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2016年1月29日 (金)

てんかんが原因となったバス迷走事故、関係者の懸念を呼ぶ

全国的にバスに絡んだトラブルや重大事故が相次いで報じられる中で、先日愛媛では高速道路を走行中に70代のバス運転手が人事不省となり、女性添乗員が横からハンドルをコントロールして何とか無事停車したと言う大変に怖い事例が報じられていましたが、その事故に関連してバス会社側から運転手が症候性てんかんと診断された旨公表されたことが一部方面で波紋を呼んでいます。


バス蛇行 運転手“てんかん”(2016年1月22日NHK)

今月17日、淡路市の高速道路で、ツアー客40人余りを乗せたバスが蛇行運転を繰り返した問題で、バスを運行していた愛媛県のバス会社が、70歳の男性運転手に精密検査を受けさせた結果、後天性の「症候性てんかん」という診断を受けたことを明らかにしました。

今月17日、ツアー客42人を乗せて松山市から宝塚市に向かっていたバスが、淡路市の高速道路を走っていたところ、蛇行運転を繰り返し、運転手が途中で交代させられました。バスを運行していた愛媛県東温市のバス会社、「アトラストラベルサービス」が蛇行した原因を調べるため、運転していた70歳の男性運転手に病院で精密検査を受けさせたところ、後天性の「症候性てんかん」という診断を受けたということです。

22日夜、会見した戸井田徹一社長は「法律にしたがってこれまで健康診断を実施してきたが、病気について見抜くことはできなかった。こういう事態になったことは申し訳ないと考えているが、会社側として事前に気づくのは難しかった」と述べました。

「日本てんかん協会」によりますと、「症候性てんかん」は、脳になんらかの障害や傷があることによって起きるてんかんで、脳が低酸素状態になるなどして発作が起きたりすることがあるということです。また、脳腫瘍や髄膜炎など、後天的なものが原因となるものもあるということです。

てんかんの患者や家族でつくる「日本てんかん協会」は、「てんかんは、適切な治療を受ければ車の運転に支障はない。バスなどの公共交通機関のドライバーは、乗客に安心して利用してもらうためにも、体調に異常があればすぐに会社に報告し必ず医療機関を受診して治療を受けてほしい」と話しています。

てんかん公表に懸念表明 バス蛇行運転で啓発団体(2016年1月26日共同通信)

 兵庫県淡路市で蛇行運転したツアーバスの運転手が事後にてんかんと診断され、運行会社が病名を公表したことについて、患者や家族らでつくる日本てんかん協会(本部・東京)は26日、「プライバシーを無視している。てんかんは危ないとの印象が社会に広がる」と懸念を表明した。

 厚生労働省で記者会見した医師の久保田英幹副会長は「初めての発作は誰にも予測できず、防ぐことができない」と指摘。「(発作があったとしても)本人に責任がない状況で、公表する必要があったのか」と述べた。

 高齢化でてんかん患者は増加傾向で、初めての発作が事故につながることがある

70代の高齢者に心身共にハードだと言う長距離バスの運転などさせるべきでなかったと言う意見も根強くあるのですが、何しろ昨今バスなど大型車両の運転手はどこでも不足気味ですからこれは仕方ないとして、この件に関しては二つの視点から問題が挙げられるのではないかと思います。
一つにはてんかん協会などが主張する「てんかんは危ないとの印象が社会に広がる」と言う点ですが、近年ご存知のようにコントロール不良なてんかん患者による事故が多発し道路交通法が改正されるなど規制強化が進んでいるところで、社会的にもてんかんは危ない病気だと言う認識が広がりつつあることは確かだと思いますね。
もちろんきちんとコントロールされたてんかん患者も多いのですが、問題は栃木クレーン車事故のように患者自身がてんかんが他人に危害を及ぼす可能性のある病気であると言う認識が乏しいのではないか?とも思われる行動を取り事故につながっている事例も少なくないことで、この辺りは怖い危ないと言う認識を広げたくなければもっと患者啓発を推進してきちんと治療を受けさせろと言う声も根強いところです。
バス会社側がこうした個人情報を公表した背景には当然責任回避的な意識とともに、個人情報と結びつけられる病歴を公表した以上世間の冷たい目線が運転手個人に集中してしまうのは避けられないところですので、会社側には公表によって運転手本人に不利益が及ばないと言うことを証明していく責任もあるように思いますね。

この公表と言う点に関してもう一つ、仮に運転手が同意していない場合にはそもそも他人の病歴を勝手に公表していいのかと言う問題があって、これが例えば診断をした医師が公表したと言うことであれば守秘義務違反として直ちに法に触れることは言うまでもありませんが、会社側が公表すると言うことに関しては法律上あまり規制はないそうです。
会社としては当然健康診断結果など個人の医療情報に関して一定の蓄積を持っているはずで、下手すると偏見にさらされかねない個人情報を勝手に後悔されるのは困るのですが、事故が起こった原因究明と説明責任と言う観点からすると、会社側としても「原因は判明しましたが公表できません」ではさらなる社会的非難を浴びていただろうことも明らかで、実はなかなか厄介な問題であるとも言えます。
ただ医師の診断結果が会社側にまで伝わるルートを考えると一つには医師から直接会社側に伝えられた場合で、例えば夏の最中に熱中症で社員が搬送されたりすると労災になると言うことで会社側の人間が医師に話を聞きに来ると言うケースもあるでしょうが、これも本人の同意が得られない以上は勝手に赤の他人に話してはいけないと言うのが大原則ですよね。
一方で職務規程などで明文化されていなくてもこうした場合、何がどうなっていたか従業員は会社側に説明するのが普通だと思いますけれども、こうして知り得た社員の個人情報を会社側が勝手に公表するのでは社員としても不安でしょうから、いざと言う時どのような取り扱いとなるのか社内ルール等も確認しておいた方が安心なのでしょうね。

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コメント

>プライバシーを無視している。

これは確かにそうかもしれませんね。
よくある「精神科に通院歴があった」みたいな、なんだか分からない客観報道とは一線を画してますね。

>てんかんは危ないとの印象が社会に広がる

どう考えても事故率は高いだろうと思います。
言いたいことがあるなら、epilepsy 患者の事故率が普通より高くないことを、てんかん協会は示すべきでしょう。

またこの事故である意味象徴的な事実として、ツアーを主催したのは阪急交通社なのに、阪急バスが使われていなかったことです。
価格破壊の悪影響でしょうか。
テレビニュースで見てびっくりしたのは、アトラスバスとやらの社屋がただの一軒家であったこと。
そのまわりに一台何千万円はするであろうバスが数台止まっていたことです。
すごくシュールな光景でした。


ちなみに東温市とは愛媛大学医学部の存在するところです。

投稿: 嫌われクン | 2016年1月29日 (金) 07時25分

運転手はその後どうなったんでしょうね?
治療して運転手に復帰したのかどうか?

投稿: ぽん太 | 2016年1月29日 (金) 08時20分

>どう考えても事故率は高いだろうと思います。

てんかん患者による事故は病名付きでセンセーショナルに報道されるので目立ちます。
ただ、過去の文献によるとてんかん患者の事故率は一般的なドライバーと比べて高いとする文献と低いとする文献と両方あります。
また、治療の質も変化しており、10年前、20年前のデータで現在の事故率を評価するのは適切ではないかもしれません。

あと、てんかん協会は事故率は高くないとするデータを公表しています。(それが正しいかどうかは議論の余地があります)
そういうデータがなければ国や警察がてんかん患者の運転を可能にする法改正をするはずがありません。

投稿: クマ | 2016年1月29日 (金) 08時58分

事故(重大インシデント含む)原因を報道してはいけない根拠はなんですか?
私にはまったく理解不能です。公開しなければ、運転手(バスだけでなく、すべての交通機関)の健康診断の重要性も啓蒙できません。

投稿: 麻酔フリーター | 2016年1月29日 (金) 10時37分

クマ様へ
>てんかん協会は事故率は高くないとするデータを公表しています。

ご指摘ありがとうございます。
てんかん協会のホームページをさがしましたが、当該のデータを見つけることができませんでした。
WEB上にあるのでしたら、urlをお教えいただけたらありがたいです。
よろしくお願いします。

投稿: 嫌われくん | 2016年1月29日 (金) 10時38分

日本てんかん協会も反応の仕方が間違っている。
まるでどこかの人権団体とかと同じで、ただただ感情的に反応しているみたいで、一般の人には逆効果だと思いますが。

>「初めての発作は誰にも予測できず、防ぐことができない」と指摘

きちんと認識しているのにね。

投稿: | 2016年1月29日 (金) 11時10分

嫌われくんさまへ

ttps://www.npa.go.jp/koutsuu/menkyo4/tenkankyoukai_siryo.pdf
このあたりはいかがでしょうか?
既存のデータでは、なぜそういう結果になったのかはよくわかりませんが、てんかん患者より糖尿病患者のほうが事故率が高いというデータもあるようなので、
単に事故率が高いからという理由で運転を禁止すると糖尿病患者も運転を禁止せざるを得なくなり、社会的な影響が大きいのではないかと思われます。
個人的には発作が抑止されているとされたてんかん患者を前向きに調査して事故率を計算する必要があると思われます。警察にそのデータがあるなら公表してほしいのですが・・・

投稿: クマ | 2016年1月29日 (金) 11時23分

個人的には有病率やコントロール不良患者の多さから、てんかんよりは糖尿病の方により大きなリスクを感じています。
強いて糖尿病を擁護するなら、健診等においててんかんよりは容易に拾い上げと早期治療が期待できると言う点でしょうか。

投稿: 管理人nobu | 2016年1月29日 (金) 12時57分

クマ様
早速の提示ありがとうございました。
「てんかんだけが事故多い病気ではありません」とのこと。
一般人よりは、やはり多いということのようですね。
でもてんかんだけを悪者にするなと言うごく当たり前の主張ですね。

投稿: 嫌われくん | 2016年1月29日 (金) 13時41分

政治家って糖尿病多そうだな
規制強化するわけないね

投稿: | 2016年1月29日 (金) 14時36分

>一般人よりは、やはり多いということのようですね。

20代、高齢者のほうが事故率が高いです。
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=126359

このあたりのバランスをとらないと、おかしなことになります。日本はムラハチブが好きなので。

子宮頸がんワクチンも同じ構図に陥っています。

投稿: おちゃ | 2016年1月29日 (金) 15時31分

>まるでどこかの人権団体とかと同じで

実際同じだしなあ筒井康隆の断筆騒動とか…。おそらく組織の性格上不可能でしょうけど例のクレーンの事故の時、加害者を庇うような言動は慎みむしろ「きっちり薬飲んどかんかぁこのてんかん患者の面汚しがぁ!!!」みたいに切り捨てとけばてんかん患者全体に累を及ぼすレベルで世間の反発を買う事もなかったかと愚考致します。

>20代、高齢者のほうが事故率が高いです。

20代、高齢者の運転も禁止しようw!(提案)

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2016年1月30日 (土) 12時11分

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