« 素晴らしい理念が現場で必ずしも受け入れられていない現状 | トップページ | 鬼女すなわち既婚女性と言うわけでは必ずしもなく »

2016年1月21日 (木)

薬剤師の権限がさらに拡大していくようです

以前から断続的に情報が出ていた話なのですが、先日こんなニュースが出ていたことを紹介しておきましょう。

薬局が軽症患者のファーストアクセスの場に?(2016年1月18日日経メディカル)

 現在は「処方箋の応需」という画一化されたサービスを提供する保険薬局の一部が、今後、地域住民の健康相談やOTC薬によるセルフメディケーションの推進などの機能を積極的に担う可能性があることをご存じだろうか。

 2015年秋に厚生労働省の検討会が報告書をまとめ、新設が決まった「健康サポート薬局」は、医師と連携して糖尿病予防教室や認知症の早期発見のための取り組みなどを行うほか、かぜや軽い擦り傷などの軽症患者のファーストアクセスの場としての機能を求められている。医師にも大いに関係がある話題なので、簡単に紹介したい。

背景に国が進める「セルフメディケーションの推進」
 近年、調剤のみを行う薬局が多くなり、「保険薬局は処方箋を持って行くところ」という認識が国民に広がっている。しかし、医療保険財政が危機的な状況にある中、国は薬局という資源を活用して、薬剤師にOTC薬によるセルフメディケーションの推進や、健康相談への対応、健診や医療機関への受診勧奨などの役割を担わせることで、国民の健康増進と医療費の抑制の両方を実現させようとしている。

 こうした考えから、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」に「薬局・薬剤師を活用したセルフメディケーションの推進」という文言が盛り込まれた。これを受けて、厚労省は2014年度から「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業」を開始。2015年6月に「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」(座長:昭和薬科大学長の西島正弘氏)を設置して、6回の会合を開き、9月に同検討会の報告書「健康サポート薬局のあり方について」を公表した。

 報告書では「健康サポート薬局」を、「かかりつけ薬剤師・薬局の機能に加え、地域住民の主体的な健康増進を積極的に支援する薬局」と定義。具体的な要件として、OTC薬の取り扱いや健康相談、関係機関への紹介などに関する研修を修了した薬剤師の常駐、健康サポートに関する具体的な取り組みなどが示された。今後、国は地域住民が、どの薬局が健康サポート機能を有する薬局であるかを把握できるよう公表する仕組みを作る方針だ。

 薬局で健康相談を行ったり、OTC薬によるセルフメディケーションが推進されることには、反対意見も多い。検討会の議論でも、「健康づくりはかかりつけ医に任せてほしい」(日本医師会常任理事の羽鳥裕氏)、「医療機関からみれば(調剤)薬局でOTC薬を置いてほしくない」(同)、「薬局が住民から受ける健康相談とは何か。どのような相談を薬剤師が(能力的に)受けることができるのかを明確にすべき」(日本看護協会常任理事の中板育美氏)といった意見が出された。

 一方、自治体や患者会、保険者側には、この動きを歓迎する意見が多かった。「医療資源が乏しい地方では、ネット販売で薬を購入する人が増え、薬について相談する機会が減っている。健康サポート薬局で、地域住民が薬について、自分の生活や健康も含めて薬剤師に相談できるようになることを期待している」(北海道江別市長の三好昇氏)との意見や、「OTC薬について安易な使い方をしている患者は多い。健康サポート薬局でOTC薬への注意喚起や、OTC薬を含めた服薬情報の一元管理やお薬手帳への記入を行ってほしい」(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子氏)との意見が出された。
(略)
 厚労省は「健康サポート薬局」と表示できる薬局の基準案についてパブリックコメントの募集を完了し、健康サポート薬局のスタートに向けて着々と準備を進めている。研修の内容や公表の仕組みなどは決まっていないため、実際にスタートするにはまだ時間が掛かると思われるが、今後、健康サポート薬局がどのような業態になるのかを注視していきたい。

いわゆるOTC薬の普及促進、対象拡大政策であるとかもその一つですが、近年では薬を扱うのみならず薬局で簡単な検査や健康相談的なことをさせようと言う話が以前から徐々に進んできていて、医療専門職でありながらともすれば薬詰め職人などと揶揄されることに対して薬剤師側でももっと権限拡大を求めてきたことと、国の医療費抑制政策がうまく方向性が合致したと言えるのでしょうね。
この背景として一つには例の医薬分業と言うこともあり、また薬学部の6年制への改変がこの布石だったのか、6年制になったからこそ専門職らしい仕事をさせようとしているのかも気になるところなのですが、当然ながら一部医療系団体からはこうした薬剤師の権限拡大に反対意見が出ていることは想像に難くないところです。
そもそも専門職と言うのは特定分野に関しては他の誰よりも詳しいと言うことであって、専門職を名乗る以上少なくともその領域では他に優越した権限を持っていてしかるべきだと思うのですが、一方で薬剤師に限らずいわゆるコメディカル全般にとって、独自行動を認める権限拡大はいいとして「それじゃ先生に聞いてみますね」と言う最後の手段が使えなくなると言うのも痛し痒しではあるのでしょうね。
もちろん薬剤師であってもきちんと勉強し熱心に診療に関与している人が多いのは周知の通りですが、一方でこうした権限拡大に伴い問われるのはその最低水準がどの辺りにあるのか、あるいは拡大されていく権限に見合う能力識見をどう担保していくかと言うことで、今後6年制薬学部でこうした実臨床に対応した教育がなされていくことは期待したいのですが、制度的にもこうした話が出ているようです。

薬剤師国家試験にも「禁忌枝」導入へ(2016年1月15日CBニュース)

厚生労働省は15日、医道審議会の「薬剤師分科会薬剤師国家試験制度改善検討部会」で、薬剤師の国家試験(国試)で倫理観のない選択肢を選んだ受験者を不合格にすることなどを盛り込んだ基本方針案を提示し、おおむね了承された。厚労省は月内の取りまとめを目指す。【松村秀士】

医師の国試には、倫理的に誤った回答などをする受験者の合格を避ける目的で、一定数を選択すると不合格となる「禁忌肢」の問題が設けられている。一方、現行の薬剤師の国試には禁忌肢の問題は設定されていない

この日の部会で示された基本方針案では、薬剤師には高い倫理観や使命感が求められるとし、選択すると不合格になる禁忌肢を含む問題の導入が提案された。禁忌肢の内容としては、▽倫理的に誤っている▽公衆衛生に甚大な被害を及ぼす▽患者に重大な障害を与える危険性がある▽法律に抵触する-ことなどを想定している。ただし、受験者が誤って禁忌肢を選ぶケースなどが起こり得ることから、その出題数などには「配慮する必要がある」とした。
(略)
議論では、基本方針案について特に反対意見は出ず、おおむね了承された。ただ、一部の委員から、各項目に関して「文章が長い」「すべて読まないと伝わりにくい」「先に結論を明記すべき」など、文言に関する意見が出た。厚労省は今後、これらの意見を踏まえ、案を修正する予定。

不肖管理人としては薬剤師の国家試験の内容を承知していなかったのですが、医師国家試験にはもうずいぶんと以前から導入されているこの禁忌選択枝と言うものが今まで導入されていなかったと言うのは初耳で、当然ながら医療現場に関わり重要な仕事をする以上最低限これは知っていないといけないと言う常識的知識はあるはずですし、それを知らないのでは現場に出る資格はありませんよね。
こうした点から今回導入に関しては特に反対意見は出なかったと言うのも、逆にどういう理屈で反対できるのかと言う話ですから当然と言えば当然なのですが、実際のところこの禁忌枝なるものがどれほど機能しているものなのかと思い試みに先行する医師国家試験を調べて見ますと、どうもこれによって落ちている人と言うのは限りなくゼロに近い人数でしかないようです。
もちろん長い長い試験時間の中で心身共に疲弊した中でのうっかりミスなど幾らでもあるでしょうから、6年間一生懸命勉強した結果が2つ3つのマークミスで全て駄目にされてしまうのもひどい話ではあるのですが、最低限こんな奴には合格してもらっては困ると言う人間が1万人近い受験生の中に全くいないのかと言われると、卑近の実例を思い浮かべるまでもなくさてどうなんだろうと少し考えてしまいそうではありますね。

この辺りは先日も臨床初期研修を終了した段階でこれは絶対に駄目と言う医師には修了認定を出さないでいいのか?と言う議論もあったところで、そうまで適性がないのであれば学生時代なり国試なりで弾くべきだろうと言う考え方もあると思うのですが、理念はともかく実際の運用上これならと言う選抜のやり方はなかなかないのは医師も薬剤師も同様であるはずだと考えると、実際に試験の一つ二つでどうこうなるものではないのでしょう。
医師の場合卒後も生涯にわたる教育システムが相応に整備されていて、少なくともその意志がある人間にとっては歩みは遅くとも少しずつでも成長していけるものですし、かつての医局支配が強力だった時代にはどんな使えない医者にも使い道を見つけるのが医局長の腕の見せ所的な考え方もあって、控えめに言っても人格者揃いとは言えない医師の業界も何とか秩序を保っていたようには思います。
現在では医局システムの崩壊や新臨床研修制度などによって医師が勝手に勤務先を探して就職するのが当たり前になった結果、雇う病院側にとっても昔以上に当たり外れが大きくなってきているだろうし、一カ所に定着できずあちこち流れ歩いている先生も少なくないようにも感じるのですが、想像するところ薬剤師業界などは元からこうした状況であったとも言えるのでしょう。
医師の世界でもかつてのように医局序列中の先輩、後輩関係が崩壊してくると、特に外科系などは将来的に技術の世代間伝達のやり方なども変わってくるのではないかと思っているのですが、薬剤師の世界もこれからはどう皆が継続的にレベルアップしていくかと言う方法論を考えておかないと、権限ばかり拡大しても技術や知識は追いついていかないと言うことになりかねないのではないかと危惧してしまいます。

|

« 素晴らしい理念が現場で必ずしも受け入れられていない現状 | トップページ | 鬼女すなわち既婚女性と言うわけでは必ずしもなく »

心と体」カテゴリの記事

コメント

院内と院外で一口に薬剤師と言ってもかなりレベルが違って見えます。
ドラッグストアのバイト薬剤師がどこまで対応できるのかですが。
やるならやるで研修なり追加の資格認定なりが必要になるんじゃないかと。

投稿: ぽん太 | 2016年1月21日 (木) 08時28分

将来的な通院は再診の場合
まず薬局→簡単な診察と検査→問題なし→リフィル処方箋で調剤→帰宅
って方向になるのでしょうかね。
そうするのであればもう少し薬剤師の資質向上と検査の改良が必要になりそうですけれど。

投稿: クマ | 2016年1月21日 (木) 08時48分

初診時選定療養費の抜け道にならないか、とか制度設計の細かいところは気になりますが、方向性としては賛成です。

本来、薄利多売を目指すべき開業医が、これまで患者単価を上げる要求をしてきた戦略の拙さを衝かれた形でしょう。

ただ、調剤薬局によるOTC薬処方を保険適応にして、患者自己負担額を劇的に下げないかぎり、画餅に終るのではないでしょうか。

投稿: JSJ | 2016年1月21日 (木) 09時20分

薬局で、患者さんに対する指導のレベルだけでなく、薬ではなく効果に疑問のある(高価な)健康食品をすすめられないか、心配です。薬局では売り上げは重要でしょうから。

投稿: | 2016年1月21日 (木) 09時27分

>薄利多売を目指すべき開業医

そうかなぁ。2025年以降を考えると、自己負担をふくむ単価をあげて軽症患者を排除、1人1人に十分なケアという方向の方がやる側にはいいと思います。

ただ、薬剤師に新たな資格をもうけて欲しい。今の薬剤師はレベルにムラがありすぎて...基本的なくすりの使い方すら間違っていたり、薬剤師判断でえり好みして中止してはダメなくすりの中止を患者に進言したり....。

投稿: おちゃ | 2016年1月21日 (木) 10時34分

薬剤師も新制度で育った世代に入れ替わるまでには何十年もかかるので、在学中から卒後まで一貫した教育体制を整備しながら気長にクオリティーコントロールを図っていくしかないのかなと考えています。
高価ながら効果に疑問がある商品と言うことに関しては、保険診療外の人間ドックでのオプション検査なども改善の余地がありそうですけれどもね。
ちなみに薬剤師が患者を(言葉は悪いですが)丸め込んで、ジェネリックの中でも薬局側に利幅の大きなものを選択させると言うことがどの程度あるものなのか、誰か一度調べてみて欲しいと思っています。

投稿: 管理人nobu | 2016年1月21日 (木) 11時15分

>自己負担をふくむ単価をあげて軽症患者を排除、1人1人に十分なケアという方向
排除した軽症患者を今回のように調剤薬局に流す、ということなら首尾一貫していると思います。
客単価は上げたい、かつ軽症患者を手放したくない、という日医の主張に無理があると思います。

投稿: JSJ | 2016年1月21日 (木) 12時28分

「日医の主張」は「日医の願望」と訂正します。

投稿: | 2016年1月21日 (木) 12時33分

 皆保険で何を支えるのかという先日のお題とも関連します。
お上はOTC(セルフメディケーション)を皆保険で支えるつもりがないのでは、と思います。年間10万?円以上薬局で非保険調剤薬を購入したら税金を還付(所得控除)とか。薬価とOTC売価の差でご承知のとおり、一般医薬品は利幅が大きいからこそネット通販で廉価に販売できる代物。となれば有資格者も差益分の説得力を顧客に示せなければ、通販や登販に売り負けるだけの話。顧客は素人ですからご懸念のガマの油売りも当然出現する。顧客は価格+売り手の説得力から自己責任で選ぶのですから 保険金に見合う結果は担保されてない、なので保険の対象にするべきではない。
 
 通販登販ではなくかかりつけ薬局なら結果を担保できるか? 薬剤師は以前からバラツいていましたが、6年制3回生以後大方の新設私立薬の学生を中心に、ばらつきが下の方へ絶賛拡大中。新たな資格でもでっちあげないと薬剤師と袋詰士は分離出来そうもない。高卒資格の調剤助手を認めてしまえばよいのですが、抵抗勢力がいますから。

投稿: | 2016年1月21日 (木) 13時48分

てか、薬詰め以外に何ができるのかテストすべき
近所のおばちゃん以上の知識があるようには見えないの大杉

投稿: | 2016年1月21日 (木) 23時37分

>薬詰め以外に何ができるのかテストすべき
そんなテストをさせる わ け がない。
注射薬の混合、水剤の調合はできることになってる。
国公立出ならねるねるねるねの合成ができるかもしれない。

投稿: | 2016年1月22日 (金) 13時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/63096075

この記事へのトラックバック一覧です: 薬剤師の権限がさらに拡大していくようです:

« 素晴らしい理念が現場で必ずしも受け入れられていない現状 | トップページ | 鬼女すなわち既婚女性と言うわけでは必ずしもなく »