナーの最終同意書作成の手続きを、骨髄採取のための健診直前に行うことで、患者の待機日数をさらに1カ月弱短縮する対策を検討している。ドナーにとっても通う回数が減り、負担軽減が見込まれる。

 同バンクの担当者は「患者にベストのタイミングで移植してもらうため、手続きの簡略化を検討中だ。年内にも試行的に始めたい」と話している。

この骨髄バンクと言うもの、近年その知名度はそれなりに高まっているものの情報拡散の時代にあって必ずしも楽しい体験ではなかっただとか、こうと知っていれば登録しなかったと言う当事者のコメントもかなり広まっているようで、何となく献血の延長程度のつもりで登録していたドナーがいざと言う時に態度を翻すと言うこともままあるそうですね。
もちろんドナーになる事自体にも相応のリスクはあるのですから十分な説明と同意が必要になることは分かるのですが、今の時代に移植まで何ヶ月もかかると言うのもいささかどうよ?と言うもので、特に検査や説明で何度も通わされるのでは現役世代はやっていられないことでしょう。
いずれにしても技術的な進歩によって骨髄移植の必要性がなくなるまではこうしたものがなければ困ると言うものですし、当然ながら医療現場やレシピエント側にとっては移植までの期間は少しでも短縮したいと言う声が上がってくるのも理解できるところで、単純な事務的作業を見直すことで何とかなるものであれば何とかして欲しいと言うところでしょう。
ただ実際には骨髄バンクの抱える問題は非常に炊きに渡っているようで、このままですと構造的な問題によっていずれは破綻もあり得るのではないかとも思える記事が先日出ていたことを紹介してみましょう。

骨髄バンク、破綻の危機 財政難・ドナー減・高齢化(2016年6月19日産経新聞)

 白血病の患者らを救う目的で設置され、今年設立25年を迎える「日本骨髄バンク」が、資金難でぎりぎりの運営を余儀なくされている。平成26年度に約1億円の赤字を計上、27年度も連続赤字が予想されたが、年度末に大口寄付があり土壇場で何とか黒字になった。赤字が続けばドナー確保のための啓発活動も難しくなり、移植を待つ患者にも影響が及ぶ。斎藤英彦理事長は「安定した財政基盤に変えていかなければ、今後も財政難に見舞われることになる」と危機感をあらわにしている。(道丸摩耶)

 骨髄バンクは、血液をつくる造血幹細胞に異常が起きる白血病などの病気の患者に移植するため、健康な造血幹細胞を持つ人が「ドナー」として白血球の型を登録しておくもので、3年に設立された。移植には型の全部または一部が一致することが条件で、一致する型を探すには多くのドナーの登録が必要だ。現在のドナー登録者は約46万人で、今年4月末までに1万9397例の移植が行われた。ここ数年は年1300件ほどの移植が行われている。

 ただ、バンクは慢性的な財政難に苦しんでいる。バンクの収入の7割は、国の補助金と移植を受けた患者の医療保険から。残る3割は患者からの負担金や寄付金でまかなうが、景気や社会情勢に左右され、寄付金が少ないと赤字になってしまう。

 例えば26年度は補助金と医療保険による公的収入が計10・5億円あったが、患者負担金と寄付金は計4・7億円にとどまり、その他の収入も合わせた経常収益は15・4億円。支出はドナーを探す調整費やバンクの普及活動などで16・4億円となり、約1億円の赤字となった。

 医療保険は移植した患者に対して支払われるため、ドナーの調整に時間がかかった場合も金額は一定。また、ドナーが途中で断念するなどして移植に至らなかった場合は支払われない。移植件数が少なくなれば、医療保険の収入も減る

 さらに、バンクの新規登録者は26、27年度に2年連続で3万人を切るなど減少傾向。ドナーになれるのは18~54歳だが、55歳になったり健康に変化があったりして登録から外れる人が増加しており、27年度には初めて2万人を超えた。登録者のうちもっとも多い年齢は17年12月末時点は33歳だったが、27年12月末時点は42歳になり、高齢化も進んでいる。赤字が続いたからといって啓発費を削ると、ドナーが減り、バンクの存続が危うくなる。

 バンクの啓発や患者支援を行う全国骨髄バンク推進連絡協議会の大谷貴子顧問は「バンク存続のため企業などから広く寄付を募るとともに、大学や運転免許試験場で若い世代にドナー登録を呼びかけていきたい」と話している。

そもそもこうした公益性が高い事業が寄付金頼りで運営されていると言うのもどうなのかですが、純粋に医療において使用される事業であり、まずほとんどが皆保険制度に基づいて行われているのであれば、運営に支障を来すと言うのは保険からの支払いが少な過ぎるのではないかとも思えるところです。
ただ財政上の問題はともかくとして、ドナー登録が年々減少していることも問題で、創設からかれこれ20数年を経て早いうちに登録した方々は年齢的にドナー登録から外れてくる時期となるでしょうし、若年人口が年々減少している時代に若い人間にどれだけ新規登録を期待出来るのかです。
ちなみに日本の骨髄バンクも海外の骨髄バンクと相互に連携していて、場合によっては海外のドナーとコーディネートされると言うこともあるそうですが、仮に今後国内での需要に対して過少な供給しかなされないのであれば海外からの提供への依存が増してくるのかどうかで、日本の場合骨髄移植件数が非常に多い割に国内ドナー登録はかなり少ないと言う構造的な特徴もあるわけです。
臓器移植においても同様の需要と供給のミスマッチがあり、特に近年では日本など一部諸国から多額のお金を使って海外に臓器を買いに行くような行動が国際的批判を浴び、WHOからも海外渡航による臓器移植は自粛せよと言う勧告が出るなど規制も強まっていますが、骨髄においても同じようなことにならないのかと心配していく必要があるのでしょうか。

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コメント

IPS細胞でなんとかならないものかな?

投稿: | 2016年6月29日 (水) 08時27分

人工骨髄も各方面で研究されているそうで将来的には判りませんが、現時点では無限増殖を前提とする組織に人工細胞を応用するのは、何かしら気持ちの良くない感じはありますでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2016年6月29日 (水) 12時56分

医者でも、骨髄液採取を実際見た人は少数派でしょう。一度見てください。侵襲的で、私はとてもボランティアにはなりません。一方、「登録は採血だけですぐです。」みたいな募集方法に非常に違和感を感じます。あらかじめ、相当な志を持った人でないと、不向きです。

投稿: 麻酔フリーター | 2016年7月 1日 (金) 10時40分

 麻酔科フリーター様に同意です。家内はドナーになりましたが、私はだめ。減り続けも当然でしょ。
 臍帯血バンクに移行したいが、もともと採血量が少なくて使えないケースが多く、ストレージコスト、事務周りの負荷が骨髄バンクよりも増える。ITCを投入してコスト削減しつつ頑張る、のが現実的かと思いますが、長期的には? 

投稿: memento mori | 2016年7月 1日 (金) 10時59分

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