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2015年12月29日 (火)

予防接種後進国日本

少し前のニュースなのですが、本日まずはこういう記事が出ていたことを紹介しておきましょう。

風疹の免疫、20歳代女性の4割が不十分(2015年11月18日 読売新聞)

 昨年度、東京都内の女性を対象に実施した風疹の免疫検査で、20歳代で4割、30歳代で3割に十分な免疫がないことがわかった。

 都が、区市町村による無料の免疫検査の結果を集計した。風疹は妊娠初期に感染すると胎児に影響が出る可能性があり、都は検査を受けるよう呼びかけている。

 千代田区を除く全区市町村が昨年度、無料検査を実施。都の集計では、20歳代の女性5533人のうち2090人(38%)、30歳代では8252人のうち2209人(27%)で、風疹の免疫が不十分だった。

 風疹の定期予防接種は現在、小学校入学前に2回受けることになっている。しかし、今年度中に53~26歳となる女性は定期接種が1回で、十分な免疫がない可能性がある。また、制度変更に伴い、25~16歳は中高生時代に2回目の接種を受けることになっていたが、受けそびれたケースがあるとみられる。

 都福祉保健局の担当者は、「今年度もほぼ全ての自治体が無料検査を実施しているので、妊娠を希望する人は自分の免疫が十分かどうか、検査を受けてほしい」と話している。

風疹と言えば三日ばしかと言う別名もあるくらいで、あまり大したことのない病気のようにも受け取られているかも知れませんが、妊娠中に感染すると胎児に極めて深刻な影響を与える場合があると言うことで、妊娠する可能性のある若い女性にとってこの風疹予防接種の意味と言うものは自分自身よりも次世代に大きく関わってくるものになっています。
ただその重要性があまり理解されているとも言い難いことも問題で、当の本人は元より未成年者の接種に対して責任を持つべき親世代の教育も今ひとつである点が問題なのですが、技術的な観点から言うと弱毒生ワクチンですから妊娠中に接種することは出来ず、また接種後2ヶ月間は避妊をしなければならないと言う点で、もう一つ使い勝手がよろしくないとは言えるようです。
近年特に若年男性の風疹罹患率が非常に高まっていて、昭和54年から64年までの生まれで学童ワクチン接種を受けていない世代がそれに該当すると言いますが、当然ながらパートナーである若い女性に対する罹患リスクも高まるわけですから、男だから関係ないと言うわけにもいきませんよね。
ただこのワクチン問題、日本では昔から何故か副作用とセットで語られることが通例になっているのですが、先日医師でもあるジャーナリストの村中璃子がこんな記事を書いていることを紹介してみましょう。

「エビデンス弱い」と厚労省を一蹴したWHOの子宮頸がんワクチン安全声明(2015年12月22日WEDGE Infinity)

名古屋市のレポートから3日後の12月17日、世界保健機関(WHO)の諮問機関であるGACVS(ワクチンの安全性に関する諮問委員会)が子宮頸がんワクチンに関する新たな安全声明を発表した。
 今回の声明は2014年3月に発表された前回の声明以来、1年半ぶりとなる。3ページにわたる声明の最後の方で、一段を割いて日本に言及しているが、日本のメディアは一様に沈黙し、今のところ記事になったものを見ない

「薄弱なエビデンスに基づく政治判断は 真の被害をもたらす可能性がある」

 今回、日本における副反応騒動への言及は、驚くほど踏み込んだ表現となっている。前回の声明では「GACVSは日本のデータに因果関係を見ないが、専門家による副反応検討会は引き続き調査中」と記載された顛末の続きは、今回、次のように辛辣だ。

「専門家の副反応検討委員会は子宮頸がんワクチンと副反応の因果関係は無いとの結論を出したにもかかわらず、国は接種を再開できないでいる。以前からGASVSが指摘しているとおり、薄弱なエビデンスに基づく政治判断は安全で効果あるワクチンの接種を妨げ、真の被害をもたらす可能性がある

 声明の中で、政策判断を批判された国は日本のみ。政治的に配慮した表現を重視する国際機関が、一国だけ名指しで批判を行うのは異例のことだ。筆者もWHOに勤務した経験を持つが、こうした文書を見た記憶はあまりない。GACVSのメンバーは、世界から選ばれた疫学、統計学、小児科学、内科学、薬理学、中毒学、自己免疫疾患、ワクチン学、病理学、倫理学、神経学、医薬規制、ワクチンの安全性などに関する14名の専門家で構成されている。
 WHOの声明を読んだ日本小児科学会理事のある小児科医は「恥ずかしい限り」と語り、日本産科婦人科学会のある理事も「私には全体が日本への声明のように読める」と語った。報道されることはほとんどないが、両学会はこれまでもワクチン接種再開を求める要望書や声明を繰り返し発表している。

 今回の安全声明の最大のポイントは、フランスの医薬品当局による調査の解析結果だ。フランス当局は子宮頸がんワクチン接種後に起きている自己免疫性の症状について200万人の少女を対象に大規模調査を行い、ワクチン接種群と非接種群の間には「接種後3か月時点でのギランバレー症候群の発症をのぞくすべての症状の発症率に有意差無し」と結論づけた。
 有意差のあったギランバレー症候群の発症率上昇リスクも10万例に1例程度と大変小さい。WHOは今後、仮に別のスタディなどを通じてこの結論が確定することがあっても、ワクチンが子宮頸がん等の原因となるヒトパピロマーウイルスの感染を長期にわたって防ぐというベネフィットについて十分に考慮する必要があると念を押す。

 今回の安全声明には「CRPS(複合性局所疼痛症候群)」と「POTS(起立性頻脈症候群)」というふたつの症候群についての詳細な言及があった。これらの症候群は、一般の医療関係者には馴染みがないが、子宮頸がんワクチンの副反応を議論する際にはよく聞かれるものである。
 声明によれば、ワクチン導入以前から見られるこれらの症候群はいずれも原因が不明な上、関連性のない複数の症状の集合体に名前をつけている可能性もあり、何をもってCRPSやPOTSとするのかといった疾患概念は確立していない。こうした診断の難しさを考慮した上でも、ワクチン市販前治験、市販後調査のいずれにおいてもCRPSやPOTSの発症が増えたというエビデンスはない。CRPSもPOTSも、最近日本でも話題になった「慢性疲労症候群(CFS)」と症状がよく重なるが、CFSの発症とワクチンとの因果関係はイギリスにおける調査ですでに否定されているとする。

 声明が暗に「エビデンス薄弱」と一蹴した日本の「HANS(=ハンス、子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群)」なる疾患も、CRPSやPOTSと同様、疾患概念としての妥当性に乏しい。HANSは2014年から一部の日本人医師が唱えている疾患概念で、子宮頸がんワクチンが、慢性の痛みや疲労感、けいれんや運動障害、月経異常や自律神経障害、髄液異常などありとあらゆる症状を引き起こすというものだ。「症状からして免疫異常による脳神経障害としか考えられない病態」であるとするが、科学的エビデンスはない。HANSはさらに、ワクチン接種から何年経っても発症し、いったん消えた症状は何年経ってからでも再発することがあり、場合によっては100以上の症状が重なることもあるというから、関連性のない症状の集合体にただ名前を付けているだけの可能性が高く、疾患概念としての曖昧さはCRPSやPOTSの比ではない
 前回の声明にあった「生物学的・疫学的裏づけのない、症例の観察に基づく薬害説を懸念する」という記述や、今回の声明にある「子宮頸がんワクチン接種後に起きたという、診たことの無い症状に出会った臨床医は、速やかにそれらの症状を診た経験のある医師たちに紹介することが推奨される。それが患者への有害で不必要な治療を防ぎ、患者の日常生活への復帰を早める」という記述は、日本に直接言及したものではないが、日本を念頭に置かずに書かれたものとは考え難い
(略)

記事の後段でも書かれているようにこの子宮頚癌ワクチンの副作用問題なるもの、マスコミ総掛かりでワクチン接種を潰しにかかったと言われても仕方ないかのような内容であったと思いますが、村中氏は以前からこの問題を繰り返し取り上げていて、マスコミがセンセーショナルに副作用を取り上げるだけでこうした重要なニュースを取り上げようとしないことを批判しています。
ただ日本においてワクチンと言えばかくも否定的なニュアンスで語られてきた、あるいは現在進行形で語られていると言う理由の一つに任意接種ではなく、学童に対する集団(実質ほぼ強制)接種が中心であったと言うことも挙げられると思いますが、ワクチンそのものの副作用もさることながら注射針の使い回しによる集団肝炎感染など、時代を感じさせる事件も少なからずあったことは事実です。
個人レベルでの防御に関わることであれば自分で判断して自分で決めろで済むことなのですが、赤の他人も関わるようなことになると公益性だとか他人の健康への責任と言うことも絡んでくる話で、ワクチンは怖いからと拒否するならその分別な対策を講じるなり用心していればいいのでしょうが、今のところ代替できるような対策が講じられていると言う話も聞きません。
せっかく海外へ修学旅行に行くはずだったのに麻疹を発症してクラス一同入国拒否されたと言ったように、ワクチン後進国日本を実感させずにはいられないニュースも時折報じられますけれども、マスコミなどは医療に関して国際的水準に引き上げなければと主張する方々も多いのですから、この方面においても同様の立場から国民の啓蒙に当たっていただきたいものですよね。

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コメント

医療ってリスクとベネフィットのバランスを個別に判断するしかないでしょ。
全部ひとまとめで予防接種は是か非かみたいな話って違和感あります。

投稿: ぽん太 | 2015年12月29日 (火) 09時37分

レアケースなども含めて個別の有害事象を取り上げて「だからこれは駄目なのだ」式の批判の方が、攻撃する側にはやりやすいのは確かだと思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年12月29日 (火) 11時46分

エイズの予防注射ってないの?

投稿: | 2015年12月29日 (火) 19時11分

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