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2016年2月10日 (水)

最近の高齢者絡みのニュース二題と雑感

炎上騒動など珍しくもない今日この頃ですが、若者だけでなくいい歳をして分別も十分あるだろう人間でも炎上すると言うことを示したのがこちらのニュースです。

「高齢者は適当な時に死ぬ義務あり」84歳曽野綾子発言がブーメランに ネットで「あなたからどうぞ」(2016年2月2日J-CASTニュース)

 作家の曽野綾子さん(84)が「週刊ポスト」のインタビュー記事で語った「高齢者は『適当な時に死ぬ義務』がある」との主張がネット上で大反発を受けている。
 高齢者は権利や機会を若者に譲り、死と向き合うべきだ――そんな「生き方」の主張だったが、「あなたからどうぞ」など厳しい意見が相次いでいるのだ。

■「ドクターヘリは利用者の年齢制限を」

 インタビュー記事は、2016年2月1日発売の「週刊ポスト」(2月8日号)に掲載された。「高齢者は『適当な時に死ぬ義務』を忘れてしまっていませんか?」との問いかけで始まり、曽野さんは「『いくらでも生きたい』は傲慢」「権利を『求め倒し』、医療を『使い倒し』、他人を『頼り倒す』ことは肯定されない」との持論を展開する。
 この記事の前提には、1月24日付け産経新聞朝刊1面に掲載された曽野さんのコラム「小さな親切、大きなお世話」があった。90代の病人がドクターヘリによる救助を要請した話を持ち出し、「利己的とも思える行為」と批判。負傷の程度でけが人の治療に優先順位をつける行為「トリアージ」を例にしながら、「生きる機会や権利は若者に譲って当然だ」「ある年になったら人間は死ぬのだ、という教育を、日本では改めてすべき」と主張した。また、ドクターヘリなど高度な医療サービスについても「法的に利用者の年齢制限を設けたらいい」と踏み込んでいる。
 「ポスト」掲載のインタビュー記事もコラムの内容が基本的に踏襲され、「死についての教育拡充論」により多くの紙幅が割かれている。
 確実に来る死を覚悟し、さまざまな機会や権利を若者へ譲る。医療サービスを誰しもが平等に受けるのは難しい時代、高齢者は死と真正面から向き合わなければならない。曽野さんが訴えたかったのは、そんな独自の「生き方」だったと言えるが、曽野さん自身が高齢だったことからか、ネット上で即座に反発の声が巻き起こった

  「長生きは『利己的』らしい」
  「あなたからどうぞ、としか」
  「『適当な時』は誰がどういう基準で決めるんでしょう」

 ツイッターには、こうした厳しい指摘が相次いでいる。中には「『高齢者は命令されたら死ね』と発言したに等しい」との意見もあり、批判の声は収まる気配がない。
(略)

この曽根氏自体は過去にも様々にユニークな?発言を繰り返してきた方で、決して社会的に大きな共感を得られている方だと言うわけではないとは思うのですが、しかし曽根氏自身の定義で高齢者とは何歳からなのか?と言う点は確かめておきたいですよね。
まあ何歳であろうが生きているから罪というわけではもちろんなくて、これが例えば曽根さんが将来ドクターヘリなりを利用したなりと言うのであれば言行不一致ですが、例えば急病にかかっても自宅の畳の上で従容と死を受け入れたと言うことであればむしろ称讚されるべきことでしょう。
個人的に先日興味深く思ったのが、日本などよりよほど医療に関してはシビアな面があるアメリカにおいても終末期高齢癌患者の実に4割がICUに入室していると言う記事が出ていて、アメリカでさえそうなのであるなら日本で終末期に濃厚医療をすることに何の不思議があろうと言う気もしてきますね。
ただ個人の考え方や生き方と言う点に関しては各人各様でいいと思いますが、現在の日本社会の仕組みとして高齢者の医療を始めとする社会保障は現実的には若い現実世代が支えていて、言ってみれば若者を踏み台にして生きているのだと言うことは知っておくべき現実であるとは思います。
この文脈で末期高齢者の看取り目的の救急搬送で若い人たちの救急患者を受け入れられないと言った批判も出ているわけですが、先日起こった赤穂市での親族殺人事件のバックグラウンドが非常に特異な状況であったと言うことが話題になっていて、こちらの記事から紹介してみましょう。

兵庫・赤穂市夫婦遺体事件 逮捕の19歳少年「頭などを殴打した」(2016年2月6日フジテレビ)

兵庫・赤穂市で養子縁組をした60代の両親を殺害した疑いで逮捕された19歳の少年が、「凶器で頭などを殴打した」と供述していることがわかった。
殺人の疑いで逮捕された19歳の少年は、2月3日から5日までの間に、赤穂市西有年(にしうね)の住宅で、この家に住む69歳の父親と、64歳の母親を殺害した疑いが持たれている。
2人の頭などには、刃物のようなもので、刺したり切ったりしたような痕があり、調べに対し、少年が「凶器で頭などを殴打した」と話していることがわかった。
少年は、夫婦の実の孫で、数年前に養子縁組をしていた

少年が勤めていた会社の社長が6日、取材に応じ、少年は、給料のほぼ全額を家に入れ、父親の介護も懸命にしていたと話した。
少年が勤めていた会社の社長は「おじいさん(父親)の容体が、年末にかけて、どんどん悪くなっていかれて。(少年が病院に)送り迎えする回数が、どんどん増えてきた。(父親が)『しんどい』言うから、背中なでて、一晩寝てないというようなことも、(同僚に)話したりしたこともあるみたいです」と話した。
警察は、犯行の動機や経緯について、くわしく調べる方針。

各種報道で様々な情報が飛び交っていることもありごく簡単に言えば、現在遠方で暮らしている母親の再婚の条件として連れ子無しと言うものがあったそうで、少年時代に言わば親から捨てられた形の少年は祖父母によって育てられていた、そしてその後に祖父母の養子として縁組されていたと言うことですが、実の祖父母であり養親でもある二人を殺害したと言うのですから驚きですよね。
聞くところによれば祖父が透析中だったこともあってか、高校時代から農作業を手伝うなど非常に献身的に祖父母を支えていたそうで、養子縁組も恐らく相続上少しでも有利にと言う祖父母なりの思いやりだったのだろうと思いますが、事件に至るまでにどのような事情があったにせよ、やはり世間的にはどうしても「楽しいはずの10代の全てを老人のために捧げることを強いられた少年の逆ギレ」と言った見方も出てしまうようです。
特に少年の側も給料のほとんどを祖父母に預けていたと言う点に注目が集まっているようですが、これも伝え聞くところでは祖父母の側でも少年名義でこのお金をずっと貯金していたとも言い、これらが事実だとすればお互いの間にどのようないきさつがあったのかははっきりしませんが当事者の誰にとっても不本意であり、哀しい出来事であったと言うしかないでしょうね。

国も今現在高齢者を病院や施設から家庭へと言う事を一生懸命進めようとしている最中ですが、実際高齢者を自宅で生活させるためにどれだけのサポートが必要になるかと言えば、やはりよほど経済的に余裕があるなどでなければ家族の誰かが人生を棒に振る覚悟で世話をせざるを得ないと言うのが現実でもありますし、そうであるからこそ介護殺人などと言われる哀しい出来事がたびたび報道されるとも言えそうです。
だから自分で自分の面倒が見られなくなった年寄りはさっさと氏ねと言うのもまた短絡的過ぎますが、人口減少局面で人材不足がこれだけ言われる中で、明らかに効率で施設介護に大きく劣る自宅介護を推進すると言うのもどうなのか、コスト的な側面もさることながら、長生きすればするほど当事者の人間関係をも破壊しかねないと言うのでは何の為の介護かですよね。
かつて厚労相を務めた現都知事の桝添氏が自らの介護体験をつづった書籍を出版していて、実際には全てを地元にいた実姉に任せて自分はせいぜい月一回帰っていただけだと批判されることも多いのですが、親の立場から見れば毎日顔をつきあわせて小言を言われる相手よりは、月一回優しい顔だけ見せに来てくれる相手の方がよほどうれしかったのだろうと言う点にも、老人介護のジレンマがあるとも言えます。
そういう点では四六時中尽きっきりで世話をしている介護スタッフなどは言ってみれば構造的な憎まれ役であって、入居者の被害妄想混じりの訴えを真に受けた家族からクレームでも入れられた日にはそれは心も折れ離職もしようと言うものですが、プロだからお金を取っているのだから完璧な対応をして当たり前だと言うのではなく、同じ人間として相手に敬意を持つと言う事は利用者側にも、スタッフ側にも互いに必要なんだろうと思いますね。

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コメント

義務と言い切っちゃうと後は自殺でもするしかないような。
延命は断れくらいにしておけばよかったのに。

投稿: ぽん太 | 2016年2月10日 (水) 08時25分

単なるボ○としか

投稿: | 2016年2月10日 (水) 11時14分

この場合ご本人はご自分を老人と見なしているか否かで、発言の意味付けもかなり違ってきそうには思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年2月10日 (水) 12時41分

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