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2016年5月10日 (火)

人類はついに老化を克服するのか

多くの方々にとっていつまでも若々しく元気でありたいと言うのが率直な願望であるかと思うのですが、こんな話をご存知でしょうか。

働きアリは「老化」しない:英研究結果(2016年2月9日WIREDニュース)

オオズアリの働きアリは、命が尽きる瞬間まで、老化の兆候がまったく見られないという研究結果が発表された。
人間の場合、老化現象は止められない。しかし働きアリは、命が尽きる瞬間まで、老化による衰えを一切示さないらしい。

英国王立協会が発行する学術論文誌『Proceedings of the Royal Society』に掲載された論文によると、Pheidole dentata(北米に生息するオオズアリの一種)の小型の働きアリ(マイナーワーカー)は、実験室の環境では140日間生きるが、命が尽きるときまで、老化の兆候はまったく見られなかったという。
オオズアリでは、働きアリの一部が大柄な兵隊アリ(兵アリ)になる。研究者は通常の働きアリを小型働きアリ=マイナーワーカー(minor worker) 、いわゆる兵隊アリを大型働きアリ=メジャーワーカー(major worker)と呼ぶ。
働きアリたちは、幼虫の世話をしたり、道しるべフェロモンをたどったり、死んだ昆虫をあさったりなど、毎日の作業にいそしんでいるが、こうした働きアリ数百匹が調査対象になった。

研究者たちはこれらの働きアリたちに、脳細胞の死滅や、ドーパミンなどの神経伝達物質の減少、日々の作業効率の低下など、人間に見られるような老化現象が現れるかどうかを注意深く観察した。
その結果、アリがそうした現象の影響を受けることはなく、死の直前まで最高の状態で生き、最期を迎えることがわかった。

論文の共同執筆者であるジェームズ・トラニエロは、次のように説明する。
「働きアリは、最初のうちは仕事が上手くできないのですが、次第に行動を学習し、できることを増やしていくということを、われわれは知っていました。こうした行動や機能について、通常の曲線、つまり、徐々に上がっていってピークに達し、その後衰えていくということが、アリにもあるだろうと考えていました」
けれども、そうした衰えは、働きアリには見られなかったという。
実際アリたちは、成長につれて多くの仕事が上手にできるようになり、同時に、日にちがたつほど活動的になった(論文によると、セロトニンやドーパミンは、年をとった働きアリのほうが増えていたという)。

研究者らは、こうした現象の原因は不明だが、高度に発展した社会の仕組みが、アリの脳をより効率的に働くようにした、あるいは回復力を高めた可能性があることを示唆している。
また、働きアリに生殖能力がないことや、低酸素状態の環境が、彼らの健康によい影響を及ぼしたことも考えられるという。

そう言えば魔法使いは長寿な印象があるな…などと余計なことを考えたりもするのですが、実際に老化していないのかどうかはともかくとしても、死に至るまで成長を続けて元気に活動的になっていくと言うのは非常にうらやましいと言うしかない話ではあると思うのですが、では何故こんな元気で若々しいアリが死んでしまうのかと言うことも気になりますよね。
人間社会においても原始的な状況では平均寿命が30代程度であったと言い、有史以後の世界に限っても若いうちからちょっとした病期であっさり死んでしまうケースは幾らでも見いだされることから想像するに、あるいはこれらのアリはまだまだ働き盛りの若々しい間にちょっとしたトラブルでぽっくり死んでいるだけなのかも知れないと余計な想像もしてしまうのですが、実際のところはどうなのか今後の研究の進展を待ちたいところです。
いずれにしてもこうした現象が起こるのは人間とは似ても似つかない特殊な生物の世界で起こる現象だと指をくわえて見ているしかないのが現状だったのですが、現代科学の進歩と言うものは恐ろしいもので、この老化という避けがたい現象の壁を打ち破ろうとしている人が実際に現れつつあるそうです。

人間の老化に対する初の遺伝子治療が成功か(2016年04月25日GigaZiNE)

遺伝子治療について研究を行うBioViva USAが、世界で初めて人間の加齢に対する遺伝子治療に成功したと発表しました。実験的治療は同社のCEOに対して行われたもので、今回の実験結果が正しければ、年齢に関係して発生する疾患の治療法が大きく進化する可能性があります。

First gene therapy successful against human aging ? BioViva USA Inc

BioViva USAのCEOであるエリザベス・パリッシュ氏は2015年9月、自社で開発されている実験的な遺伝子治療を2つ受けました。1つは加齢による筋肉量減少を防ぐもので、もう1つは年齢に伴うさまざまな疾患によって幹細胞が消耗するのを防ぐ治療です。
もともとこれらの研究は現代における遺伝子治療の安全性を示す目的で行われていたのですが、実験初期のデータが正しければ、遺伝子治療によってテロメアを伸長を可能とした世界最初の事例になるとのこと。これまで、テロメアの伸長実験はマウスを対象として行われてはきたものの、人間を対象とした実験は行われていませんでした。

テロメアとは、染色体の末端部にあり、遺伝子情報を保護するための部分。テロメアは細胞分裂が繰り返されるにつれて短くなっていき、その結果として老化現象が起こると言われています。反対に言うとこのテロメアを伸長することができれば老化を遅らせることが可能で、テロメラーゼという酵素がその役割を果たすのですが、人間の体細胞ではテロメラーゼが発現していないか、発現していても弱い活性しか持っていません。
2015年9月、実験を行う前のパリッシュ氏が白血球からデータを採取して分析したところ、パリッシュ氏は同年齢の人に比べてテロメアの長さが短く、人生の早期に年齢に関連した疾患にかかりやすいという結果が出たとのこと。しかし、実験後、2016年3月に同じテストを行ったところ、パリッシュ氏のテロメアは約20年分も長くなっており、生物学的には白血球が若返っているという結果が示されたそうです。調査結果はブリュッセルを本拠とするNPO団体Heales Medicalにも確認されました。

パリッシュ氏は「今日の治療は、年齢に関係する疾患で苦しむ人たちに大きな利益をもたらしていませんでした。また、ライフスタイルを変えてもこれらの疾患に大きな影響を与えることはできません。バイオテクノロジーの進化は問題を解決する最善の方法ですし、もし今回の結果が正しければ、我々は歴史を作ったことになります」と語っています。
BioVivaは今後数年間にわたってパリッシュ氏の血液をモニタリングしていく予定。また、白血球を若返らせることが可能でなるならば他の細胞や臓器に対しても有効である可能性があるとの見方で、現在はパリッシュ氏以外の被験者が存在しませんが、加齢に伴うダメージを修復する新しい治療法や、複数の治療法を組み合わせた方法について研究が続けられる意向です。


わたしは遺伝子治療で20歳若返った:45歳、米バイオ企業CEO(2016年5月6日WIREDニュース)

ワシントン州シアトルを本拠とするバイオ企業BioViva USAのCEO、エリザベス・パリッシュは、同社が開発した「若返り」のための遺伝子治療を自身の体でテストしたところ、細胞が20歳若返ったと主張している。
パリッシュCEOは現在45歳で、科学・医学の分野での正規の教育は受けていない。彼女はこの実験的な治療を、2015年9月にコロンビアのクリニックで受けたという(詳細は未公表)。こうした型破りな臨床試験が海外で行われた背景には、米国の規制を回避するという目的があったが、この臨床試験の強行により、BioViva USAの科学顧問の1人が辞職している。
BioViva USAの科学諮問委員を務めていたが辞職したワシントン大学名誉教授のジョージ・マーティンは『MIT Technology Review』誌で、「これは大きな問題であり、このような事態に大きな憤りを感じています。わたしは非臨床試験(動物実験)を繰り返し行うよう強く求めてきました」と語っている。

臨床試験の詳細は明らかにされていないが、パリッシュCEOの説明では、治療の一環として、遺伝子組み換えウイルスの静脈内注射が行われたという。このウイルスによって、「テロメラーゼ」と呼ばれる酵素を生成する遺伝物質が細胞に運ばれたようだ。
テロメラーゼは、人体の細胞における「テロメア」と呼ばれる部分の長さを伸ばす。テロメアとは、染色体の末端で、DNAの「保護キャップ」的な役割を果たす部分だ。テロメアは細胞の老化とともに自然にすり減ってゆくが、テロメラーゼの投与によってそれを保護しようとする手法だ。
スペインの研究グループが2012年に行ったマウス実験から、同様の手法によりマウスの寿命は20パーセントも延びうることがわかっている。

パリッシュCEOは、3月に行われた血液検査の結果(ピアレヴュー科学誌には発表されていない)により、彼女の白血球のテロメアは6.71から7.33キロベース(kb)に伸びていることが明らかになったと主張している(同CEOは今回の治療を受ける以前の2015年9月に同じ検査を受けており、年齢の割にテロメアが異常に短い[6.71kb]ため、人生の早期に加齢性疾患にかかるリスクが高いことがわかっていた)。このテロメアの数値差は、20歳分の細胞年齢差に等しいと同CEOは推定する。

テロメアと言えばすでに一般社会にもその名前が知られている存在となっていますが、単純にこの延長が老化を防ぐと言うこととイコールなのかどうかは何とも言えませんし、むしろ癌などの疾患を増やしてしまう可能性もあるのかも知れませんが、本人にとってはやはり明確な遺伝子異常が是正されたと言うのは望んだ結果なのでしょう。
実験の結果が成功と出るか失敗と出るか、またその結果がどのようなものとなるのかと言うことは今後の経過を見ていくしかないと思うのですが、しかし企業トップが自社で開発された革新的技術を自分自身に応用したと言う話だけを聞けば、これはそれなりに社会的な反応を呼びそうな行為ではありそうには思いますね。
ただ株価対策等経済的な理由もあるのでしょうが、こうした技術が大いに喧伝され「老化を防ぐことが可能に!」などと言われれば誰しもそれを使ってみたくなるのが道理で、副作用など安全性の問題点は元よりコストがどの程度かかるのか、誰でも受けられるものなのか等々様々な情報が開示されないまま効果ばかりが喧伝されると、下手をすれば社会不安をも引き起こしかねません。

遺伝子の問題と言うと日本ではまだ及び腰なところがありますが、アメリカなどでは遺伝子的に乳癌の危険性が非常に高いと知った有名女優が乳房を切除したと言ったニュースがあるように、少なくともその意志と機会がある人にとってはかなり広く用いられる技術となってきているようです。
ただそのアメリカにおいても今回の臨床試験は規制を回避するために国外で実施され、しかも科学顧問が辞職したと言うほど異論も出ると言う状況にあるわけですから、日本でどこかのベンチャー企業の社長が同じようなことをやれば相当な社会的批判も受けかねずで、当然ながら技術を開発する側にとっても及び腰にはなるでしょうね。
21世紀の医学的進歩の大きな部分を遺伝子的な診断と治療の技術が担っているとも予想される中で、各国が今後社会規範や倫理と技術開発とのバランスをどう取っていくかが注目されますが、基本的には疾患の発症原因そのものに対する根本的な治療法である以上、国が推進する予防医学推進と言う立場とは相性がいいはずの技術ではあるとは言えそうですけれどもね。

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コメント

こういう研究って美容業界がいくらでもお金出しそうな。

投稿: ぽん太 | 2016年5月10日 (火) 09時11分

簡単に若返れるようになってしまったら美容業界は儲からなそう

投稿: | 2016年5月10日 (火) 09時29分

遺伝子的な若返りが見た目年齢にどう反映されるかは不明なのですが、早老症などと同様に戸籍年齢との不一致が問題になってくるかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2016年5月10日 (火) 10時36分

そんなあなたに贈る一曲
中島みゆき「傾斜」

投稿: JSJ | 2016年5月10日 (火) 21時09分

中島みゆきが歌うといい曲もホラーになっちゃうから…

投稿: | 2016年5月10日 (火) 22時26分

ちがいますー 傾斜を歌ってた頃のみゆきは
可愛かったんですー。
とは言え、今の美輪明宏しか知らなくって、
三島と決起した頃の紅顔の美少年時代をVでさえ
知らない世代にとっては無理も無いでしょうが…

投稿: | 2016年5月11日 (水) 07時07分

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