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2016年5月21日 (土)

「中絶=人殺し」論争が勃発

アメリカなどではしばしば非常に大きな議論となる一方で、我が国ではさほど大きな話題にならない問題に人口妊娠中絶の是非と言うものがあって、もちろんこの種の問題は人それぞれに考えがあってのことでいいのだろうと思いますが、一方でこれはどうなのかと先日話題になっていたのがこちらのニュースです。

「中絶は人殺し」なのか? とある女子校の“性教育方針”に賛否!(2016年5月6日ViRATES)

中絶とは「人殺し行為」なのか?

産婦人科医のTwitterユーザー・ドキ子@猫アカウントさん(@dokikoYAMAYOKO)のツイートをきっかけに、中絶に対する議論が巻き起こっている。
きっかけは、とある女子校の指導方針だった。

    母校の性教育を頼まれてるんだけど、今年は断りたくなってきた。私はこの中絶に対する考え方には同意できない。「人殺し」みたいに言って脅せば、望まない妊娠した場合に中絶しにくくなるだけ。望まない妊娠を阻止する効果はないと思う。 pic.twitter.com/M6GJa09J3a
    — ドキ子@猫アカウント (@dokikoYAMAYOKO) 2016年4月30日

この女子校の性教育において、中絶は「新しい命を殺す行為」という方針であった。
しかし、産婦人科医のドキ子さんは、この学校の方針に異論を唱えた。

    私は避妊の話をこまかく説明してるし、「もし、高校で妊娠したら今の日本じゃ中退、大学進学も厳しい、子供いながら就職は難しいよ。だからきっちり避妊しよう。心も体も経済的にも準備ができてから妊娠しよう」って説明してる。そのうえで「中絶は緊急措置なの」と。その考えが気に入らないのかしら。
    — ドキ子@猫アカウント (@dokikoYAMAYOKO) 2016年4月30日

    話を聞いてる子のなかに、中絶経験者がいたら?その子はもともと自分を責めてるはずよ。それに私が追い打ちかけるの?私はそんなことしたくない。
    — ドキ子@猫アカウント (@dokikoYAMAYOKO) 2016年4月30日

    中絶って女の子の負担が大きいから、そりゃ私だってやらないほうがいいと思ってるさ。体も心も負担大きいもん。だけどさ、頑張って避妊したって妊娠しちゃうことはあるし、性行為を強要されることもあるし。もちろん、避妊の話はしっかりしてるよ。コンドームは失敗率が高いことも含めてね。
    — ドキ子@猫アカウント (@dokikoYAMAYOKO) 2016年4月30日

    あと、性行為をしなきゃいいって考えもあるけど、純潔教育をしていたころより、避妊の話をしっかりした性教育をしている今のほうが、中絶率は減ってることを考えると、「性行為をするな」って話だけじゃ望まない妊娠は減らないんだと思うのよ。
    — ドキ子@猫アカウント (@dokikoYAMAYOKO) 2016年4月30日

    そして、純潔教育っていうなら男のほうにそれをしてくれよって感じだよ。大好きな彼氏から性行為を迫られて、断れない女の子の気持ちにもなってくれ。嫌われたくないから断れないとか、怖くてされるがままだったとかいう子もいるでしょ。
    — ドキ子@猫アカウント (@dokikoYAMAYOKO) 2016年4月30日

    今回の話ですが
    ・女子校
    ・毎年、避妊、中絶、性行為感染症、高齢妊娠のリスク、産休と育休の話をしてる
    ・毎年「中絶は人殺しではない。女の子を守る緊急措置」「今の日本で高校生が産み育てるのはかなり難しい。」「性欲が抑えられず女の子を大切にしない男もいる」と話してる
    という前提です。
    — ドキ子@猫アカウント (@dokikoYAMAYOKO) 2016年4月30日

このツイートをきっかけに、「中絶」に対する様々な意見がTwitter上で交わされた。
(略)
「中絶=人殺し」という議題に対して、賛否両論あった。
様々な意見が飛び交う中、産婦人科医のドキ子さんは最後にこうつぶやいている。

    こんなにrtされたり、まとめられたりするとは思わなかったので、私自身戸惑い。いろんな意見もあると思いますが、産婦人科医として望まない妊娠を防ぎつつ、望まない妊娠をしてしまった子を救いたいっていう気持ちです。
    — ドキ子@猫アカウント (@dokikoYAMAYOKO) 2016年4月30日

学校の方針と自分の考え方が全く違うのに毎年依頼されてきたと言う状況もよく判らないのですが、わざわざ外部から専門家を呼んで学校の方針に反する話をさせていたのでは教育効果としてもいかがなものかで、単純に学校側の人選があまりよろしくなかったと言うことなのでしょうかね。
中絶人殺し論と言うと別に珍しいものでもなんでもなく、特に宗教的見地からこうした行為は決して許されないと強固な反対意見を主張する方々もいらっしゃるし、国や地域においてはそれが法律上の決まりにもなっていると言う場合もありますが、日本においても実は明治以来法的には人口妊娠中絶が禁止(堕胎罪)されてきたと言う背景があります。
これが覆ったのが戦後の混乱期に社会的要請に基づいて制定された優生保護法(昭和23年)ですが、平成8年にはさらに改められて母体保護法となり、「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」「暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの」に限って中絶が認められているのが現状です。
実際にはそのほとんどが「身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」と言う名目で行われていることになるのでしょうが、昨今流行りの胎児遺伝子検査などを巡る議論を見ても果たして実質的に自由無制限に中絶を許していていいのかどうかと言う声も根強くあり、各人それぞれの考えで決めると言うわけにはなかなかいかないようですよね。

人間がいつから人間になるのかと言う定義はなかなか難しくて、少なくとも遺伝子的にも一人前の人間ではない配偶子の段階はともかく、受精してから妊娠何週と言う区切りが妥当なのか、物心つく以前の乳児などは人間扱いされるべきなのか等々様々な考え方もあるかと思いますが、日本の中絶可能時期は胎児が体外で生きられるかどうかと言う即物的な理由で決められていて、例えば将来人工子宮なりが実用化されるとどうなるのかですね。
法的に中絶が禁止されている国は数多くあったものの、近年では違法な堕胎による健康被害が報じられ議論が起こるなどした結果限定的に認めると言う国が増えてきているそうですが、宗教的理由等から反対意見も未だ根強くあって、中絶を行った産科医が殺されるなどと言った事件も起こっているそうです。
いずれにしても中絶をするなと言うならどうやって中絶をしないで済むかの方法論も議論しなければ片手落ちだし、今どき純潔教育で対処すると言うのもさすがにどうなのかですが、一部宗教ではそもそも避妊なども不自然な行為で許されないと言う考え方もあるのだそうで、この辺りは同じ中絶反対派でも温度差がありそうですよね。
ちなみに明治期の日本を始めとして国力増強と言う観点から政策的に中絶を禁止すると言う国は決して少なくないのだそうですが、少子化対策が急がれる現代日本においてもさすがにそれを理由に中絶禁止も非現実的だとしても、社会的にはなるべく産んでもらうと言う考え方での政策的誘導が行われる可能性はあるものでしょうか。

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コメント

赤の他人に自分の偏狭な価値観を押し付けたがる奴ってなんなの?

投稿: | 2016年5月21日 (土) 10時19分

>他人に自分の偏狭な価値観を押し付けたがる奴ってなんなの?

本当にそうですね。おなかの中の生命体は、遺伝子も母とは異なる別個の存在ですから、親の偏狭な価値観にを押しつけることよって命(=将来)を奪うなんて...ということが論点なんだと思います。

投稿: おちゃ | 2016年5月22日 (日) 13時10分

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