« 今日のぐり:「高田屋 倉敷中庄店」 | トップページ | またもや検査時の事故による死亡事例が発生 »

2015年11月24日 (火)

社会保障費抑制は既定路線と言う中で何が削られていくのか

ちょうど来年度の診療報酬改定に関して各方面から様々な意見や見解が出ているところなんですが、今回は財務省筋からかなり強気の削減を求める声が強いようで、これに支払い側も同調して相当に厳しい改訂が予想されると言うことです。

社会保障費予算、1700億円「抑制を」 財政審提言案(2015年11月16日朝日新聞)

 財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、来年度の予算編成で、高齢化で膨らむ社会保障費を、厚生労働省の概算要求よりも1700億円分を確実に削るよう求める方針だ。

 厚労省は、高齢化に伴う年金や医療など社会保障費の「自然増」を来年度6700億円と見込んでいるが、財政審の提言案では、診療報酬や薬価の見直しによって自然増を「確実に5千億円弱にすることを求めたい」としている。

「治し、支える医療」に転換、削減のターゲットは薬 医療部会、2016年度改定基本方針(骨子案)大筋合意(2015年11月19日医療維新)

 社会保障制度審議会医療部会(部会長:永井良三・自治医科大学学長)が11月19日に開かれ、2016年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)について議論、一部文言の修正や追記等を求める意見が出たものの、大筋合意した(資料は、厚生労働省のホームページ)。11月20日の社保審医療保険部会でも骨子案を議論、両部会の意見を踏まえて基本方針案を作成、12月上旬の決定を目指す。

 基本方針(骨子案)は、2025年に向けて地域包括ケアシステムの推進と、医療機能の分化・強化、連携を進めることを、「重点課題」に位置付けた。「治す医療」から「治し、支える医療」への転換を打ち出すとともに、医師、歯科医師、薬剤師の「かかりつけ」機能の充実を打ち出したのが特徴。
 一方で、医療費抑制に向け、引き下げのターゲットとなるのが医薬品。後発医薬品の使用促進、残薬や重複投薬を減らすなどの適正使用を推進するほか、医薬分業については、いわゆる門前薬局にもメスを入れる。

 基本方針は、「1.改定に当たっての基本認識」、「2.改定の基本的視点と具体的方向性」、「3.将来を見据えた課題」という3つが柱。「2」が2016年度改定の具体的内容で、4項目から成る(下表、および『「かかりつけ機能」「在院日数」の評価がカギ』を参照)。(1)から(3)は評価、つまり基本的には点数の引き上げを行う分野。一方、(4)は適正化、つまり点数引き下げ対象の分野であり、計6項目のうち、4項目が薬関係だ。

 2014年度改定など、過去数回の改定の基本方針と比べると、医療従事者の負担軽減など継続課題が幾つかある。一方で、2014年度改定では、高度急性期・急性期病床の適正化をはじめ、病床機能分化が全面に打ち出されていたのに対し、2016年度はこの点についての表現は、ややトーンダウンしている。代わりに、今回は新たに「治し、支える医療への転換」「かかりつけ医の評価」などの表現が使われ、病床機能分化にとどまらず、地域包括ケアシステムの構築を視野に入れ、医療・介護全体の機能分化と連携を進める方針が打ち出されている。

 基本方針(骨子案)について、修正要望が出た一つが、(4)のうちの「残薬や多剤・重複投薬を減らすための取組など医薬品の適正使用の推進」。日本医師会副会長の中川俊男氏は、「行きすぎた長期処方の是正」の追加を求めた。また同じく(4)には「退院支援等の取組による在宅復帰の推進」が掲げられているが、(1)から(3)の評価する分野にも入れるべきとの意見が出た。
(略)
2016年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)(2015年11月19日社保審医療部会資料)
「2.改定の基本的視点と具体的方向性」(具体的方向性の例)

    (1)地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点(重点課題)
     ア 医療機能に応じた入院医療
     イ チーム医療の推進、勤務環境の改善、業務の効率化の取組等を通じた医療従事者の負担軽減・人材確保
     ウ 地域包括ケアシステム推進のための取組の強化
     エ 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
     オ 医療保険制度改革法も踏まえた外来医療の機能分化
    (2)患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療を実現する視点
     ア かかりつけ医の評価、かかりつけ歯科医の評価、かかりつけ薬剤師・薬局の評価
     イ ICTを活用した医療連携や医療に関するデータの収集の推進
     ウ 質の高いリハビリテーションの評価等、疾病からの早期回復の推進
    (3)重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
     ア 緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
     イ 「認知症施策推進総合戦略」を踏まえた認知症患者への適切な医療の評価
     ウ 地域移行・地域生活支援の充実を含めた質の高い精神医療の評価
     エ 難病法の施行を踏まえた難病患者への適切な医療の評価
     オ 小児医療、周産期医療の充実、高齢者の増加を踏まえた救急医療の充実
     カ 口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進
     キ  かかりつけ薬剤師・薬局による薬学管理や在宅医療等への貢献度による評価・適正化
     ク 医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションや医療技術の適切な評価
    (4)効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点
     ア 後発医薬品の使用促進・価格適正化、長期収載品の評価の仕組みの検討
     イ 退院支援等の取組による在宅復帰の推進
     ウ 残薬や多剤・重複投薬を減らすための取組など医薬品の適正使用の推進
     エ 患者本位の医薬分業を実現するための調剤報酬の見直し
     オ 重症化予防の取組の推進
     カ 医薬品、医療機器、検査等の適正な評価

日医から「「行きすぎた長期処方の是正」の追加」が求められたと言うのはいかにもと言う感じなのですが、今回特にこの薬剤関連が非常に重視されているようで、例えば残薬が年間500億円の無駄になっていることを解消しようと言う動きの中で、長期処方がその原因になっていると言う議論が出てきたようです。
当然ながら日医などは医療費削減で医療は崩壊する!と主張している一方で、支払い側は各種調査によってマイナス改定でも医療崩壊はないと言う予測を打ち出すなどそれぞれの立場から真っ向対立していますが、特に今回の記事から見る限りでは単純に医療費を削減しようと言うのではなく、言ってみれば医療の目的とするところを見直すとも言える部分もありそうです。
その象徴とも言えるのが「治す医療」から「治し、支える医療」への転換と言うことになるのだと思いますが、好意的に解釈するならばかかりつけの担当者を設定し一人一人の全人的、継続的な評価に基づいた医療サービスを提供していくことによって、例えば在宅で看取り予定だった高齢者が三次救急に搬送され濃厚医療を施されると言った齟齬を減らせるようになるのかも知れません。
当然ながらそうなると地域の開業医がどれだけかかりつけ医として機能できるのかと言うことも問われるはずなのですが、現実的には夜間休日はかかりつけ患者でも基幹病院に丸投げで自由な生活を満喫している先生方もいるようですから、勤務医と開業医の業務格差是正と言う点からも注目される改革になるかも知れませんね。

この点と関連して一部方面で盛んに「医療費削減の切り札」として報じられている基幹病院の受診時定額負担料についてですが、現行の任意徴収の選定療養加算に代わって1万円程度の定額負担を検討していると言い、一部のマスコミからは「病気になっても気軽に病院を受診できなくなる」と批判を受けているようです。
まあ基幹病院に初診患者が気軽に受診出来る状況が良いのか悪いのかは議論の余地も少なからずあるところなんですが、国としては医療の無駄を省くためにも地域のかかりつけ医が患者の全行動を采配するような、イギリス式(NHS)のゲートキーパー機能を持ったかかりつけ医制度を念頭においているのかも知れませんし、実際にNHSは比較的安上がりな割に国民満足度が高いと言う言い方も出来るシステムですよね。
もちろんイギリスでもそれに満足出来なければお金を払って私立の病院に即受診出来るように、日本においても定額負担を支払えば大病院に即受診出来ると言うことなのでしょうが、全国民に安価に平等な医療を提供するのではなかったのか?と言う批判に対しては、少なくとも建前上は大学病院だろうが田舎町の開業医だろうが同じ料金で同じ医療を提供すると言うのが国民皆保険制度であるとも言えるわけです。
さすがにそうした建前に真実性を感じる人が減っているからこそ大病院への患者集中と言う現象が問題視されているとも言えるのですが、根本的にそれを変えていくにはやはり医療提供水準には地域差、施設間差があると言う現実を追認した上で、それぞれの実情に応じて価格差をつけるべきなのでは…と考えると、何のことはない大病院では追加料金を取るべきだと言う話に戻ってくるのですね。

|

« 今日のぐり:「高田屋 倉敷中庄店」 | トップページ | またもや検査時の事故による死亡事例が発生 »

心と体」カテゴリの記事

コメント

同じ医療を安くやれって言うから崩壊するんで
安上がりな医療でいいって言われりゃやりようはあるんでないの

投稿: | 2015年11月24日 (火) 08時25分

>イ チーム医療の推進、勤務環境の改善、業務の効率化の取組等を通じた医療従事者の負担軽減・人材確保

具体的に何がどうなっていくのか期待しないで見守りたいですね。

投稿: ぽん太 | 2015年11月24日 (火) 08時52分

一部のマスコミ例、鷲尾香一/ジャーナリスト。
ここまでバカでも仕事があるんかいな。

投稿: | 2015年11月24日 (火) 09時37分

>現実的には夜間休日はかかりつけ患者でも基幹病院に丸投げで自由な生活を満喫している先生方

…そんなに言わなきゃダメですか…?もう時代遅れだと思うんですが…。分かりました。仕方ない。そこまでおっしゃるのなら。

嫌なら辞めろw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年11月24日 (火) 10時25分

実際問題として自発的と外圧によるとを問わず環境要因に従って医師の再配置をしていくことが国策上も既定路線ですので、本当に嫌だと感じているなら素直に辞めていくことは全く構わないようには思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年11月24日 (火) 11時16分

そういやこの前とびこみで当院来院したHB3切ってる重症貧血の患者

しんどいって近くの開業医にかかって検査したらすぐうちにかかれって言われたらしいのに
紹介状もデータも何も持たされてなかったんだけどあれはどういう意味だったんだろう?

おかげで患者はよけいなお金取られるわ検査やりなおしで時間もかかるわで大変だったんだけど

投稿: | 2015年11月24日 (火) 22時53分

↑嫌ならやめろw

投稿: 10年前にドロッポしました。 | 2015年11月25日 (水) 09時57分

公務員給与は2年連続増やし、民間の平均賃金も最低1000円まで上げる。
どうして医療関係者の報酬だけ減らすの?

投稿: | 2015年11月26日 (木) 00時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/62730517

この記事へのトラックバック一覧です: 社会保障費抑制は既定路線と言う中で何が削られていくのか:

« 今日のぐり:「高田屋 倉敷中庄店」 | トップページ | またもや検査時の事故による死亡事例が発生 »