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2015年11月 6日 (金)

夜逃げする歯科医は明日の医師の姿?

近年の流れを見ていると意外性はない話なのですが、先日改めてこんな記事が出ていました。

夜逃げする歯医者も 深刻化する「乱立の余波」(2015年10月31日J-CASTニュース)

   「食えない」歯科医が増えているらしい。
   町の歯科診療所の数が年々増加するなか、その分競争が激しくなっているという。インターネットでも、「突然、廃業してしまった」「まだ治療の途中なのにどうしよう...」などといった声が寄せられ、「夜逃げ」同然でゆくえを晦ましてしまった歯科医もいるようだ。

歯科診療所数は毎年増えている

   厚生労働省が2015年10月28日に発表した「医療施設動態調査」によると、歯科診療所の数はこの8月末時点で6万8717件。前年同月と比べて7件増えた。このうち、個人が経営する診療所は5万5240件で、じつに80.4%が個人。いわゆる「町の歯医者」で、国や地方自治体、医療法人などが営む歯科診療所(施設)を圧倒している。
   歯科診療所の数はよくコンビニエンスストアの数と比べられるが、コンビニ数は15年9月末で5万3108か店(全店ベース、日本フランチャイズチェーン協会調べ)なので、「町の歯医者」だけでそれを上回っていることになる。
   しかも年々増加しており、厚労省の年ベースで比較できるデータによると、2013年10月末が6万8701件で、前年同月と比べて227件(0.3%)増えている。景気がさえなかった2000年代前半には横ばいから減少傾向をみせたものの、20年前の1993年と比べると1万2795件(22.9%)も増えた
   いまや都心部を中心に、住まいやオフィスの近くに複数の歯科診療所が並んでいるということも、それほどめずらしいことではないわけだ。

   そうした中で、廃業(移転を含む廃止数)に追い込まれている歯科診療所も少なからずある。歯科診療所の廃止数は、2013年に1405件。このうち、個人の診療所が1180件、84.0%を占めていた。なかなか1000件を下回らない。
   歯科医が高齢を理由に診療所を閉めることもあるが、なかには経営が立ち行かなくなり、「突然、閉めてしまった」診療所もあったという。
(略)
   最近は「歯」を気にする人が増え、デンタルケアは欠かせなくなってきた。虫歯や歯槽膿漏などの予防・治療と、歯科医にかかったことのない人のほうが少ないかもしれない。歯科医へのニーズはまだまだあるし、「なり手」も多くいる。
   とはいえ、少子高齢化で人口減少が続くなか、将来的には患者は減る。ある歯科医は、「最近は虫歯の治療で診察に来る子どもの患者さんはめっきり減りました」と話す。
   患者が減るなか、歯科診療所は増え続けることで過当競争が起っていることは間違いない。
   さらには、開業後もなかなか赤字を抜け出せないとの見方もある。診療所の医療設備への投資がかさんでいるうえ、診療報酬が上がらないなどで「ジリ貧」に追い込まれることが少なくないという。
(略)

この歯科の経営難は近年とみに顕在化してきた現象で、その背後にあるのが歯学部定員の大幅増員に伴う供給過剰にあることは明らかなのですが、すでに各地の歯学部が定員割れを起こすなど歯学部志願者自体も減少傾向を続けている結果、歯学部教授が「歯科医は儲からなくなったなんて報道するから学生が集まらないじゃないか!」などと逆ギレすると言う珍妙な状況にもなっています。
現場に大量に歯科医が新規参入したのですから値崩れとワープア化が一気に進んだのも当然なのですが、この辺りの構図は例の法科大学院乱立の結果弁護士が過当競争になったことと全く同じ構図で、弁護士の場合たった3年で平均年収が60%も下がったと言うのですからやっていられないと言うものですよね。
近年医学部定員が大幅増加しているのは周知の通りで、さらに特例だ、特区だと言って新設医学部の計画も進んでいる中で、当然ながらこうした先行する国家資格職の凋落ぶりに感じるところ少なからずと言う人も多いと思うのですが、そんな不安をさらに煽り立てるようなこんな記事が出ていました。

5年後に食えなくなる職業は? 夏野剛と佐藤航陽が考える(2015年10月27日SPA)

 ’15年9月に行われたダボス会議で75.4%の企業関係者などが「10年後に企業活動の30%をロボットがこなす」と回答したとする報告書が発表された。今や技術革新により、労働のあり方は大きな過渡期を迎えつつある。さらに、日本経済は五輪バブル終焉、少子高齢化という不安要素も孕む。
 果たして、今、従事する仕事は5年後も存在するのか。その実態に迫る一環として、夏野剛氏(慶應義塾大学・特別招聘教授)と佐藤航陽氏(メタップス代表取締役)が「賢者の知恵対談」を敢行。ここでは、その一部をお届けする。
(略)
佐藤:ですね。いわゆる専門職は特化型ですから、例えば多くの“士業”が必要なくなると思います。弁護士や会計士のように、決められた範囲や過去のパターンで処理していく作業は、今後AIに代替されていくでしょうね。

夏野:そういう意味では、医師も他人事ではない。紹介状や処方せんを出すだけの街の個人医院なら、国が医療バージョンの知恵袋を提供すれば要らなくなってしまう

佐藤:スマホに症状を入力するとデータベースで照合されて、考えられる病気が表示される。技術的には十分可能ですからね。

夏野:海外ではそういう動きもあるけど、日本では医師会や歯科医師会がロビイング活動をしていて、政治的な影響力は強い。だから、士業なんかは“既得権益”として守られ、意外と20年ぐらいは生き残るんじゃないかな。そうなると、日本のAI産業は世界から取り残されてしまうわけだけど。
(略)

全文は元記事の方を参照いただくとして、もはや医師会はすっかり悪の巣窟諸悪の根源扱いですけれども、もちろんここで語られているのは単なる素人の想像、思いつきに基づく雑談と言うべきもので、医療現場がこうなっているからだとか医療の実態はどうだと言ったことは何も知らないだけにちょっとそれはどうなのか?と感じる人も多いかと思います。
ただ国が再び医療費抑制政策に舵を切っていて、病院の赤字が平均1億円超にまで拡大しているだとか医師技術料も含めた診療報酬をさらに引き下げようだとか言う話も出ていることを考えると、少なくとも薔薇色の未来絵図が待ち受けていると考える関係者もいないのではないでしょうかね?
ただ今回の記事はAIの発達が医師の仕事を奪うと言う趣旨ですが、逆に考えると医療現場の仕事の多くの部分が科学技術の発達で機械的に処理できるようになると考えると、今現在雑用に追われがちな医療専門職がそれぞれの本業たる分野に集中出来るようになり、それはそれで労働環境の改善に結びつきそうな気はします。
その場合仕事が減った分給料も減らしてAIの導入コストに回すのか、それともさらに業務を拡大再生産する方向に向かうのかが問題ですけれども、今の日本の医療システムでは医療現場のリソースが過剰になればそれは新たな需要を開拓する原動力になる仕組みになっていますから、国が本気で医療費抑制を考えるなら出来高制など制度面の根本的改革が求められると言うことになるのでしょうか。

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コメント

機械に変わられはしないでしょう
危ないのは税理士や会計士ですね。
弁護士も一部の業務は無くなるでしょう
医師が心配しなきゃいけないとしたら国の財政が危ないので
診察報酬が伸び悩む中業務が増える事でしょうね

投稿: | 2015年11月 6日 (金) 07時14分

雑用を整理して医業に専念できるなら給料下がるのもありかも。

投稿: ぽん太 | 2015年11月 6日 (金) 08時57分

SPAの記事読んでみたが、この2人って頭悪い典型ですね。
自分でやったこともなく、評論家みたいなもんか。

投稿: | 2015年11月 6日 (金) 09時40分

個人事業でも自分がやってる事業範囲内だけの税知識を押さえれば、
ソフトの助けを借りて自力で青色申告するのは充分可能ですからね。

投稿: | 2015年11月 6日 (金) 10時23分

部外者から専門家の仕事がどう見えるかと言う視点も、専門家には必要かも知れませんね。

どんな機械でも直せる、優れたエンジニアがいた。30年間忠実に会社に勤めた後、彼は無事引退した。数年後、数億円の機械がどうしても直せないと、会社から知らせを受けた。いろいろ試したが、彼らにはどうにも直せな いのであった。彼らは自暴自棄になって、過去に多くの問題を解決した、引退したエンジニアに連絡を取った。エンジニアは、しぶしぶ腰を上げたのであった。

彼は、巨大な機械を一日かけて調べた。その日も終わろうかという頃、彼はある部品の上に小さな"x"マークをチョークで書いて、誇らしげに言った。

「これが問題の個所だ」

その部品は交換されて、また機械は完全に動くようになった。会社は、仕事代として5万ドルを彼から請求された。会社は、料金の明細を要求した。そのエンジニアは、ごく短い返答をよこした。

チョークのマークひとつ
$1
それをどこに書くか知っていること
$49,999

料金は全額支払われ、エンジニアは再び幸せな引退生活に戻った。

投稿: 管理人nobu | 2015年11月 6日 (金) 13時52分

>SPAの記事読んでみたが、この2人って頭悪い典型ですね。
>自分でやったこともなく、評論家みたいなもんか。
頭が悪いと馬鹿にしていても、このレベルの人間が医療政策を決めたり、
国民の世論を動かしていることを医者も理解した方が良いのではないか。

投稿: | 2015年11月 7日 (土) 15時51分

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