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2016年4月 1日 (金)

名大病院救急で逃散発生?

久しぶりに大規模逃散発生か?と生暖かい期待感を込めて見られているのがこちらのニュースですが、実際にはそうでもないらしいと言う話もあるようで、まずは記事から紹介してみましょう

名大病院、救急科医師9人が月末に一斉退職 調査委設置(2016年3月30日朝日新聞)

 名古屋大学病院(名古屋市昭和区)の救急科の医師21人のうち、9人が3月末で一斉に退職することが病院への取材でわかった。病院は外部の有識者を加えた調査委員会を立ち上げ、退職の経緯を調べる。救急患者の受け入れは、他の診療科の医師の応援を受けるなどして、影響が出ないようにするとしている。

 名大病院によると、他の病院から研修に来ていた医師が元の病院に戻ったり、出身地に帰ったりする医師らの退職が重なったという。ただ、「教授と意見が合わなかった」など職場環境への不満をあげる医師もいるため、4月上旬に調査委員会を設置する。

 一方、救急科の松田直之教授は「医師が研修に出たり、地元に戻ったりすることが重なっただけ。一時的に人数が減るのは全国的な救急医不足が根本的な問題だ」と説明している。

 同病院では、内科や外科などの医師が応援に入り、救急科を支える。救急科には4月に2人、5月にも1人の医師が加わる見通しで、病院は「救急車を断ることなどは考えていないので市民に影響はない」としている。

年度末の異動の時期でもありますから、ちょうど大勢が転勤しまた4月以降新たに大勢が赴任してくると言うだけのことなのかも知れませんが、風の噂によればまあそうした事態が発生しても違和感はないと言う状況ではあったそうですし、実際に病院側も現場の医師の声を取り上げわざわざ調査委員会まで設置すると言うのですから、何かしらの異常事態ではあったのでしょう。
名大病院くらいになりますと勤務希望の医師には不自由しないのかと考えてしまうのですが、そもそも大学病院が医師にとって優良な労働環境であったことなど今までなかったことでもあり、なおかつ救急と言う一分一秒を争う環境においては色々と中の人的にも言いたいことは多々あったようで、コメディカルにはひと言ならず言いたい云々と言ったありがちな話も漏れ聞こえて来ます。
とは言え、ひと頃あれだけ騒がれていた医師不足だ、医療崩壊だと言った現象が昨今それほどには報じられなくなったこともまた傾向としてあるようで、もちろんありふれた現象になり過ぎてニュースバリューがなくなったと言う可能性もないことはないのでしょうが、全般状況としてはいずれ将来的に医師数は充足するだろうと言う予測が多く、すでにその影響が現場にも出始めているようです。

医師不足、2033年までに解消へ- 厚労省が需給推計、人口減影響も(2016年3月31日CBニュース)

厚生労働省は31日、医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会に対し、2040年までの医師の需給推計を示した。遅くとも33年ごろまでには医師の供給が需要を上回り、「医師不足」の状態が解消される見通し。需給が均衡した後は「将来人口の減少により、医師の需要は減少すると考えられる」としている。【新井哉】

厚労省の推計によると、医師の需要が最も大きくなる「上位推計」と需要が最小となる「下位推計」、中間指標の「中位推計」の3つのパターンを提示。中位推計では24年ごろに需要と供給が約30万人で均衡状態となり、上位推計では33年ごろまでに約32万人で均衡状態になるとした。

厚労省は40年の推計も提示し、需要は上位推計で31万4900人、供給は16年度の医学部定員(9262人)が継続した場合、33万3192人と推計。40年の時点で1万8000人超の医師が「余剰」となるといった見通しを示した。

40年の需要(上位推計)の内訳は、入院医療(一般病床・療養病床)が20万800人で最も多く、以下は外来医療(9万800人)、精神病床の入院医療(6000人)、医育機関などの研究分野(5600人)、介護老人保健施設(4200人)、産業医業務(2740人)、行政機関等(2170人)、製薬業界(1570人)などの順だった。

こうした推計に対し、委員からは「これから25年先の推計を現時点でするのは相当無理がある」といった指摘のほかに、医師の労働環境を考えた上で需給の推計を行うことを求める意見も出た。厚労省は今後、委員の意見などを需給推計に反映させるかどうか検討する見通しだ。


「勤務医の就労環境、改善傾向」、日医1万人調査(2016年3月31日医療維新)

 日本医師会の道永麻里常任理事は3月30日の定例記者会見で、勤務医を対象に健康状態を調査した「勤務医1万人調査」の結果を公表した。前回調査の2009年から勤務状況が改善傾向にあることや、年収と健康状態に相関がないことが分かった。

 調査は2015年6月に日医の勤務医会員1万人を対象に実施、3166人から回答があった。2016年3月にまとめた日医の「勤務医の健康支援に関する検討委員会答申」の中に、結果の概要が盛り込まれている。

 勤務状況については「最近1カ月で休日なし」が前回2009年の調査(n=3879)の8.7%から5.9%に、「自宅待機・オンコールが月8日以上」が20.1%から17.9%に、「当直が月4回以上」が26.4%から22.5%に減少するなど、就労環境は改善傾向にあった。

 健康状況では、「主観的健康観(健康でない・不健康)」が21.5%から20.1%、「自殺や死を毎週/毎日具体的に考える」は5.7%から3.6%、「抑うつ症状尺度中程度以上」が8.7%から6.5%、「重度以上」が1.9%から1.1%に、それぞれ低下した。一方で、「他の医師への健康相談あり」は45.9%から55.1%に増加していた。
(略)

まあこの状況をして改善と言っていいのかどうか微妙な数字が並んでいるのですけれども、しかし以前と比べれば悪くはなっていないと言う実感は多くの先生方が持っていると思いますし、統計的に見ても医師不足現象と言うものは一応の底を打って改善傾向に転じつつアルのではないかと言う気がします。
ただその一方で局所的な医師不足は相変わらず発生していて、一気に大勢の医師が去って行ったと言ったこともしばしば見られるのですが、それもいわゆる逃散現象と言うよりも医師集約化などリソース再配分に伴うものが主体で、激務に耐えかねて集団離職と言うケースは以前ほどではなくなってきている印象があるのですがどうでしょうね?
医局などが政策的に医師の集約化や再配置を進めていることは全国的な傾向で、これはこれで現場にとっては大変な騒動ではあるのですが、一方で医師が全般的には数として充足してきている中で、それでも古典的な意味での逃散現象が発生する現場と言うのはレアケースであって、それだけに相当に筋金入りであったと言う推測も成り立つのかも知れません。
名大病院救急が実際にどのような状況であったのかは何とも言いがたいですが、少なくともこれだけニュースになるような大規模離職が起こった以上現場環境に問題がなかったとするのも無理があるところであり、今までは環境が悪くとも人は来るからとその改善に積極的でなかったのだとすれば、これを契機に大学病院当局がどのような改善策を提示できるかにこそニュースバリューがありそうには思いますね。

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コメント

医師過剰って……
ああ4月1日か……

投稿: | 2016年4月 1日 (金) 08時29分

ボスとまったく軋轢ない職場ってのもそうはないでしょうけどね。
人数が減ってここからさらに連鎖が続くのかどうか。

投稿: ぽん太 | 2016年4月 1日 (金) 09時12分

>コメディカルにはひと言ならず言いたい云々と言ったありがちな話も
やはり宮廷医のコメは、頭の高さも一味違うのでしょうか?

投稿: | 2016年4月 1日 (金) 09時36分

実感として過剰ですよ。過剰な分、ジョイさんは子育てちゃんとやってますよ。といいましても、全国で最も統計上多い京都市のことですが。私は、大阪や滋賀に出稼ぎです。

投稿: 麻酔フリーター | 2016年4月 1日 (金) 10時09分

今後も医師一人約1億の医業収入を維持しようとすれば医療費増大は避けられず、診療報酬減額から薄利多売を強いられ、医師数増加に関わらず過剰労働がむしろ増強されると言う悪いシナリオもありそうに感じています。

投稿: 管理人nobu | 2016年4月 1日 (金) 13時00分

静岡に出稼ぎに来てくれませんか?

投稿: 非医師 | 2016年4月 4日 (月) 18時49分

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