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2015年12月 8日 (火)

公務員医師が収賄で逮捕

年末になるとお歳暮贈答の季節でもあって、大きな病院には普段からお付き合いのある近隣開業医の先生から色々な品物が届けられると言うことは珍しくないものですけれども、しかし病院医局宛にビール詰め合わせを送ってこられると誰がいつどのように消費すべきなのか迷うだとか、高級なのだけれども日持ちのしない生菓子の類を送られると困るだとか、時に需要と供給のミスマッチを感じることがありますよね。
逆に安上がりで一般にはとてもお歳暮には使われないような品でも段ボール一杯のカップラーメンなどが送られてくると妙に人気だったりしておもしろいものだと思うのですが、送った見返りに贈られたとも言うべきこんなニュースが出ていたのを御覧になったでしょうか。

共済組合運営の病院の医師を収賄容疑で逮捕(2015年12月2日NHK)

名古屋市にある国家公務員の共済組合が運営する病院の医師が、人工透析を行う病院などを実質的に経営する医師に透析の患者を紹介し、その見返りに現金およそ60万円の賄賂を受け取っていたとして、愛知県警察本部は医師2人をそれぞれ収賄と贈賄の疑いで逮捕しました。
収賄の疑いで逮捕されたのは名古屋市中区にある名城病院の医師、赤澤貴洋容疑者(41)です。贈賄の疑いで逮捕されたのは愛知県内で人工透析を行う病院などを実質的に経営している医師の多和田英夫容疑者(64)です。
警察によりますと、赤澤医師は、多和田医師側に透析の患者8人を紹介した見返りに、ことし2月から10月にかけて5回にわたって現金合わせておよそ60万円の振り込みを受けたとして、収賄の疑いが持たれています。赤澤医師が勤務する名城病院は、国家公務員共済組合連合会が運営していることから職員は公務員とみなされ、仕事に関連して賄賂を受け取ると罪に問われます。警察によりますと、2人は「間違いありません」と容疑を認める供述をしているということです。警察は2人の間で現金のやり取りが行われるようになったいきさつについて調べを進めています。
医師が逮捕されたことについて名城病院は「極めて遺憾であり、おわび申し上げます。今後は警察の捜査に全面的に協力していきます」とコメントしています。

名城病院贈収賄 患者紹介「11年前から」(2015年12月04日読売新聞)

 名城病院(名古屋市中区)の人工透析患者の紹介を巡る贈収賄事件で、愛知県警に収賄容疑で逮捕された同病院腎・糖尿病内科医長の赤沢貴洋きよひろ容疑者(41)が「(贈賄側の医療法人実質的経営者と)11年前に知り合い、その頃から患者を紹介していた」と供述していることが3日、捜査関係者への取材で分かった。県警は、当時から紹介料の授受があった可能性があるとみて調べている。

 赤沢容疑者は、贈賄容疑で逮捕された医療法人「光寿会」(名古屋市西区)の実質的経営者、多和田英夫容疑者(64)に、県内の透析患者計8人を紹介した見返りに、今年2~10月、計約60万円を受け取ったとして2日、逮捕された。

 捜査関係者によると、2人は2004年1月に知り合い、赤沢容疑者は、翌05年夏から、光寿会傘下の診療所で人工透析治療のアルバイトを始めたという。赤沢容疑者は「アルバイトを始める前から(多和田容疑者に)患者を紹介していた」と説明しているといい、県警は、赤沢容疑者が04年頃から紹介料を受け取っていた可能性もあるとみて銀行口座などを調べている。

 また赤沢容疑者は、多和田容疑者から患者1人に付き10万円の紹介料を受け取っていたことも判明。光寿会傘下の診療所でのアルバイトは月数回で、紹介料は、正規のアルバイト代に上乗せする形で口座に振り込まれていたという。

 一方、専門家によると、人工透析患者は週3日程度、1回あたり4~5時間の治療を受けなければならず、転院する場合は患者の住居近くなど、利便性の高い医療機関を紹介するのが一般的という。名城病院では、合併症を併発するなどした重症の人工透析患者の治療を赤沢容疑者を含め、4人の医師が担当。症状が比較的軽くなった場合、複数の医療機関を転院先として紹介していた。県警は、赤沢容疑者が紹介料欲しさに、光寿会傘下の病院や診療所を優先的に紹介していたとみて、診療記録などを調べている。

 県警は3日、赤沢、多和田両容疑者を名古屋地検に送検するとともに、名城病院を捜索。カルテや転院先への紹介状など、関係資料を押収した。

個人的には存じ上げなかったのですがこの赤沢先生、医療以外にも割と多芸で有名であった方だそうで各方面から逮捕を惜しむ声も出ているようなのですが、公立病院の勤務医が患者紹介の見返りとして私的にお金を受け取っていたと言えば収賄で逮捕されても仕方がないですけれども、実際問題として普段から逆紹介等でつながりのあるクリニックから季節の贈答品が届くと言うことは全く珍しくはないわけです。
刑法197条によれば「公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する」と規定されていますが、ここで注目すべきなのは金額の多寡や贈り物の内容に関する規定がどこにもなく、ただ単に「その職務に関し」と言う一文があるだけだと言う点で、その観点からすると患者を逆紹介してお歳暮を贈られても収賄になるのかですよね。
一般的には社会常識的に許容される範囲の贈り物であるかどうかと、それに対する見返りとして特別な便宜を図っているかどうか等も勘案されるそうなのですが、判例によれば個別指導をしてくれた教員に1万円程度の金券を贈った場合賄賂とはされなかったそうで、これが例えばその結果点数をかさ上げするだとか出題を教えるとなれば賄賂と言われていたのでしょうか。

公務員とは言え紹介、逆紹介でいくらでも個別の関係が発生する以上、どこからを癒着として捉えるべきか難しいのですが、転院先探しなどは地域性や利便性、あるいは先方の専門性など総合的に判断して機械的に決められればいいのでしょうが、そこはアナログの世界だけに医師に限らず必ずどこかで誰かの主観が入るのは避けられないし、近年では福祉事務所を舞台にした患者囲い込みなども話題になっていますよね。
そもそも公務員たるもの、何であれ個人として特定の相手から金品を受け取るべきではないと言う意見も判るのですが、送りつけられてきたお歳暮を送り返すと言うのもまあ大人げない行為なのでしょうし、この場合贈る側に個人宛ではなく組織宛にするなど相応の配慮を求めたいところでしょう。
しかしこうした記事を見ていつも疑問に感じるのが患者からの付け届けは贈収賄に相当しないのか?と言う点なのですが、医療の場合敢えて下手な治療をする医師もいなければ特別よい医療を提供出来るわけでもないと言うことが社会的にも認知されていると受け止めておくべきなのでしょうか、まあ院内の掲示も単に「当院では付け届けはお断りしており」云々と書くより「即座に贈賄で通報します」と書いておいた方が効きそうではありますかね。

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コメント

これは公務員じゃなけりゃ問題じゃなかったってこと?

投稿: | 2015年12月 8日 (火) 07時53分

患者さんからの付け届けは現金、現物にかかわらずお返ししますね。もらって良いことなんて何もない。
むしろそういう金品を送ろうとする患者さんやそのご家族に問題があることが多いので、後々面倒なことになります。
年賀状くらいなら素直に受け取りますけれども。

1回何度断っても押しつけてくるご家族に
「こちらで住所は把握しておりますので現金書留で送り返すだけですが、私にそうしろということですか?」
と言ったら渋々引き下がられました。

投稿: クマ | 2015年12月 8日 (火) 09時16分

いっそアメリカ式にドクターフィーにしたらどう?
公明正大な対応してんなら隠れてもらう必要ないじゃないw

投稿: てっちゃん | 2015年12月 8日 (火) 09時50分

業者からブランドバックを受け取って収賄になったお医者さんのニュースありませんでしたっけ
あれは公務員でしたか?

投稿: | 2015年12月 8日 (火) 11時18分

一般的に贈収賄は公務員にのみ認定される犯罪と言う扱いですが、民間企業でも倫理的に外れた行為であれば社内処罰の対象にはなるかと思います。
ただ今回の場合どのレベルから処罰すべきなのかと言う線引きは非常に難しそうには思いますね。

投稿: 管理人nobu | 2015年12月 8日 (火) 12時48分

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