« 今日のぐり:「まりーな亭」 | トップページ | 人類はついに老化を克服するのか »

2016年5月 9日 (月)

アメリカ人の死因第3位は医療ミス?

先日なかなかショッキングなニュースが話題になっていたことをご存知でしょうか。

米国人の死因、第3位は「医療ミス」か 推計25万人が死亡(2016年5月4日CNN)

(CNN) 医師が切除部位を間違えたり患者を取り違えたりといった医療ミスがこのほど、米国で心疾患とがんに続く3大死因に浮上する可能性があるという研究結果が、英医学誌BMJの最新号に発表された。ほとんどの医療ミスは発見されないまま見過ごされているとも推測している。

米ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが死亡率に関する調査結果などを分析したところ、医療ミスで死亡する患者数は肺気腫や気管支炎といった呼吸器系疾患で死亡する患者数を上回り、心疾患とがんに続いて米国で3番目に多い可能性があることが分かった。

米国では年間少なくとも25万1454人が医療ミスで死亡していると研究チームは推計。この数字には自宅や老人ホームで死亡した症例は含まれないことから、実際の死者数はこれを大幅に上回ると推測している。

医療ミスによる死者数は、米医学研究所の1999年の調査では4万4000~9万8000人だった。米保健福祉省の2008年の統計では、高齢者向け医療保険メディケアの患者だけで18万人としていた。

今回の研究結果をまとめたジョンズ・ホプキンス大学のマーティン・メイカリー教授は、死亡証明書に記載される内容が不十分なため人為ミスの実態が把握できないことや、医療ミスを防ぐための装置や仕組みが整っていない病院が多いことを問題として挙げ、「患者の安全性向上を優先課題とする必要がある」と指摘する。

これまでの調査では、米国に限らず世界各国で、医療ミスの実態が把握できていない問題が存在することが明らかになっている。

年間25万人も医療ミスで死んでいると言えば何やら大変なことが起こっているかのように聞こえる記事で各方面で話題になっていたようですが、気になる元論文に関してはこちらを参照いただければと思いますが、日本でも行われているインシデント・アクシデントレポートの数から推計で算出された数字だと言うことで、数字の根拠となる症例の定義づけなど色々と議論を呼びそうな内容ではあります。
一般に症例検討やレポート等では教訓を引き出すと言う目的があるものですから、かなり無理矢理にでも「こうすればよかった」式の結論をひねり出す傾向にありますが、そうした文言だけを真に受けてこれは全て避けられたはずの医療ミスであると結論付けられてしまうと、臨床現場の実感とは大いに乖離する可能性がありますよね。
これについては医療の現状に警鐘を鳴らし医療安全の改善を促すための警告としての数字であり、かつて医療訴訟が極めて盛んだった頃に盛んに言われていた後出しじゃんけんの理屈で、グーを出せば勝てていたのにパーを出したから有責と言った類の責任追及に絡めて議論されることは執筆者の本意でもないと思われますが、では日本ではどうなのか?と言う点に関しては誰しも気になるところだとは思います。

直接的な数字としてこうしたものの推計や統計は見た記憶が無いのですが、すでに人口比率で考えれば日本では○万人だと言ったいささか乱暴な数字をはじき出す人もいて、臨床医の人数から遭遇確率と言うものを考えた場合に現場の実感としてさすがにそれはどうよ?と感じられる先生方も多いのではないでしょうか。
別な面ではしばしばその名称からして何かしら医療ミスがあったかのように誤解を受けると言った批判を受ける医療事故調制度に関連して、発足後半年間で「診療行為に関連した予期せぬ死亡」として届け出が行われた件数が188件だったと言い、これらが直接医療過誤であると示すものでは全くないものの、未だ届け出が抑制的であると考えてもいささか数字の桁数には乖離がありますよね。
他方で患者側目線で考えれば医療紛争が未だに少なくなく、明確に紛争化せずとも医療過誤ではないかと言う心証を抱いているケースはずっと多いだろうと考えると、医療従事者と患者側とで捉え方にかなり開きがあるだろうことは想像できるのですが、ひるがえってアメリカにおいても同様の現象が起こっているのだと考えると、下手をすれば毎年百万人単位で「医療ミスによる死亡」が発生しているともなりかねません。
「医者が患者をだますとき」などの著書がある米国の小児科医ロバートメンデルソンの言葉「医者の労力のかなりの部分が、人を死に至らしめる行為に費やされている。現代人はこの由々しき事実から目をそらしてはならない」が今もしばしば引用されますが、相反する立場のいずれが最も真実に近いのかと言う判断基準がはっきりしない限り、「病院にはできるだけ行くな」式の極論が今後も一定の支持を集めるのかも知れません。

|

« 今日のぐり:「まりーな亭」 | トップページ | 人類はついに老化を克服するのか »

心と体」カテゴリの記事

コメント

死者続出なら裁判になってんじゃない?
訴訟大国アメリカなんだから

投稿: | 2016年5月 9日 (月) 07時55分

アメリカなので保険の関係で選択したくても、その医療が出来ないってのもあるかと。

投稿: 浪速の勤務医 | 2016年5月 9日 (月) 10時37分

ハーバードとは言わないにしても、スタンフォード大やイリノイ大ではなくって、
公衆衛生のメッカ的存在 ジョンズ・ホプキンス大ならではの発表だろうよ…
と、フィルターを掛けて見てしまうのですが。

投稿: | 2016年5月 9日 (月) 10時40分

実際にフィルター越しに見るべき数字だとは思うのですが、やはり大きな数字だけにインパクトはありますよね。

投稿: 管理人nobu | 2016年5月 9日 (月) 10時49分

日本でも何万人も犠牲者がいるんでしょ

投稿: | 2016年5月 9日 (月) 17時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/63599601

この記事へのトラックバック一覧です: アメリカ人の死因第3位は医療ミス?:

« 今日のぐり:「まりーな亭」 | トップページ | 人類はついに老化を克服するのか »