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2015年11月17日 (火)

法律を文言通りに解釈すると大変なことに?

本日の本題に入る前に、それはちょっと厳しいだろうと言う声が多いと以前に紹介したこちらの事件、その後最高裁までもつれ込んだ結果どうも判決がひっくり返されるのでは?と報じられていました。

認知症徘徊の列車事故訴訟、二審判決を見直しか 最高裁(2015年11月10日朝日新聞)

 認知症で家を出て徘徊(はいかい)中に列車にはねられて死亡した愛知県大府市の男性(当時91)の遺族に対し、JR東海が約720万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は10日、当事者の意見を聞く弁論を来年2月2日に開くことを決めた。

 二審の結論を変える際に必要な弁論が開かれることから、男性の妻の監督義務を認めて約360万円の支払いを命じた二審判決が、何らかの形で見直される公算が大きい。弁論を経て、判決は早ければ年度内にも言い渡される。第三小法廷は、責任能力がない人が起こした不法行為に、親族の監督義務がどこまで及ぶのかについて、判断を示すとみられる。

 「要介護度4」と認定されていた男性は2007年12月、徘徊中に愛知県内のJR東海道線共和駅の構内で列車にはねられて死亡した。訴訟では、男性と同居していた事故当時85歳の妻と、横浜市に住む男性の長男の2人に、男性を見守る監督義務があったかが争点となった。

 13年8月の一審・名古屋地裁判決は、男性を見守ることを怠った妻の過失のほか、長男にも監督義務があったと認め、JR東海の請求通り約720万円の支払いを2人に命じた。一方、昨年4月の二審・名古屋高裁判決は、妻の監督義務を認めた上で、賠償額については約360万円に減額した。長男に対する請求は退けた。

 この判決に対し、妻とJR東海の双方が上告していた。(河原田慎一)

裁判の結果がいずれに傾くかは現在のところ何とも言えませんが、少なくともこうして議論になる程度には判断が難しいケースであったとも言えますし、認知症高齢者介護に手を焼いている全国の家庭にとっては決して他人事ではないと気になるニュースであるはずですよね。
ただこの点で先日の認知症高齢者による歩道暴走事故で少しばかり風向き変わったと言うのでしょうか、認知症高齢者が好き放題に車を乗り回し事故も繰り返し、最終的には多数の死傷者を出す重大事故にまで至ったと言うケースを受けて「こんな自分の行動に責任も取れない輩に車を運転させるとは何事か」「認知症と知っていながら放置した家族も加害者だ」と散々に言われているようです。
実は免許の更新制度が変わった結果、今後は下手をすると医療関係者もこの種の責任論争に巻き込まれるリスクが高まるのではと危惧しているのですが、いずれにしてもどちらの立場が正しくどちらかが間違っていると言う問題ではなく、ケースバイケースと言うしかないと言う非常に微妙なことなのでしょうね。
こうした微妙な問題を一律杓子定規に判断してしまうとむしろ話がこじれかねないんじゃないかとも思うのですが、この一律に線引きをしてしまうとかえって困る局面が増えるのでは?と言うことで先日ちょっと気になった事件がありましたので紹介してみましょう。

立ち会ってないのに「死亡診断書」作成、三重県が男性医師を告発(2015年11月13日産経新聞)

 三重県は13日、同県名張市にある特別養護老人ホームの男性嘱託医(73)が、患者が死亡する前に日時欄を空けた死亡診断書を作成して職員に事前に渡し、立ち会って死亡確認していなかったとして、医師法違反容疑で男性嘱託医を県警名張署に告発したと発表した。告発は9日付。

 名張署は告発状を受理し、捜査を始めた。県などによると、老人ホームは社会福祉法人東海宏和福祉会が運営する「名張もみじ山荘」。医師は平成23年5月の施設開設以来、嘱託医を務めており、少なくとも19人の入所者の死亡を実際に確認しないまま診断書を出していた

 もみじ山荘の嘱託医は1人だけだった。医師は他にも3カ所の福祉施設で嘱託医をしているという。もみじ山荘によると、現在全80床がほぼ満床で、取材に対し「責任者が不在のため対応できない」としている。

死亡診断書、立ち会わず交付容疑 三重県が特養の嘱託医を告発(2015年11月15日朝日新聞)

 死者に立ち会わずに死亡診断書を交付したとして、三重県は、同県名張市の特別養護老人ホーム「名張もみじ山荘」の嘱託医、田中成典医師(73)=名張市桔梗が丘三番町=を、医師法違反(無診察治療等の禁止)の疑いで県警名張署に告発した。13日、県が発表した。

 告発によると、6月22日に死亡した入所者の80代男性について、田中医師は、事前に死亡診断書の氏名や、死因の「老衰」などを書き入れ、死亡日時や診断日は看護師に書かせていたとされる。県は、診断書の筆跡などを調べた結果、2011年の施設開所以降、死亡した入所者50人のうち19人は、診断せずに交付したとみている。

 県の聴取に対し、田中医師は「自分が長期旅行で不在中でも診断書が出せるようにしたことが発端で、その後も続けてしまった」と説明。「いけないことと十分分かっていた。申し訳ない」と話しているという。

もちろん法的には許されない行為であるし、当事者も全く申し訳ないと謝罪しているくらいですから犯行にあたって事実関係に争いはないことは明白なのですが、しかし常習的に行うかどうかはともかく「あらかじめ死亡診断書を記載しておく」と言う行為自体は全国の医療現場で当たり前に行われていることでしょうし、厳密に言えばそれらもグレーゾーンになりかねない場合が少なからずありそうに思います。
亡くなる際に医師が立ち会わなければならないと言うルールはないのですが、一方で人間が亡くなったと言う判定は医師にしか出来ないと言う法律がある以上、心臓が止まって死後硬直が始まっていようが医師がご臨終ですと確認しなければ社会的には生きているとも言え、そうなるとご家族としては一体何をもって死亡したと考えるべきなのか微妙なことになってしまいますよね。
病院などであれば当直医が死亡宣告をしてその時間を記録すれば事は済むのですが、この種の施設では嘱託医が一人だけで夜間休日に毎回出かけて行って死亡確認をすると言うのも非現実的で、その結果下手をすると施設で亡くなったご老人がただ死亡確認のためだけに三次救急に搬送されてくると言う、非常に馬鹿げたことも現実に起こっているようです。

もちろんこうした施設の場合多くの死亡例はかなり以前から予測出来るものなのだろうし、事前に家族と申し合わせて例えば死亡確認は翌朝医師が出てきてからと言ったルールを決めておけば多くは片付くのでしょうが、たまたま医師が出張した際に予想外の急変が起こった場合にどうするのか?と言われると、現状では救急車を呼ぶと言う行為が唯一の正解と言うことにもなりかねないのが困りものですよね。
可能であれば複数の嘱託医などを選任すると言った予防策を講じるべきなのでしょうが、ご家族が「なんとしても今夜のうちに連れて帰りたい」と言った場合に夜道を医師に駆けつけてもらうべきなのかどうか、今回の施設にしても山荘と言うにふさわしくかなりな僻地にあるようですから、70代の老医師が夜中に駆けつけると言うのも思わぬ二次的事故でも誘発しないかと気がかりになります。
今回の告発で直ちに全国の医療機関や介護施設で対応を改めると言うほどの影響はないのでしょうが、今後同種の告発が続けば何らかの対処はしないではいられないのだろうし、少なくとも法的な文言を読む限りでは全くおっしゃるとおりと言うしかないのですから、下手をすると亡くなりそうなご老人は念のためにさっさと救急病院に送っておけと考える施設が続出してくる可能性もゼロではないのでしょうね。

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コメント

たしか特養の配置医師は施設から15分以内の所に住んでなきゃいけなかったはず。
グーグルマップで見てみるととうてい15分ではいけそうにないくらいの遠さですね。
これが問題視されてないのは、法律が変わったんでしょうか。

それからどうでもいいことなんですけど、件の田中先生の医院って
江戸川乱歩生誕の地なんですね
興味のある人はストリートビューでご覧ください
https://www.google.co.jp/maps/place/%E3%80%92518-0727+%E4%B8%89%E9%87%8D%E7%9C%8C%E5%90%8D%E5%BC%B5%E5%B8%82%E6%96%B0%E7%94%BA%EF%BC%91%EF%BC%99%EF%BC%93/@34.6186516,136.0867082,3a,83.5y,353.11h,71.81t/data=!3m7!1e1!3m5!1s1WFKiREH8yMLGoKJuXeeBQ!2e0!6s%2F%2Fgeo2.ggpht.com%2Fcbk%3Fpanoid%3D1WFKiREH8yMLGoKJuXeeBQ%26output%3Dthumbnail%26cb_client%3Dmaps_sv.tactile.gps%26thumb%3D2%26w%3D203%26h%3D100%26yaw%3D7.5411859%26pitch%3D0!7i13312!8i6656!4m2!3m1!1s0x6006ad2511c187b7:0x67072606e8876420!6m1!1e1?hl=ja

投稿: 嫌われクン | 2015年11月17日 (火) 07時06分

年寄りは都会に住むべきって考えもあるらしいね

投稿: | 2015年11月17日 (火) 07時55分

コンパクトシティ構想の一環で移動手段に乏しい高齢者は都市部に居住をと言う考え方がありますが、地代等を考えますと外出のない入居者向け施設は郊外に建設するのも間違いではないかと思います。

投稿: 管理人nobu | 2015年11月17日 (火) 11時29分

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