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2016年2月 2日 (火)

魔改造といえば男の浪漫を感じさせる言葉です

お隣中国と言えば昨今かなり「何でもあり」感満載なところがあって、先日はサルの頭部移植に成功した、さあ次は人間でやるぞと言うびっくりニュースが出ていましたけれども、話を聞けば頭を切り取って血管をつないだだけで神経などは全くつながれてはいないと言い、倫理的な理由から20時間後には処分されたと言ってもいやいや、この段階で人体に応用してはいかんでしょうと誰しも突っ込みたくなりますよね。
その中国で今やいつ行われてもおかしくないと目されているのが遺伝子的なレベルでの人体改造技術の応用なのですが、世界中で控えめに言っても極めて慎重に取り扱われているこの問題に関して、すでに実際に行われているのでは?と言う声も根強くあり、いずれにしてもいずれはやるだろうと各国がその対処に頭を悩ませているようです。

“人間改造”中国がタブーに踏み込んだ? 「ゲノム編集」世界の科学者らに波紋(2016年1月16日産経ビズ)

 生物の遺伝情報である細胞のDNA配列を自由自在に改変し、病気を治療したり優れた品種を生み出すことができる-。夢物語のような「ゲノム編集」と呼ばれる技術がここ数年、科学研究や製薬の現場で急速に広がっている。従来の遺伝子組み換え技術より格段に精度が高く、生命科学に革命を起こしつつあり、その開発者はノーベル賞も確実といわれる。しかし、生まれてくる子供の能力や容姿をデザインする行為、いわば“人間の改造”につながりかねないことから倫理面でも議論が沸騰。実際に中国ではヒトの受精卵でDNAを改変したとの報告が出ている。中国がついに禁断の領域に踏み切ったことに、科学者たちが国際会議を開いて対応を協議したほか、米ホワイトハウスが懸念を表明するなど、全世界に波紋が広がっている。(前田武)

 「現時点では、ヒトの生殖細胞にゲノム編集を加えて病気の予防や治療に使うことは無責任だ
 12月初旬、米ワシントンで開かれた科学者らの国際会議が現状に警鐘を鳴らす声明をまとめた-とのニュースは、関係者の大きな注目を集めた。ゲノム編集をめぐる今回の会議には、生命科学の研究者だけでなく法律や倫理などの専門家も集まった
 議長を務めたカリフォルニア工科大のデービッド・ボルティモア教授は、ゲノム編集について「難しい問題だが、どのように扱っていくか、よい方向性が出せた」とコメント。会議に参加した北海道大の石井哲也教授は「毛の色や身長といった見た目を『改造』する手段としては受け入れられない」と訴えた。

 会議が開かれたきっかけは、中国の研究チームが昨年4月に発表した論文だ。血液の病気の原因となる遺伝子を取り除くため、ゲノム編集によってヒト胚(はい)のDNAを改変したとの報告で、結果的には臨床に応用するにはまだ精度が低いとの内容だった。倫理面の問題を回避するため、もともと遺伝子の異常で子供として生まれてくることがない受精卵を使ったとされるが、世界中の科学者に大きな衝撃をもって受け止められた
 これを受け、米ホワイトハウスは5月、ゲノム編集でヒト胚のDNAを改変することは「将来世代への影響が不明で、現時点では越えてはいけない一線だ」との声明を発表した。身体の一部の細胞でDNAを改変する場合と異なり、精子や卵子、受精卵のDNAを書き換えると生まれてくる子供の全身の細胞に影響し、未来の世代にまで残ることになるからだ。
(略)
 従来の遺伝子組み換え技術でも、特定の遺伝子を破壊したり別の遺伝子を挿入したりすることはできたが、偶然に左右される部分が大きく、非常に効率が悪かった。ゲノム編集は、狙った部分のDNAを正確に短時間で改変できることから、ここ数年で世界中の研究現場へ爆発的に広がっている
 ただ、ゲノム編集はDNAを精密に切り取ることができるが、書き換える効率はまだ低いといい、技術上の課題がある。また、これらの手法の多くは海外で開発されたため、日本では十分に研究されていないという。生命科学の研究だけでなく新薬開発や食品産業などでも活用が期待される技術だけに、国内のレベル向上が求められる。
(略)

記事の中で注目していただきたいのは現時点でゲノム編集技術を人体に応用することは時期尚早ということで意見の一致を見たものの、それは単純に時期が早いという理由もあれば範囲を絞るべきだという意見もあり、またそもそも人間にこのような技術を用いる事自体反対だという意見も当然にあるだろうという点でしょうか。
このゲノム編集と言う技術、様々な手法が開発されつつあって各方面で応用が研究されている真っ盛りなのですが、今のところ確実性に欠けるためにもし失敗した場合にどうするのか、特に人間相手に応用した場合失敗だから廃棄処分に、と言うわけにもいかないのは、少なくとも欧米先進諸国における表立った議論としては当然の大前提とされています。
ただ遺伝子そのものを扱うと言うことは今後医療の世界においても次第に当たり前になってくるはずで、段階的にここまではやってよしと言う範囲を見定めながら一歩一歩手探りで進んでいくしかないと思うのですが、この点で国毎に文化圏毎にどこまでが有りなのかと言う線引きが大きく異なるだろうことは、例えば現状における世界各国での安楽死の現状を見ても判りきった話ですよね。
一方で前述の頭部移植手術などが世界各国の反対の中で粛々と話が進んでいると言うことを見ても、様々な理由から許容されざる研究を社会的にどう規制していくかと言うことは全世界的な課題になっていて、お金持ちがお金を出してやってくれと強いて要望し、やってやろうと考える野心家がいれば純技術的には現状でもかなりのことがやれるはずではあります。
そんな中で先日日本でも厚労省からこんな法案を検討していると言う話が出ているのですが、今後の関連性が出てきそうな話ですので記事から参照いただきましょう。

不適正臨床研究、中止命令可能に 厚労省、規制法案提出を検討(2016年1月21日朝日新聞)

 製薬大手ノバルティスファーマの高血圧治療薬ディオバンの論文不正事件などを受け、厚生労働省は臨床研究を規制する法案に、研究が適正に行われていない場合は中止を命令できるようにする条項を盛り込む方針を決めた。自民党の部会で20日、法案の枠組みを示した。今国会への提出を検討している。

 厚労省によると、現在は指針で改善を命じることはできるが、法的な強制力はないという。

 検討中の法案では、臨床研究を実施する研究機関に対し、患者に対するインフォームド・コンセント(事前の説明と同意)や、治療経過のチェックなどに関する実施基準を設ける。研究中に実施基準違反などが明らかになったときは、厚生労働相が法律に基づいて改善命令を行い、従わないときは研究中止などを命じることができる、とした。

 対象となるのは、国の承認を受けていない薬や医療機器を使った研究と、製薬企業から資金提供を受けて行う研究。製薬企業に対しては、臨床試験に関する研究機関への資金提供の状況について、毎年度の公表を義務づけるという。

この場合対象として考えられているのは例えば製薬会社と癒着してデータに不正操作を加えると言ったケースであると思うのですが、適切ではない研究を国が強制的に中止できるようになると言うことは各方面に応用範囲の広い話でもあって、ひとたび法律が出来れば対象範囲は拡大していくことも十分に考えられそうですし、いずれにしても「倫理的だからやるべきではない」と言っているだけではやろうとする相手に対して強制力がない道理です。
ただここで問題になるのがやはりどの程度の強制力があるのかで、先の論文不正事件なども臨床研究として一通り終わって結果が世に出てから問題になってきたわけですし、いわゆる科学の暴走的に好き勝手をやっていたとしてもそれが結果として世に出るまでには誰も突っ込みようがありませんから、実際にどの程度まで中止命令が役立つのかには疑問符がつきそうです。
以前にも学会のガイドラインに反して非配偶者間の体外受精を行った医師が日産婦から除名処分を下したものの、当の医師は相変わらず同じ処置を続け全国から不妊に悩む方々が押し寄せたばかりか、結局その後第三者からの提供を認めると方針転換したと話題になったことがありましたが、強制力の欠如と言うことの問題点と同時に倫理と言うものも時代によって変化していくことを示す例と言えるでしょうか。

例えば特定の遺伝子一つを改変すれば確実に命に関わる重病を発症させないように出来ると言う場合、それを生命倫理に反するとして禁止することは非人道的なのではないかと言う議論もあるはずだし、そうした処置が世界のどこかで行われていると言えば必ず海外渡航してでも利用したがる人が出るはずですから、後はどこかから「何故国内でそれが出来ないのか」と言う声が上がってくるのは時間の問題です。
実際に臓器移植に関する小児ドナーなども海外渡航でしか行えなかったものが国内でも可能なように法整備がされてきましたが、この小児から臓器を提供してもらうと言うことに関しても未だに倫理にもとる行為だと反対する意見は根強くあって、今のところはそれを許容出来る人だけが受け入れていると言う状況ですよね。
前述のゲノム編集技術の人体応用に関してもあくまでも技術的に未熟だからもう少し待つべきだと言う意見はすなわち成功率が上がればやっていいと言うことでもありますし、それに対して成功率100%だろうがやってはいけないことだと言う認識の人もいるはずで、やってよいこと悪いことを誰がどうやって決めていくのかと言うことはなかなかに難しい問題ではあります。
日本などはこうした点では基本的に諸外国で広く行われるようになるまでじっくり待つと言う場合が多い印象ですが、技術開発の観点からは最先端の技術もどんどん実戦投入していかなければ世界から遅れてしまうと言う懸念もあって、あまり慎重になりすぎても日本だけが数十年遅れのことをやっていると世界から笑われることにもなりかねないですよね。

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コメント

他には「こんなこともあろうかと」は男の憧れですね

投稿: | 2016年2月 2日 (火) 07時57分

世界のどこかでいずれ誰かがカミングアウトしそうな気が。
こういうのって禁止しようたってムリですよね。

投稿: ぽん太 | 2016年2月 2日 (火) 08時46分

>その中国で今やいつ行われてもおかしくないと目されているのが遺伝子的なレベルでの人体改造技術の応用

冷戦世代のおいどんとしては、こういうのはやっぱ「ソ連」じゃないとしっくりこないなあ…。
*いや中国を莫迦にしたり舐めたりしてるわけじゃありませんんがだって中国だじぇええええ?

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年2月 2日 (火) 09時42分

中国と言えば世界最古の環境破壊など第一号の実例は少なからずありますので、この点でもあるいは適任であるのかも知れません。

投稿: 管理人nobu | 2016年2月 2日 (火) 11時03分

アーヴによる人類帝国

というか20年ぐらいしたら
なぜか五輪で中国が無双とか

投稿: | 2016年2月 2日 (火) 11時06分

冬虫夏草と馬軍団を思い出させますなあ…

投稿: | 2016年2月 2日 (火) 12時33分

イギリスで始まったらしい

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG01HAS_S6A200C1000000/
ヒト受精卵の改変、英で承認 ゲノム編集 不妊治療向上目指す

 英フランシス・クリック研究所は2日までに、「ゲノム編集」と呼ばれる手法で人の受精卵の遺伝子を改変して成長の様子を調べる基礎研究について、英政府の規制機関「人受精・発生学委員会(HFEA)」から実施承認を得たと発表した。

 人の受精卵のゲノム編集研究が国レベルの規制機関に認められたのは初めて。

 受精から7日間の観察を通じて成長に必須の遺伝子を特定し、不妊治療の成功率向上に役立つ知識を得るのが目的。病気の治療や遺伝子改変した子供の誕生を目指すものではない。

 研究チームは倫理審査を経て、不妊治療の過程で使われなくなった受精卵の提供を受け、数カ月以内に開始する見通し。

 ゲノム編集は人の精子や卵子、受精卵に対して行うと影響が次世代に及びかねない。米国で昨年12月に開かれた国際会議では「安全性や有効性の問題がクリアされ、適切な規制ができないうちに医療応用するのは無責任だ」との声明が出されている。〔共同〕

投稿: | 2016年2月 3日 (水) 16時26分

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