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2016年2月 3日 (水)

厚労省も医療費削減に努力中

医療費抑制について各方面で様々な方法論が議論されているところですが、先日なかなかうまいことを考えたなと感心したのがこちらの記事です。

「減薬に成功」で新点数、入院・外来ともに評価(2016年1月29日医療維新)

 中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は1月29日、2016年度の個別改定項目について議論、多剤投薬を適正化する観点から、入院患者の内服薬を減薬した場合の「薬剤総合評価調整加算」を新設する方針を了承した(資料は、厚生労働省のホームページ)。外来と在宅医療についても同様に、処方内容を調整して内服薬を減薬した場合の医療機関に対する「薬剤総合評価調整管理料」と、当該調整に際し、他の医療機関や薬局に照会した場合の「連携管理加算」を、それぞれ新設する。

 医薬品の残薬管理に向け、処方せん様式も見直す。処方せんの欄に新たに、「保険薬局が調剤時に残薬を確認した場合の対応」の欄を設け、(1)医療機関へ疑義照会した上で調剤、(2)医療機関へ情報提供――のいずれかを指示する場合には、「レ」または「×」を記載する。

 長期投薬にもメスを入れ、30日超の投薬を行う場合には、病状変化時の対応を患者に周知するという要件を課す。この要件を満たさない場合に長期投薬する場合には「30日以内に再診」「200床以上の病院の場合には、200床未満の病院、診療所に文書による紹介を行うことを申し出」「患者の病状は安定しているが、服薬管理が難しい場合には、分割指示処方せん交付」のいずれかの対応を行う
(略)

過剰投薬や問題と言えば、ある程度医療機関を利用したことがある方で全く心当たりがないと言う方は珍しいのではないかと思いますが、ちょっとした風邪薬などでも残った場合に家族が使い回してトラブル発生と言うこともあり得ますし、まずは処方薬とはあくまでも処方された当の本人に対して処方されたものであると言う大原則はきちんと守っていただきたいと思いますね。
従来から患者宅に大量の残薬が放置され医療費高騰の一因にもなっていると言われてきたところですが、処方側にインセンティブを設定するのは医療費抑制と言う観点からみても当然悪い話ではないはずですが、問題は昨今何でも設定されつつあるガイドラインとの兼ね合いですよね。
異常を見つけガイドライン上それはこう治療すべしと書いてある以上やらざるを得ない、その結果年々病気が増え薬も追加される一方と言う状況は日常的に経験しますが、こうした加算を導入するのであればガイドライン作成においてもどうした場合に休薬なり中止なりが可能なのかを明示していただきたくなります。
一方でここで注目いただきたいのは、こうした医療費削減にも効果があると思われる話が財務省筋ではなく厚労省筋で議論されていると言う点ですが、医学的に妥当であるのみならず国民にとっても利便性がある話ならばまだしもなんですが、見ていますと何やら各方面に大きな影響を及ぼしかねないこんな話もあるようです。

「治療に関係ない検査」で自費徴収を検討(2016年1月30日医療維新)

 厚生労働省は、1月29日の中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)で、保険外併用療養費の「選定療養」の類型追加などを提案したが、診療側と支払側からともに異議が出て、再度整理し次回以降の総会で改めて議論することになった(厚生労働省のホームページ)。

 「選定療養」の類型追加案として厚労省が提案したのは、「治療中の疾病または負傷とは直接関係しない検査」。併せて、タミフルの予防投与など実費徴収できる範囲の明確化、差額ベッドと解釈されてきた「特別の療養環境」に、「差額診察室」を加え、長時間滞在が必要な治療を個室など特別の療養環境で行った場合の患者負担徴収など、既存の「選定療養」の解釈の幅を広げることも提案した。

 「治療中の疾病または負傷とは直接関係しない検査」の例として挙がったのが、ノロウイルス検査だ。同検査は、3歳未満と65歳以上には保険適用されているが、それ以外の年齢層は対象外。例えば、食品などを扱う会社に勤務する壮年層が腹痛を訴えた場合に、雇用先から「ノロウイルス感染ではない」証明を求められた場合などに、ノロウイルス検査分を実費で負担することなどが想定される。

 保険外併用療養費は、先進医療などの「評価療養」と、差額ベッドなどの「選定療養」に大別できる。「評価療養」は、保険導入を前提としているが、「選定療養」は、保険導入を前提としていない。しかし、厚労省は、今回の「選定療養」の対象拡大に当たって、「医療を取り巻く状況の変化や技術の進展等によって保険導入の可能性が生じることがあり得る」との解釈も同時に提示。「ノロウイルス検査で、ウイルス感染が判明し、治療法が変わるようになるのであれば、(現在保険導入になっていない年齢層でも)保険導入することはあり得る」(厚労省保険局医療課保険医療企画調査室長の三浦明氏)。

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、提案されたノロウイルス検査と同様の考え方を広げていくと、「普通の医療が押し込められる可能性がある」と警戒。さらに「選定療養」が「保険導入することはあり得る」との厚労省に解釈に、医療保険制度の考え方を根本的な変更につながりかねないことから、「今回は無理、止めるべき」と議論に入ること自体を避け、今後改めて慎重に議論することを求めた。

 支払側も、「中医協だけでなく、(社会保障審議会)医療保険部会で議論しないとまずいのではないか」(連合総合政策局長の平川則男氏)、「次回以降の議論してもらいたい」(健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏)との意見が出るなど、「選定療養」の対象拡大以前の問題として、議論の進め方に戸惑いを隠さなかった。
(略)

この選定療養費の再定義の問題、記事中にも例示されているノロウイルス検査など、現在治療している疾患とは無関係に何かしらの検査を出すと言うことはしばしばあることですが、それが保険診療の範囲外であった場合他の検査処置も全てが保険支払いの対象外となってしまうため、こうした場合には保険診療と保険外診療との混在を認めましょうという考え方です。
これがいわゆる混合診療と言うものですが、従来この混合診療が認められる場合としてある程度有効性がありそうだと認められた高度技術を活用した先進医療など「評価療養」と呼ばれるものと、いわゆる特室料など患者の快適性向上のために認められる「選定療養」の二つの場合があったものを、今回「保険導入することがあり得る」ものまで選定療養に含めると言えば、これはまさしく評価療養の考え方そのものに聞こえます。
一見すると患者側の利便性が向上しそうなこの話、各医員から強い反対意見が出た理由としてやはりこの考え方を推し進めていけば、例えば糖尿病で通院している患者で血糖を調べるついでに肝機能を調べるのは「治療中の疾患とは直接関係しない検査であるから保険外の自費診療にしましょう」と言う話にもなりかねず、医療給付の範囲を制限することにも使えそうな話であるからと言う側面もありそうです。
つまり風邪などは寝ていれば治ると言うのは一面の真実なのだろうし、その意味で風邪がつらいから薬をと言うのも典型的な選定療養の対象になり得ると言う考え方もできるだろうし、そもそも痛いから痛み止めをくれと言ったことでさえ患者が快適性を増すため自ら望んで言うことだと言う理屈は成り立つわけですが、だからそれらを全部選定療養の対象にして自費で支払わせろと言うことも、理屈の上ではできることになってしまうわけですね。

保険診療に関してはかねて可能な限りその給付範囲を拡大すべしと主張する一派と、医学的に妥当性がないだとか本人希望に過ぎないものは給付対象外にすべきだと言う一派とのせめぎ合いがありますが、例えば昨今の時間外診療に対する追加料金徴収などは患者自身の利便性と医療現場の崩壊防止と言う二つの観点から保険外で自費払いとしている点に意味があると言えます。
混合診療の範囲が拡大すれば保険診療の様々なルールに縛られず柔軟な対応ができるメリットもある一方で、新しい治療法や有効性が証明されていない治療法は保険診療から外されるのではないかと言う懸念もあって、希望する方には追加料金をお支払いいただければ対応しますと言うのも判りやすいのは確かなのですが、あまりやり過ぎると保険診療の意味が怪しくなってくるのは当然でしょう。
一方では窓口負担を引き上げるほど医療費は抑制されるという考え方もあるわけですが、医療の場合どこからどこまでが原疾患と関係していてどこからは無関係であると言う明確な線引きは困難で、同じ病気でも状況によって関係性が随時変わってくるのですから、こうした定義の元で区分けをしていくことは実はかなり難しいものはありそうに思えますね。

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コメント

どこまで削れるのか限界を見極めたい気はある

投稿: | 2016年2月 3日 (水) 07時58分

ぶっ壊れちゃったときのリスクも許容できるならですけど。
でも英国もなんだかんだで持ち直しましたよね。

投稿: ぽん太 | 2016年2月 3日 (水) 08時40分

入院させない方向には進んでる
あとナースプラクティショナーとかも導入したら?
先進国でいないのは日本だけだよ
ただそもそも看護師がやりたがらなそうという問題もあるがw
男性看護師増えるなら別だけど

投稿: 名無し | 2016年2月 3日 (水) 10時25分

NPも含めて、医療現場での業務分担のあり方はまだ改善の余地はあり、またコストを増やさずの多忙感改善にも効果があると思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年2月 3日 (水) 12時04分

医者も食っていかなきゃいけないんだから医療崩壊なんて起こるはずがない

投稿: | 2016年2月 3日 (水) 16時13分

そういやめっきり医療崩壊系のニュース聞かなくなりましたねえ。「日常」になってしまったのかみんな逃散しちまったのか過労死しちまったのか…

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年2月 3日 (水) 16時37分

患者が言わなかった症状を、見落としたと訴えないこと
が条件であれば、治療に関係ない検査をしないという判
断もできると思います。

でも、念のために検査(特にCT、MRI)をしているのって
必要だからというより、あとで訴訟にならないためですから。

投稿: | 2016年2月 3日 (水) 20時36分

高血圧治療中たまたまエコーやカメラやったら癌が見つかったってこともある
血圧の治療に必要ないからって自費になったらこういうのは減るんだろうね

投稿: | 2016年2月 3日 (水) 22時33分

医師の再診料が700円程度なのに、NPにしたら400円程度にするのかな?初診料は1000円くらい?それでNPの資格を頑張って取る人がそんなにいますかね?
海外で普及しているのはそももそ医師の診察料が桁違いだからでしょう。前提条件が違いすぎるんじゃないかと。

投稿: | 2016年2月 4日 (木) 06時00分

3時間待ちの3分診療ならNPでいいやってヒトは少なくないだろね

投稿: | 2016年2月 4日 (木) 07時21分

>3分診療ならNPでいいやってヒトは少なくないだろね

3分で診療を終わらせるのは、非常に豊富な経験とスキルが必要だから、NPにはそんな高度な診療はむり

投稿: | 2016年2月 4日 (木) 10時10分

 かかりつけ医?レベルでは患者は高度な診療など求めてはいない。医療用医薬品を3割負担で手に入れたい、がほとんど。 処方薬の自己負担割合を90%とかにしてみたら実相がわかって面白いと思う。

投稿: | 2016年2月 4日 (木) 10時31分

3分診療より30分診療が患者には歓迎されるのに必死で診療時間短縮を目指す医者脳w

投稿: | 2016年2月 4日 (木) 10時51分

>3分診療より30分診療が患者には歓迎されるのに必死で診療時間短縮を目指す医者脳w

3分診療じゃないと赤字になる医療費設定なのに、30分診療を要求する傲慢無知なモンスター患者脳w...ということですな。
怪しげな健康食品には数千、一万ぽんぽんはらうのに、再診料はわずか700円。その値段で最難関の一つの国家資格者を30分も占有できると考えるなんて...

投稿: | 2016年2月 5日 (金) 10時42分

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