« 患者が不自然な亡くなりかたをした際にどうすべきか | トップページ | 時代と共に変わりつつある高等教育のあり方 »

2016年3月 4日 (金)

諸外国の実例にみる親子関係の難しさ

今日は海外での話を取り上げてみたいと思いますが、先日ちょっとショッキングかつもの悲しいこんな記事が出ていたのをご存知でしょうか。

病気の父親に腎臓の提供を申し出た娘に衝撃の事実、「実はお前は拾ってきた子」―中国(2016年2月25日レコードチャイナ)

2016年2月24日、四川在線によると、中国で病床の父を救うために腎臓の提供を申し出た娘に衝撃の事実が伝えられた。

曠美玲(クアン・メイリン)さん(24)は四川省遂寧市で父と祖母と共に暮らしていた。先日、父は肝臓を患い、同省の人民医院に入院した。移植手術が必要だと知った曠さんは、すぐに父親に腎臓を提供したいと申し出たが、祖母からさまざまな理由で断られた。しかし、ネットで家族であれば適合率が高くなると知った曠さんは、父を救えるのは自分しかいないと祖母に泣きながら頼みこんだ。すると、祖母は曠さんが捨て子だったと告げた

曠さんが生まれた1992年当時、村では男尊女卑の考えが根強く、女の子が生まれると捨ててしまう親もいた。ある日、路上に捨てられた曠さんを見た祖母が、不憫に思って拾い、父と共に育ててきたのだという。曠さんは「それでも父には私しかいない」と移植を希望しているが、手術には20万元(約340万円)以上かかるという。曠さんは手術費を貸してくれる人を探していて、「何年かかっても必ず返します」と話している。(翻訳・編集/北田)

何故肝臓を患い入院したのに腎臓移植の話になっているのか等々色々と突っ込みどころ満載なのはまあとりあえずスルーするとしても、こうした機会にこうした事情が発覚すると言うのも本人にとってはショッキングな話だったでしょうが、それでも親子関係は良好な様子なのが救いではありますよね。
日本でもいわゆる核家族化、少子化がすっかり定着した結果家庭内での高齢者扶養力が低下する一方で、その分は当然ながら各種社会保障や医療・介護サービスに頼ると言うことになるのですが、先日も2018年度から高齢者への年金給付を抑制すると言う話が出るなど、社会保障面では近年公的支出の削減を目指して給付を縮小していく動きが目立っていますよね。
中国などでは未だ日本と比べると公的な社会補償制度は未整備である一方で、長年続いてきた一人っ子政策で若年層の扶養力が急速に低下してきていて、それは子供一人が親二人を養うのだと言われればよほどに稼ぎも必要になるでしょうが、中には子供が先に亡くなってしまい高齢の両親が途方に暮れると言うケースも少なからずあるようです。
ある意味で中国人らしくと言うのでしょうか、親世代としても政府や子供に頼らず自分で老後の資金を稼ぐと言うことを徹底して自己防衛しているそうですが、無駄なお金を使わず少しでも貯蓄に回そうと言う意識の徹底された結果でしょうか、日本人の目から見ると何とも奇妙な法律まで登場しているようです。

子供の「すねかじり」拒否権を行使できる法案成立へ―中国(2015年12月23日レコードチャイナ)

2015年12月18日、両親に金銭をせびる成人した我が子に対し、年老いた親は「ノー」という事が出来る。安徽省政府に今月16日取材したところ、安徽省は高齢者の権利と利益を保証する法案を成立させる予定という事がわかった。高齢の親は子供の「すねかじり」を拒否する権利を持つようになる。中国新聞網が伝えた。

安徽省は人口が多い省であり、高齢者人口が多い省でもある。このほど、安徽省第12回人民代表大会常務委員会第25回会議で「安徽省『中華人民共和国高齢者の権利と利益保障法規則』(改訂草案)の実施」に関する改訂状況の聞き取りを行なった。規則では扶養者による親に対する扶養義務を規定し、養老機関は自発的に扶養者に催促できることを明確にした。また社会的な関心を広く集める子供の「すねかじり」問題に対しても明確な規定を設け、高齢の親は「すねかじり」に対して拒否できることになる。この規則に対し、「もし子供が扶養義務を怠った場合、高齢の親は「すねかじり」を拒否できるだけでなく、規則が成立すれば法的権利を行使することもできる」と話す市民もいた。

統計データでは、2014年末までにおいて、安徽省の居住人口のうち60歳以上の高齢者人口は1030万9000人で同省の総人口の17%を占めている。

一人っ子政策で育てられた子供は親から非常に大切にされた結果、我慢がきかず我が儘であるとか様々な評判もあるそうですが、今回の法律に関しては単純に子が親にお金を要求することを拒否出来ると言うだけではなく、子に親の扶養義務を課していると言うことですよね。
子供にしても必ずしも裕福ではないでしょうから場合によっては非常に厳しい話ですし、日本であれば政府の責任放棄である云々と散々に言われそうな話なのですが、社会設計としてそうした前提に立って組み立てられてきたと言うことであれば法的な明文化をしてでも義務を果たしてもらわなければ仕方が無いと言うことなのでしょうか。
国として高齢者年金等社会保障を一から整備するとなると非常に大変な話で、今後こうした問題が噴出してくるようなら中国の社会不安が大きなものとなりかねないのですが、お隣韓国などにおいても親子関係の厳しい現実を示すこんな裁判があるそうです。

韓国で親不孝訴訟!「贈与した財産を返せ」 「親孝行契約書」を望む富裕層が拡大(2016年2月24日日経ビジネス)

 2月8日は韓国のお正月(旧正月)だった。家族が集まる旧正月とお盆は「名節症候群」といって、家族行事に疲れた主婦がストレスのために寝込むことがあるほど大変な連休である。お正月になると韓国のテレビは決まって家族愛、親孝行をテーマにした番組を放映する。
 ところが今年は、親不孝に関する番組が増えた。2015年末に「親不孝訴訟」が話題になったからだ。親から財産を贈与してもらったにもかかわらず親をしっかり扶養しなかった息子に対し、親に財産を返すよう大法院(最高裁判所)が命じた
 この親不孝訴訟は「契約」が存在したため息子は親に遺産を返すことになった。親不孝訴訟の原告である父親は2003年、20億ウォン(約2億円)相当の家を息子に贈与する代わりに、息子は親と同居して親を十分に扶養するという内容の「受贈者負担事項履行覚書」を作成し、息子と合意していた。覚書には契約内容を履行しなかった場合は契約を解除するという項目もあった。
 親不孝訴訟で裁判所は、「受贈者負担事項履行覚書は民法561条で定める負担付贈与にあたるため、息子が覚書通りに親を扶養しなかった場合は贈与を取り消すことができる」と判断した。
 原告である父親は、「(被告である)息子は生活費をくれただけで一緒に食事もしなかった。親の看病を姉(原告の娘)と介護士に任せた。親を看病しないどころか介護施設に入れようとした」として訴訟を起こした。もし原告が契約なしで財産を贈与した場合、被告が原告の扶養要求を断っても何も言えない。「家をもらう代わりに親を扶養する」という覚書があったからこそ訴訟できた

「親孝行契約」を結びたがる富裕層

 韓国のケーブルテレビ局JTBCの2月5日付報道によると、同様の「親不孝訴訟」は2002年には68件だったものが、2014年には262件に増えた。韓国の民法974条は親族間の扶養義務に関して、本人の直系家族とその配偶者を扶養する義務があると定めている。
 JTBCは親不孝訴訟が増加した原因は高齢化にあると分析した。韓国人の平均寿命は1971年の61歳から2014年の82歳に伸びた。親は「子は当然自分の面倒を見るべき」と考え、子は「数十年にもわたって親の生活費や医療費、介護費を払い続けるのは厳しすぎる」と考える。親世代と子世代の間に意識のずれが生じていることが、親不孝訴訟として表われたということだ。
 朝鮮日報や公営放送KBSによると、お正月に家族が集まった際に、条件付きの贈与契約、いわば「親孝行契約」を結びたがる富裕層が増えているという。韓国の銀行は富裕層に対し法律相談や税金相談などを無料で提供している。お正月前に親孝行契約書を用意したいと問い合わせる50~70代が増えたという。
(略)
 70代の子が90代の親を介護する「老老介護」もテレビや新聞でよく取り上げられる。老人が老人を介護するのは体力的にもきつく、医療費などでお金もかかる。親の老後を支えて親孝行したいという気持ちだけでカバーできる問題ではなくなった
 それでも韓国の国会では「親不孝防止法」なるものを検討している。全ての贈与を条件付贈与にするものだ。条件なしで親が子に財産を贈与した場合でも、子が親の面倒を見ない場合は贈与を取り消せるようにする。
(略)

まあしかし単純に親が亡くなれば自動的に法律に従って遺産分割されるよりも、介護などでしっかり働いた人に贈与する形の方が合理的で心情的にも納得出来るような気もするのですが、記事にもあるようにその契約の履行面で問題があると言うことですから、これは単純に不誠実なのか経済的理由等で契約履行不能なのか、どのような状況であったのでしょうね。
遺産などは例えば月々幾らと言う形で分割贈与すると言うやり方もあるのかなと思うのですが、こうなるといよいよお金を支払ってサービスを買っているのと同じことであり、それなら最初から外部の専門家と契約を結んだ方がいいのではないかと言う考えも出てきそうで、理念としてはともかく実施の面では確かに難しい問題が多そうには感じます。
逆に日本などは社会保障のシステムがある程度整っているのですから、子に望むのはお金や労働力といった実利よりも愛情や敬意と言った心情的なものが主体であり、例えば介護施設入居者が見舞いに来てくれた回数なりに応じて遺産分割をすると言った契約を子と結んだとすれば、それはそれで合理的な考え方なのかも知れません。
いずれにしてもこうして諸外国の状況を見てみますと、親は子を養い子は親の面倒をみて当然であると言う前提を当たり前のものとして社会制度の中に組み込んでしまうと非常に無理も出てくるのではないかと言うことで、昨今国が進めている高齢者を病院や施設から自宅へと言う流れも子が親に実利を提供出来る社会環境にない以上、実際には余計な面倒を巻き起こすだけに終わってしまう可能性も高そうですよね。

|

« 患者が不自然な亡くなりかたをした際にどうすべきか | トップページ | 時代と共に変わりつつある高等教育のあり方 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

まあ彼の国と、アノ国の話ですから何が有っても…

投稿: | 2016年3月 4日 (金) 07時19分

たしかにお国柄も感じさせるニュースかなと。
でも日本でも似たような問題は起こってそうな。

投稿: ぽん太 | 2016年3月 4日 (金) 08時44分

「すねかじり」を拒否出来るって、中国じゃ子供がいくつになっても扶養義務があるって事なんだろうか?
信じられない国だね。

一度財産を贈与したのを「取り消す」のか「返却」かで、大きな違いだと思うが、
返すとなると、二重に贈与税がかかりそう。(「取り消し」なら無効ということで戻ってくるかもしれないが)
日本の税率で考えたら、2億の家が結局1.5億税金払って元のままって事になるんじゃない?

投稿: | 2016年3月 4日 (金) 09時43分

病歴が端折られてますね

彼の国は違法漢方薬が横行しているのですが、公害による薬材の重金属汚染が問題になっています
ワクチンの遅れた国で肝臓と言えばB型肝炎からの肝硬変コンボであり、ある意味不知の病でもありますからお国柄の漢方薬頼り→肝腎症候群+重金属の併せ技で腎不全→透析になる訳です

ちなみに汚染されてない薬材は順天堂辺りが契約して買っていきます

投稿: | 2016年3月 4日 (金) 10時54分

家庭内の関係を法的義務を伴う契約関係にすることは堅苦しいようですが、場合によっては互いに余計な遠慮をせずメリットもあるのかなとも感じています。

投稿: 管理人nobu | 2016年3月 4日 (金) 11時35分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/63290587

この記事へのトラックバック一覧です: 諸外国の実例にみる親子関係の難しさ:

« 患者が不自然な亡くなりかたをした際にどうすべきか | トップページ | 時代と共に変わりつつある高等教育のあり方 »