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2015年11月11日 (水)

足りぬ足りぬは工夫が足りぬ、だけでも困るのですが

先日から少し話題になっているところなのですが、こういう話が出ていることをご存知でしょうか。

教職員3万7千人削減を 財務省提案 少子化に対応 大学交付金もカット(2015年10月26日産経新聞)

 財務省は26日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)を開き、全国の公立小中学校の教職員定数について平成36年度までの9年間で約3万7千人削減する案を示した。少子化に対応し、定数全体の約5%を減らす考え。財務省は国立大学の運営改革案も提示。国が国立大に配る交付金を毎年1%減らす一方で、授業料や寄付金などの自己収入を1・6%増やすよう促し、43年度に交付金と自己収入を同額程度にするよう求めた。

 公立小中学校の教職員定数は27年度で約69万4千人に上る。財務省では少子化で児童・生徒数が減ることなどを考慮すると、向こう9年間で児童生徒数などに連動する「基礎定数」が約3万3千人減ると試算。いじめ問題などに対応し、政策的に上乗せしている「加配定数」は学級数に対する人数の割合を維持した上で、少子化影響を当てはめると約4千人減るとした。

 財務省は今年5月、教職員を向こう9年間で約4万2千人減らせるとの見積もりを示したが、最新の学級数や子供人口の予測などを基に試算し直した。定数を削り28年度以降の予算編成で歳出抑制につなげる。
(略)

その昔小泉総理が国内外で「米百俵」の話を披露し話題になったことを考えると、言ってみればこれは全く逆行する考え方であるように受け取られる話で、現在学校教育現場でいじめ問題の多くが教職員の目が行き届かないことに起因していると言う意見もあることを考えると、子供の数が減るから教職員も減らせと言うのはいささか乱暴な話のようにも聞こえますよね。
当然のように教育関係者のみならず所轄官庁の文科省側からもクレームが入ったと言うのですが、これらの反論に対して麻生財務相が「小中学校の教職員が、いじめや事務作業やら何やらで、極めて忙しいことになっている事実はよく理解している」「いじめや部活動なら、教職員よりカウンセラーやコーチを増やした方が、本来の業務がきちんとできるようになるのではないか」と言うのを聞くと、まあそれはそれで正論だとも感じます。
どこの業界でも昨今では本業以外の雑用が増える一方で、これまた様々な理由があってそうなっていることなんですが、特に専門職がその専門分野以外の雑用に時間を取られすぎると言うのは社会的なリソース活用の観点からも非常に望ましくないことであって、教育現場においても教員以外の人材の活用がもっと言われてもいいようには思いますね。
こうした考え方がさらに進むといわゆるワークシェアリング的な雇用促進効果も期待出来るんじゃないかと思うのですが、そのワークシェアリングの最大の障害となっているとされているのが実は当の労働者の意識の問題なのだそうで、先日こんな興味深い調査結果が出ていたことを紹介してみましょう。

「給料の低さ」 、医師、NP読者共通の最大の悩み◆3割超の医師が「本来業務以外の多さ」に不満(2015年11月8日NewsPicks)

 前回は、会社勤めが(正社員、契約社員、派遣社員)79.8%を占めるNewsPicks(以下、NP)読者と医師との「仕事への満足度」を比較した。今回は反対に、両者の仕事に対する不満と、それに直結しやすい「労働時間」「睡眠時間」の実態についてリポートしていく。

 まずは、m3.com会員(医師)とNPそれぞれの読者の「仕事上の悩み」について。意外だったのが、世間には「高給取り」のイメージがある医師の最大の悩みは、「給料が少ない」(37.2%)だったこと。それに、「本来業務以外の多さ」(31.3%)、「長時間労働」(21.8%)、「職場の人間関係」(20.2%)が続いた(複数回答)。

 一方、NP読者の最大の仕事の悩みも、同じく「給料の少なさ」(31.3%)。次に、「やりがいが少ない」(22.2%)、「本来業務以外の多さ」(21.0%)、「特にない」(21.0%)、「職場の人間関係」(19.3%)、「長時間労働」(18.5%)がランクインした。

 両者共通の悩みは、収入と人間関係、そして長時間労働。一方、「やりがい」については、「やりがいがない」と答えた医師は10.1%しかおらず、大きな差が見られた。また、「本来業務以外の多さ」を不満要因に上げる医師はNP読者より10ポイント以上多く、不満を抱えつつも仕事をする医師の実態がうかがえた(実際の「収入」については、次回配信予定の記事で取り上げる)。
(略)

詳細は元記事の方を参照頂きたいところなんですが、特に注目していただきたいのは一般サラリーマン読者と医師とで仕事への不満点、悩みに大きな差が出ている部分は何かと言う点で、医師は一般サラリーマンに比べて「やりがいがない」と言う人は少ない一方で「本来業務以外の多さ」に不満を持っている人が多いと言うことです。
この点は近年とにかく何かと言えば書類作成だ、会議だと本業以外の仕事が増えていることを気にしない医師はまずいないと思いますし、そうした雑用数多を要求する評価基準と言うものが絶対的なものなのか?と言う視点はさておくとして、近年疲弊が言われる医療現場への改善策として医療補助スタッフなどを導入し、単純な書類作成業務など非専門職でも可能な仕事は肩代わりさせようとはなってきていますよね。
ただ興味深いのは自由記述の不満の内容を見て見ますと当然ながらサラリーマンと医師との不満の内容には大きな差があるのですが、医師の回答として「本業に人が多すぎる」だの「若手に仕事を取られる」だのと言われるとあなた達ワーカホリックなのでは?と言う気になってきますし、基本的に医師という人種は仕事が暇だと感じることに妙な忌避感が強いんだろうなと言う気がしてきます。
この辺りは実のところ医師に限らず高給取りのエリート労働者全般に見られる傾向なのだそうですが、医師にしても「新しい知識にup dateしない医者」「研究の難しさ」と言った点には不満を抱く人間が多く、また一般サラリーマンからも「スキルアップにつながらない」「教育が適切に行われない」と言った職場教育に関する不満が非常に多いらしいことを考えると、適切な教育と言うことはどこの業界でも重要なんだろうと思いますね。
学校教育などもともすれば数の議論であれが足りない、ここが不足していると言う話に終始しがちなのですが、実際にはどんな教育を受けられるかと言う質の問題も非常に重要であるはずなので、単純に教師の数を増やせば教育の質が上がるものなのか、そもそも良い教育と悪い教育とはどう違うのかと言った観点から、教育内容の評価や質的改善策も議論していく必要がありそうには感じますでしょうか。

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コメント

ところで財務省のコストカットはいつやるのよ?

投稿: | 2015年11月11日 (水) 07時43分

教職員削減で財務省vs文科省が大バトル 子ども減れば先生少なくていいの?
http://news.biglobe.ne.jp/domestic/1110/jc_151110_1963024591.html

投稿: | 2015年11月11日 (水) 07時55分

教師削減が絶対阻止すべき聖域だとも思いませんが、現場の多忙感がこれだけ報じられ国民の関心も高まっている中での削減案云々の話は、少なくとも戦略的にはあまりよいものではなかった気がします。

投稿: 管理人nobu | 2015年11月11日 (水) 12時42分

「足りぬ足りぬは工夫が足りぬ」って言葉嫌いなんですよね・・・よく考えたら言われて嫌な言葉結構ありますね。
これをいう人って精神論に走る人が多くて、研修医にとって有害なんです。

投稿: クマ | 2015年11月11日 (水) 17時30分

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