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2016年5月30日 (月)

埼玉県吉川市で発生した逃散の一例

麻酔科学会の後期研修医向けパンフレット「麻酔科医以外の医師は、なぜ、子供に麻酔科をすすめるのか?」で現役医師の挙げる麻酔科の魅力として「QOLが高い」と言うことが大きく示されていて、「家族サービスなどを犠牲にすることが少ない」「主治医にはならない」「業務の負担が他科の医師に比べて少な」いことなどが列挙されていると話題になっていました。
専門医を育てる学会がQO(M)Lの高さを掲げて人材募集するのですから時代もずいぶんと変わってきたものだと思いますが、今話題になっている医師過剰時代の到来間近と言う推計にしても医師が今のように労基法無視の過剰労働を続けることが前提になっているように、業界内外において様々な理由から医師の働き方の質が問われる時代にはなってきたように思います。
そんな時代にあって仕事の内容についてもある程度選んでいくべきだと言う考え方も当然あっていいのだと思いますし、その選び方についてもQOMLや給料、あるいは仕事の自由度など様々な要素があるのは当然ですが、比較的珍しい要因で仕事を選んだのかとも思われる一例として先日こう言うニュースが出ていたことを紹介してみましょう。

校医10人が大量辞任 吉川の小中学校、健康診断の日程影響…懸念も(2016年5月20日埼玉新聞)

 埼玉県吉川市の小中学校の校医16人のうち10人が3月末に辞任し、市内11小中学校の健康診断が例年通りに実施できない可能性があることが20日、市や吉川松伏医師会などへの取材で分かった。市と医師会側は事実関係を認めた上で、学校保健安全法規則に基づいて6月末までに、全小中学校の健康診断を実施するとしている。

 市などによると、3月末に同医師会の担当者が市教育委員会を訪れ、校医10人の「解任届」を提出したという。辞任の理由は「一身上の都合」。任期は2年で、昨年4月から来年3月までの予定だった。

 市教委は毎年度当初の4~6月、市内11の小中学校で健康診断を行っており、残った医師6人の協力で日程を調整。全ての学校の児童、生徒が6月末までに健康診断を終了することができるよう日程を組み直したとしている。
(略)
 吉川市は内規に沿って、同医師会の推薦を受け、小学校8校、中学校3校の計11校で兼務を含め16人の校医を選任していた。

 同医師会は「解任届」を提出して、複数の校医が辞任した事実を認めた上で「6月末までに健康診断を終わらすために全力を尽くす」とコメントしている。

医師会の考えは…校医大量辞任の吉川、審査会も5人辞任「市民犠牲」(2016年5月24日埼玉新聞)

 吉川市で小中学校の校医が大量辞任した問題で、市の介護認定審査会でも審査会の委員だった医師8人のうち5人が辞任していたことが23日、市や吉川松伏医師会への取材で分かった。医師会は別の医師1人を推薦したとするが、従来通りの審査を行えなくなるため、委員への負担が増えたり審査会の公平性が保たれなくなるなどの懸念もある。

 市によると、審査会委員だった医師5人が3月下旬までに、医師会を通じ「退任願」を市に提出した。5人は3月末付で委員を辞任。理由は「一身上の都合」だった。任期は2015年4月~17年3月の2年間。医師5人は任期1年を残して退任した。
(略)
 医師5人が辞任した4月からは、医師の人数を減らして対応。市の条例で合議体の人数は「5人以内」とされ、法的にも問題はない。市いきいき推進課は「大きな問題は起きていない」としながらも「在るべき姿に戻せるよう医師会にお願いしている」と述べた。

 本来2人の医師が審査に関わる合議体で、現状三つの合議体で医師は1人、残る一つの合議体は医師が不在の状態が続いている。同じ条件で審査が行われず、審査会の公平性が問われる

 同医師会は、辞任した医師とは別の医師1人をすでに推薦したことを明らかにし「今後も市に全力で協力していく」とコメントした。吉川市では小中学校の校医16人のうち10人が今年3月末に辞任していた。

 関係者によると、4月に医師会の医師5人が辞任したことで、合議体のメンバーが減少。最低限のメンバーで行っている合議体は欠席できない状況が続いており、合議体の数自体や1回の審査対象数を減らそうとする動きも出ているという。審査は提出から1カ月以内に結果を出す必要があり、審査の期限切れや通常業務を抱える審査会医院の負担増も懸念される。

 関係者は「異常事態。医師会は事情を抱えていると思うが、市民の健康福祉が犠牲になるのはおかしい。医師会は何を考えているのか」と訴える。別の関係者は「医師会は問題があるならはっきりと言うべきだ。この問題を多くの人に知ってほしい」と話した。

校医の大量辞任…吉川市長「遺憾に思う」 子どもの健康第一に調整(2016年5月27日埼玉新聞)

 埼玉県吉川市の小中学校の校医16人のうち、10人が一身上の理由で3月末までに辞任したことについて、中原恵人市長は27日の定例記者会見で、「この1年、医師会とも例年に代わるような形で変更したことはない。校医が辞めたのは遺憾に思っている。子どもたちの健康、安全を一番に考え、6月30日までにきちんと健康診断を終えられるように調整している」と語った。

 この中で、中原市長は「校医一人一人の負荷はかなり大きくなっている」と懸念を示した。市教育委員会の篠田好充教育部長は「6人の先生にお願いしているので、健診が滞っていることはない」と述べ、子どもたちへの影響はないとしている。

 また、市の介護認定審査会でも、審査会の委員だった医師8人のうち、5人が3月末までに辞任していることについて、鈴木昇健康福祉部長は「すぐに審査しているので遅れはない」と述べ、市民に影響は出ていないとの見方を示した。

この埼玉県吉川市医師会と言うところは何か聞いたことがある気がしたのですが、3年ほど前に予防接種の価格を医師会が独自に設定し会員に統一価格で接種するよう強要していたと報じられていた地区だそうで、何でも医師会からの通知を無視して独自価格で接種した医院が医師会を除名されたとも言いますが、ちょいと調べて見た範囲でも何やらこの医師会内部でも色々と面倒臭い事情があるようですね。
なんでも医師会メンバーだった某医院の婿殿が義理の親の支援を受けて数年前に県議会に当選したそうですが、その際に義父が同市医師会に全面支援を求めたが断られたと言った事情があったそうで、当選後は現職県議の威光よろしく医師会内で一時は権力も振るったものの結局は対立が続き医師会から除名されたと言うことですが、何の因果かその婿殿が昨年今度は市長に当選してしまったそうです。
何しろ義父が除名を巡って医師会と裁判をするほど全面対立していたわけですから、当然ながら同市医師会と現市長との関係もあまり良好と言うことでもないのだろうなと推測されるのですが、市民としてはそういう内輪もめで妙なところに悪影響を被るのは勘弁してもらいたいと言うのも正直なところではないでしょうか。

ただこの校医と言う仕事に関しては、色々と面倒が多い割に見返りもあまりないと言うことで同市に限らず全国的にも人気が無い仕事だと言うことは確かで、いくら医師会内部のトラブルが原因としてあったことでもうまみのある仕事などはなるべく確保しておきたいでしょうから、言ってみれば大人の事情があることを理由にこれ幸いと気乗りしない仕事を切ったと言う部分もあるのかも知れませんね。
逆に残った先生方が業務に対する義務感で残ったのか、それとも医師会との関係性から敢えて反発しているのかは何とも言えませんが、単純計算で業務量が今までの三倍にもなるのですから健診シーズンには仕事にならないだろうと思われますし、介護認定の方にしても一時的に調節はしてもいずれ仕事は次々と出てくるものなのですから、いつまでもこんな状況が続くものとは思えません。
この種の義務的な業務と言うものは恐らく全国どこでも半ばボランティアのような感覚で引き受けてきた側面があったはずで、いわば仕事の割り振りをしてきた医師会が率先してボイコットを推奨しているのだとすれば誰も進んではやりたがらないと思うのですが、市当局としては恒常的に必要な人材が確保できるようこの際仕事としても魅力あるものにしていくことも重要なんじゃないかと言う気がしますね。

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コメント

一部は残ったってとこが予定調和的と言うか。
嫌がらせですねてみせただけみたいにも見えますが。

投稿: ぽん太 | 2016年5月30日 (月) 08時41分

あまり事情がはっきりしないので誰がどうしたとも言えないのですが、医師会の協力なくして校医確保と言うのも難しいのかも知れませんね。

投稿: 管理人nobu | 2016年5月30日 (月) 12時42分

鹿が多い県の産科医方も、これくらいの実力行使に出て
県民を震え上がらせて、その行動の元凶であるトコロの
例の頭の高い知事に煮え湯を飲ませれば良いのに。

投稿: | 2016年5月30日 (月) 15時14分

そんな度胸もねえくせにw

投稿: | 2016年5月30日 (月) 20時15分

 千葉・船橋市の小学校で、健康診断を担当した69歳の男性医師が、40人以上の男子児童の下半身を触っていたことがわかった。

 船橋市教育委員会などによると26日、船橋市内の市立小学校で、児童への内科健診が行われたが健診を受けた5年生の男子児童や保護者から「男性医師から下半身を触られた」との連絡が相次いだ。

 学校が調査したところ、63人の男子児童のうち42人が下半身を触られたことがわかり、健診を担当した市内の診療所の男性医師も事実関係を認め謝罪したという。

 問題の医師は、この小学校で11年間にわたり校医を務めていたが、学校はこの医師の解任を要請している。船橋市教育委員会は「誠に遺憾」だとしていて、児童の心のケアに努めるとしている。

投稿: | 2016年5月30日 (月) 21時10分

確率42/63で触られなかった1/3の立場はどうなる

投稿: | 2016年5月31日 (火) 10時11分

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