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2016年6月21日 (火)

この場合は嘘も方便とは言いがたい

またやりきれない事件が起きたものですが、こちらの記事から紹介してみましょう。

自称祈祷師、殺人罪で起訴=糖尿病治療させず男児死亡―宇都宮地検(2016年6月17日時事通信)

 糖尿病の男児に不可欠なインスリンを投与させず死亡させたとして自称祈祷(きとう)師の男が逮捕された事件で、宇都宮地検は17日、殺人罪で近藤弘治容疑者(61)を起訴した。

 認否は明らかにしていない。

 近藤容疑者は逮捕当時「自分にはどんな病気も治せる力がある」などと主張。地検は約半年間鑑定留置し、責任能力を調べていた

 起訴状によると、近藤容疑者は昨年4月、男児の両親がインスリンを投与しなくても治療できると信じていることに乗じ、死亡する恐れがあると知りながら投与させずに放置、男児を糖尿病による衰弱で死亡させたとされる。

 栃木県警によると、男児の母親が、知人の近藤容疑者に病状を相談。近藤容疑者は「腹の中に死に神がいるからインスリンでは治療できない」などと言い、代わりに体を触ったり、呪文を唱えたりしていたという。 

しかし馬鹿げたことをやって重大な結果になれば罪を裁かれるのは当然だと思いますが、あまりに壮大に馬鹿げていると責任能力なしとして罪を問われないと言うのも何か釈然としない話ですが、言っていることはまさしく祈祷師と言う感じで、子どもの年を考えればまだ若い親でしょうに今どきこんな台詞に引っかかる人もいるんだなと逆に新鮮さを感じますね。
この種の事故が起きるたびに親の責任はどうなるのかと言う声も上がるのですが、病気の子を抱えて不安に感じている親の心理に巧妙につけ込めるからこそこの種の手合いが商売として成り立つのであるし、食っていける程度には顧客がついていたと言うことでしょうから、大多数の場合これでも十分何とかなっていたとも言えます。
大事な治療の最中に横からこうした連中が介入してきた場合の担当医の苦労も察して余るものがありますが、別にそれは怪しい祈祷師の類ではなくても同じ医療従事者であっても同じことで、先日はこんな記事が出ていたことを取り上げてみましょう。

渡辺謙さんの“早期胃がん治療”は必要だったのか?<がんと診断されても信じるな>/近藤誠(2016年5月29日幻冬舎plus)

 芸能人が胃がんで闘病したことがよく話題になります。最近では俳優の渡辺謙さんに人間ドックで早期胃がんが見つかり、内視鏡による治療をうけました。
 渡辺謙さんが胃袋を残せたことは幸運です。でも、早期胃がんを発見して治療することは、ほんとうに役に立つのでしょうか? 
 今回は、僕のセカンドオピニオン外来を訪ねてこられたWさん(55歳、男性)との相談内容を紹介します。

 「こんにちは、近藤です。会社で指定された人間ドックの内視鏡検査で胃に異常が見つかり、組織をとって顕微鏡で調べたら、“早期のがん”だといわれたのですね」
 「はい。内視鏡治療で有名な病院を紹介され、治療日も決まっています」
 「内視鏡の写真では、胃の上部に直径2センチほどの少し盛りあがった病変があります。おそらく粘膜にとどまる早期胃がんで、内視鏡による粘膜の切除は可能でしょう」
 「切除したほうがいいんですか?」
 「今日は質問にお答えするので、治療をうけるかどうかは、おうちに帰ってから決めてください
 「わかりました。では内視鏡による切除で、副作用が生じる可能性はどのくらいですか?」
 「胃壁に穴があいたり、出血したりすると、開腹手術になることもあります。そういう事故が生じる率は手術者によって異なりますが、医者や病院には、成績をよく見せかけたいという気持ちがあるので、彼ら自身がいう実績やら数値はうのみにしないほうがいい。どうも5~10%程度はあるようです」
 「担当医は、内視鏡治療の名手だと聞いているんですが……」
 「手術の上手な人だと事故率が低いことは確かで、1%未満かもしれません。ただ、その人が治療してくれる保証がない。名人がいる病院は修行中の若手医師もたくさんいます
 「そういえば診察中、若手医師がふたりほど立ち合っていました」
 「痛まないように麻酔で眠らされたら、だれが施術したかわかりませんからね。そうでなくても、いよいよ治療だというときに若手医師から『はじめまして〇〇です。今日の治療は私が担当します』と切りだされたら、治療台から飛びおりて逃げ帰るわけにもいかず、いやいや同意してしまうのが患者心理です。
 名人に確実に切除してもらえるのは、渡辺謙さんのような重要人物だけです」
 「やっぱり、そうなんでしょうね……」

いやまあ、この種の方々の呪文…もとい、患者心理を巧みに誘導する話術なるものがどのようなものかよく判る貴重な記事だと思いますけれども、大まじめでこういうことを書いている近藤誠なる人物は転移癌を放置しても10年生きられると言うどこか我々とは異なる世界の住人だそうですから、いちいち突っ込んだら負けなのかも知れません。
どこの病院も忙しいご時世にこうしてゲートキーパーとして治療希望患者を裁いてくれる人がいてもいいじゃないかと言う妙に前向きな?意見も時に拝見するのですが、それでも真面目にこうした言葉を信用してその通りにやっていた方々がいずれは大変なことになっても近藤氏が面倒を見てくれるわけでもありませんから、人生の一大事を相談するような場合は相手も選ばなければ駄目だろうと言うことですよね。
こうした方々に恐らく共通する話術として相手の不安に巧みにつけ込み増幅させていくと言うことがあるように感じましたが、これらは本来であれば正しい医療情報が身について入れば相手にもされないはずのことですから、嘘がまことであるかのように流通出来てしまう世の中にも問題があるとも言えます。
一方で好き放題なことをやって罪のない人々の健康に重大な被害を与えても何ら罪に問われないのはおかしいのではないかと誰しも考えるところですが、相談されて意見を言うだけであれば特別の資格も必要なく言い値で料金も取れる理屈で、こうした方々が野放しにされている現状をなんとかするためにはルールの方でも対応が必要になるのかも知れませんね。

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コメント

近藤センセって勝ち組だよね
これで食っていけるんだから

投稿: | 2016年6月21日 (火) 07時56分

難病や精神疾患などで親がこういう怪しい言葉や治療に惑わされてしまう気持ちは痛いほど分かります。
こんなやり方で治るわけがないと理性では考えていても、ひょっとしたら・・・と思ってしまうものです。

投稿: クマ | 2016年6月21日 (火) 09時04分

それでも拝み屋はどうなんだですよ。
まだ怪しい民間療法のほうが理解できる。

投稿: | 2016年6月21日 (火) 09時26分

前も言いましたがこのテのには刑法240条強盗致死傷罪(負傷させたときは無期又は六年以上の懲役、死亡させたときは死刑又は無期懲役)を適用すべきですよねえ結果は同じなんだし。

>難病や精神疾患などで親がこういう怪しい言葉や治療に惑わされてしまう気持ちは痛いほど分かります。

痛いほど分かるんだけどここは敢えて「こんなんで治るワケないやろこのポン酢!オマエがこの子を殺したんや!!」と、罵って差し上げた方が抑止とか二次被害防止的観点からは好ましいのでは?と思ったり思わなかったり…。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年6月21日 (火) 09時31分

近藤氏は医学に関しては完全な観念論者であり、そういう意味では宗教的かもしれません。

僕が呆れたのは、昔金スマに出て「ポリープは良性のもの」という定義を勝手に作って、自己理論を展開していたときです。
「ポリープ」とは、あくまで形態を表す専門用語であり、質的なものを指す訳ではありません。
彼は定義ですら、自己都合で捻じ曲げてしまっているのです。
結論を先に決めて話す観念論者にありがちなことであり、彼は医学者として失格です。

投稿: ふぉれすと | 2016年6月21日 (火) 11時47分

世界の多くの地域では祈祷師呪術師の類が医者代りを務めていて、それでそれなりにうまく回っていると言う現実もあるのですけれどもね。
近藤氏の場合は近藤理論に基づいて最後まで患者の面倒をみるのであればまだしもですが、単に口から出まかせで患者の不利益を招いている面は否定できません。
ただ近藤氏がこうした行為を医療として行っているのかどうかで、司法や民事訴訟における扱いが変わってくるのかどうかは興味ありますね。

投稿: 管理人nobu | 2016年6月21日 (火) 11時55分

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