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2016年3月 7日 (月)

子供にお金を使うことへの否定的な記事が出る背景

このところ保育園に入所できなかったと言う書き込みが賛否両論で大きな話題になっていて、条件的には決して悪くはないのに次から次へと入所を断られ連戦連敗、さてこれからどうしようと悩んでいる方々が全国的にも決して少なくないのだそうですが、その一方でこんな記事が出ていたことが注目されるところです。

東京都の保育園運営 0才児1人当たり1か月に50万円かかる(2016年2月29日NEWS ポストセブン)

 待機児童問題が指摘されて早何年か。保育士も足りない、保育園も足りないなか、問題は解決していない。そんな中、「保育園落ちた 日本死ね!!!」と題した、はてな匿名ダイアリーへの書き込みが話題を呼んでいる。「日本死ね!」という過剰にも思えるつぶやきには、子供を抱えるママたちの本音がつまっている。ママたちにとっては深刻な問題だが、祖父母世代は首をかしげる
「昔は子供が生まれたら仕事を辞めたし、保育園に早くから預けるくらいなら、仕事を調整すればいいんじゃないの?」(神奈川県在住の69才主婦)

 もちろん、子供が成人するまでにいろんな未来を選べるほどの充分な資金があればそうしたい。多様化する価値観のなかで、女性が仕事をしなくとも孤立しない社会制度が整っていればそうしたい。しかし、ママたちを取り巻く環境はとにかく厳しいのだ。子育て・家族問題に詳しい、作家の石川結貴さんは言う。
「競争率が激しいといわれる世田谷区のお母さんの話ですが、彼女は子供を保育園に入れていた。よく入れられたわねと言うと、“理想を捨てれば入れますよ”って。他にも、“妥協すれば探しやすくなるのに”というお母さんもいましたし、競争率の低い地域に引っ越すという方法をとったお母さんもいました。そういうお母さんたちは、“保活が大変だっていう人は理想が高すぎる”と言うんです。園庭が広くて、家からも近くて、なんて叶わないっていうご意見もありました」(石川さん)

 認可保育園の数を増やすのではなく、小規模保育園の数を増やす、ベビーシッターの数を増やすなどの提案が出されたり、社会学者・古市憲寿さんは著書『保育園義務教育化』(小学館刊)で、保育園を義務教育化することで、誰でも無償で通える制度を打ち出すなど、プランはいくつもあるのに、いずれも現実的に動き出してはいない
「認可保育園は開園するのに法的な条件を満たさなければいけないし、最近では近隣からの苦情や用地確保など増設が難しい状況にあります。加えて、運営費用は相当なものです。以前、東京都の担当者に話を聞いたら、人件費や建築費などの経費をすべて含めたら、0才児1人当たり、1か月に50万円かかると言っていました。
 保育園を作る、という方法以外に、男女問わず育休の確保や長時間労働の見直しなど根本的な問題解決も必要でしょう」(石川さん)

こうした記事の類は途中では両論併記的な玉虫色の文言も続くものの、結局は最後に示された答えが記者の本音なのだそうで、要するに「保育園が足りないと言ってるけどそう簡単に増やせないし、金もかかるけどいいの?」と言うことが言いたいのでしょうかね。
以前から待機児童問題と言うことが盛んに言われるようになっていて、マスコミなども久しく「国は何をやっている!」とその無策ぶりをバッシングする側に立っていたことは記憶に新しいところですし、今現在まさに入所できないで困っていると言う声が大きく取り上げられている中で、言ってみれば「入所できないのはえり好みのせい」「金ばかりかかるものをそんなに増やしてどうする」とも受け取れる、ずいぶんと否定的な印象を受ける記事です。
マスコミなどは売るために記事を書いているわけですから、表向きの保育所が足りない、国は何をやっていると言う声とは別な意見も市中に少なからずあるのだと言うことを類推させる記事とも言えるのですが、実際に地方に行けば決して保育所に入れないと言うことはないとも言いますし、都市部にあっても選ばなければどこかには入所できるだろうと言う意見もあるようです。
少子化対策がこれだけ言われている中で、基本的には子供のためにリソースをつぎ込みお金を使うことには無条件で肯定的に取り上げられるべきだと言う風潮があったはずが、実は最近必ずしもそうではないのかと感じさせる記事として、例えば先日出ていたこんなニュースがあります。

子ども医療費無料化、受診増負担3000億円 厚労省試算(2016年2月26日毎日新聞)

 厚生労働省は25日、子どもの医療費の窓口での自己負担を無料化すると受診が増えて健康保険の負担が1700億?3000億円増えるとの試算を明らかにした。子どもの窓口負担は、小学校就学前が2割、小学生以上は3割。残りは企業の健康保険組合などが支払う。ただ、地方自治体の独自助成で実際の負担は軽減されている。

 厚労省は2012年度予算を基に推計。高校3年まで無料化した場合に健康保険の負担額は8400億円増えるとした。大半は患者の負担を健康保険が引き受ける形だが、3000億円は受診の増加による影響としている。小学6年までの無料化だと全体で5700億円増加し、受診増による影響は1700億円。【阿部亮介】

この小児医療費無料化問題については、ひと頃は田舎の市町村が若年人口を呼び込むための目玉として住宅地造成とセットで「小児科あります」「○歳まで医療費は無料」などと売り出していた時代もあって、それなりに社会的には評価されていたのだろうと思いますし、各方面からも予算をつけてどんどん推進すべきだと言う声が多く上がっていたのは確かです。
一方で医療現場からはそんなことをすればコンビニ受診が増え、ただでさえ逼迫している小児医療の現場が完全に崩壊すると言う危惧の声が上がっていたこともこれまた事実なのですが、実際に小児医療無料化をうたう自治体では病院に来るほどではない軽症患者が増えただとか、夜間休日に親が気軽に子供を連れてくるようになったと言う現象も見られるようですね。
とは言え国を挙げて少子化対策を推進している中で、基本的には悪い話ではないはずのものに対して、ある意味その拡大に否定的とも受け取れるデータをわざわざ国が公表する意図が何なのかで、特に無料化すればこれだけ受診が増えますよと言われれば、ただでさえ支払い削減に鋭意努力している保険者側としてはちょっと待ってくれよと言いたくもなるでしょう。
財務省などが旗を振って聖域無き財政改革を推し進めている中で、子供に使うお金だけを聖域化するわけにはいかないと言う事情もあるのでしょうが、その一方で高齢者には税金が上がるたびにお金をばら撒くなど無駄に優遇されているじゃないかと言う反発もあって、限りあるお金をどこにどう配分するかと言うのはなかなか難しい問題ではあります。

純医学的に見ると10代後半の時期は病気がもともと少ないのだから、その年代まで無料化を広げる必要性は乏しく単なる政治家の点数稼ぎだと言う批判もありますが、社会的に見るとこの年代は例えば受験前のインフルエンザ対策などそれなりに気を遣うことも出てくる時期ですから、熱が出たと思えば夜間だろうが休日だろうが気安く受診出来るのはありがたいと言う意見もあるでしょう。
飲食店などに往々にして見られる逆説として、お客が高いお金を払うお店ほど本来お客の立場が強くなってしかるべきなのに、安いお店ほどお客が偉そうに振る舞っていると言う現象がありますが、そうした観点からしても無償化で客層が良くなると言うことはまず考えられず、むしろ無料なのだから徹底的に使い倒してやろうと考える人のコンビニ受診が増えるだろうと言う予測は成り立ちます。
こうした場合小児科の先生に言わせると患者本人は具合が悪くてきているのだから何も悪くない、ただ付き添いでやってくる親への対応がとにかく神経を使うのだと言い、下手をすると妙なネット情報に染まっている方々が夜通し次から次へとやってきて、一つでも見逃しがあれば訴えてやる的な態度で立ち向かってこられれば、それは大変に神経を消耗するだろうことは想像に難くありません。
折衷案として無料化をするのは通常の診療時間内に限ると言ったやり方もあるでしょうが、利用者目線で見れば夜中だろうが急病なのだから受診しているのだと文句も言いたくなるのだろうし、一方で現代では不要不急の時間外受診には選定療養加算など様々な抑制策も図られているのですから、財政的にも他年代との整合性として考えても何でも無料化と言うのも妥当ではないのかも知れませんね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

田舎の場合は子ども医療費無料で呼び込んでも18で出て行く人が圧倒的に多いので意味なさそう

投稿: 名無し | 2016年3月 7日 (月) 07時43分

当院も小児科二次急やってますが一次急レベルの方も多いみたいです。
それでも医師会の小児夜間診療所もあるからなんとかなってますが。
親の教育にももっと力を入れるべきじゃないですか。

投稿: ぽん太 | 2016年3月 7日 (月) 08時11分

>0才児1人当たり、1か月に50万円かかる

医者を一人育てるのに1億円かかる云々て話が昔ありましたね。あれと同レベルってことはないのでしょうか?

投稿: クマ | 2016年3月 7日 (月) 08時52分

>あれと同レベルってことはないのでしょうか?
建築費を含んでいることから、その可能性が高いかと。
何年分の定員で割ったのか明記されてないとですね。

投稿: JSJ | 2016年3月 7日 (月) 09時12分

つまりそれは、自宅で0歳児の面倒をみたら50万円支給してもらっていいということかなあ

投稿: | 2016年3月 7日 (月) 09時22分

小学校入学前は、本来はまだまだ親から離れられないと思うんだけどね。
幼稚園でさえも、年少さん辺りはまだまだいやがる子が多い。
そんななかで、義務教育化しろとか、頭がおかしいんじゃないか?
祖父母世代がクビをかしげるのは同意。

仕事を辞めれば食べていけないなんて、ごく一部。
もともとは、そういう人たちのために保育園てあったのだけど、いまは違うからなぁ。
ただ単に、仕事を辞めて子供中心のような生活がイヤなだけでしょ?

投稿: | 2016年3月 7日 (月) 09時41分

本当に真水で50万掛かるのだとしたら
自宅で0歳児を看る主婦に40万払う制度を導入すれば安上がりですよね

本当ですか?

投稿: | 2016年3月 7日 (月) 10時32分

もう高度成長期でもバブルでもないんだから、
その時代の感覚の人たちがいろいろ言ってもきっと全て的外れ

投稿: | 2016年3月 7日 (月) 11時39分

>自宅で0歳児を看る主婦に40万払う制度を導入すれば安上がりですよね

金額については議論の必要があるでしょうが、少子化対策として結局これが最も有効なのだと思いますが、その財源としてはやはり社会保障の支え手を育てるための受益者負担として高齢者の資産に期待すべきなのでしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2016年3月 7日 (月) 12時23分

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