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2015年12月 1日 (火)

社会保障費は減らすが医療介護の人員は増やすとどうなるか

すでに財務省の諮問機関である財政審から社会保障費の増加を5000億円までに圧縮すべきと言う話が出ていて、先日の記者会見では麻生大臣その人からも5000億円と言う数字が念押しされたと報じられていましたが、その一環として薬価関連以外にも診療報酬のいわゆる本体部分も含めてマイナス改定が既定路線であるだとか、様々なニュースが連日報じられています。
はるか以前から財政再建が急務であると言われながら各方面への点数稼ぎめいたばら撒きで一向にそれが進まない中で、何であれ聖域を作らず支出抑制を図ると言うことはそれはそれで重要かつ緊急の課題ですし、総体としての金額の多い少ないだけでなくその中身にも目を向けての議論をするべき時だとは思いますが、その一方でこんなニュースが出ていると言うことにも注目しておきたいですよね。

政府、介護と保育の受け皿拡充 総活躍の緊急対策決定(2015年11月26日47ニュース)

 政府は26日、「1億総活躍社会」に関して閣僚や有識者による「国民会議」(議長・安倍晋三首相)を官邸で開き、緊急対策を決定した。家族の介護を理由とする離職をなくすため、2020年代初頭までに特別養護老人ホームなどの介護サービスを50万人分増やすと明記。待機児童解消に向けた保育の受け皿50万人分と合わせ、計100万人分の整備を掲げた。

 20年ごろに「名目国内総生産(GDP)600兆円」を目指し、最低賃金引き上げや低年金者への給付金も盛り込んだ

 首相は会議で「内閣の総力を挙げて直ちに実行に移していく」と強調した。

「介護離職ゼロ」へ処遇改善に努力(2015年11月29日NHK)

NHKの「日曜討論」で、加藤一億総活躍担当大臣は、安倍総理大臣の掲げる「介護離職ゼロ」に関連し、介護施設の人手不足の解消に向けて、実態を調査するなどして処遇の改善に努める考えを示しました。
この中で加藤一億総活躍担当大臣は、一億総活躍社会について、「社会保障や子育て支援がしっかり行われることによって将来の展望が見え、消費や投資を拡大していく。成長と分配の新しい循環をしっかり作っていこうというものだ」と述べました。そして、加藤大臣は、安倍総理大臣の掲げる「介護離職ゼロ」に関連し、「介護現場の職員がいなくなり、サービスが十分提供できなくなれば、結果的に自分でやらざるをえない。そういう意味で、介護の現場で働いている方々の処遇改善も必要だ」と述べました。
そのうえで加藤大臣は、「介護報酬改定で賃金を月額で1万2000円上げるような制度も作っており、どこまで実行されているか調査する」と述べ、介護施設の人手不足の解消に向けて、実態を調査するなどして処遇の改善に努める考えを示しました。また、加藤大臣は、「希望出生率1.8」に向けた保育の受け皿作りに関連して、「小学校の先生や幼稚園の先生ですでに辞めている方など、ある程度ノウハウを持っている方にも支援していただくことを考えていきたい」と述べました。

一昔前に盛んに言われた医療主導の経済成長戦略などと言うものは今さら誰も本気にしていないでしょうが、社会的需要を考えてもまだまだ当分は医療・介護領域は国内諸産業の中でもトップクラスの成長が見込める有望株であって、失業率が低下しているとは言えまだまだ不景気からの脱出が捗っていない日本としては本来なら有望な雇用先として守り育てていくべき業界であると思えますよね。
実際に国としてもこうして更なる人材の集積を進めていきたいと言う考えを持っている以上、今まで以上に医療・介護で働く人を増やしていくと言うことだと理解出来ますが、一方で医療・介護領域と言えば基本的に全国一律の公定価格で運営されていて、しかもその総支出額に関してはこれ以上の増加はまかりならん、むしろどんどん減らすべきだと言い出しかねないのもこれまた報じられている通りです。
さてそうなると労働者はどんどん増えていくのに業界としての収入は抑制されるとなれば、ひとり当たりの稼ぎや収入は今後どんどん減っていくだろうと言うのは小学生でも判りそうな計算なんですが、その点で先日日医会長が国を挙げて労働者の賃金上昇をと叫んでいる中で「医療従事者だけ賃金上昇が無い、低賃金でやりなさいということになりかねない」と発言していると言うのは、事実関係に関して言えば全く正しそうだと思えてくる話です。

そもそも介護などは今でさえ重労働、安月給でどんどん離職者が出ていて、どんなに仕事がなくても介護だけはやりたくないと言う人が続出しているだとか、学校の教科書にすら介護は重労働で低賃金だと書かれているだとか様々な伝説があるわけですが、社会保障費は削減する一方で人は増やし給料も上げますと言うからには、どこからかそのお金を作り出してこないわけにはいかない理屈ですよね。
この点で医療における混合診療導入の是非などが昨今盛んに議論されているのも非常に示唆的だと思うのですが、要するに公定価格以外の部分で現場が勝手に儲ける分には別に公的支出は増えないし、利用者から最近料金が値上がりしたと各施設にクレームが入れられることはあっても国が文句を言われることはないと言う計算もあるのかも知れません。
もちろん医療業界内にも無駄は幾らでもあって、例えば例のマイナンバー導入に伴い地域内の医療機関で患者の医療情報を共有しようと言う話もあって、これなどは病院が変わるごとに何度も同じ検査をする無駄や治療の重複などが避けられるアイデアだと思いますけれども、これらも当然導入には相応の初期コストがかかるだけに、誰のお金でそれをやるかと言うことも今後紛糾しそうな話ですよね。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

儲からないことはやめろってことですかね。
これからは収入額より利益率優先みたいな?

投稿: ぽん太 | 2015年12月 1日 (火) 08時06分

どこかに書かれていたことの受け売りですが、
介護離職ゼロより先に「介護職離職抑制」が先でしょう。

投稿: 嫌われくん | 2015年12月 1日 (火) 08時40分

国策として今後医療においてもコスパ追求は求められてくることになりますが、実臨床との整合性を誰がどうはかっていくのかが最大の課題になりそうです。

投稿: 管理人nobu | 2015年12月 1日 (火) 11時06分

そのうち、「高齢者を東南アジアに移住させる」という国家による詐欺が始まるんじゃないか。

日本は余った国民を南米や満州といった海外に甘い言葉で送り出してから切り捨てるというの
をやってきたからね。

投稿: | 2015年12月 1日 (火) 21時52分

 安倍の株高演出のための円安誘導で「下(南)の国で老後」の破たんがアカラサマ。これから行くのはほんとの富裕層か情弱。
 棄民政策は、まず千葉栃木埼玉から東北山陰あたりに流し込んで、がうまくゆくかどうか試されると思う。  

投稿: | 2015年12月 2日 (水) 10時25分

東南アジアに脱出した金持ちが日本に逃げ帰る原因って医療なんだけどなあ。

投稿: | 2015年12月 3日 (木) 11時16分

言葉やコミュニティの問題がなければ移民も理屈の上では合理的な部分もありますので、現地で固まって日本人村なりを形成するようになればまた違ってくるのかも知れません。
もっともそうなると現地社会との間にまた別のトラブルが頻発する可能性もありますし、そもそも今後そこまで移民希望者が出そうにはないのですが、

投稿: 管理人nobu | 2015年12月 3日 (木) 12時18分

棄民政策でうまい汁を吸うのが金持ち。貧乏人はお上の言葉を信じて馬鹿を見る。

介護が充実し寒くないから高血圧や心疾患のある高齢者にも最適という触れ込みで
移住プログラムが出たら疑うべきだね。

投稿: | 2015年12月 3日 (木) 23時26分

平成9年に介護保険が国会に上がったとき、当時の厚生労働省幹部は言ったもんだ。日本医師会に左右されない新たな高齢者保険法を作るって。当時、60歳定年間近の公務員介護職は年収600万円などという人もいた。500万円は当たり前だった。その人件費を減らすために、新たな高齢者保険法・介護保険法を作った。介護保険法の前の措置の時代、公務員であった介護職員は、定年まで働き、中途離職するなんて話は、聞かなかった。今、介護保険の報酬の中で、介護職員処遇改善加算がある。これは結構な話である。なぜなら、介護職員処遇改善加算は、社会福祉法人の貯金や経営者の手には渡らない仕組みになっているからだ。全額、介護職員に渡すようになっているのだ。特養の収支差額(経常利益)は、20%にも上る。100人定員の特養なら、約8000万円が貯金になる。老人介護だけの儲け社福には、一般企業並みの法人税をかけるべきだ。また、今年は改定がないけど、今後しばらくは、介護職員処遇改善加算分のみを報酬アップすれば、介護職員の給料アップができるが、社福の貯金はそれほど膨らまないという構造ができる。

投稿: 医事課長 | 2015年12月 4日 (金) 14時53分

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