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2015年12月18日 (金)

著名人の死の報道に関連して

最近では著名人が自ら病気などデリケートな情報を公開することが決して珍しくないですが、先日こんな悲しい告白が出ていたことを紹介してみましょう。

亡くなった松来未祐さんの病名公表「早期発見を」(2015年12月15日日刊スポーツ)

 10月27日に亡くなった声優松来未祐(まつき・みゆ、本名松木美愛子=まつき・みえこ)さん(享年38)が所属した声優事務所81プロデュースが15日、松来さんの死因が悪性リンパ腫だったとブログ「松来未祐日記」で公表した。松来さんは肺炎で入院後、「慢性活動性EBウイルス感染症」という病にかかっていたことが判明し、最終的な死因が悪性リンパ腫だったという。前日14日の四十九日法要を終えた上で、「同じ病気の1人でも多くの人が、早期発見により助かって欲しいので、病名を公表したい」という遺族の意向で、病名を公表したという。

 「7月14日の投稿にあるように、体調不良が続き検査を重ねていましたが、原因がわからないまま、6月30日に急性肺炎で緊急入院をすることとなりました。精密検査の結果、『慢性活動性EBウイルス感染症』という非常に症例が少なく、難病指定もされていない難しい病気であることが判明し、そこから松来未祐の闘病生活が始まりました。9月4日には奇跡的に一時退院が認められましたが、9月18日再入院。10月27日午後10時18分永眠いたしました。最終的な死因は『悪性リンパ腫』でした。私どもスタッフから見ても、辛い治療にもいつも前向きに立ち向かっていて、必ず完治して復帰できると信じておりました。本人も、いつか手記を出して同じ病気に苦しむ人の支えになりたいと考えていました。今回の公表を機に、より多くの方に『慢性活動性EBウイルス感染症』という病気を知っていただき、早期発見と治療法の進展に繋がることを願っております。改めて、松来未祐を支えてくださった全ての方々に、スタッフ一同、心より感謝申し上げます」(原文まま)
(略)

お若くしてお亡くなりになったご本人、それを看取ったご家族ともにさぞ無念であったでしょうが、この慢性活動性EBウイルス感染症と言う聞き慣れない病気、若い人に多い伝染性単核球症と同じEBウイルスが原因であることはその名前からも明らかなのですが、ただ一過性で治る伝染性単核球症と違って類似の症状が延々と続く、そして白血病や悪性リンパ腫など各種疾患が合併してくると言う大変に厄介な病気です。
一般的にEBウイルスなどヘルペスウイルスの仲間は昔からよく効く抗ウイルス薬があると言うことでどちらかと言えば軽く見られがちですが、この病気に関しては名前に反して感染そのものが問題なのではなく感染によって変質した細胞の異常増殖が問題であると言うことで、残念ながら抗ウイルス薬などはあまり効果が無く悪性リンパ腫などと同様の抗癌剤治療が必要となるようです。
残念ながら松来さんもこうした悪い経過を辿ってしまったと言うことなのですが、いずれにせよ診断をつけなければ治療をはじめることも出来ないのは当然ですし、放置すれば確実に死に至る難病なのですから頑張って治療を受けるしかないだろうと考える人が多いのだと思うのですが、最近たびたび話題になっているのが同じく難病であったことを告白されているこちらの方のケースですよね。

鎧塚俊彦さん、川島なお美さんの“民間療法”めぐる議論にコメント「今でも結論はみいだせない」(2015年12月15日トレンドニュース)

今年9月24日に胆管がんで亡くなった女優・川島なお美さんが受けていたという民間療法について、夫のパティシエ・鎧塚俊彦さんが本音を明かした。]

川島さんは闘病生活の中で、抗がん剤などによる治療ではなく、「電磁波による邪気をとりのぞく」(2014年7月5日のブログより)といった民間療法を採用していたため、没後はネット上で「一般的な治療を受けたほうがよかったのではないか」といった声が上がり、議論が巻き起こっていた。

そういった意見に反応したのか、鎧塚さんは12月15日に「癌医療に関する様々なご意見ありがとうございます」とFacebookに投稿。「この度の女房の癌がかなり進行している状況において様々な医師を訪ね歩いた中で両極端な医師の見解について・・ とある大病院の医師による『どうみても負け戦です。後はどう敗戦処理を考えるかだけです。』という人情味の全くない冷たい見解の医師 ある民間医療の『必ず治りますから希望をもって諦めずに治癒をしましょう』と言って高額な治療を勧めてくる一見人間味溢れる医師」と明かした。

鎧塚さんは「藁をもすがる患者とその旦那にとってどちらが名医でどちらが薮医者だったのでしょうか?私には今となっても結論はみいだせません」とつづった。また「自分自身が選択し納得して進めた治療が正解であり、そこに心をもって寄り添ってくれた医師こそが名医なのでは?と思います」というファンのコメントに、鎧塚さんは「本当にその通りだと思います」と返している。

この川島さんに関しては以前にも紹介したところですが、これも一連の治療経過に関してはかなり詳細に公表されていて、久しく治療を拒否され転々とあちらこちらの医療機関を渡り歩き、最終的に怪しげな民間療法に関わっていたと言う経緯が各方面から賛否両論あったところなのですが、やはり本人としては納得できるかどうかと言うことに非常にこだわられていたようですね。
胆管癌という病気の性質上いわゆる標準治療によって望ましい結果が必ずしも得られると言うものではないでしょうし、その意味でこの場合に関して言えばご本人、ご家族がそれを希望されたと言うことであれば民間療法だろうが代替医療だろうが満足いくやり方でやったらいいじゃないかと言う考え方もあると思いますし、「あの人も最後は怪しげなものにはまったか」と必ずしも評判はよくないと言うのも理解出来るところです。
ただご本人のコメントを見ても現場で対応した先生方の苦労も察せられるところではあって、やはり「どうみても負け戦」であるにも関わらず自分なりの信念は一歩たりとも譲るつもりはないと言う著名人の治療に望んで関わりたい医療従事者はどれだけいるだろうかと言うことを考えると、結果的には当事者双方にとって良かったとは言えるのかも知れませんね。
寄り添うと言う言葉はしばしば医療や介護の領域で便利使いされるものではありますが、本来一方の当事者だけが寄り添おうと努力しても他方が明後日の方向に走っていくのではいつまでたっても寄り添えるはずはない道理で、名医と言うものは医師だけがそうあるべく努力しても名医たり得ないのではないかと感じさせるエピソードではあったかと思います。

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コメント

これが話題のガン難民か

投稿: | 2015年12月18日 (金) 08時10分

ご本人が納得できているなら周囲があれこれいうことでもないかと。
ご冥福を祈ります。

投稿: ぽん太 | 2015年12月18日 (金) 09時18分

日常診療においてもしばしば遭遇する状況だけに、議論を通じて理解が深まるのはいいことだと思いますし、経過を公表いただいた意義があったと考えます。

投稿: 管理人nobu | 2015年12月18日 (金) 11時17分

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