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2016年2月19日 (金)

働かないで暮らすと言う選択肢の社会的位置づけ

ひと頃からロハスだ、スローライフだと言うことがかなり流行していましたが、最近こんな生活を送る人がじわじわと増えていると報じられています。

あくせく働かない“山奥ニート”増殖中…新しいライフスタイル?自由気ままに暮らしたい(2016年2月15日産経新聞)

 和歌山県の山間部で地元の人たちの仕事を手伝いながら、わずかの収入で自由気ままに生活している若者たちがいる。あくせく働かず、自然に恵まれた環境で好きなことをしながらゆったり暮らす“山奥ニート”たち。かつて引きこもりだった者もおり、「楽しく暮らすのが一番」「ニートは恵まれている」と話す。そんな彼らに地元の人たちも好意的だが、果たしてこうした「自由な生き方」は長続きするのだろうか。(兵頭茜)

楽しく暮らすのが一番

 1月中旬、和歌山県田辺市五味の畑で、2人の若い男性がクワをふるっていた。“山奥ニート”を自称する石井新さん(27)と三好芳彦さん(26)だ。
 この日は近くの社会福祉法人の依頼で、入所者とともに畑を耕した。無言で黙々と土を耕す2人。隣には自分たちの畑もある。
 和歌山市から車で走ること約2時間半。彼らが暮らすのは山間地域の限界集落だ。住居は廃校となった小学校の校舎を改装して使っている。この校舎は、ひきこもりの人を支援するNPO法人「共生舎」の所有で、代表が死去したため、石井さんらは、管理人として移住してきたという。
 ニート仲間の住人は現在4人。いずれも20代の若者で、近所の住人の手伝いをして得た収入などで暮らしている。
 厳密に言えば、彼らはニートではないかもしれない。それでも石井さんは「収入は少しあるけど、楽しく暮らすことが一番大事だと考えている。そういう人種を呼ぶわかりやすい言い方がない」といい、自ら“ニート”を名乗っている。

ひと月2万5千円

 梅の実の収穫を手伝ったり、草刈りを手伝ったりと普段は力仕事が多い。彼らを除く地域の住人はわずか8人で、平均年齢は約70歳。住人から見たら孫ほどの世代の彼らは、若い男手として頼りにされる。「いてくれるだけでありがたい」という住人もいる。
 「最低2万5千円あれば、ひと月暮らせる」と石井さん。家賃が必要ないのが大きいという。しかし、近所の手伝いだけでは生活費が不足することも。そんなとき、メンバーは“出稼ぎ”に出るのだという。
 地方の観光地やリゾート地で短期間のアルバイトをし、必要なだけ稼いだらまた山奥に帰ってくる。この日も4人のうち1人は出稼ぎに出ていた。「なくなったら稼げばいい」。石井さんは笑顔で話した。

引きこもりから卒業

 実は「特別田舎暮らしが好きというわけではない」という石井さん。「できれば都会と同じように暮らしたい」といい、持ち込んだパソコンでインターネットを利用している。ネットがあれば、山奥でも必要なものはたいてい手に入る。「(ネット通販の)アマゾンを使えば2日で届く。ネットさえあれば、実際暮らせますよ」と笑う。
 また、住人で漫画など娯楽をシェアすることで、暇つぶしも共有できる。「しゃべらないけど気にならない。もともとみんな1人が好きなので」
 石井さんは関東で大学生活を送っていたころ、引きこもりがちだったという。そんなとき、「誰かとつながらなければ」と思い立ち、ネットを通じて知り合ったのが、今も一緒に暮らす男性だ。
 ネットでの交流を通じて意気投合した男性に誘われ、石井さんは思い切って縁もゆかりもない田辺市に来た。「ニートだから失うものがない。だからここに来ることができた」という。

「こんな生き方」発信も

 若者たちは、今では住人から「ここを乗っ取ってほしい」といわれているそうだ。石井さんも「農業など色々なことを手伝いながらノウハウを学び、いずれは自力で生活できるようになりたい」と話す。
 それでも、「ニートって恵まれている。そのことを自覚して、楽しまなければもったいないと思う」と、楽しみを最優先する考え方は変わらない。
 「うまくいけば社会貢献にもなるかもしれない。こういう新しい働き方もニートならではでは」「『年を取ったらどうするの?』とよく聞かれるが、ここの住人はほとんど高齢者。住人を見てたら生活できているし、『何とかなるだろう』と思います」。そう言って笑う。
 楽観的なようだが、先を考えていないわけではない。「今後、ニートは増えると思う。そんな人にこんな生き方もあると提示できるのでは」ともいう。
(略)

いわゆるニートとは厳密には違うのだろうし、ある程度の財政的な裏付けがなければスタート時点で躓きかねない部分もあるのでしょうが、田舎では田舎なりに何とか生きていける方法があると言うことなのだろうし、それを許容できるのであればこうした生き方もまたありなんだろうと言うことですよね。
将来的には年金や医療などをどうするのかと言う現実的な課題もあるはずなのですが、人付き合いが苦手で一般的な生活では対人関係などでやっていけないと言う人たちにとっては選択肢を広げることにもなり、また田舎や僻地にとっては様々な点で若い人口が増えることは歓迎されるだろうと言う点で、ギブアンドテイクの関係が成り立つ余地がありそうです。
こうした自ら望んでの田舎暮らしと言うもの、昔から全国各地で一定数の方々は存在していたはずですが、それが改めて取り上げられている理由としてやはりスタート地点としてニート等に代表されるように、従来的な生活様式ではいわば落伍者とされてきた人々が立派に暮らして行けていると言う点が大きいのではないかと思いますね。
特にネット界隈では相対的にニート人口比率が高いと言うことなのでしょうか、ニートと言う言葉にはシンパシーあるいは反感等々様々な反応が出て大きな話題になりやすい傾向があるように感じますが、先日出ていて大きく取り上げられていたのがこちらのニュースです。

働かない働きアリ 集団存続に必要 働きアリだけは滅びる(2016年2月16日毎日新聞)

 コロニー(集団)の中に必ず2〜3割いる働かない働きアリは、他のアリが疲れて動けなくなったときに代わりに仕事をし、集団の長期存続に不可欠だとの研究成果を、北海道大などの研究チームが16日、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表した。

 これまでの研究で、働くアリだけのグループを作っても、必ず働かないアリが一定割合現れることが確認されている。仕事をする上では非効率な存在で、働かないアリがいることが謎だった。

 自然界では、働きアリが全て同時に働かなくなると、必要な卵の世話が滞ってそのコロニーが滅びてしまう。チームは日本全国に生息するシワクシケアリを飼育し、1匹ずつ異なる色を付けて個体識別した上で1カ月以上にわたって8コロニーの行動を観察。最初よく働いていたアリが休むようになると、働かなかったアリが動き始めることを確認した。

 さらに、コンピューターシミュレーションで、1コロニー75匹の働きアリが全て同じようによく働き、疲れがたまるペースも一緒のケースと、働き度合いがばらばらのケースを比較。勤勉なアリだけのケースでは一斉に疲労で動けなくなってコロニーが滅びてしまうのが早く、働かないアリがいる方が長続きする傾向があった。

 チームの長谷川英祐・北海道大准教授(進化生物学)は「働かないアリを常駐させる非効率的なシステムがコロニーの存続に欠かせない。人間の組織でも短期的な効率や成果を求めると悪影響が出ることがあり、組織を長期的な視点で運営することの重要性を示唆する結果ではないか」と話す。【大場あい】

この働かない働きアリ問題と言うものは以前から各方面で注目されていて、それをテーマにした様々な物語なども生まれている興味深い話題なのですが、そもそも働くことを生まれついての使命としているかのように思われている働きアリが働かないと言うのが面白い話ですし、他人の働きをかすめるだけで集団の繁栄に何ら寄与していないように見えるアリが何故進化の途上で淘汰されなかったのかが謎ですよね。
働かない働きアリだけを集めると一定数は働き始め、そして一部はやはり働かないままであると言うことで、そこに何らかの意味があるのだろうとは言われてきたことですが、今回の研究では働かないアリが働くアリが疲弊した時の代替戦力として活躍しているらしいと言う、ある意味で納得出来る結果だと言うことです。
生物学的な意味でも興味深い話ではありますが、ネット上ではこれを称して「世の中はニートを必要としている!」「彼らは存在するだけで社会の役に立っていたのだ!」云々と盛り上がっているようで、これによってニートの方々が励まされたと言うのであればこれは思いがけない研究の副産物だと言えるのでしょうか。

ただ注目すべきなのは働かないアリがずっと働かないままであると言うわけではなく、働いているアリが疲れて働けなくなった時には代わって働き始めると言う点で、これを称して一部には「オレも明日から本気出す」云々と妙な暗号めいた文言も飛び交っているようです。
本来のニートと言う言葉の定義はともかく、現代日本ではほとんどの場合親に依存して引きこもり生活を続ける若年無職者的なイメージで捉えられているようで、冒頭の記事にあるように無職ではあってもきちんと生活を営んでいる方々や、若くして株で大儲けした結果積極的に引きこもっているような例外もありますが、多くの場合は親を始め他の誰かの稼ぎに依存して生きていると言えますよね。
となれば当然ながら働き者の働きアリならぬ親その他の稼ぎ手が稼がなくなってしまえば、自ら食い扶持を稼がない限りは飢え死にするしかないのも当然なのですが、多額の年金を受け取ってきた親世代が死に絶えた後の中高年ニートの行く末がすでに社会問題化しつつあるように、彼らがいざその時になって「いよいよ本気出す」かどうかは今後大いなる社会的関心事ともなりそうです。

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コメント

みんなちがって、みんないい

投稿: みすず | 2016年2月19日 (金) 07時52分

21世紀の晴耕雨読ってとこでしょうか。
でもこういう田舎暮らしも家賃無料って支援があるからですよね。
いまどきほんとの自給自足って難しいんでしょうねえ。

投稿: ぽん太 | 2016年2月19日 (金) 08時19分

子供を育てることがムリなのは確か

投稿: | 2016年2月19日 (金) 08時49分

働かないアリが必要なのではなく休憩が必要ってだけの話のような

投稿: 名無し | 2016年2月19日 (金) 08時51分

しかし、こういう人たちが病気になったり、年老いたときには、それまで対して保険料をはらったわけでもないのに加えて、多額の生活保護・医療費がまじめに"あくせく働いている人"からむしり取っていくわけで。

マスゴミ的には綺麗な事なんでしょうが、社会に寄生・フリーライドするのをきれい事で誤魔化しているだけですね。

投稿: おちゃ | 2016年2月19日 (金) 09時32分

でも資産価値がゼロの持ち家とか、実質的に資産価値がマイナスの実家とか最近話題ですよね。
そういう物件であれば、家賃無料というのは経済的に合理性があるし、そういう物件は特殊ではなく全国に山ほどあります。

投稿: | 2016年2月19日 (金) 11時14分

山奥ニートのかわりに行政が地域支援員を派遣するとしたら人件費がかかるよね
そう見ると、行政や地域の住民が山奥ニートの将来にフリーライドしているような気もするな

投稿: | 2016年2月19日 (金) 11時39分

おっしゃる通り将来的な社会保障など問題は感じられるのですが、現時点では引きこもられるよりはよほど地域社会と共存共栄出来ている気がします。

投稿: 管理人nobu | 2016年2月19日 (金) 11時44分

×働かない蟻
○働き方が違う蟻

働かないことはぜんっぜん正当化されてませんから
残念

投稿: | 2016年2月19日 (金) 13時25分

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