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2016年3月29日 (火)

東大医学部も入試に面接を導入、するのはいいのですが

東大理3と言えば医学部と言わずあらゆる学部のうちでも最高峰の難関として知られていますが、その難関でこんな話が出ていると言います。

東大、理3に面接導入へ 医師の資質、多面的に判断(2016年3月10日産経新聞)

 東大は10日、2018年2月に実施する理科3類の前期日程2次試験から面接を導入すると発表した。医師になるのにふさわしい資質のある学生を、学力だけでなく多面的に選抜するのが狙い。

 東大によると、理科3類への入学は実質的に医学部進学につながるため、入学時に学生の資質をみる必要があるとしている。今夏までに具体的な面接方法を決める予定。

 東大理科3類は、大学入試の中でも最難関とされる。

学生の資質をみる必要があると言うのであれば何故今頃になってこんなことを言い出したのかと言う素朴な疑問も抱くところなんですが、実際にこの面接と言うものが医師の資質を問うと言う名目で各地の医学部に導入されたはいいものの、それによって合否を決めると言うことに対してもこれまた各種トラブルが発生していると言いますから難しいものですよね。
企業入社試験などは面接方式が主体になっていますが、それによる弊害なども様々に言われていることを考えると学生が単純に数字だけで結果を客観的、公平に判断されるペーパーテスト主体での入試にも一定の合理性はあったのだと思いますし、医師という職業に関して言うと丸暗記など特定の能力に偏っている人間が高い点を取りやすいセンター試験と言うものが、案外医師として適正の判断に有用だったと言う意見もあります。
もちろん現行の日本の医学部教育ではただペーパーテストの点数だけがいい人を入学後に進級や卒業の段階で食い止めるのは実際問題難しいので、あまりにアレな人物は入試の段階で切る方が現場にとってもありがたいのではないかと思いますが、アメリカなどではさらに一歩も二歩も進んでいてこんな話も出ているようです。

米ハーバード大、入試から学力テスト“追放”へ(2016年3月11日日経ビジネス)

 今年1月下旬、米メディアの報道が世界的な株安や米大統領選に集中する中で、とあるニュースに目がとまった。世界最高峰の大学の一つ、米ハーバード大が入試制度を抜本的に改革するという。報道によれば、当たり前のように実施されている学力試験を、必須ではなく選択制にするのだとか。あのハーバード大が学力試験をやめる――というニュースは、米国民に驚きを持って迎えられた。
 日本でも「ゆとり教育」という名の下に、過度な成績至上主義からの脱却を図る動きが起きたが、学力低下を背景に学習指導要領は段階的に揺り戻し改正が行われている。なぜハーバード大学は入試制度の改革に乗り出したのか。改革の先頭に立つ同大学大学院のリチャード・ワイスボード専任講師に話を聞いた。
(略)
リチャード・ワイスボード氏(以下、ワイスボード):これまで大学の入試制度は学力テストの成績が判断基準の中心になっていたが、今後はそれ以外、例えば地域や家庭における活動も同等の判断基準にしていきたいと考えている。
(略)
ハーバード大学が学力試験を完全に選択制にするかのように報道されているが、実際は学部や学科によって選択制にしていきたいということであって、すべての学部で選択制にするわけではない。理系などはやはり学力試験が必要だろう。
(略)
ワイスボード:どのようなコミュニティに参加して何をしたのか、エッセイを出してもらう。その際に、その学生を受け入れたコミュニティの責任者にも、リポートを書いてもらうつもりだ。双方向の声で評価したいと考えている。
 家庭での貢献も同様にレポート形式を取る。放課後に習い事や塾に通うことは悪いことではないが、そういうことができる環境にない学生の放課後の苦労も評価すべき。その方が平等だろう。
 嘘の報告もあり得るが、入試審査を手がけている執行部は、本当に取り組んだ内容を書いているレポートと、周囲の大人に指導されて書いたレポートは見分けがつくと語っている。
(略)
ワイスボード:2013~14年にかけて、我々の研究チームは全米33の中学、高校を選び、そこに通う中高生を対象に学校と教育における価値観についてアンケート調査を実施した。人数は延べ1万人で、この国のあらゆる人種、カルチャーを網羅している。
 その結果は驚くべきもので、およそ8割の学生が自分の人生で価値あることは成功を収めることだと述べ、助け合いの精神や平等の精神を自己実現よりも高く評価した学生は2割ほどしかいなかった。「自分が幸せと感じない人生には何の意味もない。まず自分の人生を満ち足りたものにしてから他人の幸せにも力を注ぐ」というようなコメントを添えた学生も何人もいたうえに、30%の中高生が、かつていじめの被害に遭ったことがあると答えた。
 結果を深刻に捉えた我々は、複数の大学の入試審査執行部、人格教育のエキスパート、カウンセラー、高校の教員たちを集め、この結果についてディスカッションを繰り返し、自分たちの所属する大学にレポートを提出した。今回の入試システム改正の動きは、このアンケート結果に端を発している。
(略)
ワイスボード:我々の調査では、学生の親の81%が他人への気遣いや人助けの重要性を家で子供に語っている。一方で、学生たちに「親があなた方に望んでいるものは何か」と聞いたところ、「他者への思いやり」と答えた学生は19%、「幸せになること」が21%、「よい成績」が54%だった。
ワイスボード:学生ばかりではない。同時期に300の中学と高校の教師に対して実施したアンケート調査では、「親は子供の何を最も評価しているか」という質問に対して、8割の教師が学校の成績と答えている。親は子供が価値観を形作るうえで極めて重要な存在。本音と建て前が一致していないことは、子供の人格形成に決定的な影響を与える。誰も自分が問題の一端であると自覚していない。
(略)
ワイスボード:私は3人の子供の父親だ。3人とも大学受験を経験したが、私の子供を含め多くの受験生が口にしているのは、あまりにも入試がスコア重視で、精神的なバランスや倫理的な側面を無視しているということだ。
(略)
 他人のことを自分の責任のように感じて気遣う気持ちを持つ子供ほど、大人になり社会的に自己実現を果たし、なおかつ精神的にも満たされるというデータがある。今回の改革を通して、知的で共生的、健康的な社会を作りあげることのできる大人を育てたい。

話だけを聞いていますと何やらどこかの国のゆとり教育などにも通じるようなものばかりで、果たしてこの入試改革の結果がどうなるのかと言うことを生暖かく見守っていきたいと考えますが、アメリカの大学の場合はそもそも入試よりもその後の学生生活でどれほど努力したかで評価されるだけに、入試で全力を使い果たしてしまう日本の大学とは同列には比べられないと言う意見もあるでしょう。
他方で日本の大学諸学部の中で今現在最も入試後の教育に注力しているのが医学部であるとも言え、この点でこと医学部に関しては諸外国並みのやり方も大いに参考になるのかとも思うのですが、興味深いことに今回の教育改革を行ったハーバード大においても理系においてはやはり学力試験は必要だろうと認識されているとも言え、なんだ結局ペーパーテストは必要なんじゃないかですよね。
ただハーバードで入試の方法が変わったからと言って学生の精神や考え方にどの程度の変化があるのかで、例えば東大が入試改革をしたとしても大多数の学生は東大先願と言うわけではなく他大学も視野において受験対策を進めているはずですから、幾ら「東大入試ではアルバイトの経験が重視されるんだ」と言っても高校生以下がそろって受験勉強よりアルバイトを優先するようになるとはちょっと思えないでしょう。

医学部入試に関して言えば、そもそも医師として資質があるかどうかを誰が判定するのか、大学に籠もって浮世離れした日々を送り日々研究に勤しんでいる先生方が正しい医師のあり方を判断できるのかと言った声もありますけれども、それ以前に誰しも気になるのは数字としてはっきり結果が出るペーパーテストと異なって、面接の点数などひどく恣意的で客観性に乏しいのではないか?と言うことですよね。
この点で興味深いのが近年こうしたペーパーテスト以外の選抜方法として推薦入試や地域枠など様々なやり方も模索されていますが、推薦入試で入った学生よりも一般入試で入った学生の方が就職内定率が高かったと言う調査結果もあって、推薦入試組と言えば面接慣れしているし人物もしっかりしたものだろうに点数評価主体の一般入試組より企業面接に失敗しやすいと考えると、何とも面白い現象ですよね。
一方で入試で学力を厳密に問わないと学生のレベルが下がるのでは、と言う懸念はありますが、先日全国医学部長病院長会議で示されたデータでは地域枠学生の国試合格率は一般学生と同等であったそうで、選抜方式だけでその後の学生としての価値が決まるのではないとも言えるだけに、何をどう判断するにせよ入試と言う一発勝負だけで学生の全体像を把握するのはそもそも難しいのだろうとは思います。
医師として何が重要な資質なのかと言う点に関しても諸説あり、いわゆる地頭の良さを第一に求めるべきだと言う意見もあれば、切れ味はなくともコツコツ地道に努力出来る人がいいと言う意見もあり難しいところですが、これだけ入試の方法も多様化してきているわけですから、医学部に限らずどんな選抜方法で入学したかによってその後どんな社会人になったのかを調べ比較して見ると面白いんじゃないでしょうかね。

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コメント

でもテストの点数足りない人は入れないんでしょ?

投稿: | 2016年3月29日 (火) 07時53分

面接で差をつけるのではなくこりゃアカンって人を弾く為かと
噂によると相当ヤバいのが面接を廃止してから入ってくるようになったので
その為とか

投稿: 名無し | 2016年3月29日 (火) 08時13分

うちの同期にもヤバそうなのが何人かいましたけどね。
そういうのを臨床の矢面に立たせなかったのが医局制度なんでしょうけど…

投稿: ぽん太 | 2016年3月29日 (火) 08時33分

理科3類が面接導入したら、難易度下がるだろうね。
もともとが医者なんかなるつもりもないのがそれなりにいるから、
そいつらが理一とかに流れそう。

投稿: | 2016年3月29日 (火) 08時42分

東大理3ってのは医師というよりは研究者を育てる場所だと思うのですが、医師になるのにふさわしい資質を求めすぎるのはずれている気がします。

投稿: クマ | 2016年3月29日 (火) 09時43分

>東大理3ってのは医師というよりは研究者を育てる場所だと思うのですが、医師になるのにふさわしい資質を求めすぎるのはずれている気がします。

おっしゃるような状況も考慮すべきかと思うのですが、研究医も多くが食っていくために臨床アルバイトをしている状況にあり、また研究者にも医学的倫理観を求められている社会的状況は無視できないとも考えます。

投稿: 管理人nobu | 2016年3月29日 (火) 10時24分

アメリカの場合、入学はほんの入口で進級、卒業するのが大変

日本だと留年させても社会問題?!

入口でブロックしてあげるのも親切だと思うんだけどなぁ。。。

入口を緩くするなら、出口は厳しくしないと負の外部性が半端じゃありませんね

投稿: Med_Law | 2016年3月29日 (火) 12時36分

日本も、おかしな奴ら満載です、不正診療報酬請求した挙句に逮捕、不正専門医資格取得、捏造論文も数知れず、そういう倫理観ゼロな輩でも、学会会長にも選ばれるような始末。
むしろ、現行の、卒後免許取得後にも、医道審議会で、不適格者には免許剥奪くらいのことをしてほしいくらい。それが無理なら、入り口で、ふるいにかけたって無駄無駄

投稿: striker | 2016年3月29日 (火) 21時47分

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