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2015年11月25日 (水)

またもや検査時の事故による死亡事例が発生

本日の本題に入る前に、以前から紹介していたあの事件に関連して、その後の続報が出ていたので紹介してみましょう。

「ずんずん運動」女に有罪=1歳男児施術死―新潟地裁(2015年11月19日時事通信)

 筋力を鍛える運動と称して新潟市の男児=当時(1)=の顔を押さえ付け窒息死させたとして、業務上過失致死罪に問われたNPO法人「子育て支援ひろばキッズスタディオン」(新潟県上越市、解散)元代表姫川尚美被告(58)の判決が19日、新潟地裁であり、竹下雄裁判長は禁錮1年、執行猶予4年(求刑禁錮1年)を言い渡した。

 姫川被告は、鼠径(そけい)部から心臓に向かって手で押す「ずんずん運動」など独自のマッサージを考案し、乳幼児に施術を行っていた。
 姫川被告は起訴内容を認めていた。竹下裁判長は「医学的知識を有していないのに、施術の有効性を強調し危険性を軽視した」と指摘。同NPO法人では以前にも窒息事故が起きていたことから、「施術の危険性を顧みる機会が十分あり、過失の程度は重い」と非難した。一方で、謝罪し今後施術を行わないと誓約していることなどから執行猶予とした
 判決によると、姫川被告は2013年2月17日、新潟市江南区の住宅で、男児の顔を自身の胸に押さえ付け両足を踏ん張る姿勢を続けさせ、窒息死させた
 姫川被告は、大阪市内で14年に生後4カ月の男児を施術により死亡させたとして、禁錮1年、執行猶予3年の判決が確定している。 

ちなみに執行猶予判決が出た後でまた執行猶予判決と言うのは珍しいように思いますが、こうした場合法律で強制的に保護観察となることが義務づけられているのだそうで、要するに実刑にはならないけれども生活上の制約は多い、それなりに厳しい対応であると言うことになるのでしょうか。
当然ながらこの事件に関してはそもそも医学的知識も何も持たない人間が根拠不明の危険な行為を繰り返し、他人を何人も死に至らしめているのに執行猶予とは何事かと言う批判の声も多いようなのですが、一度は不起訴になったものを検察審査会がひっくり返して起訴されたと言うように、もともと業務上過失致死に問うことが難しいと言う判断だったようです。
もちろん刑事事件としての判決であって民事賠償責任はまた別に問われることになるのだと思いますが、こうした場合にどの程度の量刑が妥当なのかと考えるとやはり何人も犠牲者が出ているのに…と言う感情は拭えないところもあって、法体系の狭間と言うべき微妙な穴があるのではと感じた方も多かったようですよね。
さて話は変わりますが、まさにこういう症例こそが事故調に取り上げられるのにふさわしいと言うべきなのでしょうか、先日こういう事故が発生していたことをご存知でしょうか。

愛知の病院:検査台から患者転落…機器に上半身挟まれ死亡(2015年11月20日毎日新聞)

 愛知県一宮市桜1の総合大雄会病院(今井秀院長)で20日、同県江南市の女性患者(74)が検査台から落ち、動いている検査機器に上半身を挟まれ死亡した。病院は県警一宮署に通報、同署が詳しい原因を調べている。死因は窒息死だった。

 病院を経営する社会医療法人「大雄会」によると、女性は体の周囲を撮影機器が回転するガンマカメラで肺の検査を受けていた。胸、腹、脚を検査台に固定していたが、開始直後に女性が動き出し、機器に巻き込まれた。男性技師がすぐに機械を止めたが、胸や腹を圧迫されており、約3時間後に亡くなった。

 病院側は院内に医療事故調査委員会を設置する方針。松広耕三・法人本部長は「警察の捜査に全面的に協力する」とコメントした。

お亡くなりになった患者さんにはお悔やみを申し上げるしかありませんが、しかし検査中に動いただけで死につながると言うのは、改めて考えてみると何とも怖い話ではありますね。
この春に出張検診で胃透視(バリウム)を受けていた外国人が、透視台から滑り落ちて死亡すると言う悲惨な事故があったことを思い出しますが、あの事故の場合は頭下げの態勢になった際本来つけているべき転落防止用の肩当てを使っていなかったらしいと言うことと、そもそも外国人で意志疎通が難しかったのではないかと言うことが原因として言われています。
今回の場合は院内のことであり、また台が動く透視台ではなく機械自体が患者の周りを回る構造だったと言うことで、想像するに作動音に驚くなりして急に動いたと言うことが事故につながったのだろうと思うのですが、もともと何らかの意識障害なり認知症なりがあったと言うことなのか、ともかく思いがけない行動を取りかねない患者をどう扱うべきかと言う一つの教訓になる事例ですよね。
こうした症例を見ますと院内での拘束を禁止すべきかどうかの議論はさておくにしても、少なくとも拘束をするなら形ばかりでは意味が無くきっちりした方法で行うべきなのかとも思うのですが、その種の技術と言うものは当然ながら公然と語って良い類のものとも思えないだけに、何をもって正しい方法とするのかと言う情報共有が出来ているのだろうかと気にはなるところです。

いずれにしてもこの場合事件性のないことは明白なのでしょうが、遺族から民事賠償を請求される可能性はもちろんあるのだろうし、事故が起こったことに関して病院側が何らかの責任を問われることはあるのでしょうが、そもそもこうした検査機器の場合当然意識障害がある患者が利用する場合もあるはずなので、動いただけで致死的なトラブルが発生すると言うのは機械の設計としてどうなのかですよね。
仮に遺族側からの民事賠償なりが通った場合に、今度は病院から医療機器メーカーに欠陥を言い立てることもことも出来るかと思うのですが、一般論としても医療機器と言うものはものが判っている人間が使うと言うことを前提で設計されている部分が少なからずあって、こうした事故に対する想定は確かに甘かったのではないかと言う反省点はありそうです。
ただ現実的に全国全ての医療機器を素人が思わぬ行動を取っても安全なように回収するなり入れ替えるなりと言うのも不可能なのですが、少なくともメーカー側からもこうした事故事例を利用施設でも共有できるよう手配した上で、現場で行える対策なりを提示するくらいの努力は払っていただきたい気がしますね。

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コメント

ああいうものには自動停止装置はついてないんでしょうねえ。>ガンマカメラ

投稿: ぽん太 | 2015年11月25日 (水) 08時53分

秋葉原で売ってるような電子部品のデーターシートには、これは航空・宇宙・原子力・医療など信頼性を要求される用途には使えませんみたいな注意書きが必ず付いています。
ハードウェアとしての医療機器には高度な動作の信頼性が必要というのは一般常識だと思うのですが、運用などソフト面の信頼性は軽視されているようですね。

投稿: | 2015年11月25日 (水) 10時33分

作動中のところを実際に見たことがないのですが、構造上は確かに巻き込み注意と言う印象を受けますので、運用マニュアル等も改善の余地がありそうです。
http://www.hamanomachi.jp/img/kakuka/houshasen/e-cam.jpg

投稿: 管理人nobu | 2015年11月25日 (水) 12時40分

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