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2016年4月22日 (金)

医療は儲かる商売か否か

井山六冠が史上初の七冠を達成したとニュースが出ていますが、その井山七冠よりも世界ランキング上位に位置していたイ・セドル九段が人工知能に完敗したことでにわかに人工知能の人間越えが現実味を帯びてきたと言うことなのでしょうか、先日こんな記事が出ていました。

人工知能の普及で「医者」も「弁護士」も給料が下がる(2016年4月10日デイリー新潮)

 人工知能「アルファ碁」が、4勝1敗で世界トップ棋士を圧倒。予想を超える速度で進化する人工知能は、近い将来、ほとんどすべての仕事を代替できるようになるという。データ処理、気象予報、株式相場予想……。そして、アートディレクター、画家、小説家、音楽家などの「芸術」職も例外ではない。

 ゴールドライセンスと呼ばれた医師や弁護士についても神戸大学名誉教授で『人類を超えるAIは日本から生まれる』の著者の松田卓也氏はこう言及するのである。
「医療現場でも、IBMのAI、ワトソンによる診断の正答率は、人間の医師を上回ったという結果が出ています。患者のデータをワトソンに入れると、どの病気に罹っている確率が何%で、候補となる治療法は何か、などと教えてくれるアプリケーションを、IBMは開発しました。ただ、人間は心情的に、ロボットに診断されたくないから、患者とコミュニケーションをとる医師はいなくならないでしょうが、医師を補助するAIが活用されるようになる。弁護士も同様で、アシスタント業務を行うパラリーガルという職種には、AIが使われるようになるでしょう。医師も弁護士もAIが持つ知識をもとに判断するようになる。今のように膨大な知識を獲得して難しい試験をパスする必要がなくなり、医師も弁護士も価値が下がって、給料は低くなるでしょう」

■“技術的特異点”はいつか

 ところで、進化を重ねた人工知能が、人間よりも頭がよくなってしまう時点は“技術的特異点”と呼ばれる。これまで、2045年ごろに訪れるのではないか、と言われていたが、
「私は自分の講演会で、よく会場の方々に“AIが人間を超えるのはいつになると思いますか”と聞きます。以前は“2040~60年”という回答が多かったのですが、最近は“2026~40年”と答える方が多い
 そう語るドワンゴ人工知能研究所の山川宏所長自身、AIの進歩の加速を肌で感じているそうで、
2050年以降はAIが進歩しすぎていると思われ、想像もつかない。ギリギリ想像できるところまで話すと、20年ごろまで、まだAIに代替されないのは、複雑な問題解決能力、意思決定、創造性、感情労働、そしてマネジメント業でしょう。その後、徐々にAIが代替し、50年ごろには、人間は自分専用の医師や弁護士、教師をAIで持っていることでしょう」

 なかなかイメージが湧きにくいが、そのころには、
「AIはメガネやコンタクトレンズのようにウェアラブル、つまり装着可能なものになって、人間の知力が増強されると思う。人間とAIが一心同体となり、他人からは、私自身が頭で考えているのか、AIで知力を増強しているのかわからず、知能指数100の人が200にも1000にもなれる時代が来るのです」
 と、前出の松田氏は肯定的にとらえる。とまれ、山川所長は、
「子どもたちは今のうちから、こういう社会ができるという心構えを持った上で、何を勉強するか、どんな職業に就くか、考えなければなりません
 と、警告するのである。
(略)

医療現場に関して言えば多忙を極める人間が人間の得意な領域に専念出来るようになればこれはむしろいいことではないかと思うのですが、こうした場合に仕事が楽になることは歓迎しても給料が減るのは勘弁して欲しいと考えるのは人間の当然の心理と言うもので、機械化によって多くの労働者が仕事を失ってきたような光景が知的専門職においても今後見られるようになって来る可能性もありますね。
こうした点から記事にもあるように将来の社会的受容なども考えに入れた上で学生も進路を決めていくべきだと言うのはその通りなのでしょうが、先日大阪の小学生を相手に行われた調査では将来の夢として第2位に医師になることが挙げられたのだそうで、彼らが医師として一人前になるころには人工知能に仕事を脅かされているかも知れないと考えると、果たしてその進路でいいのかどうかと不安に感じるべきなのでしょうか。
とまれ、医療と言う業界の将来が決して暗いものではないと考えるのは日本の小学生だけに留まらないようで、実利を優先することではある意味で大阪以上のところがあるアメリカにおいてもこんな話が出ているようです。

医療関係が半数以上、アメリカで今後最も伸びる職種トップ20(2016年4月20日MSN)

米労働省のデータによれば、アメリカで最も伸び率の高い職種の多くは学士号が必要なく、給与も米国の平均以下だという。「フォーブス」はこのほど、米労働省が2014~2024年の間にどの職種が最も伸び率が高いかを予想し、それぞれの職種の2014年時点の給与の中央値を記したデータを検証。その結果は意外なものとなった。
(略)
リスト入りした職種のうち、博士号を取得していなければ就けないのは4つだけだが、それらの仕事の給与中央値は83,380ドル(約912万円)。より給与の高い仕事に就きたい人は、検眼医や医師助手、理学療法士といったキャリアを検討するべきだ。これらの職種の給与中央値は年90,000ドルを超えている。
また、13職種が医療業界で、多くは増加しつつある高齢者を対象とするものだ。65歳以上の高齢者は2010年時点で全人口の13%と、1970年から10%増加した。米国勢調査局によれば、2040年までには20%に達すると予想されている。訪問介護士や補聴器の専門医に加え、理学療法や作業療法に関連する5職種の伸び率が高い理由は、アメリカの高齢化にある可能性が高い。
(略)
最も伸び率が高い職種トップ20は以下の通り。
1. 風力発電用タービンの技術員
2. 作業療法士 助手
3. 理学療法士 助手
4. 理学療法士 補佐
5. 訪問介護員
6. 商業ダイバー
7. ナース・プラクティショナー(上級の看護職)
8. 理学療法士
8. 統計学者
10. 救急車の運転手または同乗する看護婦
11. 作業療法士 補佐
12. フィジシャンアシスタント(医師の監督下で医療行為を行う専門職)
12. オペレーションズリサーチ解析者
12. パーソナル・ファイナンシャルアドバイザー
15. 地図製作者、写真測量技術者
15. 遺伝子カウンセラー
15. 通訳者、翻訳者
15. 聴覚学者、聴覚(機能)訓練士
19. 補聴器の専門家
19. 検眼士

ここでも医師は入っていないのはいささか残念な?結果ですけれども、注目いただきたいのは今後伸びると考えられている職業のうち2/3が医療業界に関係するものであると言うことで、日本などでもひと頃医療主導による経済成長戦略などと言う話が持ち上がったことがありますが、やはり人間豊かになってくるほど命や健康のためにお金を出すようになってくると言うことなのでしょうかね。
ちなみに将来ではなく今現在稼ぎのいい仕事と言う観点で見ても医師が1位、5位にも意外なことに?薬剤師が入ったのだそうで、この辺りは日本とは少し感覚が違う部分もあるのかも知れませんが、ともかくも医療産業が堅い成長が見込め安定的な雇用が確保された仕事であると言う認識が共通なのは、日本においても近年医療系学部の人気が高まっている点からも明らかではないかと言う気がします。
もちろん医療系と言っても様々な階層化があるのは言うまでもないことで、歯学部などはすでに定員割れも久しく、卒業しても過当競争で食っていけないとも聞きますし、介護業界なども「#介護士辞めたの私だ」なるハッシュタグが流行るなど過酷で低賃金な職業としてすっかり定着していますから、需要が相応にあり成長が見込まれるからと言って必ずしも高い見返りが期待出来ると言うわけでもありません。
この辺りは小学生のうちから将来の稼ぎの多寡を基準にして人生を決めるようなことはどうも…と言う意見もあるでしょうが、診療報酬による医療の誘導など政策的に見ればお金で人生のあり方を誘導する方法論は医療業界では久しく以前から政策的に行われていることでもあり、少なくとも何の計算もなくただイメージだけで医学部に入ってきてドロップアウトするよりはよほどに期待出来る人材が育つのかも知れませんね。

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コメント

データを入力すれば診断と治療法を答えてくれる機械があれば便利ですな。
あとはデータを採取する機械ができたら仕事が減るかも。

投稿: JSJ | 2016年4月22日 (金) 09時00分

自然言語の認識が出来るかどうかがポイントです。
自動翻訳が使い物になって来たらヤバいです。

自動翻訳がギャグしか出力しない間は、入出力に人間の介在が必須なので人工知能は従に留まります。

投稿: | 2016年4月22日 (金) 10時16分

まさにおっしゃるようなマンマシンインターフェースの部分が一番の課題で、機械の内部で何をどう考えているのかを理解する難しさは将棋や囲碁の対局からも体感出来ますね。

投稿: 管理人nobu | 2016年4月22日 (金) 10時41分

これなら将来の医師不足も解消できそうですね。 もう治療は不可能だからお看取りコースねっていうのも機械なら淡々と提示してくれるかな。
どうやって処置や手術をするのかは知りませんが…

投稿: REX | 2016年4月24日 (日) 14時55分

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