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2016年3月18日 (金)

教育にもコスパが問われそうな時代

米百俵が流行語になった時代も今は昔で、何しろ大学生の半数が奨学金と称する学生ローンを利用していると言うご時世ですから、せっかく卒業してもローンの返済に追われ社会人人生の出発時点でマイナスからのスタートとなり、少子化解消などと言われてもこれでは結婚して子供を持つなど到底考えられないと嘆いている方々も少なからずいるようです。
そんな声に対して高等教育などあくまでオプションであり、人生をより有利に生きるための投資に過ぎないのだから、ローンを組んで進学するのが嫌ならさっさと就職すればいいじゃないかと言う声もあるのですが、親世代もワープア化が進んでいる今の時代学費問題が影を落としているのは必ずしも高等教育ばかりではないようです。

義務教育、重い負担なぜ? 制服、かばん…中学入学で9万円 進学や通学の「壁」に(2016年3月7日西日本新聞)

 春3月。わが子の進学を喜ぶ一方で、公教育に予想以上の私費負担が必要なことを知って戸惑う保護者が少なくない。福岡県春日市の40代女性もその一人。2月初め、長女が来月入学する市立中の説明会に参加し、制服や通学かばんなど総額約7万~9万円を現金払いしなければならないと知らされた。共働きで2人の子を持ち、児童手当を受給する「標準的世帯」のこの女性にとっても重い出費。生活困窮世帯であれば就学援助を受けられるが、新入学用品費の支給額は約2万3千円で到底足りない。女性が本紙子ども問題取材班に寄せた疑問を、市教育委員会に投げ掛けた。
(略)
 春日市教委学校教育課とのやりとりは以下の通り。
 ―入学時の費用は市内で統一されているのか
 制服は中学ごとに学校とPTAが協議して決めている。市内6校中2校は、詰め襟やセーラー服の標準服を学校指定の3~5社(数万円)から選んで購入する仕組み。4校は独自デザインのブレザーを採用している。入学時に必要な費用は、生徒数やデザインなどによって学校間で数万円の開きがあるのが実情だ。
(略)
 ―刺しゅうや上靴の色を学年で変えたり、靴下が白でなければならなかったりするのはなぜか
 刺しゅうは生徒を把握しやすくするためではないか。色の違いや靴下も各校の校則にのっとったもので、事実上、学校長の判断だ。
(略)
 ―義務教育の無償を規定した憲法26条をどう受け止めるか
 (しばらく沈黙し)私費負担ゼロで教育を受けることはできていない。個人的意見だが、国はすべての子どもに学習する機会を保障するため、教育予算をもっと手厚くすべきだと思う。

公的支出、現実は少なく―取材班から

 憲法26条2項は「義務教育は、これを無償とする」とうたう。だがキャンペーン企画「子どもに明日を」の取材で知ったのは、制服代や学用品費などが貧困家庭の重荷となり、時には進学や通学の「壁」にすらなっている現状だ。
 日本の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合は3・5%にとどまり、経済協力開発機構(OECD)加盟国で比較可能な32カ国中、最下位だ。日本は世界3位の経済大国で、少子化対策を国の最重要課題に挙げているにもかかわらず、子どもに費やす予算は他国と比べれば大きくはない。
 中間所得層が厚く、「1億総中流」と呼ばれた時代もあったが、今では経済格差が広がって子どもの6人に1人が貧困状態で、九州はさらに深刻だ。連載でも3万5千円の制服代が支払えず、入学式を欠席した中学生を紹介した。金銭的な理由で義務教育や高等教育から脱落する子どもが増えているのではないか。
 憲法26条は空文化していないか。教育現場を歩きながら問い掛けたい。

それぞれの立場から色々と考え方や意見の相違もあるのでしょうが、ここでは私立中学の学費問題について問い合わせているにも関わらず、市当局者では国がもっとお金を出すべきだと答えていることに注目したいですね。
義務教育は無償で提供されるべきと言われると、近年しばしば話題になるのが「義務教育だから払う義務ないでしょ」と給食費を支払わない親が少なからずいると言う困った問題もあるのですが、今回の場合別に支払わない、支払えないと言うわけではないにせよやはりまとまった金額の出費は痛い、何とかならないのだろうかと言うことですよね。
この場合一つには以前から言われているように教育に公的なお金をもっと出すべきだと言う考え方があって、少なくとも正規のカリキュラムに組み込まれている内容であれば義務教育は原則無料で受けられるべきではないかと思うのですが、教科書は無料でも副教材は有料と言った昔ながらの慣習が続いてきていて、しかもその自費負担部分のコストが馬鹿にならない金額になっていると言うのであれば補助金なりと出ないのかと言う話ですが、国も自治体もお金がない時代に出費増は厳しいのでしょう。
この点でそもそも強制的にお金を出させるのであれば、その出費の内容はもっと厳選するべきではないかと言う疑問もあって、例えば公式行事にも使われる制服は仕方ないにしろ別に運動着や靴なども専用デザインでなくともいいのではないかだとか、とかく専用品ばかりを強制するのではなくプライベートや卒業後にも使える汎用品使用を使わせてもらえれば助かるのにと言う声は根強くあるようで、今どき私服は華美に走るなどと言われてもどこの世界の話ですかと言う気もしますよね。
こうしたつましい話がある一方で、世の中には教育にかかるお金には糸目をつけないと言う景気の良い話もいまだあるのだそうで、今をときめく医学部などはこんな桁違いのコストがかかる場合もあるのだそうです。

最も高い大学は約5千万円! 低偏差値ほど高い医学部学費の法則とは?〈2016年3月11日週刊朝日〉

 2008年のリーマンショック以降、高収入を得られる手堅い職種として医師を目指す受験生が増え、空前の医学部ブームが始まった。昨年、高止まりになったとはいえ、まだまだ人気は堅調だ。
 だが、ご存じのように、それほど学費が高くない国公立大医学部入学には相当の学力が必要だ。私大に目を向けても、やはり難関の上、他学部に比べて学費が破格に高い
 私大医学部の6年間の平均授業料は約3300万円。なんと、国公立大の10倍近い。年間で500万円以上になる計算だが、これは国税庁が発表した14年の民間企業の平均給与額415万円を大幅に超える。
 一口に私大医学部の学費といってもかなり幅がある。6年間の総額が最も安い順天堂大の2112万7800円に対し、最も高い川崎医科大は4716万5千円。両大の学費は倍以上違う。
(略)
 興味深いのは、偏差値が上位の大学の学費は2千万円台のところが多いが、偏差値が低くなると学費が高くなる傾向があることだ。偏差値と学費は反比例の関係にあるのがわかる。
 偏差値68の順天堂大が学費の値下げに踏み切ったのは08年。6年間の学費を約900万円も安くした結果、優秀な志願者が増え、結果として偏差値が上がった。駿台予備学校市谷校舎の竹内昇校舎長は説明する。
「首都圏の生徒が下宿して地方の国公立大医学部に通うよりも、自宅から首都圏の私大に通うほうが、費用が安くなることもあります。学費を下げたことが志願者増につながり、偏差値が大きくアップしました」
 この順天堂大の事例以降、私大医学部の学費値下げが相次いだ。代々木ゼミナール入試情報部の加藤広行部長は語る。
「最近では13年に昭和大が6年間で450万円(一般合格者)、東邦大が600万円、14年に帝京大が1169万円、15年に東海大が254万円値下げしました。帝京大は大幅に値下げしたため、一般入試の志願者が前年より2967人も増加。定員107人に8334人が志願し、約78倍の倍率でした」

 一方、偏差値と医師国家試験の合格率が連動するかといえば、そうではない。毎年、約800人もの医学生が医師国家試験で涙をのんでいる。最難関の東大でさえ、合格率が100%ではないことが多い。
(略)
 偏差値に比して合格率が高いのが兵庫医科大だ。鈴木敬一郎副学長は、合格率トップレベル校に名を連ねている理由について話す。
「6年生のカリキュラムは自主性を尊重する自由度の高いものです。そのために1・2年次から選択科目を選ばせて、自己管理能力をつけさせます」
 さらに同大では、成績不振の学生に個別指導を実施。医師国家試験を控えた6年生のために自習室を24時間開放するなど、支援体制が整っているのが特徴だ。
「卒業試験で良問を出していることも、高い合格率に結びついているのだと思います」(鈴木副学長)

まあ医学部の場合医師養成専門学校的な側面も濃厚ですから、そのためにはお金も手段も選んでいられないと言う場合もあるのかも知れませんが、幸いにも?昨今では「名前さえ書ければ合格」的な極端に偏差値が低い大学と言うものはそうそうなくなっていて、医学部最下位レベルでも一般の大学と比べれば上位水準の偏差値になっているそうです。
ただそれが目的化しているとは言え国試合格率も正直評価の指標としては水もので、記事にもある兵庫医科大などは確かに国試合格率は高いものの4浪以上の受験生を完全排除するなど浪人生入学に厳しいことで知られていたり、留年率が極めて高くストレートで卒業できるのはわずかに6割程度だったりと言いますから、要するに合格しそうな学生だけ受験させていると言うことなのでしょうね。
それだけ合格率にこだわる理由として様々に想像出来るのですが、法科大学院などは定数大幅増で国試合格率が低下し全く合格者が出ず学費詐欺とまで言われる大学院が閉院に追い込まれたと言う話もあるように、やはり高い合格率を保ち学生にアピールすることがより優秀な学生を集め、さらなる合格率向上につながると言う好循環を形成する第一歩になるのでしょう。

今の時代に大学の学費で何千万も支払うと言うのは大変な出費に思えますけれども、聞くところでは少々高くとも医学部の学生と言えば銀行がお金を貸してくれるだとか、看護師の御礼奉公よろしく病院から「うちに来てくれれば学費は出すよ」式の話もあるとかないとかですし、そもそも期待される年収を考えればむしろ高い確率で元が取れる優良な投資とも言えますよね。
一人っ子政策の中国などは子供の教育は親にとって将来に対する投資と言う側面があるそうで、親二人分の稼ぎをつぎ込んで子供になるべく良い教育を施す、それによって子供は良い仕事につき親二人に恩返し出来るだけの十分な稼ぎを得ると言う計算なのだそうですが、この計画が破綻すれば親世代にとっては老後の保障がなくなりかねないのですから死活的問題です。
日本も教育コストがこれだけ問題化してくると、学費を出す親にとってもどれだけ投資に見合う見返りがあるのかと言う計算が必要になるだろうし、当然ながら学生本人もコスパを念頭において進学先を決めるだとか場合によっては先に就職し学資を稼いでから改めて進学を考えると言うことも必要になってくるかも知れません。
こうした話を聞けば大学モラトリアム時代を知っているバブル以前の世代には何とも寒々とした気にもなるのでしょうが、世界的に見れば大学生になっても学費から生活費まで親に依存していると言うのはむしろ例外的で、日本もようやく世界標準の高等教育のあり方に追いついて?きたと言えなくもないわけですから、企業が優秀な社員の専門教育にお金を出すなど社会のあり方の方が時代に即して変わっていくべきなのかも知れないですね。

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コメント

Fラン大にやっと入って留年しかねない成績じゃ進学する意味ないよね?

投稿: | 2016年3月18日 (金) 07時48分

大学に奨学金の滞納率、平均的な就職先の年収(一見すごいように見えて女子一般職で稼いでる事も多い)
の公開も義務付けるべきでしょう

投稿: 名無し | 2016年3月18日 (金) 08時15分

就職先情報ってたしかに欲しいですね。
あんがい東大京大が就職浪人が多かったりして。

投稿: ぽん太 | 2016年3月18日 (金) 08時32分

希望の職に就けなかったと学校を訴える時代も近いね

投稿: | 2016年3月18日 (金) 08時52分

自分らの頃は、奨学金というと日本育英会がぱっと頭に浮かんできます。
確か利息なんて無かったし、教師・公務員とかになれば返済不要だったはずなのに。
いまの日本学生支援機構を見てみると、そういうのって一切無いんですね。
ホント、ただの高利貸しと同じですね。

投稿: | 2016年3月18日 (金) 08時58分

義務教育で無料になるのは授業料のみって最高裁判例があるので、単純に無料でなければならないという話にはなりませんが、
教材費などの負担が重くて義務教育に支障を来すのであれば、憲法に書かれた義務教育の条文が有名無実化してしまいます。
少なくとも、親が大金を負担してまで決められた服を着なければならない理由は、文部科学省レベルが説明する必要があると思われます。

投稿: クマ | 2016年3月18日 (金) 11時22分

高等教育レベルであれば選択の自由と片付けられるかも知れませんが、義務教育として参加を強制するなら何かしらの救済措置はあってもいいかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年3月18日 (金) 12時59分

大学別の未返済率を公表するらしい
http://www.asahi.com/articles/ASJ3K52W4J3KUTIL02L.html

投稿: | 2016年3月19日 (土) 18時05分

妻が借りた奨学金は、夫が返すべきなのか? そんな疑問がネット上の掲示板に書き込まれた。
ある男性が「奨学金って自分で返すものだと思ってた」と投稿した。
男性の妻には「残り600万近くの奨学金返済」があるが、「専業主婦」を希望しているというのだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160314-00004398-bengocom-soci

投稿: | 2016年3月20日 (日) 13時04分

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