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2016年3月 9日 (水)

かかりつけ推進に対する各方面の反応あれこれ

今回の診療報酬改定ではかかりつけ医、かかりつけ薬局と言うことが重視されていると言い、患者の状態管理や重複の無駄を省くためにも重要なことだとは思うのですが、これに関して日医がこんなことを言い出しているようです。

日本医師会が「かかりつけ医」認定制度開始へ(2016年3月6日NHK)

日本医師会は、新年度・平成28年度の診療報酬改定で、患者の健康を日常的に把握して治療などに当たる「かかりつけ医」が推進されることを踏まえ、独自の研修を設けてかかりつけ医の認定制度を始めることになりました。

医療機関に支払われる診療報酬の新年度の改定では、患者の健康を日常的に把握して治療などに当たる「かかりつけ医」を推進するため、小児科などの分野で診療報酬を加算することなどが盛り込まれました。
これを踏まえ、日本医師会は来月から全国の都道府県の医師会と連携して独自の研修を設け、かかりつけ医の認定制度を始めることになりました。

具体的には、幅広い知識を持つ医師であることを示す日本医師会の「生涯教育認定証」を取得したうえで、かかりつけ医に必要な倫理や具体的な症例などを学ぶ「応用研修」と、地域の学校や自治会などで医療に関する活動を行う「実地研修」で、一定の単位を取得した医師をかかりつけ医として認定するとしています。
日本医師会は「この認定制度は、地域のかかりつけ医として活動し、研さんを続けていることを示すもので、地域住民からの一層の信頼につなげたい。かかりつけ医を持っていない人が、かかりつけ医を持つきっかけにもなってほしい」としています。

当然ながらこのような重要な資格を認定するからには日医に多額のお布施をはずまなければならないことは言うまでもないのでしょうが、ちなみに昨今新たな専門医資格として話題になることも多い総合診療医とはこのかかりつけ医とは全くの別物で、かかりつけ医に対して診療報酬上乗せが認められる一方で日医は総合診療医に対する報酬上乗せは拒否しています。
日医にお布施をはずめばもらえる紙切れの方がきちんとした専門医教育を積んで手にする資格よりも診療報酬上ずっと優遇されるべきだと言う考えで、当然ながら現場の医師達の間で日医に賛同する声ばかりではないことは言うまでもありませんが、今のところ日医の認定するところのかかりつけ医資格の有無によって診療報酬に差がつくと言う話でもないようです。
要するに日医が認定する肩書きを得ることにどれほどのメリットを感じるかと言う話で、全国の熱心な日医会員の方々が先を争って認定をされようと殺到すること疑いないところですが、このかかりつけ制度と言うことに関してはこんな気になる調査結果もあるようです。

かかりつけ薬局、4割の人が認知せず- 日本調剤が調査結果公表(2016年2月19日CBニュース)

患者の服薬情報を一元管理する「かかりつけ薬局」について、4割の人が認知していないとする調査結果を、日本調剤が公表した。国は地域社会で継続的に薬学的な指導に当たる「かかりつけ薬局」の整備を進める方針だが、認知が十分浸透していない実態が浮き彫りになった。【新井哉】

調査は1月15日から18日までインターネットで実施。全国の20歳以上の男女1008人から回答を得た。

これまでに「かかりつけ薬局」を見たり聞いたりしたことがあるかどうか尋ねたところ、40%の人が「見た(聞いた)ことがない」と回答した。すでに「かかりつけ薬局」を持っている人は32.8%だった。男女・年齢別で最も保有率が低かったのは20代男性で、72.6%が「持っていない」と答えた。

「かかりつけ薬局」を選ぶ際に重視する機能やサービス(複数回答)については、「薬の効果や副作用の確認」(57.0%)が最も多く、以下は「複数の医療機関から出ている薬の飲み合わせチェックや残薬の確認」(48.7%)、「医師の処方内容についての確認」(35.4%)、「薬の相談がいつでも気軽にできる」(27.1%)などの順だった。

このほか、薬局の認知などについても質問。薬局に対するイメージ(複数回答)は、「薬剤師がいる」(82.3%)、「医療機関で処方された薬をもらえる」(81.7%)、「薬の相談ができる」(54.9%)などの回答があった。また、9割近くの人が、処方薬の調剤を目的に薬局を利用したことがあると答えた。

昨今は急性期の基幹病院などは外来も多忙で、とにかく病診連携と言う形で地元の開業医に逆紹介しておき何かあった時だけ送ってもらうと言う形をとっている場合が多く、患者の側としてもかかりつけ医と言う概念に関しては比較的馴染みがあるのではないかと思いますが、他方でかかりつけ薬局と言うものについてどれだけ認知されているのかですよね。
もちろん薬を一元管理するなどかかりつけ薬局の有用性は頭では理解しているつもりでも、現実的にあちらこちらと複数の医療機関にかかっていればその都度門前で処方を受ける方が便利だと言うことはありそうに思いますし、医療機関から遠い薬局では処方された薬を置いていないと言うことも少なくありませんから、実際のところ必ずしも良いことばかりでもないわけです。
本来医薬分業が言われた時点で手元に置いていない薬は薬局側が責任を持って取り寄せると言う話だったはずですが、昨今では一般名処方をさせて同効薬の中から選ばせると言うやり方になってきていて、もちろん患者が完全に自主的に好きな薬を選べるのであればいいのですが、様々な意味で薬局側の都合のいい薬を選ばされると言う場合も少なくないようですね。

興味深いのはかかりつけ薬局に期待する機能として最も多いのが飲み合わせのチェックではなく、薬の効果や副作用の確認という言ってみれば当たり前の情報提供への期待であったと言うことで、これに関しては確かに重要で興味もある情報なのだろうとは思うのですが、一方でこれはかかりつけ薬局でなくても提供出来るサービスであるとも言えるように思います。
その意味では処方内容の確認などもこれまたかかりつけ薬局でなくても出来ることで、どうもかかりつけ薬局と言うものに対して何を期待すればいいのかと言うことで今ひとつ明確なイメージが湧かないらしい様子もうかがえるのですが、これについてはやはり薬局と言うものの役割が医療の中で一方の主体として自主的自律的に活動していると見なされていないと言うことでもあるのだと思います。
病院でも最低限の薬についての話は聞いているはずですから、医師の処方した薬を袋詰めし必要な情報を提供すると言った業務だけで大部分の場合は十分なのだろうし、むしろ薬局で長々と引き留められるのは迷惑だと感じる人の方が多いのでしょうが、かかりつけ薬局としてお金を取る以上は薬剤師側が今度どう存在意義を打ち出していけるのかと言うことも問われそうですね。

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コメント

かかりつけ医にどんな義務が課されるのかですね。
お金だけとって責任丸投げってのはごめんこうむりたいです。

投稿: ぽん太 | 2016年3月 9日 (水) 08時48分

良く理解できないので教えていただきたいのですが、
「かかりつけ医」って、昔のように何でも見てくれる医師って、今はほとんどいないでしょう?
一般には風邪引き、腹痛とかの体調不良で内科受診するだろうけど、ちょっとした2~3針縫うような「けが」と
なると対応してくれなくて外科にいかないといけないし、腰痛とか膝とかになると整形。
慢性疾患を持っていない限り、主となる「かかりつけ医」なんて決められないんですよね。

同様に「かかりつけ薬局」もかかった病院診療所の門前薬局にいくのが普通だろうから、
決まりようがない。

こういうごく当たり前の状況をどのように考えているのでしょうかね?

投稿: | 2016年3月 9日 (水) 08時58分

それぞれの行きつけ開業医、と言う風に認識してましたが。

それとも、流行りの総合医なる開業医を探さないと拙いんですかね?

投稿: | 2016年3月 9日 (水) 09時14分

「かかりつけ医」をお断りする言い訳にしよ。
「すみませ〜ん。僕、医師会の認定とれてないんですよー。通うなら医師会の認定かかりつけ医にしましょうよ〜。」

投稿: JSJ | 2016年3月 9日 (水) 12時05分

個人的にはかかりつけ医最大の役割は医療行為そのものよりも、大多数の重大疾患を持たない患者の不定愁訴的訴えに対する対応なのではないかと感じています。

投稿: 管理人nobu | 2016年3月 9日 (水) 14時52分

不定愁訴科、田口先生ですか。開業医では総合病院が後ろにいないと難しい。

投稿: | 2016年3月 9日 (水) 16時52分

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