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2016年3月28日 (月)

長時間労働規制強化には医師も含まれる?

労基署もちゃんと仕事をしていると言うことなのでしょうか、先日こんな記事が出ていました。

労基署が異例の逮捕=賃金未払いの社長ら―岐阜(2016年3月22日時事通信)

 中国人技能実習生に賃金を適切に支払わず、労基署の調査も妨害したとして、岐阜労働基準監督署は22日、最低賃金法と労働基準法違反容疑で、縫製会社社長粟谷浩司(50)=岐阜県笠松町米野=、技能実習生受け入れ事務コンサルタント伊藤智文(50)=岐阜市中=両容疑者を逮捕した。

 同署によると、労基署が容疑者を逮捕するのは異例

 逮捕容疑は、2014年12月~15年8月、中国人技能実習生の女性4人に最低賃金計約165万円と時間外手当計約310万円を支払わなかった上、虚偽の賃金台帳を提出するなど労基署の調査を妨害した疑い。 

まあ逮捕に至った理由としては「労基署の調査を妨害」云々の部分が大きかったのでしょうが、それにしても逮捕容疑の通りであれば全く同情の余地がないと言うのでしょうか、どこからどう見てもブラックと言うしかありませんけれども、程度の差こそあれこうした法令違反の事業所は全国どこにでも少なからずあるのだと思います。
近年ではこのブラック企業問題が各方面で盛んに言われるようになっていて、ひとたびそこに入り込んでしまうと徹底的に搾取されるのだそうですが、こうしたものは当事者がきちんと声を出さないとなかなか取り締まりも追いつかないですから、おかしいと思えばまずは相談と言うことも必要なのでしょうね。
一方で昔からブラック業界として知られるのが医師の世界ですが、久しく以前にはそもそも自分達がブラック業界の住民であると気がついていなかったものが、ネット上などで他業界の人と当たり前に話が出来るようになりようやく異状性に気がついたとも言い、ちょうどいわゆる逃散だとか医療崩壊だとか言う現象が顕在化し始めたのがネットの普及した時期と重なっていると言うのは偶然ではなさそうです。
当然ながらブラックな労働慣行は本来的に法の許容するものではないのですが、かつては労基署に相談の電話をしても医師と判れば切られるなどと言う都市伝説?もあったほどですから、こうなりますと一般社会ではどうなのかと言うことを医師自身がしっかり承知していなければ仕方が無いと言う話で、先日出ていたこういう記事を紹介してみましょう。

長時間労働の規制強化へ(2016年3月23日共同通信)

 政府は23日、労働基準法で定められた週40時間を超えて働く人の時間外労働(残業)に関し、規制を強化する検討に入った。例外として長時間の残業を容認している「特別条項」に上限を設ける案が浮上している。

 労基法では、残業が一定時間を超える場合、この制度を使って例外的に労使で独自に上限を決めることができるが、国が定める上限はなく、無制限な働き方を助長しているとの批判がある。政府は「1億総活躍社会」の柱として働き方改革を進める方針だ。

 長時間労働への歯止めが期待できる一方、経済界は企業活動に影響を与えるとして猛反発するのは必至で実現には曲折が予想される。

この記事、いわゆる「三六協定」の特例として認められている月45時間以上の残業を認める特別条項のことを言っているのだと思うのですが、本来的には労使間で交渉をして協定を結んだ場合に行われる特別な労働であると言う位置づけをされているはずが、実際には会社の言いなりに際限なく時間外労働をするための言い訳のように使われているのが現状ですよね。
企業側としては確実な労働力を手軽に確保出来ると言うメリットがあり、当然ながら各方面から反対の声も根強いだろうと思うのですが、本来的にそこまでの残業が必要なほど人手不足であれば単純に労働者不足なのですから、社員を増やすなり労働力を増強する手段を講じる必要があるはずです。
これに対する言い訳として「そうは言っても必要な技能を備えた労働者はそう簡単には確保出来ない」と言うものがあり、特に医療業界のように国家資格を必要とする専門職の世界でそれが顕著であるわけですが、そもそも全国の医師の中でこの三六協定なるものの存在を知っていて、なおかつ労使協議の果てにそれに合意したと言う人がどれだけいるものなのでしょうね?

医師ユニオンの調査によれば全国の病院で三六協定の締結・開示は7割に留まったと言い、しかもその内容として1ヶ月の時間外の延長が45時間以下のものは54%と半数に過ぎず、「過労死ライン」と呼ばれる月80時間以上の時間外労働を定めた協定が15%あり、「特に東京の都立病院では全て120時間となっていた」と言い、中には月200時間の時間外労働を定めた施設もあったと言います。
こうした話を聞くと医師は管理職であり、あくまで自主的に自分が捌ける範囲で仕事をしているのだと言う意見も出るのですが、どこの職場であっても労働時間をコントロールするために例えば顧客数を調節すると言った方法を採れる管理職がどれだけいるのか、それを実際にやった場合きちんと被雇用者としての地位は保全されるのかと言うことを考えた場合、あまり意味のある話だとも思えませんよね。
将来的には医師が十分に充足してくれば過労は次第に改善するはずだと言う考え方もありますが、医師が増えれば新たな需要が喚起されそれだけ仕事も増えると言う話もあり、そもそも病院と言う場所には常に医師が常駐している必要があると法的に定められている以上、特に医師数の少ない小病院ではどうしても当直等でこうした上限を超えてしまうことになってしまいそうです。
今回新たに明確な時間外労働の上限が定められたとして、その場合医師にだけは特例として上限超えを認めるのか、それとも医師も例外なく上限の範囲内でのみ労働を認めるのかが問題ですが、厚労省の労の側の事情で進められている話によって厚の方にも大きな影響の出そうな話であり、省内でどのような摺り合わせが行われていくのかと考えても興味深い話ですよね。

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コメント

病院の場合、医師全員が36協定に反対しても一大勢力である看護師が賛成すれば通ってしまうという問題があります。
医師の残業時間を規制しようとするなら、法律で縛るより診療報酬で縛った方が(勤務する医師が1人でも月の残業時間が80時間を超えたら減算とか)実効性は高いと思われます。

投稿: クマ | 2016年3月28日 (月) 08時53分

↑つか、そんな糞病院は残業代かっぱいで有給フル消化した上で辞めればよろしいかと。

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年3月28日 (月) 09時18分

>医師全員が36協定に反対しても一大勢力である看護師が賛成すれば
質問です、36協定を労使間で締結した場合、看護師だって
長時間労働を求められれば断れない状況になる訳ですよね?
なのになぜ「賛成する」のでしょう、
彼女たちが自ら奴隷になりたがっているとは思えないのですが?
それともコレに縛られるのは医師のみで、その他の職種はその限りにあらずってな協約を
労使間で結べるカラクリの仕込み方があるのでしょうか?

投稿: | 2016年3月28日 (月) 10時56分

>なぜ「賛成する」のでしょう

多くの病院の場合、看護師が個別に賛成しているのではなく、労働組合が賛成しているという形をとっています。法律上はそれで問題がありません。
中には「36協定を締結しないと残業手当が出ない」という誤解をしている人もいるようですが・・・

投稿: クマ | 2016年3月28日 (月) 12時54分

解説しましょう。
交代制勤務者の時間外労働は、あくまでも本来の勤務時間内に発生した業務に対する残業です。
また各勤務帯の就業者数は、それが十分かどうかはひとまず措くとしても、法令等できちんと決まっており、それを破れば倒産に直結しかねないペナルティを課されます。
8時-17時が勤務時間の者が、17時1分に発生したイベントへの対応を求められることは基本ありません。

それに対して医師の場合、本来の勤務時間と関係なく、24時間いつ発生したイベントに対しても対応を求められることが際限ない時間外労働の原因のひとつです。

もう少し具体的に書けば、
入院患者が夜半に具合わるくなったら、
看護師は夜勤者が対応し
医師は家にいた主治医が呼び出される
という違いです。

投稿: | 2016年3月28日 (月) 12時56分

そうした点から医師も交替勤務制を導入すべきだと言う意見があるのに対して、同じ医師から根強い反対論もあるのは興味深いところだと思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年3月28日 (月) 13時17分

ホストが雇用関係にないぐらいだから、裁判で医師も雇用関係にないことにされそう。

投稿: | 2016年3月29日 (火) 10時21分

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