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2016年2月 6日 (土)

もはや人工無脳とは言わせない

この数年で将棋ソフトがプロ棋士を破ることも珍しくなくなってきて、人工知能の開発はかなり進歩したと実感している人も少なくないと思いますが、将棋と比べるとはるかに選択枝の広い囲碁ではまだまだ当分の間はコンピュータがプロレベルの人間に勝てることはないだろうと言うのが定説でした。
それが先日グーグル傘下の英企業が開発した人工知能が欧州でプロ棋士を破ったと報じられたことから世界中で衝撃が走っているのですが、何故グーグルにはそれが可能になったのかが非常に気になりますよね。

グーグル、囲碁で「人間超え」の衝撃(2016年1月29日日経ビジネス)

 米グーグル傘下のディープマインド(英国)が開発した囲碁用のAI(人工知能)が、人間のプロ棋士を破ったというニュースが世界を駆け巡った。囲碁でコンピューターが人間のプロに勝つのは初めて。グーグルが1月28日発行の英科学雑誌「ネイチャー」に論文を発表した。
(略)
 グーグルはどうやって、人工知能学者が予想していた「10年」の壁を一挙に飛び越えたのか。

 従来の囲碁ソフトは、「モンテカルロ木探索」と呼ばれる手法をとっていた。まず、人間にはデタラメにも見える手をランダムにAIが考案し、ひたすら終局まで打ち切る作業を大量に繰り返す。そこから逆算して勝率が高かった手を選ぶという考え方だ。前述の通り、囲碁では形勢判断の数値化が困難だが、終局時点なら確実に優劣が分かることを利用したもので、「モンテカルロ法」と呼ばれている。ここに、シミュレーションの途中で発見された「良さそうな手」を、更に深く探索する「木探索」というアルゴリズムを加えて、着手の精度を高めた。

 囲碁AIがアマ六段レベルに到達したのは、この手法が発見されたおかげと言ってよい。だが、モンテカルロ木探索による棋力向上は、ここ数年頭打ちになりつつあった。

 グーグルは「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる技術を、モンテカルロ木探索と組み合わせた。人間の頭脳を模してコンピューターを連結したネットワーク上で、コンピューター自らが学習する特徴を持つ。画像認識分野でコンピューターが自ら「猫」「人間」などを高精度に識別できるようになった成果により、一気に注目を集めた技術だ。昨年11月に、囲碁AI開発に参入することを表明した米フェイスブックも、同様のアプローチをとっている。

 グーグルはAlphaGoで2つのネットワークを組み合わせた。次の着手を決める「ポリシーネットワーク」と、勝者を予測する「バリューネットワーク」だ。囲碁のトッププレイヤーの棋譜を大量に用いて学習させた。「Googleクラウドプラットフォーム」の、膨大な演算能力をフル活用しているという。

 囲碁のプレーヤーは、着手可能な手をすべて読んでいるわけではなく、盤面全体を見渡して、直感的に有望な手を絞り込んでいる。ディープラーニングによる学習は、コンピューターなりの「直感」を構築する作業とも言える。

 囲碁用のAIに、なぜグーグルやフェイスブックが血道を上げるのか。グーグルは発表分で「普遍的な機械学習技術を使って、囲碁を自らマスターした」と述べ、現実世界への応用が広く可能であることを強調している。将来的に気候モデリングや、複雑な疾病分析などに応用を見込んでいるという。
(略)

先の手をより確実に読めるとなれば、例えば投資など経済領域においてもいくらでも利用先がありそうですし、製薬などにおいても従来よりずっと効率よい新薬が開発できる可能性もあるかと思うのですが、いずれにせよ単純なベタ読みではなく人工知能が自ら学習し何が最善手かを考えて打つと言うことからすると、ようやく知能の名にふさわしい働きが備わってきたとも言えそうですよね。
この人工知能の急速な発展が各方面でどれほどの影響を及ぼすものなのかは未だ明らかではないものの、いずれは人を超え超知性とも言うべきものが誕生するだろうことは確実視されていて、そうした時代に何がどうなるのかはSFの世界では様々に予想されてきたものの、今のところ誰にも判らない部分があります。
ただそこまで先の話でなくとも身近な領域でも様々な応用が期待出来る部分もあって、例えば先日こんな興味深い試みがなされていると言うニュースが出ていたことをご存知でしょうか。

小松左京さんの遺作「完結」、人工知能に期待 データ提供(2016年1月27日日本経済新聞)

 SF作家、小松左京さん(1931~2011年)の著作権管理事務所「小松左京ライブラリ」(神戸市)は27日までに、人工知能(AI)の研究グループに全作品のテキストデータを提供したと発表した。難しいとされる人工知能による長編小説執筆の実現に向け、分析用の資料として活用してもらう。

 同ライブラリを運営する小松さんの遺族は、未完の遺作「虚無回廊」を人工知能が完結させることに期待を寄せている。

 提供を受けたのは、12年からSF作家、星新一さん(26~97年)のテキストやプロットを分析し、人工知能に短編小説を創作させる研究を進めてきた、公立はこだて未来大(北海道函館市)の松原仁教授らのグループ。星さんのプロジェクトでは、17年ごろの「新作発表」を目標に掲げている。交友もあった日本を代表するSF作家2人がそろって研究対象となる格好だ。

 同ライブラリによると、データを提供したのは約1年前で、今年で小松さんの没後5年となるのを機に発表した。松原教授は「星さんらしさを比較考量する資料として、小松さんのデータを一部使い始めている。将来的には小松さんの作風を研究したい」と話す。
(略)

さすがに長編作品は敷居が高いのではないかと思うのですが、以前にもどんな音楽でもバッハ風に編曲してくれるアプリが話題になったことがあるように、作家毎の特徴を再現し「新作」を次から次へと作り出してくれるアプリなどと言うものが登場すれば、故人ならずとも様々な理由から新作の登場が期待しがたい作家のファンには大きな福音となりそうですよね。
実際にはまだまだ実験段階なのではないか?と言う疑問もごもっともなんですが、先日は安倍総理自身が本部長を務める知的財産戦略本部が「AIの創作物を著作権保護の対象にすべきかどうか」を議論すると言い出すなど、この方面でも着実にその日が近づいて来ている気配があります。
ちなみにネタのような小話ですが、先日ランダムに文字を羅列した本を一冊6万円以上で「出版」し、全出版物が納められる国会図書館に78冊を納本して実に130万円を得ていた出版社が返金を求められると言うネタのような本当の事件がありましたが、もしかすると後の世には「初めてAIによって書き上げられ出版された著作物」として思わぬ評価を受けることになる可能性もまあ、少しはあるのかも知れませんよね。

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コメント

プロってったってピンキリだろ

投稿: | 2016年2月 6日 (土) 09時18分

昔のSFの定番設定として、コンピューターがいつの間にか意思を持ち、人類を敵とみなすようになった、というものがあります。
それに対して、コンピューターはプログラムされたことしか実行しないよ、「いつの間にか」意思を持つなんてありえない。馬鹿馬鹿しい、という感想。

しかし学習する人工知能なら、いつの間にか想定外の挙動を始めてもおかしくない。ルールベースの旧来の人工知能と異なり、挙動を想定できない。
確かにこれは危険ですが、これも昭和のアイデアで何とかなるでしょう。キカイダーに出てきた良心回路です。
現代の人工知能とは全く別の、ルールベースで動作する良心回路を用意し、ロボット三原則でも書きこんでおく。それが上位に存在し、人類に歯向かう行為には強制停止を掛ける。安全装置ですね。

投稿: | 2016年2月 8日 (月) 10時14分

この場合これも古典的命題ですが、そもそも人類とは何かと言う定義付けが非常に難しいものになりそうです。

投稿: 管理人nobu | 2016年2月 8日 (月) 13時21分

>人類とは何かと言う定義付けが非常に難しい

二値脳は、どんなに精緻な定義をしても
 「てめえら人間じゃねぇ」で即解除。
精緻な定義と巧妙な維持機構
(e.g.化けネズミと愧死機構w)も
何世代もかけて抜け道を作って利用(どちら側も)。

 誰が、なぜ、現行の定義の抜け道を作ろうとするか、考え続ける方が役に立ちそうな気がするんだが。

投稿: | 2016年2月 8日 (月) 18時09分

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