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2016年5月14日 (土)

記者クラブへの国連の批判を記者クラブ加盟各社は報じず

昨今日本の大手メディアでは報道の自由と言うことに非常に関心があるようで、先日も日本の報道の自由度がまたまた下がった、世界が懸念していると言うニュースが出ていたのですが、他方でこうしたニュースはあまり取り上げられることがないようです。

「記者クラブ廃止」「独立機関設立」…国連特別報告者が提言 大手メディアはほぼ無視(2016年4月26日yahooニュース)

表現の自由に関する日本の状況を来日調査した国連の特別報告者、デビッド・ケイ氏が4月19日、暫定的な調査報告(以下「暫定報告」)を発表し、外国特派員協会で記者会見を行った。これについて新聞・テレビの大手メディアがどう報道したか調べたところ、案の定というべきか、肝心なメッセージが抜け落ちていた
(略)
デビッド氏は、暫定報告の「メディアの独立性」(Media Independence)という節で、こう指摘した。

    もし日本のジャーナリストが独立、団結、自主規制のためのプロフェッショナルなメディア横断組織をもっていたなら、政府の影響力行使に容易に抵抗することができたであろう。しかし、彼らはそうしない。いわゆる「記者クラブ」制度はアクセスと排除を重んじ、フリーランスやオンラインジャーナリズムに害を与えている

    Indeed, if journalists in Japan had professional media-wide institutions of independence, solidarity and self-regulation, they would likely be able to resist with ease attempts at Government influence. But they don't. The so-called "kisha club" system, or press clubs, value access and exclusion, to the detriment of freelance and online journalism.

出典:デビッド・ケイ氏の暫定報告(日本語の仮訳は引用者)

デビッド氏は記者会見の冒頭発言でも、報道評議会(Press Council)といった「メディア横断組織」の設立を強く奨励すると強調(会見動画14:17~、ハフィントン・ポスト抄訳)。記者クラブについても、「アクセスジャーナリズム」(引用注:取材対象と癒着した不健全なジャーナリズム)を促進し、メディアの独立性を阻害し、国民の知る権利を制約していると批判し、明確に「廃止すべき」(should be abolished)との考えを表明した(会見動画45:09~)。

ところが、4月25日までの在京6紙の報道を調べたところ、記者クラブ廃止の提言については、東京新聞(20日付朝刊3面)と朝日新聞(デジタル版)が少し触れた程度で、毎日、読売、産経は全く触れていなかった(日経は、デビッド氏の来日調査について報じた記事がゼロ)。朝日はデジタル版記事で、デビッド氏が「記者クラブの排他性も指摘し『記者クラブは廃止すべきだ。情報へのアクセスを制限し、メディアの独立を妨害している制度だ』と批判した」と報じていたのに、なぜか紙面版記事では提言の部分がカットされていた。
(略)
ただ、20日放送「報道ステーション」(テレビ朝日)がデビッド氏の調査活動について比較的詳しく取り上げていた。記者クラブ廃止の提言はVTRでは触れずじまいだったが、コメンテーターの後藤謙次氏(元共同通信編集局長)が「デビッド氏が日本の記者クラブ制度に触れているんですね。大手メディアを中心に、一定の官庁を含めた政党本部とかに記者クラブを使って取材する、これは非常に、報道の自由なアクセスを阻害しているのではないかという問題提起もありましたので、メディアに携わる我々が改めて、厳しい視線を意識しながら改革に努めていく必要もあると思うんですね」とコメントしていた。一応、メディアの改革の必要性を認めた点は評価できるが、当事者意識が感じられず、今後の改革につながるとの期待をもたせるものではなかった
(略)
報道を検証して浮き彫りになったのは、大手メディアにはデビッド氏の提言に耳を傾ける姿勢はなく、「メディアの独立性」を高めるための改革が必要であるという問題意識も持っていないということだ。デビッド氏の来日調査によって、大手メディアのプライオリティーが「メディアの独立性」や「国民の知る権利」を向上させることではなく、それらを多少犠牲にしてでも既存の制度のもとで便益を享受し続けることにあるとの疑いは、一層深まった、といわざるを得ない。


大手メディアが取り上げない「記者クラブ廃止」 国連担当者の地味な会見発言が拡散したワケ(2016年4月30日J-CASTニュース)

(略)
   J-CASTニュースでは東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われる記者会見を定期的に取材している。一部ネット上では「登壇者の人選が偏向している」といった批判が絶えないが、裏返せば「他では登場しない人」が多く登場するということでもあり、メディアによって取り上げ方も大きく異なる。今回の表現の自由をめぐるテーマは、ある程度高い関心を集めていた。ただ、

    「『特定秘密法で報道萎縮』 テレビ局にも圧力と国連報告者」(共同通信)
    「『日本は報道の独立性の担保を』国連人権理事会担当者」(NHK)

と、特定秘密保護法の施行を機にメディアが安倍政権への忖度(そんたく)の度合いを高めていることを主眼に報じたメディアが大半で、ケイ氏が記者クラブの廃止を主張した点に触れた社は朝日新聞や東京新聞など、必ずしも多くはなかった
   これに対してJ-CASTの記事では、

    「記者クラブのシステムは廃止すべきだと思う。アクセスを制限するツールだ。記者クラブに加盟している人と記者クラブ外の人の両方に話を聞いて思うのは、(取材源のアクセスを維持するために自分の論調を変えてしまう)『アクセス・ジャーナリズム』を助長しており、調査報道を弱体化させているということ。メディアの独立性にとって障害になっていると思う」

というケイ氏の具体的な発言を引用しながら、記者クラブという構造そのものがメディアの独立性を損ねているというケイ氏の見解を伝えた。

ジャーナリストが「メディアと政治の共犯的関係」と紹介

   大手メディアがネット上でこうした観点に触れることが少なかったこともあってか、この記事は、公開直後から注目を集めた。知りたいことを知るためには、既存メディアだけでは飽き足らないネットユーザーの関心が集中したともいえる。
   毎日新聞出身でネットの世界にも詳しいジャーナリスト、佐々木俊尚さんはこの記事のURLを紹介しながら

    「メディアが政治から圧力を直接的にかけられていることはない。メディアと政治の共犯的関係の問題だと私は思っています」

とツイートした。このツイートは200回以上リツイートされた。
   ただ、記事に寄せられたツイートやコメントも極めて多数にのぼり、佐々木氏のような意見が大半かというと、そうでもない。
   おおまかに分ければ、(1)「脆弱性とか表現の自由とか言う前に、マスメディアの品格と公正さを求めるよ」などと、今の日本のメディアが政府を批判する前に、自らの姿勢をただしたほうがいいとの声(2)「先進国として本当に恥ずかしい」などと日本の表現の自由が損なわれつつあることを危惧する声(3)国連の調査の妥当性に疑問を呈する声、の大きく3パターンの声が寄せられた。

実際の発言内容はこちらを参照していただきたいと思うのですが、しかし大手マスコミが報じないからこそかえって注目されると言うのもいかにも今の時代らしい話ですし、マスコミの意図に反して?マスコミそのものに対する批判の声が多く集まったと言うのも当然と言えば当然ではあるのでしょう。
ちなみに記者クラブと言うキーワードでニュース検索すると大手メディアがこの単語自体を取り上げていることがほとんどないと言うことが判りますが、その中で珍しく大手メディアの記事として目をひいたのが今回の発言内容と関連した産経の記事で、「是非米国の実態も調べて欲しい」とアメリカにも記者クラブが存在していることを挙げて「クラブに頼って取材してもなんの特ダネも出てこないことは日本も米国も同じ」だと結論付けています。
ネットの普及によって大手以外の個人レベルにおいても情報発信が自由に行えるようになった現代においては、記者クラブの排他的性質が報道の自由を大いに阻害していると非難されるところですが、一方でこうした「知的訓練を受けていない人」が情報発信出来てしまうこと自体を批判し、「責任あるマスコミが権威を持つ社会にしていく必要がある」等々と擁護意見も根強いことは注目されるところですよね。

ともかくもこうした点も関係してか記者クラブと言うものはネット住民とは相性が悪いようで、過去にも記者クラブ自体の横暴な行動を巡って様々な批判や非難の声も上がっていましたが、政府など公的な存在が公式のメッセージを発信するに当たってはやはり何かしらの形式を調えた場が必要となるはずで、記者クラブ的な存在そのものを否定することはナンセンスではないかと言う気もします。
また記者クラブ的な存在が有形無形の報道協定的なものの温床となり、俗に言うところの報道しない自由を行使することもまた日本だけの問題ではなく、2005年には当時のブッシュ大統領と記者団との食事会の席でコメディアンがイラク侵攻等について当人の目の前で辛辣なブッシュ政権批判を繰り広げたことについて、参加していた大手メディア各社が全く報じなかったことでかえって有名になったと言う事例もあります。
要するに日本の記者クラブだけが腐っていると言うのもフェアではない見方でしょうし、記者クラブは簡単にネタがとれて楽だと無条件に肯定するのもまたどうなのかですが、この点については中の人がどれだけ危機感を持って記者クラブの意義と言うことについて考えているのかで、特に良識ある進歩的メディアの中の人がいたずらに旧来の慣習に甘んじているように見えるのは違和感を感じずにはいられません。

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コメント

報道しない自由w

投稿: | 2016年5月14日 (土) 10時00分

アメリカの記者クラブと日本の記者クラブは、かなり違うと思いますが。たとえばザイゾ-の記者でも記事を書いて実績を作ればホワイトハウス記者クラブに入れますが、日本の記者クラブには絶対に入れません。アメリカの記者クラブは本人記者実績(署名記事をどのくらい書いたか)が重視されますが、日本の場合は所属会社がすべてです。

投稿: RYU | 2016年5月20日 (金) 16時42分

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