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2016年2月 8日 (月)

ドクターコールはもういらない?日医が飛行機搭乗前の医師登録制度を開始

本日の本題に入る前に、先日読んでいてこれはどうなんだと感じたのがこちらのニュースなのですが、検察審査会とは国民の間からくじ引きで選ばれたメンバーが検察菅が起訴しなかった案件について、不起訴が妥当なのかどうかを判断する場であると言うことを承知いただいた上で記事を一読いただきましょう。

患者転倒死で業過致死容疑 「不起訴不当」と議決 札幌検察審(2016年1月29日北海道新聞)

 札幌市内の病院で女性患者が転倒して死亡した事故をめぐり、業務上過失致死容疑で書類送検され、札幌地検が不起訴処分とした男性准看護師について、札幌検察審査会が「不起訴不当」と議決したことが29日、分かった。議決は27日付。

 議決によると、准看護師は2011年1月、くも膜下出血で入院中の患者=当時(79)=をトイレで介助していた際、患者が突然歩き出そうとして転倒。頭を打った患者は急性硬膜下血腫で2週間後に死亡した。

 准看護師は「危険な行動をする患者だとは判断されていなかった。カーテンの隙間から数回個室をのぞいて監視していた」と主張し、地検は12年10月、不起訴処分とした。

 しかし、議決書で検審は、同僚の看護師らの証言などから「患者が危険な行動をとる可能性を予測できた。十分な監視を怠った」と判断し、地検に再捜査を求めた。

 札幌地検の片岡敏晃次席検事は「議決内容を精査し、再捜査をした上、適切に対応したい」とのコメントを出した。

当日の状況がどうであるかは全く判らないし、患者の状態も何とも言いがたいのですけれども、介助つきでトイレに行ける程度と言えば全く寝たきりではなかっただろうと想像されるところで、記事にある通りの状況であったとすればまことに残念かつ不幸な事故と言うしかなく、これが民事ならばまだしも刑事ですから非常に厳しい判断と言わざるを得ない気がします。
同僚の証言からすると普段から突発的に想定外の行動をする可能性のある患者だったと言うことなのでしょうが、トイレに行ける程度の患者を24時間一時も目を離さず監視していると言うのも現実的ではない話で、こうした状況で起こった事故に関しても(日本の裁判制度の慣行から考えれば事実上)刑事責任を問うべきだと言う意見が国民の間では多数派であったと言うことですよね。
こうした国民の目線を承知した上で医療現場も改めて医療事故防止に対して意識していかなければならないと言うことですが、さて医療行為に伴う責任のあり方と言うことに関して、かねて議論の続いているのが飛行機内でのいわゆるドクターコール問題で、先日こんなニュースが出て話題になっていました。

「お医者さんいませんか」不要に? 医師会と日航提携(2016年2月4日TBSニュース)

 航空機内の「ドクターコール」が、今後、なくなるかもしれません。日本医師会は3日、日本航空と会見を行い、機内で急病人が発生した際に医師が速やかに応急処置できる制度を国内で初めて提携し、今月15日から運用すると発表しました。

 この制度は、日本医師会が発行するICカードの情報を医師が日本航空のホームページで事前登録することで、不測の事態が起きても、客室乗務員が座席を把握して、直接、協力を求めることができるというものです。

 日本航空では年間およそ360人の急病人が発生しているということで、日本医師会は「多くの医師に制度を活用してほしい」と呼びかけています。


日医とJAL、ドクターコールに応える医師を事前登録(2016年2月5日日経メディカル)

 日本医師会と日本航空(東京都品川区)は2月3日、機内で発生した急病人の応急処置を医師が迅速に行えるよう、搭乗している医師を事前に登録しておく「JAL DOCTOR登録制度」を2月から共同で実施すると発表した。日本医師会が発行する医師資格証を有するJALマイレージバンク会員を対象に、日本航空のウェブサイトからの登録を依頼する。

 医師資格証は、写真とICチップが搭載されたカードで、医師資格を確認できる。機内で急病人が発生した場合、事前に登録した医師に客室乗務員が直接援助を依頼する。これにより、より迅速な医療対応が可能になるとしている。医師自身が飲酒や体調不良などで対応が困難な場合は、辞退することも可能だ。

 飛行機内での急病人発生時には、「この中にお医者さんはいませんか」と乗り合わせた医師に援助を呼び掛けるアナウンスがなされる。しかし、法的責任や、どのような医薬品や機器が機内に搭載されているか分からないといった不安要素から、医師がこのドクターコールに応需することを躊躇するという声もある。ドクターコールに応需した場合の法的責任は、既に民法第698条で基本的に免責されているともいわれるが、米国などで制定されている「良きサマリア人法」を日本でも法制化すべきという指摘もなされてきた(関連記事)。

 そんな中で日本航空は、ドクターコールに応じた医療従事者の賠償責任を担保する保険への加入や、必要であれば機内から提携先のメディカルコールセンターに連絡して救急専門医から医療助言を24時間いつでも得られる体制を構築するといった航空機内救急医療支援体制を整えてきた。また、1993年に搭載したドクターズキットには、2001年から自動体外式除細動器(AED)を、2016年1月からはパルスオキシメーターや電子血圧計を順次搭載しているという。登録医師のインセンティブとして、日本航空は空港のラウンジへの入室資格を用意する。

 日本医師会によれば、2014年から発行を始めた医師資格証は、現在までに2500枚が発行されている。医師資格証の年会費は、日本医師会会員であれば5000円(現在は初回初年度無料)、非会員であれば1万円となっている。同制度の普及は、医師資格証の普及も大いに関係しそうだ。

あーこれはさぞかし大勢の先生が登録されるんでしょうなあと思うところなのですが、しかし毎年たったこれだけの年会費を支払うだけでこれほど素晴らしいインセンティブも提供されるのですから医師たる者先を争って登録をすべきであると言う声もさほどに聞こえてこない気がするのですが、逆説的に考えるならばこのカード所持者で事前登録をしない先生と言うのはまあ、そういう意志表示をしていると解釈すべきなのでしょうかね。
ちなみにこの日本医師会電子認証センターなるもの、一体何を目的とした施設なのかと言えば同センターのHPによれば「保健医療福祉分野の国家資格を、ITの世界や現実の世界の上で証明する機関」なのだと言い、「ネットワーク上で医師資格を証明するための電子証明書を発行」するなどの業務を行っているのだそうです。
将来的には医療情報のやり取りにおける電子署名などこの種の資格認証が必要とされる場合ももちろん増えてくるのでしょうが、医療現場と言えばレセプト電子化にすらあれほど抵抗が根強かったほどアナログな世界でもあって、現状で「医師資格証を活用することで、IT世界においても現実世界においても、医師であることを患者さんや国民の皆さまに証明することができます」と言われてもはあ、そうですかとしか言い様がない気がします。

この機内ドクターコールなるもの、過去のアンケートによれば応じる医師は全体の1/3からせいぜい半数程度だとも言い、その背景に機内で何かあったときどう責任を取らされるか判らないと言う懸念があることも大きな要因であって、興味深いことに国内航空各社においてもこの点に関しては言を左右して明言を避けているように見えますよね。
ちなみにこの種の話題になるとしばしば出てくるのが記事にもある民法698条なるもので、ドクターコール応需派はこれをもって免責されるのだと主張することが多いのですが、この698条に記載されているのは「本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない」と言うことだけです。
要するに結果として本人の身体に急迫の危害が及ぶようなものでなかった場合、あるいは重大な過失があったと認定された場合には責任を負うことになると言う点では一般臨床における状況と本質的に変わらないと言う考え方も出来そうですし、その場合賠責保険に入っている日航のような会社以外であればどうなるものなのかですよね。
ちなみに飛行機に医師が乗り合わせている確率は7割程度、一方でドクターコールが発生する確率は国際線で0.1%、国内線で0.04%と言い、これを高いと考えるべきか低いと考えるべきか微妙ですが、会社側も本気で医師を呼びたいのなら一定確率で確実に起きることなのですから「何かあってもたぶん免責されるから大丈夫大丈夫」と誤魔化すよりも、さっさと保険くらい入っておけと言う気がしないでもありません。

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コメント

日医としちゃ登録推奨なんですね?
ついでに国に免責も働きかければいいのに。

投稿: ぽん太 | 2016年2月 8日 (月) 09時00分

「結果的に」十分な監視を怠ったと言う、いつものパターンでしょうか。この個別案件における十分な監視とはどの程度の監視なのかきちんと発表し報道すべき。

投稿: | 2016年2月 8日 (月) 09時28分

もう犬猫並みにICチップ埋め込んで、機械的に医師を発見するシステムにしろよ。

医者のプライバシーって、どこ行ったんですかね?

投稿: | 2016年2月 8日 (月) 11時24分

医師じゃないので、全く理解できない「医師資格証」。
しかも、クレジットカードより高い年会費って、持つことになんか意味あるのでしょうか?

投稿: | 2016年2月 8日 (月) 12時44分

ドクターコール応需の是非は別として、このカードを取得された先生方の来歴動機などは気になりますよね。

投稿: 管理人nobu | 2016年2月 8日 (月) 13時22分

善意で、もちろん無料で助けてあげることを強要。
もちろん何か気に喰わないことがあれば訴えられる。
実際に飛行機ではなくて空港だけど、胸骨圧迫とAED装着してなんとなく蘇生させた。
「ああよかった・・・」と思っていた翌日に、「肋骨が折れてるんですけど賠償して」みたいな電話があった時には絶対に、二度と病院外で医者とは名乗らないと決めた。

投稿: | 2016年2月 8日 (月) 13時26分

>医師じゃないので、全く理解できない「医師資格証」。
しかも、クレジットカードより高い年会費って、持つことになんか意味あるのでしょうか?

すごく意味があります。この高い年会費を30万人の医師が全員払えば15億〜30億の収入!、医師会のお偉方の第二の人生の就職先の利権確保でウホウホです!ついでに厚労省の役人も天下りで巻き込めば、診療報酬等で強制化させることができます!!なんて頭がいいんだ、医師会のお偉方と欲に絡んだ役人たち!!!

こんなに意味があるシステムなので、全国2500人という膨大な割合の医師が登録しているのです!!!!!

投稿: おちゃ | 2016年2月 8日 (月) 17時47分

医師法第19条第1項

応召義務または応招義務は、医師などの職にある者が診療行為を求められたときに、正当な理由が無い限りこれを拒んではならないとする義務のことである。

投稿: ホワイトジャック | 2017年3月29日 (水) 01時28分

それは診療に従事してる医師の義務だね
オフで酔っ払ってる医師には応召義務などない
まして日本国外じゃ全くね

結論として海外航空会社の飛行機に乗ってまずは一杯引っかけとくでFA

投稿: | 2017年3月29日 (水) 07時54分

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