« 避けられたかどうか微妙な事故 | トップページ | 高齢者地方移住と受け入れ自治体の損得 »

2016年1月 7日 (木)

骨髄ドナーには報奨金と言う制度の広がりが問いかける問題

先日こんな記事が出ていたのを御覧になったでしょうか。

骨髄ドナーに奨励金、1日2万円…東京・豊島(2015年12月29日読売新聞)

 白血病などの患者に骨髄を提供する「ドナー」を増やそうと、東京都豊島区は来年1月から、移植手術をしたドナーに1日2万円の奨励金を交付する事業を始める。

 23区では初という。

 都赤十字血液センターによると、今年7月時点でドナーの登録者は区内に1126人。登録者数は近年減少しており、加齢や健康上の理由による登録取り消しも増えている。移植手術で3~6日入院が必要で仕事を休まなければならないなどの負担もあることから、がん対策推進条例を制定している区が支援に乗り出すことにした。

 奨励金の対象となるのは、区内に住所があり、日本骨髄バンクが実施する事業で骨髄や末梢まっしょう血幹細胞を提供したドナーで、証明書を提出すれば7日間を上限として奨励金が支払われる。ドナーが勤務している事業所にも、1日1万円が交付される

 区は「事業を通じて、一人でも多くの区民が骨髄バンクに登録をしてもらえれば」としている。


豊島区 骨髄提供に奨励金制度 最大14万円(2015年12月15日NHK)

白血病などの治療に必要な骨髄移植の普及につなげようと、東京・豊島区は骨髄を提供するドナーや、ドナーの勤務先に奨励金を交付する制度を、東京23区ではじめて1月から始めることになりました。
骨髄移植は白血病などの治療に有効ですが、骨髄を提供するドナーは事前の健康診断や骨髄の採取に1週間ほどの通院と入院が必要になるため、仕事を休めないといった理由で、提供をためらうケースも少なくありません。

このため東京・豊島区はドナー側の負担を減らしより多くの移植につなげようと、骨髄の提供者とその勤務先の会社に対し奨励金を支給する制度を来年1月から始めることになりました。
この制度では、ドナーに対し、通院や入院の日数に応じて最大で14万円を支給するほか、勤務先には最大7万円を支給するということです。
豊島区は、奨励金を支給し、ドナーが会社を休んでいる間の経済的な補償を行うことで、骨髄を提供するドナーの増加につなげたいとしています。

この制度は1月4日から活用でき、骨髄移植を仲介する「日本骨髄バンク」が発行する証明書を区役所に提出する必要があります。
豊島区によりますと、こうした取り組みは東京23区では初めてだということで、「制度を活用して1人でも多くの人に骨髄移植に協力してもらいたい」と話しています。

最近この骨髄提供に対して2011年の新潟県加茂市を皮切りに多くの自治体で相次いで奨励金が設定されているようなのですが、勤務先にも金銭的補償があると言う点がポイントで、自治体によっては提供者本人への支給だけに留まっている場合もあるようですが、やはり一週間仕事を空けられるとなると職場の理解も欠かせませんよね。
実際問題骨髄提供に行ってきますと休業届けを出したところ上司から嫌みを言われた、などと言う声もあるようですから社会的理解も不可欠なのですが、ぎりぎりの人数で回している事業所も多い中で一人でも休業が痛いと言う事情も判る一方で、むしろ社員に報奨金を支払ってドナー登録を推奨していると言う企業もあるようで、このあたりは総合的に何が得なのかと言う判断が分かれるところだと思います。
いずれにしても全国自治体で相次いでこうした制度が稼働し始めたと言うのはそれだけ需要があると言うことで、特に骨髄ドナーの場合適合するかどうかと言う点でハードルが高く常に不足状態が続いていると言い、また提供のタイミングなどの問題で直前に辞退するケースも少なくないそうで、まずはドナー登録者数を多くしていくことが望ましいと指摘される所以ですよね。

骨髄バンクの意義や必要性に関しては異論のないところだと思うのですが、今回の報道を契機に一部方面から指摘されているのが「これは臓器売買とは何がどう違うのか?」と言う指摘で、確かにお金を出して他人から臓器を提供してもらうと言う点で共通点があり、また奨励金と言う言葉からしてもお金を出すことで提供を促すと言う意図が明らかに思えます。
ご存知のように日本では臓器の移植に関する法律により臓器を売買することは禁止されていますが、一方で臓器提供に関する費用に関しては一切ドナー側に負担をかけないと言うシステムになっていて、要するに1日2万円と言う金銭授受が必要経費支給の範疇であれば既存制度の範囲内であろうし、それを超えて報酬と言う側面を持っているのであれば法律違反に問われかねないと言うことでしょうか。
一方で骨髄移植がドナーにも大きな負担を与えるのは事実なのだから、この程度の金銭支給は別に構わないのではないかと言う意見も当然ながらあるのですが、身体的負担と言えばいずれ回復する骨髄よりも機能回復がない腎臓提供などの方が永続的な負担となりそうですから、公平性の観点からも判断が難しい部分はありそうですよね。

社会的に見ますと臓器売買と言う行為はお金を出して臓器を買うと言う部分が問題視されていて、要するに金銭によって臓器移植の公平性を左右されてはならないと言うことが大前提になっていると言えますが、この点では骨髄移植はまず適合性と言う客観的事実が先にあるわけですから、お金によって臓器を買うと言う行為は物理的に行いにくいと言う反証は成立しそうです。
一方で世界的に見ますとネットの普及などもあって、「○○の条件に適合する方には大金を出します」方式で様々な人材募集をかけているケースも実際報道されているわけですから、結局はドナーとレシピエントの直接的な関係をどこまで遮断できるかと言うことが最も重要になってくるのでしょう。
その点で日本などは骨髄バンク制度が調えられ手堅い運用がなされていると考えてよさそうですが、逆説的に言えば公平性が担保されるなら必ずしも金銭提供自体は否定されないと言うことであれば、今後各種臓器の不足感に応じて実質的報酬を支給してもいいのではと言う議論もあり得るのでしょうし、そうでもしなければ国際的批判も高まってきている「移植ツーリズム」の解消など出来ないのかも知れません。

|

« 避けられたかどうか微妙な事故 | トップページ | 高齢者地方移住と受け入れ自治体の損得 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

生体移植の場合全くの無報酬っているんですかね?

投稿: ぽん太 | 2016年1月 7日 (木) 08時24分

夫婦や家族内での生体移植は普通に行われていますし、以前に政治家の親子間での移植が話題になったと記憶していますが、将来的な資産等の継承を暗黙の前提としているのだと言う捉え方も出来ますね。

投稿: 管理人nobu | 2016年1月 7日 (木) 12時00分

献血で図書カードを配るのが廃止になった経緯を考えると、骨髄ドナーの奨励金も同じような流れで中止になりそうな予感がします。

投稿: クマ | 2016年1月 7日 (木) 13時42分

つうかお金で臓器買うのとお金で薬買うのとどう違うっての

投稿: | 2016年1月 7日 (木) 14時24分

借金のカタに 薬袋持ってかれたって、どってことないでしょ?

投稿: | 2016年1月 7日 (木) 16時46分

いや場合によっちゃ死ぬでしょ

投稿: | 2016年1月 7日 (木) 17時21分

発作が出ている時にニトロ取り上げるとかならね
でも上の疑問の本質から論旨がズレてない?

大体の薬は 金で買える
まず臓器は カネで買えない

こう書けば 納得かな。

投稿: | 2016年1月 8日 (金) 07時03分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/63010541

この記事へのトラックバック一覧です: 骨髄ドナーには報奨金と言う制度の広がりが問いかける問題:

« 避けられたかどうか微妙な事故 | トップページ | 高齢者地方移住と受け入れ自治体の損得 »