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2016年4月 5日 (火)

後から直しが効く場合はまだしもなんですが

本日の本題に入る前に、iPS細胞の臨床応用と言うものが各方面で研究されている中で、最近こんな記事が出ていました。

ヒトiPSから膵臓細胞、血糖値低下 サルに移植(2016年3月20日朝日新聞)

 ヒトのiPS細胞から作った膵臓(すいぞう)の細胞をサルに移植し、血糖値を下げることに成功したと、東京大分子細胞生物学研究所などのチームが、大阪市で開かれている日本再生医療学会で発表した。ヒトiPS細胞を使ってサルの血糖値を正常に戻したのは世界で初めてという。

 チームはヒトiPS細胞を培養して変化させ、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞を含む塊を作製。この塊を特殊な細い管に詰め込み、マーモセットという小型のサルの腹に移植した。
 マーモセットは事前に膵臓の一部を切除されるなどし、うまくインスリンが分泌されない「1型糖尿病」に近い状態になっていたが、移植後には血糖値が正常な値まで下がったという。マーモセットの血液中からは、ヒト由来のインスリンも確認できた。

 今回は移植後2週間ほどしか経過を見ていないが、特殊な管は入れ替えることもでき、1型糖尿病の治療法につながる可能性もあるという。東京大の宮島篤教授(細胞生物学)は「必要がなくなれば後から取り除くこともできる。細胞を入れる方法や培養にかかる費用など課題もあるが、効果が持続する期間などをさらに調べていきたい」と話す。(合田禄)

iPSで皮膚まるごと再生 理研などマウスで成功(2016年4月3日朝日新聞)

 マウスのiPS細胞を使い、毛を生み出す「毛包(もうほう)」や皮脂腺などを含む皮膚全体をまとめて再生することに成功した、と理化学研究所(理研)などのチームが発表した。やけどや重度の脱毛症などの治療に役立つ可能性があるという。論文が1日付の米専門誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載される。
 皮膚は表皮や真皮などの層状になっていて、毛包、皮脂腺、汗腺などが含まれる。ヒトの皮膚から表皮のみを培養してやけどの治療に使う再生医療製品はあるが、複雑な構造をした皮膚全体をまとめて再生したのは初めてという。

 理研多細胞システム形成研究センター(CDB)の辻孝チームリーダーらは、マウスiPS細胞を培養し、皮膚の様々な組織のもとになる細胞の塊を作製。この塊を複数個、コラーゲンの中に入れるなど独自の方法でマウスの体内に移植すると、一部で通常と同じような構造の皮膚が再生された。その部分を別のマウスの皮膚に移植すると生着した。毛がはえかわることも確認された。
 辻さんは「ヒトiPS細胞でも同様に皮膚をまとめて再生することは可能だろう」と話す。(南宏美)

近い将来ブラックジャックがリメイクされた際にはあの移植皮膚の由来についての設定にももう一工夫必要になるものなのだろうかなどと馬鹿なことも考えるのですが、しかし膵島移植など手がけてきた先生は複雑な心境なのでしょうが、こうしてあちらこちらで画期的な治療法が開発されつつあると言うのは患者の立場からすると何とも心強い話ですよね。
機能的に不足する部分はこうして補えばいいとして、癌など余計なものが出来てくる病気にはあまり役に立たないのかと言う人もいるでしょうが、例えば臓器の機能が再生出来るようになれば手術でもより多くの部分まで切れるようになる理屈で、人工臓器が実用化すれば各方面に様々な影響が出てくるだろうとは想像できますし、生まれつきの障害がある人などにとっては大変な福音となる可能性がありますよね。
もちろんそもそも病気にならなければそれにこしたことはないのですが、最近この病気のなりやすさと言うことを評価する上で有用性が期待されているのが遺伝子診断の技術で、どの病気になりやすいかが判ればそれだけ早くに対応できるのではないかと考えられるのですが、一方でこんなちょっと気になる応用例も出てきているようです。

明治安田生命、遺伝情報、保険に活用検討 病気リスクで料金に差も(2016年4月3日毎日新聞社)

 大手生保の明治安田生命保険が、人の遺伝子の情報を保険サービスに活用する検討に入ることが1日、分かった。病気の発症リスクを分析し、予防に活用する取り組みなどが想定される。ただ、遺伝子は生涯変わらない究極の個人情報。情報管理や、遺伝子に基づく差別の懸念など倫理的な問題をはらんでおり、同社は専門家も交えて慎重に検討する。早急な法整備も求められそうだ。【土屋渓】

 国内の主要生保で、遺伝情報の活用に本格的に踏み込むことが分かったのは初めて。明治安田生命は1日、最先端の情報技術を駆使した金融サービスを開発する専門部署を設置、遺伝情報を活用したサービスについても研究を始める。専門知識を持つ人材を中途採用するほか、遺伝情報の解析を行うベンチャー企業との提携なども検討する見通しだ。
 顧客の同意を得て遺伝情報を分析すれば、特定の病気の発症リスクを一定程度予測できる。同社は情報の具体的な活用法について「明確にはなっていない」と説明するが、業界関係者によると、分析結果をもとに健康管理や生活習慣の改善方法などをアドバイスし、病気にかかるリスクを減らすサービスなどが想定される。発症リスクが低減すれば保険料を安くできる。健康な人が増えて保険金の支払いが減れば、保険会社の収益改善にも貢献する。
 一方、病気になりやすい遺伝子を持っていることが分かれば、保険料を普通より高く設定したり、保険加入そのものを断ったりすることも可能になる。そうなれば、遺伝情報を材料にして顧客を差別することになり、倫理的な問題も生じる。米国で2008年に制定された「遺伝情報差別禁止法」は、医療保険分野で遺伝情報をもとに加入の可否などを判断することを禁じた。ただ、生命保険は、利用者が遺伝子検査の結果を利用して高額な保険に加入したいと考える可能性もあるため、遺伝情報を使える。日本にはこうしたルールが無く、利用者保護の議論も進んでいない
(略)
 遺伝子検査の結果と統計データをもとに多因子性疾患のリスクを確率で知らせるビジネスも普及しているが、日本医学会は「まだ科学的根拠が確立されていない」と批判している。
 さらに、遺伝子検査の結果を保険料の水準や加入の可否に結びつければ、利用者を不当に差別する懸念もある。このため、米国やドイツ、フランス、韓国などは、遺伝情報に基づく差別を禁止する法規制を導入しているが、日本には存在しない。政府は昨年11月から続けるゲノム医療の実用化を目指す検討会で、法整備の必要性について検討する方針を示しているが、議論は未着手だ。
 こうした課題をクリアして遺伝情報の活用が進めば、生命保険ビジネスは根本から問い直される可能性もある。

 保険料は基本的に、年齢と性別などから算出する。顧客は病歴などを事前に告知する義務があるが、加入後は不健康な生活をする顧客と、運動などで健康に暮らす顧客で保険料に変わりはない。生保業界が描くシナリオの一つは、遺伝情報や生活習慣が病気などのリスクにどう関わるかの分析を進め、リスクに応じて保険料に差をつけることだ。
 一方で、がんになりやすいとされる遺伝子を持っていることを知った顧客が、高額な保険金の商品に加入するケースも想定される。逆に、病気になりにくいとされる遺伝子を持つ顧客は加入の動機が薄れる。明治安田生命の永島英器執行役員は「遺伝子の解析技術が進み、病気や死期がかなりの確度で予測できてしまえば、そもそも保険は必要なのかという議論にもなってくる」と説明。保険金支払いの可能性が高い顧客ばかりが加入し、ビジネスモデルが揺らぐ事態も想定される。【土屋渓、千葉紀和】

要するにこの話、表向きは「病気のリスクを知って予防に取りかかればお安くなりますよ」と言う話になっているのですが、当然ながら裏を返せば「病気のリスクがあれば保険料が高くなりますよ」と言う話でもあって、個人情報を個人の不利益につながる方向で活用するのはどうなのよ?と言う批判の余地はあるでしょう。
もちろん実際には全員に強制と言うわけでもなく、検査を受けてリスクを知ればこれだけ利益がありますよと言う方向で話をするのでしょうが、当然ながらこうした検査を受けない人と言うのは何かしら思うところがあってのことでしょうから、保険会社から見ればあまり優良ではない顧客の可能性が高いと判断されかねません。
ただ生まれもったものを活用して人生をより有利に生きていくと言うことは実は生物の本能に近いものがあって、突き詰めれば芸能人が美男美女ばかりなのはケシカランじゃないかと言う話にもなりかねないのですが、親からの資産を引き継いでお得な人生を送るのが許容されるのに親からの遺伝子だけ問題視するのは駄目だと言い切っていいものなのかどうか、考えてみるとなかなか微妙な問題でもあります。
管理人個人としては生まれついて持っている資質で本人の努力ではどうしようもないものに基づいて、個人間の扱いに差異を設けることには反対する立場なのですが、しかし企業活動として考えますと明らかにリスクに差があると言う場合に同じ対応をしていては価格競争力や経営の面で不利だと言うことは理解出来ますから、いずれこうしたものはどこかで利用が広がってくることになるのだとは思いますね。

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コメント

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            |  彡⌒ミ
           \ (´・ω・`) また髪の話してる・・・
             (|   |)::::
              (γ /:::::::
               し \:::
                  \

投稿: | 2016年4月 5日 (火) 07時50分

>生まれついて持っている資質で本人の努力ではどうしようもないものに基づいて、個人間の扱いに差異を設けることには反対する立場なのですが、

生命保険料は、男女(一応どうしようもないかな)で差がついてますけれど。死亡保険は男が高く、年金保険は女が高い。どうしましょ。

投稿: falcon171 | 2016年4月 5日 (火) 08時48分

毛根だけでも再生できたら売れるんでしょうねえ。

投稿: ぽん太 | 2016年4月 5日 (火) 08時49分

それこそ技術的な進歩で男女の性的役割の差異が解消される頃には、男女に関する考え方も今とは随分と変わっていそうに思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2016年4月 5日 (火) 10時50分

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