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2016年1月13日 (水)

医者は僻地を拒否していないと言う残念な?ニュース

地方の過疎化や人口減少の話題も今さらですが、先日出ていた地方版の小さな記事が妙に話題となっています。

県の人口102万2839人 昨年調査 減少幅、過去最大 /秋田(2016年1月4日毎日新聞)

 2015年の国勢調査(10月1日現在)で、県は総人口(速報値)が102万2839人だったと発表した。10年の前回調査(確定値)に比べて6万3158人(5・8%)減少。県によると、1920年の調査開始以来最大の減少幅だった。

 性別では男性48万178人、女性54万2661人。1世帯当たりの人数は2・63人で、過去最少を更新した。

 県内25市町村の全てで人口が前回から減っており、減少率が最大だったのは上小阿仁村(12・9%)だった。藤里町(12・7%)、男鹿市(12・1%)と続いた。
(略)

ある意味で日本で最も有名な村落だけに特に意外性がないと言えばないのですが、この上小阿仁村と言えば例の騒動以外にもちょうど一年前にもせっかく来てくれた地域おこし協力隊員を「住民から契約延長を望む声がなかった」と契約を打ち切ったことでも知られていて、過疎化が進んでいるとは言え人材をえり好みできると言うのはまだまだ元気な証拠なのでしょうね。
いずれにせよ地方において社会生活の基盤をどう維持していくかと言うことは上小阿仁村ならずとも今後の課題で、特に日本全体が今後人口減少局面に突入していくことを考えるとどこかで「今まで通り」の社会的サービス維持をあきらめなければならない道理で、教育や商業、公共インフラなど様々な面で今後は次第に取捨選択をしていかなければならなくなるはずです。
その中で比較的需要が高く、すでに以前からそのサービス低下が懸念されてきたのが医療ですけれども、先日こんな記事が出ていて注目されていたことを紹介してみましょう。

若手医師へき地異動、年収800万増えないと…(2016年01月09日読売新聞)

 東京勤務の若手医師がへき地に異動するなら、年収が800万円近く増えないと満足しない――。

 日本医師会総合政策研究機構の坂口一樹主任研究員と滋賀大の森宏一郎教授が、医学部卒業後10年未満の若手医師1302人を調査し、就職条件の傾向を分析した。医師偏在の解消の参考になると期待される。

 調査は、国公私立の80大学の内科や外科など計1195診療科を対象に実施。年収、所在地、病床数、休日や当直数など8項目の条件が示された架空の求人票を、医師が1人あたり20枚ずつ評価し、就職したいか判断してもらった。

 へき地や離島の勤務は、大都市圏に比べ不人気で、就職先に選ばれる確率は15・1%低かった。現在の勤務地が大都市圏にあるほどこの傾向が強く、へき地の選択確率は東京では23・8%低下し、北海道・東北の低下は6・0%だった。

この坂口氏はかねて医療関係などで色々と面白そうな調査をしている方なんですが、今回の調査に関しては以下の8項目がランダムに表示されるシステムで就職先の候補になり得るかどうかを訊ねると言うものであったようで、対象としては現行のいわゆる新臨床研修制度を経験した若手医師のうち、僻地で不足が懸念される「内科」「外科」「小児科」「精神科」「産婦人科」「麻酔科」「救急科」の7診療科であるそうです。

①年収:500~2,000万円まで100万円刻み。
②所在:「東京圏・京阪神圏・中京圏・福岡都市圏」「地方中核都市(県庁所在地など)」「地方中小都市」「過疎地・へき地・離島」のいずれか。
③主体:「大学病院」「国公立・公的病院」「民間病院」の3つのうちいずれか。
④病床数:50床~950床まで50床刻み。
⑤休日数:4日~10日まで。
⑥当直回数:0回~10回まで。
⑦同じ診療科の当直医師数:0人から10人まで。
⑧救急:「指定なし」「一次救急」「二次救急」「三次救急」

興味深い点としては相談できる先輩医師の有無などの条件は外して、ごく一般的な求人条件として提示される項目に絞ったと言う点なのですが、重視されている項目としては、「収入が多いこと」「勤務地が過疎地・へき地・離島でないこと」「休日が多いこと」「当直回数が少ないこと」「同科の同僚の数が多いこと」「3次救急病院でないこと」の各項目が挙げられたと言い、まあ妥当な結果と言えそうですよね。
他方で逆に重視されない項目として興味深いのが「病床数」が一貫して選択に影響を与えていないと言う点なのですが、一般論として大きな病院であれば当然三次救急など高次医療に従事する可能性が高くなるものの、この場合相談可能な同僚医師なども増えることから相殺されていると言うことなのかも知れません。
さて、ここで問題になるのが僻地勤務についての態度なのですが、僻地離島が選択される確率は大都市圏と比べて16.1%低くなると言い、これは2番目に大きな要因である三次救急か否か(救急病院ではない場合と比べて8.3%低下)と比べても非常に大きな意味合いを持っていると言えますが、逆に言えば意外とこの程度の差に収まるものなのか?と言う捉え方も出来そうな数字ではありますね。
これに対して給料が高くなる、当直回数が減る、休日が増える、同じ診療科の同僚医師数が増えると言った要因で勤務先に選ばれる確率が上がっていくのだそうで、これらを考慮した結果「僻地勤務にはプラス800万円」と言う記事のタイトルが出てきたと言うことのようですが、興味深いことに私大卒業生は僻地勤務への忌避傾向が強かったとも言います。

この調査結果をどう考えるかですが、一つ予想されることとして若手医師と言えば相対的に家庭を持っている人の比率が低いだろうと思われる点で、これが中堅以上で子供の教育や持ち家などのことを考えなければならない医師になると僻地許容度が下がってくるのかどうかです。
また今回の調査ではあくまでも勤務先として有りか無しかと言う点しか訊ねていないのですが、例えば勤務希望年数と言う要素を含めるとこれがどうなるのかで、高給を出してくれるなら一年くらい田舎に出稼ぎに行くのは構わないが、長く務める気はないと言う先生もいるかも知れないですよね。
ただ世に言われてきたように僻地勤務は絶対的に忌避されると言うのではなく、どうも条件次第によってはそれも考えなくはないと一方の当事者が考えているのであれば実は痛しかゆしで、医師を呼ぼうとしている側の僻地自治体や医療機関にとっては「それじゃ単にあなた達の努力不足だったんだね」と言われかねないわけです。
こうした方々にとってはむしろ医者は絶対的に僻地勤務を拒否している、だからこそ国家権力なり医局なりが強制的に医師を僻地送りにしてもらわなければならないと言う方向に話が進む方が断然楽でメリットがあるとも言え、むしろ医師を呼ぶ側からは必ずしも歓迎されない結果と言えるのかも知れませんね。

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コメント

でも行かないんでしょ?

投稿: | 2016年1月13日 (水) 08時09分

>「住民から契約延長を望む声がなかった」と契約を打ち切った

単純にこういうものの需要がなかっただけでは

投稿: たま | 2016年1月13日 (水) 08時37分

某村に関しては案外居心地はいいと言う証言もあるようですが、少なくとも一部には部外者を歓迎しない風潮もあるようで、住み込みでの就労よりは通いの方が双方にとっていいのかと言う気がします。

投稿: 管理人nobu | 2016年1月13日 (水) 11時34分

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