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2015年12月 2日 (水)

リスクが判っていれば対策を…とは通常なら推奨されることなのですが

近年様々な不妊医療の進歩とも絡めて、いわゆる高齢出産と言うものが増えてきた一方でその弊害も様々にあると言うことが次第に知られるようになりましたが、高齢出産に限らず出産においては一定程度の確率で何かしら産まれもってのトラブルがあることが知られていて、しかも今や出生前診断の進歩でこうした異常がかなりのところまで調べられるようになってきているのは周知の通りですよね。
こうした手段の進歩に伴い検査を受けるべきかどうかと言うことももちろん一つの決断を要することなのですが、それ以上に検査で異常が見つかった場合どうすべきなのかと言う議論もあって、例の新出生前診断が始まってから1年間で最終的に追加検査で異常が確定した妊婦のうち、実に97%が妊娠中絶を選択したと言うデータがあります。
もちろん何があっても中絶しないと言う考えの人は最初からこうした検査を受けないだろうと言うバイアスもあるはずですから、これが直ちに「子供の産み分けケシカラン!」「障害者差別はやめろ!」と言った議論の行方を左右するデータとも思えませんが、やはり知れるものであれば知っておきたいし予め対策も講じたいと考えるのは何であれ人情と言うことなのでしょう、先日こんな事件があったと報じられています。

「障害わかれば」発言、県教育委員が辞職…茨城(2015年11月24日読売新聞)

 茨城県教育委員の長谷川智恵子氏(71)が県の会合で「妊娠初期に(障害の有無が)もっとわかるようにできないか。4か月以降になるとおろせない」などと発言した問題で、24日、臨時教育委員会が県庁で開かれ、全会一致で長谷川氏の辞職に同意した。

 長谷川氏は同日付で正式に辞職することになった。

 委員会は非公開で行われた。小野寺俊教育長は委員会後、報道陣に対し「改めて、教育委員としての職責の重さ、発言の与える影響力の大きさについて再認識していただきながら、委員会活動の更なる充実に向け取り組んでいただきたいと話した」と述べた。また、県内の特別支援学校で教室が不足している状況を解消するため、新校の設置などを進める考えを改めて示した。

 長谷川氏は18日、県庁で行われた県総合教育会議に出席。橋本知事が会議終了間際に自由な意見を求めた際、県内の特別支援学校を視察したことに触れ、「(学校では)ものすごい人数の方が従事しているし、県としても大変な予算だろうと思った。生まれてきてからじゃ本当に大変ですね。一生がありますから。小中高の間は預けられるけれど、その後は親、きょうだいが見ることになる」などと発言した。長谷川氏は19日に発言を撤回して謝罪し、20日に知事らに辞意を伝えていた。

 県教委によると、24日夕方までに、意見の電話やメールなどが計838件寄せられたほか、「辞職すれば許される問題ではない」などとして、抗議文を提出する団体もあった

報じられている発言を見る限りでは少なくとも事実関係から外れたことは言っていないように聞こえますし、実際にこうした意見を持っている方々は決して少なくないのでしょう、当初は知事も問題ないと言っていたようなのですが、一部の方々にとっては極めて許し難い発言であるように受け止められているようで、結局は短期間で辞職にまで追い込まれたと言うことになっています。
もちろん教育委員会の委員としてコストがかかるから少しでも安くあげられるように原因対策が出来ないか、とも受け取られるような発言が妥当なのかどうかと言う点もあるのですが、どうも世間の反応を見るとそうした観点からと言うよりも単純に許せない、考え方が間違っていると言う声の方があるようで、出生前診断や妊娠中絶の是非とも絡めて論じる方もいらっしゃるようですね。
この辺りは例によって何が正解と言うことはなく、人それぞれの考え方がある問題なのだと思いますが、ちょうどそんな議論が盛り上がっている絶妙のタイミングで、以前から産科領域で先鋭的な活動を続けられてきたあの先生がこんな発表をしたと言うのですから、それは話題にもなりますよね。

異常ある胎児「減胎手術」57例 医師発表(2015年11月26日日テレニュース)

 長野県の産婦人科の医師が複数の胎児を妊娠した際、異常のある胎児を選んで中絶する「減胎手術」を57例行っていたことを明らかにした。

 「減胎手術」は、通常、複数の胎児を妊娠した際に出産の危険があるなどやむを得ない場合に行われているが、法律で規定はなく、厚生労働省の審議会は、遺伝子診断などで減胎する胎児の選別を行ってはならないとしている。

 しかし、26日開かれた日本受精着床学会で、長野県下諏訪町の諏訪マタニティークリニックの根津医師は、これまでに1130人に対して減胎手術を行い、このうち、57人については染色体の異常などが分かった胎児を選んで中絶したと発表した。

 また、根津医師は、検査で胎児の染色体異常が分かり、減胎手術を求めるケースが相次いでいると話し、法整備を行った上で減胎手術を安全に行える環境を整えてほしいと訴えた。

これまた多胎妊娠がリスクを増すと言うことは純然たる医学的な事実であるのだろうし、明らかにリスクを増す状態に対して予防的に処置を行っていくと言うことは医学の世界では日常的に行われているわけですから、同様の考え方であればこれも合理的な判断であるとは言えると思うのですが、それでは合理性があれば際限なく行ってよいのかと言われるとなかなか判断の難しい問題ですよね。
高齢妊娠などでは先天異常の増加リスクに対して、もともと妊娠、出産の確率が低い状況での妊娠であることが中絶と言う選択枝に対するいわば抑制力となっているとも言えると思いますが、仮に多胎妊娠で胎児を選別できると言うことになればこうした心理的敷居はかなり下がってくる可能性もあるのかも知れずですし、体外受精で多数の受精卵をまず母体内に戻しておいて選別していく方が合理的だと言う考え方も出てくるかも知れません。
今のところ妊娠確率にさしたる差がないだとか多胎妊娠のリスクといった諸点を考慮して通常受精卵は一つだけ戻すと言うことなのですが、技術的な進歩に伴い胎児の選別が安全確実に行える状況になってくれば技術的な障壁は低くなるわけですし、自然に多胎妊娠することも当然あるのですから、やむを得ない場合にたまたま特定の条件を備えた胎児が選んだかのように中絶されていくと言う状況が今後、次第に増えていくことになるのでしょうか。

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コメント

赤の他人の一生の問題にまで口出ししたがる人間の心境ってわかんないわ

投稿: | 2015年12月 2日 (水) 07時48分

自覚のないやつがいるな。

投稿: | 2015年12月 2日 (水) 10時17分

根津先生などはご専門だと思いますが、技術的進歩に法的・社会的規制は必ずしも追いついてこないので、当事者同士が合意し行う行為を実際どう規制するかと言う方法論は案外難しいものがありますね。

投稿: 管理人nobu | 2015年12月 2日 (水) 12時22分

中絶ケシカランという人が自分が育てますってんならわかるんだけど

投稿: | 2015年12月 2日 (水) 14時27分

産めよ増やせよって言ってもこんな抵抗勢力ばっかな世の中じゃあね。。

投稿: ガマさん | 2015年12月 3日 (木) 08時11分

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