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2016年1月 6日 (水)

避けられたかどうか微妙な事故

遅れるべきでない場合に限って何かしらの理由で遅刻してしまうと言うことは往々にしてあることですが、その理由として電車の遅延などある種不可抗力的なものであるのか、それとも個人の努力次第で回避できたものであるのかによってずいぶんと印象が違うのも事実ですよね。
先日発生したこちらの事例などはその微妙な境界例と言えそうで、ネット上でもこれは回避出来たものなのかどうかで意見が分かれているようです。

救急車エンジンかからず…別の隊出動も到着25分遅れ、ホテルで転倒の患者死亡 札幌市消防局(2015年12月29日産経新聞)

 札幌市消防局は29日、救急車の故障を理由に最寄りの救急隊を出動させず、別の隊を出動させて本来より到着が約25分遅れた、と発表した。60代の男性患者は病院で死亡。「到着遅れと死亡との因果関係は分からない」と説明している。

 消防局によると、29日午前1時5分、南区定山渓温泉のホテルから「客が転んで頭を打ったようだ」と119番があり、ホテルから約1キロ先にある最寄りの出張所に出動を指示した。

 しかし、救急車のエンジンがかからず、同1時9分、代わりに、約14キロ離れた救急隊を出動させた。

 その後、通報者に再度連絡をとり、患者が意識を失っていることを把握。同1時16分、出張所から救急救命士を消防車で出動させ、この到着が最も早かった。救命士の到着時、患者は心肺停止状態で、別の客らが蘇生(そせい)を試みていたという。

お亡くなりになった方のご冥福を祈るしかないのですが、故障による遅延が死亡と関係しているのかどうかは記事からははっきりせず、むしろ転倒そのものが何らかの致命的な疾患発症の結果であったのかも知れずで、この点に関しては説明通り「因果関係は分からない」と言うしかないのだろうと思います。
聞くところによると消防署では毎日車輛の点検を行っているようで、車輛そのものはもちろん中に積み込んでいる機材などもチェックしていると言いますが、これらに関しては過去にも様々な事故事例などを受けて次第にマニュアルも調えられてきたものなのだそうで、今回の車輛も前日夕方の指導点検では特に問題がなかったと言いますから事態はより深刻そうに見えます。
それでも消防救急などは日常的に点検や運行も行っている専門家が扱う道具であり、何かトラブルがあれば今回のように代替手段も講じられるのだろうと思いますが、これが素人の扱う道具であればどうなのかで、先日報じられたこちらの事故事例を取り上げてみましょう。

人工呼吸器欠陥、死亡原因 ALS男性遺族(2015年12月29日毎日新聞)

 全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患った埼玉県の男性(当時65歳)が死亡したのは、人工呼吸器の欠陥が原因だとして、遺族が28日、呼吸器を輸入販売するフィリップス・レスピロニクス(東京)に約7200万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。

 訴状によると、男性は自宅で療養していた14年10月に人工呼吸器が作動しなくなり死亡した。通常の使い方だったのに電源コードが断線したとし、製品に欠陥があったと主張している。提訴後、記者会見した妻(62)は「なぜ事故が起こったのか明らかにしたい」と訴えた。遺族の代理人によると、フィリップス社から同じ製品で過去1年間にコードの断線が17件あったと説明を受けたという。


ALS患者死亡 遺族が人工呼吸器の会社を提訴(2015年12月28日NHK)

全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALS=筋萎縮性側索硬化症の男性が自宅で使用していた人工呼吸器が止まって死亡したことを巡り、遺族が「製品に欠陥があった」として製造や販売をしている会社に賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。

訴えを起こしたのは、ALS=筋萎縮性側索硬化症と診断され、自宅で人工呼吸器を使用していた埼玉県の当時65歳の男性の遺族5人です。訴えによりますと、去年10月、人工呼吸器の電源コードが内部で断線して止まったため男性は呼吸が停止し、10日後に死亡したということで、遺族は、「製品に欠陥があった」として製造や販売をしている「フィリップス・レスピロニクス合同会社」に、7200万円余りの賠償を求めています。
遺族によりますと、人工呼吸器が止まる前、外部から電源の供給がなくなり、内部のバッテリーが作動したことを示す表示が出たということですが、この表示の意味について事前に会社から詳しい説明はなかったとしています。

提訴のあとで会見した男性の妻は、「人工呼吸器を使っている人たちの安心や安全のためにも、なぜこのような事故が起きたのか解明したい」と話していました。
一方、会社側は「訴状を受け取ってないのでコメントは差し控えたい」としています。

これまた不幸にしてお亡くなりになった患者さんのご冥福をお祈りする次第ですが、記事を読んでいて気になったのが電源コードの断線と言う今どきの電気製品としてはあまり聞かない故障であったこと、そし1年間で同製品で同種断線事故が17件あったと言うことで、相当な頻度で発生するトラブルであると言う印象を受けますが、いわゆる通常の使用でも断線してしまうような欠陥製品だったのかは気になりますね。
一般的にこうした致命的な結果を招くトラブルに関してはリコール等で対応することになるかと思うのですが、ざっと見た限りフィリップス社製の人工呼吸器が最近リコールされたと言うニュースは出ていないようなので、何かしら通常の想定外の状況で断線が発生したのだとすれば、設置時の説明にこの種の注意事項も書き加えるべきなのかどうかです。
他方でこの種の機械の設置時には停電など電源喪失時の対応についても詳しく説明されるのが一般的だと言い、その意味でバッテリー警報に気付いていたらしいのに何ら対応しなかったのだとすれば状況がよく分からないところなのですが、見る限りでは患者も家族もそれなりに高齢であり、この種の機械の操作についてあまり理解が深そうではないと言う点もあるいは事故の一因になっていたのかも知れません。

しばらく前に古い扇風機が発火すると言う現象がかなり大きく報じられていて、最近の扇風機には使用期限を示すシールなども貼られているようなのですが、これも道具は手入れが必要だと言う前提できちんとメンテナンスを行っていれば古くても発火しないと言いますが、メンテナンスフリーが当たり前になった時代の道具が中途半端に古くなってきた時が一番危ないと聞きます。
医療用器具などは基本的に専門家が扱うべきものと言う認識が一般的で、在宅使用されるものもスイッチ類をカバーで覆うなど可能な限り素人には触らせない、触れないように設計してあるものが多いように感じますが、それならそれで通常とは異なる状況になればきちんと警報を出し、そうなったときどう対応すべきなのかを明示すると言う必要はありそうですよね。
昨今では何でも裁判沙汰になりかねないと言う懸念でしょうか、ちょっとした道具でも立派なマニュアルが添付されていて小さな文字をいちいち読むのがつらいと言う方々も多いと思いますが、この種の道具で万人に対して最大公立での安全を担保するためにどのような使用法の説明が望ましいかと言う点に関しては、老老介護も増えてくる時代だけに緊急性が高い課題でありそうに思います。

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コメント

風呂場でころんで頭打ったらしいですね
ほんとに死ぬんだなって思いました

投稿: | 2016年1月 6日 (水) 07時54分

抗血栓治療中だったのかも知れませんね。
何でもかんでも血液さらさらって弊害もあると思うんですが。

投稿: ぽん太 | 2016年1月 6日 (水) 08時53分

事故の詳細は判らないので何とも言えませんが、風呂場での事故も普段から注意すべきリスクではあると思います。

投稿: 管理人nobu | 2016年1月 6日 (水) 10時36分

電源コードの断線は環境に優しいを謳い文句にしたRoHS規制が始まってから多くなりました。
それまで使われていたハロゲンやら鉛が使えなくなったので代替品に変わったんですが硬いわ傷がつきやすいわで大変です。
同等の特性を出すにはかなりお値段が上がるのでこういう事故は増えるんでしょうね。

某社の製品でも「商用電源が停止しました」とか警告が出て音声が鳴りますが、マニュアルも読んでいない素人さんはパニックになるだけでなにも出来ないだろうなって気がします。

投稿: | 2016年1月 6日 (水) 17時13分

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