« 「テレビに出てます」で想像される医師像 | トップページ | 家庭内で発生したかなり斜め上なトラブル »

2016年3月15日 (火)

地域医療を巡る自治体間のトラブルが勃発

本日の本題に入る前に、先日は厚労省からこんな調査結果が示されたのですが、御覧になりましたでしょうか。

医療機関ゼロ637地区 09年調査より68地区減(2016年3月11日共同通信)

 厚生労働省は10日、周辺に医療機関がない「無医地区」が2014年10月末現在、全国に637あり、09年時点の前回調査より68地区減ったとの確定値を発表した。無医地区の人口は計約12万4千人で、前回より約1万2千人減った。

 調査は5年ごとに実施。半径約4キロの範囲に50人以上が暮らす地区のうち、車などを使っても1時間以内に医療機関を受診できない地域を無医地区として集計している。昨年3月、速報値として635地区と公表していたが、一部の自治体から数の修正があったという。


「無医地区」637カ所 過去最少 厚労省調査(2016年3月11日朝日新聞)

 厚生労働省は10日、簡単に医療機関を受診できない「無医地区」が、2014年10月末現在で全国に637カ所あったと発表した。前回調査の09年10月末現在の705カ所と比べ68カ所減り、過去最少を更新した。

 厚労省によると、無医地区は半径約4キロ以内に50人以上が住みながら、医療機関を受診するのが困難な地区。5年に1回調べ、現在と同じ定義にした1966年以降、減少傾向にある。減っている背景には、道路の整備が進んで医療機関に行きやすくなったことや、公共施設などでの「巡回診療」を始めた地区が増えたことがあるという。

 14年10月末現在で無医地区が多い都道府県は、北海道89カ所、広島54カ所、高知と大分が各38カ所、愛知と岡山が各23カ所など。無医地区に住む人は全国で12万4122人だった。

無医地区問題に関して詳しく語ることは本稿の本意ではありませんが、その定義として受診に1時間以上かかると言う距離ではなく時間で示されていることがミソで、田舎や僻地に赤字覚悟で診療所を開設するもよし、隅々まで道路を整備するのもよしと、ある程度行政側にも対応の選択肢があると言うことですよね。
無医地区と似た問題として弁護士業界では地域内に弁護士が一人きりと言う「ゼロワン地域」なる言葉があるのだそうで、いざ裁判になっても原告側、被告側双方に最低一人は弁護士が必要なことからゼロワン解消が言われてきましたけれども、これだけ弁護士過剰だ、ワープア化だと言われる世の中になってもやはり商売として厳しいと言った点からなかなか話が進まないようです。
無医地区解消についても本当の病人は町の病院に行ってしまうと言い、僻地では巡回診療等でも十分ではないかと言う意見もあり、また高いコストをかけて何も出来ない小さな診療所を開くよりも道路整備の方が利便性が大きいと言う考え方もあってか、かつてほど「無医地区に診療所を」と言う声も聞かなくなった気はします。
そうは言っても一定程度の広さを持つ医療圏に全く医療機関がない、そして隣接する医療圏への交通も不便であると言った場合には積極的な整備をする意義もあるのだろうし、そうした場合現在ではいわゆるナースプラクティショナー(NP)などを活用できないかと言う考えもありますが、国として医師も医療機関も集約化の方向に舵を切っている時代に無医地区問題にも新たな解消法が示されるべきかも知れませんね。
さてここからは話が変わって本日の本題ですが、先日とある診療所を巡って関係自治体が大騒ぎしていると言う記事が出ていたのですが、これがなかなか興味深い議論を呼びそうな話であるようです。

診療所めぐり加茂市と三条市が応酬 加茂市長「脅迫罪にあたる」/三条市長「無関係は通らず」 (2016年3月11日新潟日報)

 県央地域の夜間・休日の1次救急医療を担う県央医師会応急診療所(三条市)をめぐり、三条、燕、田上、弥彦の4市町村長が加茂市の小池清彦市長に整備費の一部負担を求めたことに対し、小池市長が反発を強めている。小池市長は三条市の国定勇人市長を名指しし「脅迫罪にあたる」と強く批判。国定市長も「関係ないとの理屈は通らない」と反論した。

 診療所は2009年の開設で、三条市、燕市、加茂市、見附市南蒲原郡の4医師会が運営する。整備費は事業参加を拒否した加茂市を除く4市町村が人口割りで負担した。加茂市民の受診も一定数あるため、4市町村長は応分負担を求め、小池市長に13年から毎年要請文を送っている。整備時の人口比率では加茂市分は約2800万円という。

 1月には4度目の要請を実施。これに対し、小池市長は9日、市議会3月定例会の一般質問に答え、「県央医師会と何の契約も結んでいない加茂市に対し、第三者が金を出せというのは脅迫罪に該当する」と持論を展開した。

 小池市長の発言を受け、国定市長は10日の会見で「加茂市医師会も参加し、実際に加茂市民も使っている。要望を続ける」と一歩も引かない構えを見せた。

もともと新潟県央地域では救命救急センターがなく域外への患者搬送が目立つなど医療リソースが乏しいそうで、県としては近い将来に三条市に三次救急施設を整備する計画だと言いますが、これと連携する形で加茂市でも県立病院の改築を予定していたものの、どうも小池加茂市長はこの病院整備を巡っても県知事と激しくやりあっていたようで、医療に関してかなり独自のお考えがおありのようですね。
さてこの県央医師会応急診療所なるもの、夜間休日診療の他高度医療機関への外来患者への振り分けなど一次診療を総合的に担当する目的で2009年に開設されたのだそうですが、記事にもあるとおり周辺自治体が共同でお金を出し合って運営している中で、何故か加茂市だけが同市医師会が運営に関わっているにも関わらず市として公的な事業参加をしていないのだそうです。
この理由として小池市長は一次救急に関しては現状でも十分であること、また前述の救命救急センター整備を待っていられないからとこうした急場しのぎの施設を作って辻褄を合わせてしまうと結局センター整備が遅れることになる等の理由を挙げているそうですが、後述するようにその救命救急センターなど一連の地域医療整備の行方についてもこの小池市長が大きく関わってきているようです。
現状で一日平均50人弱、年間で1万7千人あまりの患者が来院すると言い、患者の自治体別割合としては三条市の10,221人(57.9%)を最多に燕市3,798人(21.5%)、加茂市1,242人(7.0%)、新潟市678人(3.8%)等々となっていると言いますから、利用者比率としては加茂市からの患者がかなり上位と言っていいのですが、加茂市医師会も関わっている以上患者をえり好みするわけにもいかないところでしょう。

こうした場合大きな病院では選定療養加算によってお金を取ることで患者をコントロールするようになっていますが、一次救急の診療所ではそれも出来ないことなのでしょうしで、結局は関連自治体への十分な根回しと了解を得ないまま開設してしまったツケがここに来て顕在化していると言えますが、その結果感情的対立にまで発展してくるとなればデメリットが大きいようには感じます。
お金の問題は個人同士の関係においてもしばしばやっかいな話で、ましてや自治体が絡むとなれば予算の都合など様々な事情はあるのでしょうが、以前に基幹病院の小児救急が突然閉鎖され話題になった草津総合病院のケースなどを見ても、もともと草津市民のための小児救急であるのに実際には市外から夜間コンビニ受診する患者が集中していたことが疲弊の一因であったようです。
この場合は流入元の自治体とは話がついて地元の患者は地元の病院に搬送すると言うことになっていたにも関わらず、病院経営側が「患者様をお断り申し上げるとは何事か!」と現場に無理を強いることを止めなかったために大学もとうとう手を引いたと言うことですが、今回の新潟県央地域なども長年医師減少傾向が続いており、地域内の医療供給体制に問題があるとは知られていたと言うことです。
そこに500床クラスの基幹病院を作り、さらに加茂市も立派な病院を新たに調えるとなればどこから医者を引っ張ってくるのかと気になるところなのですが、これら地域医療整備計画の行方そのものが自治体首長同士の感情的対立にまで発展しているようですので、今さら小池市長としてもお金を出しますとも言いがたい状況であろうとは想像できるところですよね。

|

« 「テレビに出てます」で想像される医師像 | トップページ | 家庭内で発生したかなり斜め上なトラブル »

心と体」カテゴリの記事

コメント

みんな貧乏が悪いんや

投稿: | 2016年3月15日 (火) 08時37分

市長のこうした意向を市民はどう受け止めてんでしょうね?
市民に支持されてるから市長なんだってことでいいのかなあ。
こんな小さな市一つで地域医療をどうこうできるもんじゃないと思うんですが。

投稿: ぽん太 | 2016年3月15日 (火) 08時56分

>半径約4キロの範囲に50人以上が暮らす地区のうち

ひょっとして、過疎で50人切った地区(対象外)が増えたなんてことはないでしょうね?

投稿: | 2016年3月15日 (火) 09時06分

リンク先の県立加茂病院の要望書等読みましたが、小池市長って頭大丈夫?
こんなのが市長をやってるなんて、市民も最悪でしょうね。

投稿: | 2016年3月15日 (火) 09時32分

ご指摘の通りなんと言いますか、公人が公文書として出すにはいささかどうよと感じてしまいます。

投稿: 管理人nobu | 2016年3月15日 (火) 11時21分

無医地区数は637地区、無医地区人口は124,122人と、前回調査(平成21年)にくらべて、それぞれ減少している。
(前回調査では、無医地区数は705地区、無医地区人口は136,272人)。

人が減っただけだったりしてw

投稿: | 2016年3月15日 (火) 15時29分

こういう市長さんには好きにさせといたらいいと思う

投稿: | 2016年3月15日 (火) 21時41分

好き勝手言ってるが分不相応な病院持ちたいなら加茂市立にすればいいのに、県に金を出させたいがために県立にこだわる加茂市長
そのくせわがまま言うだけじゃなく県知事に喧嘩売ってるんだから何をやりたいんだか、加茂市なんて診療所と老人病院だけで十分だろ

投稿: | 2016年3月16日 (水) 23時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/63341587

この記事へのトラックバック一覧です: 地域医療を巡る自治体間のトラブルが勃発:

« 「テレビに出てます」で想像される医師像 | トップページ | 家庭内で発生したかなり斜め上なトラブル »