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2015年12月15日 (火)

フィンランドが社会福祉をベーシックインカムに一本化?

日本でも社会保障制度の改革が叫ばれてすでに久しく、特に年々増え続ける生活保護受給者対策と言うものが喫緊の課題とされていますけれども、先日北欧はフィンランドでこんな大胆な社会保障制度改革案が出たと話題になっています。

フィンランド、国民全員に800ユーロ(約11万円)のベーシックインカムを支給へ(2015年12月7日ビジネスニュースライン)

フィンランドが国民全員に非課税で1カ月800ユーロ(約11万円)のベーシックインカムを支給する方向で最終調整作業に入ったことが判った。

ベーシックインカム支給に要する総予算は522億ユーロ(約7兆円)にも及ぶこととなるが、ベーシックインカム支給と共に、政府による他の全ての社会福祉支給が停止となる予定ともなっており、政府は複雑化した社会福祉制度をベーシックインカムに一本化することにより、間接的な費用の支出を抑えることもできることとなる。

最近行われた世論調査ではフィンランド国民全体の約69%が導入に賛成の意見表明を行っており、現状のままで世論動向が推移した場合には、フィンランドは世界で初めて、ベーシックインカム制度を導入する国家となることとなる。

ベーシックインカムの導入の最終決定は2016年11月までに行われることとなる見通し。

西欧諸国の間では、オランダもベーシックインカム制度導入のための試験制度を来年から導入することを既に、決定している。

国民の7割が賛成、フィンランドがベーシックインカム検討の背景 海外は実現に厳しい見方(2015年12月10日ニューススフィア)

 貧富を問わず住民に一定の金額を毎月支給するという「ベーシックインカム」制度の実現の可能性を探るため、フィンランドが大規模なパイロットプロジェクトを実施すると発表した。世界のメディアが大きく報じたが、制度実現には大きなハードルがあると辛口の意見も出ている。

◆今すぐ導入ではない
 発表を受け、日本も含めた多くのメディアが「フィンランドが国民全員に800ユーロ(約11万円)を支給予定」などの見出しをつけ、あたかも同国がベーシックインカム制度を導入するかのように報じたが、ウェブ誌『Vox』によれば、ベーシックインカムのための提言の考察がされているだけで、「全員支給」にまでは全然たどり着いていないらしい。フィンランド社会保険庁事務所(KELA)のディレクター、Olli Kangas氏は、これから行われるのは国民の一部が参加するパイロットプログラムであり、メディアが報じた800ユーロという数字も、単なる一例だと述べている(Vox)。
 Kangas氏は複数のモデルをテストしたいとしており、ほとんどの社会保障給付を置き換えるフル・ベーシックインカム、既存の社会保障給付の多くを継続したままにする部分ベーシックインカム、所得が増えると給付が減るネガティブ・インカム・タックス、既存の給付を一つに統合し、社会貢献をした際に追加の給付をするようなその他のアプローチなどを考えているという。同氏はさらに、実験は国と地域の二つのレベルで行いたいとしている。特に地域全体にベーシックインカムを与えた場合、コミュニティ全体への影響が測れるため、収入が保証されたことで、地域にプラスの循環が生み出されるかどうかを見極めたいとしている。包括的という点で、フィンランドの実験はこれまでのものよりかなり先を行く試みだとVoxは評価している。

◆実はフィンランドの経済状態は悪かった
 フィンランドの構想の背景には、厳しい国内事情があるといくつかのメディアは指摘している。ワシントン・ポスト紙(WP)に執筆したジャーナリストのリック・ノアック氏は、経済協力開発機構(OECD)の調査に言及し、格差の増大で、経済成長の機会を最も逃している国の一つにフィンランドが数えられていると述べる。北欧の高福祉で豊かな国のイメージがあるが、近年はそれが揺らいでいるようだ。ウェブ誌『Mashable』によれば、同国の失業率は約10%で、3年に及ぶ不景気から這い出すのに必死だという。政府は不景気が終わっても成長の速度は遅いと予測しており、先の暗い見通しのために、約70%の国民がベーシックインカムに賛成しているとしている。
 ベーシックインカムの最大の問題点は財源だ。Mashableによれば、月800ユーロを成人だけに給付するとしても、年間470億ユーロ(約6.3兆円)が必要となるが、2016年のフィンランド政府の歳入は、ほぼ同額の491億ユーロ(約6.6兆円)と予測されている。ただでさえ緊縮財政と予算カットで財政的余裕はない同国にとっては、財源確保は増税に頼ることになる、と同誌は述べている。
 さらにフィンランドはEUの中でも最も高齢化が進んでおり、これが経済をさらに悪化させる要因となりうる。労働人口は縮小し、生産性は低下。所得税を払う人も減るため、歳入も減ると見られており(Mashable)、ベーシックインカム実現への道は険しそうだ。

◆今はやっぱり現実的じゃない?
 英テレグラフ紙のアシスタント・エディター、ジェレミー・ワーナー氏は、ベーシックインカムはこれまで非現実的理想主義のコンセプトと片付けられており、様々な欠点があると指摘。失業者がベーシックインカムを手にすれば働かない、という負の効果よりも、パートタイムで働いてより収入を増やすというポジティブな効果が期待されているのかもしれないが、結局のところコストは増税と政府の支出削減に跳ね返ると説明する。また、ベーシックインカムを導入すれば、800ユーロがよい収入だと考えるEU諸国民に磁石を提供することになるとし、フィンランドにはすぐさま下層階級が押し寄せ、制度を支えられなくなるだろうとも述べている。同氏はロボットが人間の仕事を行い人が働く必要がない時代になれば、ベーシックインカムの出番ではないかと述べ、当面実現の可能性は薄いと見ているようだ。
 Voxによれば、フィンランドでの実験は、2017年に開始され、2年間続くとのこと。実験に対する評価は、2019年から徐々に明らかになる予定だという。

このニュースが世界中で大きく話題になった結果、記事にもあるようにフィンランド政府筋は「まだ何も決まっていない」と火消しに大わらわなのだそうですが、それにしても小さな国だからこそ行える大胆な政策と受け取るべきなのか、同じく小国であるオランダなどでも同様の話が出ていると言うのは興味深いですよね。
こうした背景にはもちろん日本の生保制度と同様各種の問題があったことは想像に難くないのですが、実際問題として考えると様々な条件付けに基づく社会福祉制度が複雑に絡み合った煩雑なシステムよりは、全国民一律に一定額を支給するシンプルな制度の方が事務手続きなどのコストはずいぶん削減出来そうですから、理屈の上では無駄も減らせると言うことはありそうには思います。
日本でも一時議論されたベーシックインカムと言うもの、現地では国民の側も大多数がこうした制度の導入に賛成だと言いますから必ずしも実現可能性がないわけではなさそうですが、実際に行うとなれば日本における生保問題などと同様それに安住して働かなくなる人間が増えるのではないかだとか、今現在進行形で話題になっている難民などが一気に押し寄せてくるのではないかと言った、様々な課題も出てくる気はします。
金額的には日本の生保制度と比べて低い印象で、この程度で生活していけるのか?と言うことは現地の状況を見ないと何とも言えませんが、財源的なことは差し置いても完全にそれだけで全てがまかなえてしまうのではかえって問題で、勤労意欲を維持出来る程度には抑制的な給付であるべきだと言う考え方もあるはずですが、心身の事情から働けない人に対して他の救済策を全廃していいものかと言った議論は当然あるはずですよね。

実際に制度がどうなるかはまだ結論が出ていませんし、地域を限定して試験的に行ってみて考えると言うあたりが当面の落としどころになりそうなのですが、興味深い話としてこの話と前後してフィンランド政府から新たな難民対策が発表されていて、報酬を与えずに労働をさせたり難民認定しなかった人らの送還手続きも早めるなど、一連の難民管理強化策が打ち出されてきたと言う点です。
もちろん今現在ヨーロッパ全域で難民対策が喫緊の課題になっていることを思えば全く不思議ではない話なのですが、深読みすればベーシックインカム云々を聞いて一気に難民が押し寄せてくると言うことに対して無報酬労働など冷水を浴びせる効果を期待してのことなのか?とも思えるところで、この辺りは社会保障全般を総合的に考えて慎重な改革を進めていると見ることも出来そうですよね。
日本のような大きな社会でいきなりこうしたことを行うとなれば大変ですし、今まで年金などを納めてきた人からは納付額に見合った給付が受けられなくなる等の不満も出そうなんですが、例えば消費税増税と合わせて低所得者に給付金を云々すると言うくらいであれば、いっそ生保制度と統合して部分的にでもベーシックインカム的なものに移行していくと言う考えは出てきてもおかしくないように感じます。
一部自治体なり特区なりでこうした制度を先行的、試験的に導入してその効果を見ると言うことが出来れば理想的なのですが、今のところ難民問題でさほど悩んでいない島国日本の場合は純粋に国内問題として対処可能な話であるとも言え、本来なら陸続きで人の移動も多い欧州などよりはよほどやりやすい環境ではあるのかも知れませんけれどもね。

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コメント

これ外国人にも出すの?

投稿: | 2015年12月15日 (火) 08時12分

1.2億人に毎月10万円出すとして年間144兆円?財源に無理がありそうだね

投稿: | 2015年12月15日 (火) 10時02分

民主党政権時代の提案も財源の目処が立たなかったと記憶していますが、給付を切り下げれば他の社会保障も併用せざるを得ず、単なるバラマキになる恐れもありそうです。

投稿: 管理人nobu | 2015年12月15日 (火) 12時41分

ベーシックインカムなんて古代ローマでもやってたでしょ。
現物支給すりゃいいんだよ。

投稿: | 2015年12月16日 (水) 10時35分

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