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2016年4月15日 (金)

刑法198条では贈賄の罪が規定されています

少し前の話になりますが、この年度末にこんなニュースが出ていたのをご記憶でしょうか。

医師への謝礼公開 製薬企業に義務づけ 厚労省方針(2016年3月30日朝日新聞)

 相次ぐ論文不正を受け、臨床研究を規制する法案づくりを進めている厚生労働省は、製薬企業から研究機関や医師への資金提供の公開について、原稿料や講演の謝礼なども義務付ける方針を決めた。これまでは研究に直接関係がないとして除外していたが、方針を転換した。

 29日にあった自民党の部会に厚労省が示した。公開の義務化は当初、研究開発費や奨学寄付金などに限り、講演謝礼などは業界の自主的なルールに委ねるとしていた

 公開は毎年実施。違反した場合は、指導や勧告をし、従わなければ企業名を公表するとしている。(武田耕太)

この医師と製薬を始めとする医療関連産業との根深い関係については以前から様々に言われてきたところで、米ヨーク大の研究によれば医学部が製薬企業などからの贈り物を規制すると、卒業後の医師が既存の同系統薬よりも新薬を処方する頻度が下がる傾向にあったと言い、企業からの便宜供与が医師の行動に及ぼす影響について示唆される結果となっています。
もちろん不正を働くような行為は言うまでもなく何ら同情の余地はないところですが、一方で医師向けの教育後援会などは製薬会社などが主催し講師である医師には謝礼も支払われると言うことで、これを悪いことであるかのように言われるとただ働きをしろと言うことか、と言う反発の声も出てくるのは当然ですよね。
2013年春にも日本製薬工業協会でこの情報公開が議論されましたが、日医などから「社会から疑惑を招き、いわれなき中傷を受ける恐れがある」と強力な反対がなされたことから延期されていた経緯があり、今回国によってこうした方針が定まったと言うことは業界内での自主規制では話がまとまらないと言うことの裏返しでもあるのでしょう。
無論今のところ正当な報酬や謝礼に関しては受け取ることも何ら問題ではないわけで、ただ正当であるなら幾ら受け取ったかもきちんと公表してもいいですよね?と言うことですが、ここで注目いただきたいのは受け取る医師側に公開義務を定めたわけではなく、製薬会社側に幾ら贈ったかを公開するよう定めている点です。
もちろん30万人もいる医師全員にいちいちこうした義務を課すのも非現実的であるのだろうし、製薬会社であれば数も少なく規制も強化しやすい、さらに言えば恐らくは製薬会社側からも規制強化は好意的に受け取られる下地があったのではないかと思うのですが、同じ医師への金品を贈る行為についてこんな記事も出ていたことを紹介してみましょう。

がんの「名医」たちの情けないほどの倫理観のなさ/園田寿  | 甲南大学法科大学院教授、弁護士(2016年4月12日yahooニュース)

昨晩、偶然つけたTV番組だけど、見ているうちにあまりにも不愉快になったので、見るのを止めました。11日から新しく始まった「直撃!コロシアム!!ズバッと!TV」です。司会の辛坊治郎氏と山里亮太氏が、パネラーゲスト集団にさまざまな質問を投げかけ、本音を聞き出すという企画で、第1回目は、「がんの名医50人」に「直撃質問」するという内容でした。
(略)
「袖の下をもらったことがあるか?」という質問に、46人もの「名医」がもらったと回答していました。中には、看護師や職員、他の患者の目があるので、お礼の手紙を渡すふりをして、封筒の中に現金を入れてほしい、その方が受け取りやすいからと、堂々と答えていた「名医」、こっそりと現金の入った封筒をカルテの間に挟んでくれという「名医」、白衣のポケットに突っ込んでくれという「名医」、研修医のときに15万もらって、上司に相談したら「もらっとけ」と言われた「名医」、聞いているうちにだんだん腹が立ってきたとともに、情けなく思ってきました。もらったことがないと回答した人が4人いたということが、かすかな救いです。

かりに公務員たる医師がこのような現金をもらっていたとしたら、これは立派な収賄罪です(渡した患者は贈賄罪)。公務員でなくとも、もらった袖の下を税務申告するはずはないでしょうから、テレビの電波をつかって日本中に「私は脱税しています」と自白しているようなものです。いずれにせよ、医師の倫理としてどうでしょうか
いくらお金をもらっても診療に手心を加えるようなことはできないから、それはあくまでも「お礼」であって「賄賂」ではないという意見もあります。しかし、収賄罪(刑法187条1項)は、

公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。

と規定しています。
「職務に関して」という意味は、「職務の対価(見返り)として」ということであり、職務の遂行じたいに不正がなくとも、あるいは厳格な手続きがあって、そもそも手心を加えることが不可能な場合であっても、収賄罪は成立するのです。
(略)
今では、「お礼」(袖の下)の習慣はほとんどないと聞いています。ほとんどの医師、医療関係者、医療機関は、厳格な態度を取られていると思います。渡すエゴと受け取る欲、技術はすごいかもしれませんが、スタジオに来ていた46人に「名医」という言葉が使われたことが残念です。(了)

まあ記事にあるようなことを公言していたなら確かに医師云々は抜きにしてかっこわるいなとは思うのですが、今どき公立に限らずどこの病院であれ院内ルールとして付け届け無用の掲示くらいはなされているはずですから、私立公立を問わず少なくとも服務規程違反なりに問われる余地はありそうな行為とは言えますよね。
医師に金品を贈る行為について全く正当化する必要性は感じていない先生方も少なからずなのだろうし、強いて差し出されれば断らない、あるいは断り切れなかったと言う消極的受容派の先生方もこれまた相応にいらっしゃるでしょうが、少なくとも表立ってもっと下さいと積極的に肯定している先生はさほど多くはないようで、要するにこの方面でも規制強化を図ることは別に一方の当事者である医師としては構わないのではないかと言う気がします。
ただこの種の記事を見ていつも気になるのが賄賂云々と受け取る医師を批判する場合は多いのですが、心付け無用と告知もされ賄賂だなんだと世間的にも批判されている中でそれでも贈る患者や家族を批判しなくてもいいのかと言うことで、何故か患者さんは一切金品を贈らないようにしましょうなどと主張する記事も見かけませんよね。

記事にもきちんと患者側は贈賄罪に相当するだとか、渡すエゴ云々と言った文言は書かれているのですから、そもそも患者が渡さなければ起こり得ない問題なのだろうし、情けない名医の先生方にしても渡すならこうしてくれとは言っても渡してくれとは言っていなかったようなので、さてこの場合誰が問題の原因を作っているのかでしょう。
いやそうは言われても周りが皆渡しているだとか、親戚が渡すべきだと言ったと言う声も根強くありますが、これに関してはどの医師も口を揃えて患者からの付け届けで医療内容を変えることはないと言っているのですから、わざわざ贈賄罪のリスクを冒してまで金品を差し出そうとすることは全くの無益であるばかりか、倫理的に見ても有害な行為であるとしか言えないでしょう。
しかし冒頭の記事のような場合には贈る側の製薬会社が悪者扱いされる一方で、こうした付け届け問題では受け取る側の医師側が悪いかのように言われるのも興味深い現象だと思いますが、園田先生を始め司法関係者の方々は是非全国各地の大学や基幹病院を回って、どこかで贈賄の罪を犯そうとしている不届きな患者や家族がいないものか目を光らせ、必要に応じて刑事告発なりと検討していただきたいと思いますね。

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コメント

病院に寄付してくれたら角が立たないよ
内視鏡買い換えたいんだけど金がないんだよね

投稿: | 2016年4月15日 (金) 07時38分

患者の気持ちを受け止めない人を名医と言うのもおかしな気もしますが。
別にお布施肯定するわけじゃないけどこの人の考える名医ってなんなんだろ。

投稿: ぽん太 | 2016年4月15日 (金) 08時16分

おはようございます.

これは日本の文化なのでしょう.
伝統文化として存在する「××道」(武道に限らず)の世界にもあると聞いたことがあります.

投稿: 耳鼻科医 | 2016年4月15日 (金) 08時19分

病院に寄付してもらうのが一番後腐れなく処理出来て助かります。
名前を出したくないのであれば「タイガーマスク」とでも名乗っていただければ、一目で善意の寄付とわかるので都合がいいです。

ちなみに、私は医師個人への付け届けは一切受け取りませんし、付け届けをしようとした患者はブラックリストに放り込みます。

投稿: クマ | 2016年4月15日 (金) 09時11分

マネーロンダリング防止等もあり、10万円振り込むのも本人確認書類が必要ですから、金銭授受に厳正さを求めるのは当然のことだと思います。しかし、送る側(ここでは患者と製薬会社)も同様に批判しないのはアンフェアだと思います。どっかの大臣辞任した政治案件でも、怪しい建設会社は批判しない左翼メディアが多いのと同じでしょうか?

投稿: 麻酔フリーター | 2016年4月15日 (金) 10時18分

患者の気持ちを受け止める、と言って受け取っておいて渡す側を批判しても始まらない
そもそもは心付けが有効だった歴史があるわけだからね
いまだに受け取るからそれが有効だと思われるのでしょう

投稿: | 2016年4月15日 (金) 11時10分

この件に関しては何故これだけ慣習に批判的な方々が、患者家族に対して啓蒙活動を行おうとしないのかと言う点に興味があります。

投稿: 管理人nobu | 2016年4月15日 (金) 11時55分

前にも書きましたが、私は下さるものは頂いています。
特段感謝も非難もしません。
すぐに忘れます。

投稿: JSJ | 2016年4月15日 (金) 12時08分

>いまだに受け取るからそれが有効だと思われるのでしょう

これ、犯罪の順番は1)患者が送る2)医者が受け取る
で成立してますよね。それを「医師が受け取る態度を見せるから、患者が送るんだ」と医師が悪いことにするのなら

「女性が隙を見せるから、性犯罪者に襲われるんだ」というのと同じ論法になってしまいますね。

投稿: おちゃ | 2016年4月15日 (金) 15時44分

金の亡者の医者はイラね

投稿: | 2016年4月15日 (金) 16時22分

医者の技量には差があるが、現行の国民皆保険制度では技量の間に価格差をつけることができない。
本来、市場であれば品質と価格に相関性を持たせて需給のバランスをとっているけど、それができ
ない。

一方で、患者は腕の良い医師に優先的に治療してもらいたい。でも、腕の良い医師が全国民に行き
渡るほどいるわけではない。

社会主義的な制度で、裏金やコネが横行するのは既に旧ソ連や東欧で実証済みの現象なのでまったく
驚くに値しませんね。

ていうかこれを批判している弁護士の世界だって勝てる弁護士のフィーが高いのは当然のこととなっ
ているでしょう。そこはスルーですか。

投稿: | 2016年4月15日 (金) 22時03分

勝てる弁護士のフィーが高いのは医者に対する付け届けと違い、もともとルール違反ではないと思われますが。

投稿: クマ | 2016年4月16日 (土) 00時30分

>一方で、患者は腕の良い医師に優先的に治療してもらいたい。
そんな理由で渡しているのなら、やめたほうがいいでしょう。無駄だから。

投稿: JSJ | 2016年4月16日 (土) 08時50分

>「女性が隙を見せるから、性犯罪者に襲われるんだ」というのと同じ論法になってしまいますね。

受け取ることを拒否できないとでも?
女性が暴力で襲われて逃れられないのと同じように、医者は金品を拒否できないですか?
そうはとても思えないけどね
羽交い絞めにされて大福を口に詰め込まれてたってギャグならともかくさ

別に患者から贈るのを受け取るのが悪いとは思わないですよ
あれこれ言われるのが嫌なら受け取らなきゃいいだけなんじゃないのって話

投稿: | 2016年4月18日 (月) 09時05分

受け取ってないので差し出さないでください

投稿: | 2016年4月18日 (月) 10時32分

>受け取ることを拒否できないとでも?

上司が代わりに受け取って渡されるという経験ならあります。
その患者は退院後の通院予定がなかったので、返却に難渋しました。

投稿: クマ | 2016年4月18日 (月) 10時33分

渡すなって掲示もしてんのに便宜供与を期待して渡す人間より
受け取る人間の方が悪いってのはどう考えてもおかしいだろ

投稿: | 2016年4月18日 (月) 15時45分

受け取らなければ、何一つ悪く言われることはないのでは?

投稿: | 2016年4月18日 (月) 16時13分

私は患者から「逆ギレ」されたことがあります.
「こっちがせっかく持ってきたのに受け取らないとは何だ!」ですってさ.

投稿: 耳鼻科医 | 2016年4月19日 (火) 08時23分

患者が持ってこなけりゃこんな問題存在してなかった

投稿: | 2016年4月19日 (火) 08時49分

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